「父上、これは……なんですか?」
木造の倉庫から埃とともにそんな声が飛び出してきた。
父上と呼ばれた人は玄関から出てきた。
白髪混じりの頭をボサボサと掻いたその人の動作は、
あくびも足すと、面倒くささを体現している。
「何だ?それは」
父は息子の手から、厚い紙の束を受け取り、一人で頷く。
「こりゃあな、俺の親父さんの時代だか……それよりも昔だかの、戦乱の時代に書かれた本だ」
「なぜ父上の倉庫からこんなものが出てきたのですか?」
息子は訝って父親に訊ねてみる。
「おそらく、親父さんのやつだな。ちょうどいい、全巻揃っているみたいだから読んでみろ」
父親はそういうと、館の中に再度戻っていってしまった。
そう、これは、今より百年近く前の話。
まだこの国が群雄割拠の時代だったときの話。
物語の初めは、漸盛(ゼンジョウ)の反乱から始まる。