「結構気持ち良い。風は強いけどな」
自転車。―――マウンテンバイクのようで、赤と銀の混じった色のフレームのマウンテンバイクに乗った
海斗が呟く。陸也も自転車の上で頷く。
ミナモシティの方から潮風が吹きつける。気持ちの良い潮風で適度に暖かみも持っていた。
「よし。素早く降りようか」
自分の頭に手馴れた手つきでヘルメットを付け終わった陸也が海斗に言った。
「よし。こんな所でゆっくりするわけにも行かないしな」
海斗もヘルメットをつけ終わりると、陸也がいきなり
「んじゃ、お先に」
自転車を走らせた。坂道でしかも追い風と言うこともありかなりのスピードである。
五秒ほど置いていかれた海斗が地面を蹴り自転車を走らせた。
「やっと着いたけど…海斗はまだかな…」
陸也は先程まで一気に下ってきた道を見た。
出発時の差がかなり広がり二十秒ほどして海斗が来た。
「やっぱり。遅いよ海斗」
「お決まりの言い訳セリフ。俺はダートだ」
「関係ないね」
陸也に、遅い。という指摘をいきなり喰らった。とりあえず、お決まりの言い訳で答えておく。
人間一つは天賦の才というのを持っているのだろうか。自転車での移動はかなり上手である。
こればかりは劣等感―――いわゆるコンプレックスよりも、まずその才能に対して凄い物だと思った。
まぁ自転車についてなどはどうでも良い。早くオダマキ博士のところへ向かいたい。
二人は早く出ようとした。しかし目の前にはここに来る時と同じ建物がある。
これが、あの『閑古鳥の止まり木』であろうか。
二人がドアの前に立つ。自動ドアらしく勝手に開いてくれた。
開いた『閑古鳥の止まり木』に二人が入る。
と、同じ位置の机にある椅子に座りながら体を机に倒れさせている一人の人間が居た。
「あっれー。あ、兄さんの言っていた。『お客さん』ですね?」
先程まで『閑古鳥の止まり木』のなかで夢うつつだった審査官が声を挙げる。
「ちなみに、兄さんって言うのは向こうに居る審査官の人。二人で審査官やっているんだよ。旅人の話とかをメールで送ってもらって、来た人にさっきみたいなセリフを言う」
聞いても居ないことをペチャクチャと喋られたが、短縮のためにはいいかもしれない。
すると、陸也が、
「んじゃあ僕たちもそろそろ行きますね。面白い話も聞けたし」
『閑古鳥の止まり木』も―――なかなか面白いようだ。