…何で俺が、サンタなんか……
一つの疑念が湧いた。別に今起きたわけではない。前から、サンタが決まったときから…
この町には、一つの掟がある。それも、20歳になる前の男子だけに…
“20歳になる男子で、選ばれた者は、12月24日の夜、子供達に夢を配ることを定める”
他の町から見れば、かなり馬鹿げているような掟だ。
子供達に夢を与える。つまり、“サンタ”になれ、というのだ。
選ばれた者といっても、単なるくじで決められる。俺は不運にも、“当り”を引いてしまった一人である。
一人…というと、他にニ人程、“当り”を引いた奴がいる。何とも強運の持ち主だろう、俺達は…
しかも、子供に俺達の素性を明かしてはいけない、日が昇る前に配達を済ませる、という条件付。
つまり、“夜だけ夢の配達人”ってなわけだ。
でも…サンタになると決まってから、俺の心の中は疑問符で埋め尽くされた。
何故、俺が……何故、子供達に……何故……
暗闇の中でも、雪が月明かりを反射して辺りを仄かに明るくしている。
オドシシ達が走る足音、引っ張られる橇の音以外何も聞えない。
寒さの中、俺の思考は消されることなく続いている。
俺は、クリスマスを…イヴの夜を楽しみにしていたか?…
サンタがくれる夢を、心の底から欲しがっていたか?……
こんな俺が配る夢を、子供達は本当に嬉しがってくれるのか?……
この疑念を分かってくれる奴はいないだろうな。
少なくとも、暗闇という名の"夜”以外は…
俺は橇を止めた。手元にあったロープでオドシシ達に止めるよう指示した。
疑念は確信へと変わり、俺を絞め付けた…
何を想ったのか…俺にすら分からない。
ただ、無意識のうち、震える手には箱が握り締められていた。
最後に配達する、夢。でも……
…俺の気持ち……この子供にも……
憎い…俺の少年期……夢も希望もなかった……
ポケモントレーナーに、なれなかった……
俺は箱を力いっぱい投げた。全ての怒りを込めて……
…ダメだよ!……
そんな声が、聞えた気がした……
「…デリッ!」
デリバードは飛び出し、俺が投げた箱を空中キャッチした。
そのままデリバードは、降り積もった雪へとダイブしていった…
「デリバードッ!」
俺は自我を取り戻した。そしてその瞬間に、俺は飛び出した。
…デリバードは…子供を夢を、守ろうと……
俺は走った。足場の悪い雪の上を…
「…うっ…」
転んだ。最早赤い服は白へと変わったであろう。
だが、そんなことどうでもよい。俺は必死で起き上がり、再び走り出した。
脳裏に過る、過去の記憶……夢も希望もない、あの少年期……
俺にこの仕事は…夢の配達人は…荷が重すぎたかもしれない…
でも、何か変わったような気がする…
今宵、俺は自らの夢を、こいつら、ポケモンに運んでもらった。
そう…夢なんて、今から叶えればいいんだ!