情けない事に、真琴は声を挙げ泣き叫んでいた。
――なんであそこに俊之のような人間が居たんだ。
――なんで降参しなかったんだ。
――なんで殺したんだ。
久し振りにブーバーの遺影を見ると、余計心が痛んだ。
「楽になった?」
麻衣子が訊いた。真琴を包み込むように。
「はい…、俺、あの時故郷戻る金も無かったし、
誰にもこの哀しさを判って貰えなかった。だから…有難う御座います」
上着の袖で涙を拭いつつ、真琴は呟いた。
「じゃあ…洗い去るわ」
「え?」
「私はね、哀しい思いだけをここに置いて行って欲しいの。だから、その人には
ポケモンとの大切な時間、大切な思い出だけを持って生きて欲しいんだ」
麻衣子がはにかんだ。
数珠を懐から取り出すと、経を謳い始めた。
(ポケモンタワー、か…暖かいトコだな)
真琴も笑みを浮かべると、瞳を閉じた。
――なんだろう。経が心に入り込んで、先日のもどかしさが、洗われてゆく気がした。
続いてブーバーとの思い出が走馬灯のように脳裏を滾る。
ブビィとして生まれ、一杯遊んで。
友達と一杯バトルして。
ブビィが進化して。
俺と旅に出て。
ジムを制覇して。
…四天王までは挑戦しなかったっけ。
そしてナナシマへ着いて―――――。
思わず、泣き笑いしてしまった。
「今日は有難う御座いました。随分楽になりました」
真琴はすっかり元気になって、帰り際に礼を言った。
「どうって事無いわ。これからも貴方のブーバーはいつまでも
一緒に居てくれるから」
麻衣子は不敵な笑みを浮かべ、言った。
「何すか、それ!怖いですよ!」
「うふふ。憑き物ではないわ。――――守護霊よ」
麻衣子は、笑って言った。
―――心にいつまでも残る、大切な思い出―――。
真琴―ブーバー【終】