彼は、部屋に戻ると、机に置いてあった封筒の封を破いた。
一枚の紙がヒラリと抜け出てくる。
それを素早くつかむと、書いてある文字をゆっくりと読み上げる。
「四天王の一人としてあなたを迎えます…」
そこまで読んで、セキチクジムリーダーのキョウは深くため息をついた。
キョウが読んでいる手紙は、ポケモンリーグからキョウへ宛てられたものだ。
その内容は、近いうちにキョウを四天王の一人として迎えたい、というものだった。
キョウは、もう一度ため息をつくと、頭を抱えた。
確かに、実力を認められた事は嬉しい。
しかし、自分はまだまだこのジムを守っていかねばならない。
後を継げるものといえば――。
キョウは、頭にジムのトレーナーを思い浮かべる。
トレーナーこそ多いものの、実力のある者は少ない。
それに、キョウが信頼しているのは、死に別れた妻と、もうすぐ15になる娘だけだ。
どちらにせよ、信頼していない者にジムリーダーなど任せられるわけがない。
「…そうか!」
キョウは、思わず声を出していた。
そして、急いでその手紙への返事を書くと、布団を敷いて早々と寝てしまった。
まだ日も昇らないうちに、キョウはジムの裏にいた。
そこへ、一人の少女がやってくる。
「おはようございます、父上。…私に御用とは?」
そう礼儀正しく言うのは、キョウの一人娘――アンズだ。
キョウが厳しい忍者修行を教え込んだ唯一の人物でもある。
「こういう事だ」
短く言って、昨日の手紙を見せる。
「父上が…四天王に?」
コクンと頷くと、アンズの目を見て聞く。
「拙者の後をついではくれぬか」
アンズは、少し考えたあと大きく頷いた。
「私にお任せください。セキチクジムを立派にして見せます」
「そう言うと思っておったぞ」
朝日が昇り、小鳥が囀り始めた――。
あっという間に数ヶ月が過ぎ去っていった。そして、ついにキョウの旅立ちの日となった。
ジムの前の看板も、キョウの名前が書かれたものは処分され、新しい看板を立てるばかりとなった。
「頑張ってください、父上」
震える声でそう言うアンズは、目が少し潤んでいた。
「ああ。後は任せたぞ」
大勢のセキチク市民が見守る中、キョウはピジョットに乗って旅立っていった。
そして、アンズの名が書かれた看板がジムの前に立てられる。
どこからか自然と拍手が起こる。
カントー地方の歴史に、新しいページが刻まれる――。