ライバル 其の弐

逃亡。――それが、組織の後を継ぎたくない俺の取った手段だった。

甘かったかもしれない。無茶だったかもしれない。

しかし、それが俺の取った手段だった。

卑怯な手段が許せない。――そんな名目で。

しかし、やはり、遺伝というのはある物だな、と今ではすっかり逞しく姿を変えたパートナーを見つめつつ、そう思う。

卑怯が許せない、と親父の元から逃げつつ、その裏では研究所からポケモンを盗んだ俺が居る。

「矛盾――してるのか、やっぱり」

その矛盾は、あまりにも大きかった。

卑怯が許せない、と親父に対立した癖、卑怯な真似をしてポケモンを捕まえ、道具のように扱い、愛情というものをゴミのように扱ってきたという矛盾は。

知らないものは、向けられない。――これが、今までポケモンを道具として扱ってきた俺の自己への言い訳だ。

与えられなかったものを受け継げ。――無理な話だ。

ただ、一つだけ思う。

親父が俺に愛情を向けなかったのも、その感情を知らなかったから、では無いだろうか。

いや、もしかしたらもう一代前の祖父も、更にその一代前も、愛情を知らずに育ったのかもしれない。

そして――これは確実。

そんな愛情を知らぬものが結集しているのが、親父が指揮する組織なのだ。

しかし、そんなものは最早、戯言。

愛情は決して「無駄」では無いし、恩返しより八つ当たりのほうが強いなんていう言葉も信じない。

そう、今の俺は。

そして、その気持ち――いや、真実をぶつける時が遂に来た。

全てを、終わらせて。いや、生まれ変わらせてやる。

「地下二十階で御座います」

感情の無い機械の声で、エレベータの唸りが消える。

俺はゆっくりと、自分なりのやり方で足を一歩前へと踏み出した。

<Fin>

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