記憶喪失になった少年タツマ
その少年を思うピカチュウのピリ
少年が記憶喪失になってから12日目の夜
2つの体と2つの心
それぞれのうちに秘められた何かが動き出す。
今夜もピリは祈り続けた。あのこと(記憶喪失になってしまった少年に見捨てられたこと)があったがきっと思い出してくれると信じて。
記憶の断片がめぐる頭の中でさまよい続け、未だに正しい答えが得られない。
「どうしてあのポケモンは僕のところに来るんだ?」自問自答を繰り返すタツマ。
”これでいいのか?”
タツマはその一言で目を覚ます。まだ真夜中である。
誰が話しかけたかわからない、もしかすると消えてしまった記憶の中にいた自分なのか?
”君の命を救ったのは誰だ?”
まただ、しかし今度は違う、落下時の映像が浮かび上がる。僕に必死に声をかけている。助けを呼んでいる。
”「あのポケモンだ!そうピリだ!」”
誰かの声と自分の声が重なる。やはり記憶の中の自分…
断片になっていた記憶がつながり始めた。…すべての記憶がよみがえったのだ。
自問自答の答えが出た。ピカチュウ、あのピリに謝りたい。そう思った時、体が自然にトキワの森へ向かおうとする。
ピリも何かを感じたのか祈ることをやめる。もうだめなんだと思う気持ちが大きくなりすぎた。
”これでいいのか?”
周囲に敵意を感じるような逆なでするような感じ。声の主は誰か。小さな頭がフル活動する。
ガサガサ
殺気、いや違う、暖かな優しい何かを感じる。一人と一匹が今近づこうとしている。
出て来たのは…タツマだった。こんな夜に?ピリは少し焦った。また何かされるのではないかと思ったのだ。
しかし、そんなことはなかった。
「ピリ、ごめんよ。僕が悪かった。今、記憶が戻ったんだよ。」
半分泣きながらやってくるタツマ、そしてピリもつられて涙が。
抱き合う一人と一匹、泣きながら心のつながりを感じた。
泣き疲れた一人と一匹、美しい夜のトキワの森の中、月明かりを浴びながら静かに眠るのだった。