それから先、俺は何も考えないことにした。
何かを考えていると、また考えるものが増えるような気がしたからだ。
すると、カタカタ、カタカタと、バッグが揺れだした。
「あっ」
すっかり忘れていた。そういえばこいつだけはバトルに参加していなかったのだ。
「すまないな、ジグザグマ」
そういって、彼をMBから出してやった。
MBから出てきたジグザグマは舌を出しながら、俺のまえに座った。
「はいはい、わかっているよ」
そういって俺は、バッグからポケモン用の食事を取り出した。
そうすると彼はその食事に勢い良く飛びついた。
なんというか、つくづく主の心境を理解できない奴だと思った。まあ、それがいいのかも知れないが。
そう思っているうちに、ジグザグマは食事を全て食べ終え、辺りを見回していた。
「全く、相変わらず食べるの早いよなあ」
俺がそういっているうちに、ジグザグマは突然遠くへ走り始めた。
「おい、ちょっとま・・・」
そう言おうとしている間に、もう彼は見えなくなっていた。
「仕方ないなあ」
いつものことだった。何かあるとすぐにそこへ言ってしまう。まあ、すぐに帰ってくるのだが。
10分後、彼は口に何かをくわえて帰ってきた。とくせいのものひろいである。
「おお、また見つけてきたのか」
ジグザグマは俺に拾ってきたものを差し出した。ただのMBであった。
「よくやったな」
と、彼をほめる。しかし、内心ではもう少しいいものを持ってくるのかと思っていたので少し残念だったのだが。
彼は褒めてもらったのでニコッ、と笑った。心から褒めてもいないのに。
それにしても今のジグザグマが少しうらやましかった。
大したこともないことでこんなに喜んでいるのだ。
それはつまり、自分のやっていることを楽しんでいるのだ。
俺はどうなんだろうか。今、果たして自分のやっていることを楽しんでやっているのだろうか。
でも、ひとつ分かったことがあった。それは彼は、自分の思うがままに走り続けていること。
そして、今、そのことで彼は幸せになっている。
所詮、色々考えても無駄だったのだ。彼は何も考えずにものを拾ってくる。それでいいのだ。
自分も何も考えずに旅をすればいいことなのだ。何故気づかなかったのだろう。
何故旅をし始めたかなんてどうでもいい。その時俺がやりたかっただけなのだ。
他にいいものがあったかなんて、どうでもいい。その時これしか眼中に無かったのだ。
ならば仕方ないだろう。あの時からもう俺は走り続けている。止まる理由なんか無用だ。
ただ、今は走り続けるだけ。そうするしか無いのだ。リタイアなんかかっこ悪い。
もう道は一本しかないのだ。自分の決めたもの、ただそれだけを信じていこう!
気づけば、久しぶりに雲一つない夜だった。月が綺麗に輝いている。
A certain night、とある夜の物語。
【完】