時の旋律(1)

--僕がここにいて何になる?

少年の見渡す先は崩壊した都市。

民家は崩れ、電柱はなぎ倒され、地面はえぐれる。

荒れ果てたこの街に人々は遠くへと消えて行く。

消えて行く先はさまざまだった。

ある人は北へ向かい、またある人は東へ向かう。

そして、またある人は帰れない場所へと向かう。

「どうした?はやく逃げんしゃい、余震がくるけんぞ」

1人の老人がやさしく少年に話し掛ける。

「うん、分かったよ…」

また、少年も南へと向かっていく。

「このかつて無い大地震はジョウト全般を襲い、死亡者は1万人を超え…」

ラジオからキャスターが臨時ニュースを伝える。

「こりゃ、ひでえことになっちょるわ。なあ、ヨウ」

老人がまた、優しそうに話し掛ける。

「うん、そうだね、おじいちゃん」

ヨウは平然を保とうとしていた。

北の空は真っ赤に燃える。騒ぎ声も聞こえる。泣き声も聞こえる。

人々は悲しみに浸り続けている。ヨウもそうだった。

「ちょっと周りを散歩してくるよ」

「やめとけえ、外はぶっそうじゃけん。悪いやつらがいるにきまっちょる」

しかし、ヨウは外へと出て行く。

「現在、ポケモンの行方不明数は、推定、約12万匹です」

外に出た時には太陽が沈みかけていた。

ヨウはそのまま地面に倒れこんだ。

助けたかった。けど助けられなかった。

どうして素直になれなかったんだろうか?

どうして「ごめん」の一言を言うだけのことをためらったのだろうか?

憎い。素直じゃなかった自分が憎い。

悔しい。助けられなかったことが悔しい。

バカバカしい。無理に意地を這った自分がバカバカしい。

悲しい。もう会えなくなったことが悲しい。

気づけば、ヨウの頬から一条の光が流れていた。

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