ユウキの旅

少し温かくなった春の兆し。

緑の木々が風に靡き、鳥ポケモンのスバメ達は日にあたり昼寝をしている。

小川でのんびりトサキントが泳ぎ、それをヘイガニが寝ぼけ眼で見ている。

そして、ある少年はぼんやり雲を見ていた。

ゆっくりと東に流れる入道雲…。

彼はその雲が過ぎ去り新たな入道雲が来ても空を見ている。

彼が見ていたのは入道雲じゃなかった…風だった。

ただ…勝手気ままに吹く風を見ていたのだ。

「マスター?」

横からそんな女の子の声が聞こえる。

いや、正確には女の子ではない、いわゆる♂…ポケモンだった。

彼は『サーナイト』ユウキにとってかけがえの無い仲間…いや、家族だ。

ユウキは空から視線を外し横で顔を覗くサーナイトの方にゆっくりと顔を向ける。

「どうしたんです? ずっと空を見て」

サーナイトは少々心配をしているようで優しくもどこか憂い瞳でユウキの顔を覗いた。

「いや…風はどこへ行くのかと思ってな」

ユウキは再び空を向くと一言そう言った。

それを聞くとサーナイトもゆっくりと空を見た。

風なんて見えない…感じることが出来るだけ。

「何言っているんでやんす、ポケモンリーグが終わってボケたでやんすか?」

ユウキの横…サーナイトは左だったのでその声は右から聞こえた。

その声の主はチルタリス。

このポケモンもサーナイトと同じくユウキにとって大切な家族だった。

チルタリスはやれやれと言った顔でやはり空を見た。

この2匹のほかに彼は多くの家族を連れていた。

まずは彼のポケモントレーナーのきっかけラグラージ。

彼は無口にユウキの後ろに佇んでいる。

続いて石の洞窟で出会ったボスコドラ。

赤い瞳に青い腹をした♀の色違いだった。

彼女は隣にいるチルタリスの頭を軽く叩いていた。

そして、ユレイドルとコータス。

ユレイドルはデボンの技術で蘇った元は化石。

コータスは炎の抜け道で出会ったちょっと照れ屋な女の子。

「ラグ…」

ラグはユウキの横にきて肩に手を乗せ、低く小さな声でそう呟いた。

本来ポケモンは喋れない。

それはあらゆるポケモンに通用しこのサーナイトとチルタリスを除いて他はそれが当てはまった

何故かはわからないが彼らは人の言葉を自在に操り、ことばによるコミュニケーションを取れるのだ。

「もう、行きましょう…」

サーナイトはいい加減空から目を離しユウキをその目に映して言う。

「…そうだな」

彼、ユウキはそう言うと歩き出した…。

どこともなくただ、風のように気の向くまま。

彼は三月にあったポケモンリーグで見事ポケモンチャンピオンの『ダイゴ』を打ち倒しポケモンチャンピオンになったのだ。

しかし、彼はまるでそんな物に興味は無いといったようにあっさりとそれを返上、彼は直ちに一トレーナーに戻ったのだ。

時に四月の始まったばかりだった。

風は自由気ままに流れる…ユウキは宛の無い旅を続ける。

それは異なるもののようで同じこと…。

彼は風のようにどことも知れぬ場所を目指して第一歩を踏みしめた。

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