彼女は少し苦いコーヒーがお好き(3)

第二話

「枯れてゆく枯れてゆく

あたしは水を上げている溢れてしまう程に

如雨露の水はなくなりませんあたしの泪」

――また君は唄っていた。

どうしても、哀しくなる。

哀しいなら、誰かに甘えればいいのに。

深く吐息を吐き、再び吸う………ッ?

「イッてぇぇ……」

昨日、詩々に殴られたところか。

一日経って痛むとは中々上等だった。

なんでいつも気を失って、まともに床に就けないものか。

自己嫌悪しつつ、ぼくはいつものように周辺を探る。

「なんだ、ここ……」

洞窟、だろうか。

奥のほうに灯が灯っていた。

共に、聞きなれた歌声。さっきの声はやはり詩々だろうか。

「ヨヅキはボールに押し込まれてるんだな」

ぼそり、と呟いてぼくは彼女のもとへ走った。

「指切拳万約束致しました

だけどいつも破られるのはあたしの所為ね

もう如何にでもなって欲しい」

――余韻の唄。

案の定詩々の隣には、カンテラが置いてあった。

水溜りの前に腰掛けて、唄う。

そこには、一つアメタマの死骸が転がっていた。

詩々は多分アメタマに唄ってやっているのだろう。

約束の唄。

――その時、声がした。

振り返って、180度。

「アメタマだあ!」

まだあどけない、無垢な声。

ぼくは振り返った先に居る男の子に、話し掛けてみた。

「こんな深い洞窟で、何してるのかな」

「ぽけもんをつかまえに、きたの!」

そう言って少年は真っ白な歯を見せて笑った。

「でね、あのしろいかみのおんなのひとのおくにいるアメタマをつかまえるんだ!」

詩々が唄うのを一旦止めた。

そして、少年とアメタマを、唄う。

「朽ちて尚私を我が物としたいのでしょう

ですがもう動く力はないんです休む事は許されないのですか

死んでいるように生きる覚悟が私には無い

あなたはそれでも私を我が物としますでしょうか」

――哀しみの唄。

少年は唄を聴いて、一段落して訊いた。意味が分からなかったらしい。

「おねーちゃん、アメタマ、しんじゃってるの?」

死の意味を知らない少年は笑いこそしないものの、極普通に訊いた。

「うん、…死んでる。所々が腐敗、腐っちゃってるの」

「つかまえたらだめなの?よわってるとつかまえやすいってパパがいってたよ」

詩々は唇を噛んで、笑った。

「駄目だよ。ほら、探して元気なポケモンを捕まえて来てね」

詩々は死の意味を知っている。

だけど、哀しいという感情を、昔ぼくと共に殺した。

「哀しくないよ」

笑った。

「哀しくない」

――久し振りに、夜まで起きていた。

――久し振りに、心を開いてくれた。

優しさを知って、1つ。

サイト内検索

管理人 : POKE-NOVEL Project