その少女は、もう何年も外に出ていなかった。
学校になんか行かない。――友達が居ないから楽しくない。
別に、友達なんていらない。――すぐ裏切るから。
そう考えた後、少女は部屋を見回した。
――その点、このぬいぐるみ達は裏切らない。
自分勝手な都合で離れて行ったりもしない。
……部屋を見回していた少女の目が、ピッピ人形をとらえた。
この人形――。
黄色い帽子を逆にかぶった、無口な少年。
前にきている帽子の穴から、前髪が飛び出している。
その少年は、少女にやさしく、ピッピ人形を手渡す。
「あの――」
少しうつむきながら、リニアの定期券を少年に渡す少女。
その少年は、ニコリと笑うと、初めて少女の前で口を開いた。。
「ありがとう!」
透き通ったような声。――少なくとも、彼女にはそう聞こえた。
少女は、その笑顔に何も言う事が出来ず、ただうつむいていた。
あの人に、また会いたいな。
私からの二つのメッセージを、あの人に届けたい。
「ありがとう」――そして、「友達になろう」の二つの言葉を――。