「なんだか、変なの、この頃」
彼女は川原に腰を下ろし、いった。
傍らのラジオの周波数を合わせながら、そういった。
「…ふむ。そりゃどんな感じなんだい?」
僕はといえば、彼女の三歩前で小石を摘み上げ、澄んだ川にそれを投げていた。
レディバが木の実を齧りだす。
「――例えばねえ、」
ラジオの周波数が合う。
そして彼女が言う。
「自分が、枯れてきてるような気がするんだ」
「……枯れてきてる、か」
少し神妙に顔を顰ませ、ぼくが大振りに石を投擲する。
木陰に座る彼女に木漏れ日が射して、眩しかった。
「うん」
「自分が厭になったら、唄を歌えばいいのよ、って、君が前言ってただろ」
川のせせらぎをバックに、聞き覚えのある洋楽が流れ出る。
「そうよ、だけど、その唄を歌う為に、一番大切なのはなんだと思う?」
「作曲能力だな絶対」
レディバがモモンの実を持ってきて、彼女が受け取る。
「ありがと、ヨヅキ」
「ディーっ」
「いや、聴いてる?」
「――うん。聴いてるよ。でも、作曲能力とは違うかな。凄い近いわ」
彼女が麦藁帽子の唾を上げる。
レディバはここらのポケモンと戯れているようで、時折せせらぎと共に可愛らしい鳴き声が聞こえた。
「じゃあ、なんなんだ?」
「詩。なんだか上手く浮かばないの」
「即興でいっつも唄ってるんだから、その上で歌詞なんて声を現す弦じゃないのか?」
「――違うわ。なにか、違うの」
あっ。
飛んでゆく。
レディバが。
確かにその日は、少し苦いコーヒーがよく似合った。
「それじゃあ、今から一緒に喫茶店に行こう」
「うん、今ならいい詩が浮かびそうよ」
田舎道を歩く。
――思い出した。これがぼくと彼女の、出会いだった。