ヒサシは、いつも通りに起きた筈だった。しかし、ヒサシの目の前には、ヒサシがいた。
夢ではないはず。では、今この状況は、何なのだ?
「おや、驚きのようだね・・・ヒサシ君・・・」
目の前にいたヒサシが喋った。軽快な口調。それでいて、自分を威嚇するかのような、鋭い目つき。
衣服はというと、自分が着ていた筈の、黒のパジャマだった。ヒサシは、目の前の光景が信じられなかった。
「言っておくが、これは夢ではない。」
再び、ヒサシが口を開いた。その根拠は何なのか分からない。
だが、ヒサシには、これが夢ではないことがはっきりと分かっていた。何となくではあるが。
「・・・おっ、お前は誰だ!」
動揺したヒサシが、狂ったような声でそう言った。
「おや?まだ分からないのかね?君の手を見てご覧?」
目の前の“ヒサシ”に言われ、ヒサシは自分の手を見た。
しかしその手は、自分の“いつもの手”、つまり、肌色ではなく、かつ五本指ではなかった。
白い手首から、細い手が伸びている。指は三本。その指先は、丸く、爪などはなかった。何時か、見た時のあるこの手・・・
そう、その手は、紛れもなくミュウツーのものだった。
「やっと分かったかな?君と私は入れ替わったのだよ!」
そこに居た、“ヒサシ”が言った。
「だとすると・・・お前は・・・」
「私は・・・ミュウツーだ!」
ヒサシは、驚きを隠せなかった。というより、今のこの状況がよく飲み込めなかった。
いきなりそんなこと言われても、信じる馬鹿はどこにもいない。だが・・・
そこに居た自分、それは、ミュウツーで、自分が今いるところは、ミュウツーの体・・・
「・・・何故、入れ替わったんだ・・・」
ヒサシが小さな独り言をもらした。
「それは・・・私の技、“心移し”によるものだ!」
それを聞いたヒサシは、更に混乱した。
「いいか?お前は昨日、私を出しっぱなしで床に就いただろ?」
ミュウツー言葉を聞いて、ヒサシは昨日の記憶を思い出した。
・・・昨日、俺はミュウツーを捕獲した。そして寝る前、ミュウツーを眺めていて、そのまま寝てしまった・・・
「そして、私の心移しという技で、お前と私の体を入れ替え、
そしてミュウツーとなったお前を、私はマスターボールに収めた。
心移しとは、お互いがお互いを思うことによって、お互いの心を入れかえることの出来る技。
そしてお前は、寝ているとき、私のことを考えながら寝た。
だから、私とお前の体を入れかえることが出来たのだ!お分かりかな?」
ヒサシは、ミュウツーの言葉を聞いていくにつれて、混乱が増していった。
意味不明は技の名。心移し。自分と、ミュウツーの心は入れ替わった。意味が分からない・・・
「・・・ふっ、はっはっは!」
その時、ヒサシが突然笑い出した。全てを、否定するかの如く・・・