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真の実力を持つトレーナーの前にそのポケモンは現れる――。
代々言い伝えられているその言葉を信じ、彼は修行を続ける。
父の夢を受け継いで――。
彼は、エンジュジムの後継ぎとして生まれた。
言葉がわかるようになってからは、毎日のようにこの言い伝えを聞かされた。
――エンジュの塔の最上階に、伝説のポケモンがいる。
真の実力を持つトレーナーの前にそのポケモンは現れる――。
喋られるようになってからは、その言葉を毎日言わされた。
「マツバ。これは、父さんのそのまた父さん…お前のお爺さんが言っていた言葉だ。
お前もいつか、この言葉の意味がわかるときが来るだろう…」
そんな父の言葉を、マツバは黙って聞いていた。
ただ言葉を聞いているだけで良いわけは無かった。
何度も、効率的なバトルの方法、心を落ち着かせる方法…そんなような物を教えられた。
町から出ることも禁止され、マツバの遊び場といえばエンジュの中だけだった。
それから、春が来て、秋が来て、また次の夏が来て…それが何回と繰り返され、マツバは青年となった。
マツバが17の時に父が死んでから、ジムリーダーにもなったマツバは、よりたくましく見えた。
…父さん。あの言葉の意味、わかったよ――僕が父さんの代わりに夢を叶える――。
たまに、父の写真にそう語りかける。
その度、写真の父の顔は喜んでいるように見えた。
また何度も春が来て、過ぎ去っていった。
人には見えないもの――ゴーストが完全に見えるようになったが、まだ伝説のポケモンはマツバの前に姿を現さなかった。
しかし、その気配を薄々と感じ取ってはいた。
夢に姿が出てきたこともあったし、エンジュの空をそのポケモンが飛んでいるのを見たような気もする。
ある日、マツバは帽子をかぶった少年とジム戦をした。
その少年の腕はかなりのもので、油断していたマツバはあと一歩のところでやられてしまった。
少年の姿を見て、マツバは考えた。
もしも自分が、ジムリーダーとしてじゃなく、ワカバタウンかどこかの普通の少年として生まれていたらどうだったろう、と。
一瞬だけ、それに魅力を感じたが、もう後戻りはできない。
こうして生まれた以上、このまま最高のジムリーダーになってみせる――。
真の実力を持つトレーナーの前にそのポケモンは現れる。
代々言い伝えられているその言葉を信じ、彼は修行を続ける――。