逃亡。――それが、組織の後を継ぎたくない俺の取った手段だった。
甘かったかもしれない。無茶だったかもしれない。
しかし、それが俺の取った手段だった。
卑怯な手段が許せない。――そんな名目で。
しかし、やはり、遺伝というのはある物だな、と今ではすっかり逞しく姿を変えたパートナーを見つめつつ、そう思う。
卑怯が許せない、と親父の元から逃げつつ、その裏では研究所からポケモンを盗んだ俺が居る。
「矛盾――してるのか、やっぱり」
その矛盾は、あまりにも大きかった。
卑怯が許せない、と親父に対立した癖、卑怯な真似をしてポケモンを捕まえ、道具のように扱い、愛情というものをゴミのように扱ってきたという矛盾は。
知らないものは、向けられない。――これが、今までポケモンを道具として扱ってきた俺の自己への言い訳だ。
与えられなかったものを受け継げ。――無理な話だ。
ただ、一つだけ思う。
親父が俺に愛情を向けなかったのも、その感情を知らなかったから、では無いだろうか。
いや、もしかしたらもう一代前の祖父も、更にその一代前も、愛情を知らずに育ったのかもしれない。
そして――これは確実。
そんな愛情を知らぬものが結集しているのが、親父が指揮する組織なのだ。
しかし、そんなものは最早、戯言。
愛情は決して「無駄」では無いし、恩返しより八つ当たりのほうが強いなんていう言葉も信じない。
そう、今の俺は。
そして、その気持ち――いや、真実をぶつける時が遂に来た。
全てを、終わらせて。いや、生まれ変わらせてやる。
「地下二十階で御座います」
感情の無い機械の声で、エレベータの唸りが消える。
俺はゆっくりと、自分なりのやり方で足を一歩前へと踏み出した。
<Fin>