かわらにて(1)

「なんだか、変なの、この頃」

彼女は川原に腰を下ろし、いった。

傍らのラジオの周波数を合わせながら、そういった。

「…ふむ。そりゃどんな感じなんだい?」

僕はといえば、彼女の三歩前で小石を摘み上げ、澄んだ川にそれを投げていた。

レディバが木の実を齧りだす。

「――例えばねえ、」

ラジオの周波数が合う。

そして彼女が言う。

「自分が、枯れてきてるような気がするんだ」

「……枯れてきてる、か」

少し神妙に顔を顰ませ、ぼくが大振りに石を投擲する。

木陰に座る彼女に木漏れ日が射して、眩しかった。

「うん」

「自分が厭になったら、唄を歌えばいいのよ、って、君が前言ってただろ」

川のせせらぎをバックに、聞き覚えのある洋楽が流れ出る。

「そうよ、だけど、その唄を歌う為に、一番大切なのはなんだと思う?」

「作曲能力だな絶対」

レディバがモモンの実を持ってきて、彼女が受け取る。

「ありがと、ヨヅキ」

「ディーっ」

「いや、聴いてる?」

「――うん。聴いてるよ。でも、作曲能力とは違うかな。凄い近いわ」

彼女が麦藁帽子の唾を上げる。

レディバはここらのポケモンと戯れているようで、時折せせらぎと共に可愛らしい鳴き声が聞こえた。

「じゃあ、なんなんだ?」

「詩。なんだか上手く浮かばないの」

「即興でいっつも唄ってるんだから、その上で歌詞なんて声を現す弦じゃないのか?」

「――違うわ。なにか、違うの」

あっ。

飛んでゆく。

レディバが。

確かにその日は、少し苦いコーヒーがよく似合った。

「それじゃあ、今から一緒に喫茶店に行こう」

「うん、今ならいい詩が浮かびそうよ」

田舎道を歩く。

――思い出した。これがぼくと彼女の、出会いだった。

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