俺は、降り積もった雪に埋もれていたデリバードを抱きかかえた。
その手――と呼べるのか疑わしいが――には、しっかりと箱が握られていた。
多少濡れてはいたが、潰れているよりはマシだ。
「…デリッ!」
俺の行為を、許してくれるのか?…デリバードは満面の笑みを俺に見せつけてきた。
震える、俺の手。自分でもよく分かる。これは、寒さだけの震えだろうか?…
「…っ」
冷たい雫が、俺の頬を伝った。その冷たさは、降り注いでいる雪以上だった。
でも、この雫は悲しみの雫じゃない。俺はそう思った。そして俺は、微笑した。
「…ありがとな、デリバード…俺、何か分かったような気がする」
「…?」
「…俺はお前に助けられたんだ。いや…俺と、この夢を受取る子供もな」
俺は箱に目線をやった。デリバードは、少なからず箱を助けた、ということは理解したようだ。
「…デリィッ!」
辺りが明るくなり始めている。俺は微かに、脳裏の隅でそんなことを考えていた。
夜が明ける…時間が、ない。
「…行くぞ、デリバード!」
俺は言うなり、走り出した。光を反射する雪煙を舞い上げながら……
その質素な造りの家。サンタの仕事も、ここで終りだ。
俺は最後の一軒へ辿り着いた。辺りは先程より明るくはなっているが、それでもまだ暗い。
でも、早いうちに夢を配らないと…
橇から一歩踏み出す。最早足の感覚は麻痺していた。箱を持つ手が震える。不安そうな目でデリバードが見つめる。
「心配すんな」
軽く頭を撫でてやった。そして俺は、家へ向かって歩いていった。
なかなか大きな窓。俺はとりあえず、手で押してみた…すると…
…ギィィィッ…
開いた。まあ、前も何軒か窓が開いている家があった。
サンタを歓迎するという意思表示だろうが、ちょっと無用心とも思う。
俺は窓の縁を跨いだ。そして室内に入ると、ゆっくりと窓を閉めた。
…ギィィィッ…バタッ…
ベッドの上に、少年が横たわっていた。寝息を発てている。
だが、その表情は…何となく不安げだった…
俺は少年を起こさぬよう、そっと箱をベッドの傍らに置いた。
「…メリー、クリスマス」
俺は微笑みながら、そう言った。これで、配達屋も終り……
「…サンタ、さん?」
俺は慌てた。寝ていた少年が急に目を開けたから…
スリー………あっ……
「サンタさん、ですよね?」
少年は起き上がった。だが俺は、少年を夢の世界へ誘うことができない……
…スリーパー、橇に置いてきちゃった……
慌てる……目が泳ぐ…汗が滲む…冷え切った身体に、電撃は走る…
少年は半ば驚きながら、しかし半ば、不安げな表情を浮かべたままである。
俺はどうしたらいいのか分からない…起きてしまった子供の対処法…スリーパーで眠らせるしか分からない…
「…この箱、もしかして帽子、ですよね?」
んっ?…更に焦る…とりあえず俺は、返事を返した…
「…んっ…そうだ、ぞ」
「……そう…」
思っていた返事とは全く違かった、少年の返事。暗く、沈んだ声で、少年は下に俯いた。
「…サンタさん、やっぱこれ、要らないです…」
この現状。それに追い討ちを掛けるような、全く予想外の言葉。
夢、要らない?……