「ハヤト…あとを頼む」
その一言とわずかなお金…そして、十四歳のハヤトを残して父が死んでから、もう五日が経っていた。
キキョウジムの入り口には、「ジム戦休止中。バッジが欲しいならどうぞ」と書かれた紙が吊り下げてある。
父が死んだ今、小さなこのジムのジムリーダーを務める事の出来る者はいないからだ。
夜。誰もいないジムの中、ハヤトは一人で、以前は父が立っていた場所に座っていた。
とても広いとはいえないジムだったが、以前は、次々と挑戦しに来る新人トレーナーで、活気に溢れていた。
しかし、今は――。
壁は汚れ、床には埃が落ちている。まるでジム全体が泣いているかのようだ。
「……ちくしょう!」
ハヤトは叫んだ。声が虚しく反響する。
「何で死んじゃったんだよ!」
そう言うと、ハヤトは声を上げて泣いた。ジムと共に泣いた。
気付くと朝になっていた。
泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。
「……あれ?」
壁には、昨日は無かった袋が立てかけてあった。
慌てて袋を開けると、父の文字で書かれた手紙と、モンスターボール二つが入っていた。
――ハヤトへ。
私が居なくてもお前ならやって行ける筈だ。
そんなお前にキキョウジムを継いで欲しい。
この二匹を使いこなすのだ――。
そこまで読むと、今度はモンスターボールを手にとってみた。
モンスターボールからは、ポッポとピジョンが出てきた。
それを見て、ハヤトは全てを理解した。
これは、父が自分に残してくれたポケモンだ、と。
小さい頃、よく父のポケモンを見せてもらった。
その中でも、一番ハヤトが関心を示したのが、額に傷のあるポッポだった。
このピジョンはあの時のポッポだ。額の傷があのポッポと同じだもの――。
ハヤトは、二匹の頭を優しく撫でると、ジムの入り口の紙を丸めると、ゴミ箱に捨てた。
キキョウジムリーダー、ハヤト。此処に有り――。