何だかぼくもくたびれてきました。
よくよく考えてみれば、ぼくってご主人が釣りを始めてからずっとこの体勢です。
体をほぐしにひと泳ぎしたいところですが、まさかご主人を乗せたまま潜るわけにもいきません。
仕方がないので、頭だけでも冷やしてサッパリしようと、ぼくは頭を水に沈めました。
それにしても、この川は本当に綺麗です。
水が澄んでいるのはもちろん、水質の良さもかなりのもので、ぼくのお肌もツヤツヤです。
水温は程よくひんやりと冷たくて、とってもいい気持ちです。
川底を見ると、ウロコをきらめかせながら、キバニアの群れが泳いでいました。
その数の多いこと多いこと。
これじゃあ、キバニアしか釣れないのも無理はないですねご主人。
キバニアの群れはコミカルに尾びれを振り振り、あっちへ行ったりこっちへ来たりを繰り返しています。
その様子が何だか面白かったので、ぼくはしばらくそれを眺めていました。
と、その時です。
キバニアの群れから少し離れた水草の陰から。
見たことのないポケモンが、一匹飛び出してきました。
もしや、あれがヒンバス?
一瞬そう考えたぼくでしたが、すぐに思い違いだと気付きました。
何しろそのポケモンときたら−−−ぼくがこんなことを言うのも図々しいんですが−−
−−−ひどく不格好なんです。
ウロコは砂漠の砂みたいに奇妙な色で、体もヒレも貧弱で弱々しくて、
そのくせ目だけはギョロッと大きいんです。
まるで、栄養失調のコイキングの成れの果てです。
あんなにみっともないポケモンが、美しいミロカロスに進化するわけありません。
そそくさと泳ぎ去っていくそのポケモンの姿を、ぼくは黙って見送りました。
…さて、ご主人はどうやら眠ってしまったようで、ぐーぐーといびきが聞こえてきました。
全くのんきな人です、ぼくのことどうこう言えません。
寝返りでもうって川に落ちられると困るので、とりあえず今日の所は岸に戻ることにしました。
荷物もご主人もしっかり乗せて、いざ発進。
川岸目指してまっしぐら、ラグラージ号は早いです。
川を下る途中で何匹かのキバニアとすれ違いながら、ふっとぼくは思いました。
そう言えば、あの不格好な見知らぬポケモンは、何という名前だったのでしょう?
…まあ、いいか。
〜おわり〜