--僕がここにいて何になる?
少年の見渡す先は崩壊した都市。
民家は崩れ、電柱はなぎ倒され、地面はえぐれる。
荒れ果てたこの街に人々は遠くへと消えて行く。
消えて行く先はさまざまだった。
ある人は北へ向かい、またある人は東へ向かう。
そして、またある人は帰れない場所へと向かう。
「どうした?はやく逃げんしゃい、余震がくるけんぞ」
1人の老人がやさしく少年に話し掛ける。
「うん、分かったよ…」
また、少年も南へと向かっていく。
「このかつて無い大地震はジョウト全般を襲い、死亡者は1万人を超え…」
ラジオからキャスターが臨時ニュースを伝える。
「こりゃ、ひでえことになっちょるわ。なあ、ヨウ」
老人がまた、優しそうに話し掛ける。
「うん、そうだね、おじいちゃん」
ヨウは平然を保とうとしていた。
北の空は真っ赤に燃える。騒ぎ声も聞こえる。泣き声も聞こえる。
人々は悲しみに浸り続けている。ヨウもそうだった。
「ちょっと周りを散歩してくるよ」
「やめとけえ、外はぶっそうじゃけん。悪いやつらがいるにきまっちょる」
しかし、ヨウは外へと出て行く。
「現在、ポケモンの行方不明数は、推定、約12万匹です」
外に出た時には太陽が沈みかけていた。
ヨウはそのまま地面に倒れこんだ。
助けたかった。けど助けられなかった。
どうして素直になれなかったんだろうか?
どうして「ごめん」の一言を言うだけのことをためらったのだろうか?
憎い。素直じゃなかった自分が憎い。
悔しい。助けられなかったことが悔しい。
バカバカしい。無理に意地を這った自分がバカバカしい。
悲しい。もう会えなくなったことが悲しい。
気づけば、ヨウの頬から一条の光が流れていた。