少し乱れた呼吸で、その赤い髪の少年はニューラに命令する。
ニューラが素早く動いたかと思うと、凍り漬けとなったゴローンが床に転がる。
年齢にしてはかなりの腕前だ。通りかかったピジョットを連れた青年が羨ましげに彼を見る。
ニューラに向かってわずかに微笑むと、少年はまた歩き出した。
わかってきたような気がする。あのマントの奴が言った事――。
ポケモンと一緒に床に寝転がりながら、そんな事を考える。
「愛情、か…」
ポケモンに愛情なんて必要無い――そう考えていた昔の自分が恥ずかしくなる。
まるで……そう。ロケット団みたいじゃないか――と。
ゴルバットの進化系のクロバットがいると知り、進化するようにビシビシ扱いていたあの日。
無理に戦わせ、戦闘不能にしてしまったあの日。
結局は進化しなかったが、今となってはもうそんな事はどうでも良かった。
ポケモンと楽しく過ごす。それもトレーナーとしては大切だと気付いたからだ。
「さてと…そろそろまたトレーニングするか?」
ポケモン達が頷いたのを見て、少年は立ち上がった。
すると…そこへ、サイホーンの群れが突進してきたのだ。
少年は、慌てる事無く命令した。
「ゴルバット、吹き飛ばせ。ユンゲラー、サイコキネシスだ。ニューラは…ふぶきだ!」
命令通りに次々と動く三匹のポケモン。
あっという間に、サイホーン達は洞窟の向こうへと飛んでいった。
「良くやったな、ユンゲラー、ニューラ。それに、ゴルバ――」
少年の目が、ゴルバットに釘付けになる。
ゴルバットは、明らかに様子がおかしかった。
だんだんと変形し、体は薄紫になっていく。
三十秒ほどすると、変化は止まった。
「ゴルバットが…進化した?」
少年は、強くゴルバット…いや、クロバットを抱きしめると、心から嬉しそうに言った。
「よろしく、ゴルバット…いや、クロバット!」
ゴルバットがクロバットに進化するのに必要なもの。少年はそれを知った…。