マチス

季節は、冬。

錫色の空からは、真っ白な雪が、まるでじょうろで水をやっているかのように降ってきている。

「雪か……」

窓から見える景色がだんだんと白く染まっていくのを見て、マチスはつぶやいた。

戦場――。

錫色の空からは、雪と共に無数の爆弾が降ってくる。

いや、空が降らせたのではない。敵軍の飛行機が降らせたのだ。

誰かが死ぬたび、敵軍の兵士の言葉が聞こえる。

異国の言葉なのでほとんどわからないが、確かに喜んでいるようだった。

たくさんの軍人の苦しみの声が聞こえる。

家族の名を呼ぶ者、大声で泣く者。

しかし、そう苦しみ死んでいった者は、降り積もる雪に隠されていく。

一体、何の為に戦争をしているのか――そんな事は、もう忘れていた。

とにかく、敵を倒さなければならない――それだけだ。

「皆、狂ってる――」

そうつぶやいたのは、あろう事にカントーの陸軍の将官――マチスであった。

側に居るビリリダマは、ストーブの代わりだろうか。

その横で、短い茶髪の男もうなずく。

「この戦争はカントーが負ける。……間違いない」

雪は、止まない……。

そして、また、次の冬が来た。

マチスは、鞭を持った金髪の男たちに囲まれ、ただひたすらに働いていた。

一日十五時間。少しでも手を休めると、男たちはすぐに鞭を振るう。

そして、その金髪の男たちの中に、短い茶髪の彼も居た。

同じ軍服を着て、同じ鞭を持って。

彼は、少し怯えたような目でマチスを見る。

裏切ったんじゃない……しかたがなかったんだ、とでも言うように。

ポケモンさえも奪い取られた。

マチスの電気ポケモンは、発電に使われた。

すでに、あの時のビリリダマはマルマインに進化していた。

また、ちょうどこの頃、カントーがようやく降伏し、戦争も終わりを告げた。

しかし、マチスはそれを知らない。

春は思ったよりずっと遠くにあった……。

そして、また冬が過ぎ、ようやく春が来た。

マチスは、船に乗ってカントーへと帰ってきた。

しかし、隣には誰も居ない。無事に戦場から帰ってこれたのは、マチスだけだった。

「春とはいえ、まだまだ寒いな……」

マチスはつぶやいたが、それは気のせいだったのかもしれない。

また冬が何度も過ぎ去っていった。

そして、今の季節は、冬。

だが、あの地の冬とは比べ物にはならない。

やっぱり、カントーの冬は暖かいな――マチスは、改めてそう思ったのだった。

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