ポケモンタワー 〜それぞれの思い〜(9)

第二章 - 真琴―ブーバー 第六話 - 苦しさ

情けない事に、真琴は声を挙げ泣き叫んでいた。

――なんであそこに俊之のような人間が居たんだ。

――なんで降参しなかったんだ。

――なんで殺したんだ。

久し振りにブーバーの遺影を見ると、余計心が痛んだ。

「楽になった?」

麻衣子が訊いた。真琴を包み込むように。

「はい…、俺、あの時故郷戻る金も無かったし、

誰にもこの哀しさを判って貰えなかった。だから…有難う御座います」

上着の袖で涙を拭いつつ、真琴は呟いた。

「じゃあ…洗い去るわ」

「え?」

「私はね、哀しい思いだけをここに置いて行って欲しいの。だから、その人には

ポケモンとの大切な時間、大切な思い出だけを持って生きて欲しいんだ」

麻衣子がはにかんだ。

数珠を懐から取り出すと、経を謳い始めた。

(ポケモンタワー、か…暖かいトコだな)

真琴も笑みを浮かべると、瞳を閉じた。

――なんだろう。経が心に入り込んで、先日のもどかしさが、洗われてゆく気がした。

続いてブーバーとの思い出が走馬灯のように脳裏を滾る。

ブビィとして生まれ、一杯遊んで。

友達と一杯バトルして。

ブビィが進化して。

俺と旅に出て。

ジムを制覇して。

…四天王までは挑戦しなかったっけ。

そしてナナシマへ着いて―――――。

思わず、泣き笑いしてしまった。

「今日は有難う御座いました。随分楽になりました」

真琴はすっかり元気になって、帰り際に礼を言った。

「どうって事無いわ。これからも貴方のブーバーはいつまでも

一緒に居てくれるから」

麻衣子は不敵な笑みを浮かべ、言った。

「何すか、それ!怖いですよ!」

「うふふ。憑き物ではないわ。――――守護霊よ」

麻衣子は、笑って言った。

―――心にいつまでも残る、大切な思い出―――。

真琴―ブーバー【終】

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