どれだけの間、こうして座っていればいいのだろうか。――四天王の一人、シバは考える。
この前にシバの元へトレーナーが来たのは、二日前。そのトレーナーさえも、シバの前へ散っていった。
「畜生……」
シバは、その言葉と共に、固く組んでいた足を真っ直ぐに伸ばし、傍らに置かれた「いかりまんじゅう」と印刷された、小さな紙袋に手を伸ばした。袋の中から掴み取った饅頭を食べ、大きな溜息を吐く。拳を固く握り締め、また考える。
――俺は、こんな事をする為に四天王になったのか……?
ここは、ホウエン地方にある、どこかの砂浜。
何匹もの格闘ポケモンたちが、体を鍛えている。
その横には、二人のトレーナー。彼らも、体を鍛えている。
「やはり、トレーナー自身も強さを追い求めねばならん。ポケモンばかりに頑張ってもらうのは、気の毒だ」
腕立て伏せをしながら、まだ若いシバが言う。
その横で、シバよりも更に若くハンサムなトレーナーが腹筋を鍛えながら頷く。
「そうですね。――シバさん、実は俺、この地方のジムリーダーになりたいんです」
その言葉に、シバの腕が止まる。ゆっくりとあぐらをかき、若者を見つめる。
「トウキ……どうしてだ? 何故――」
トウキと呼ばれた若いトレーナーは、ゆっくりと上体を起こし、シバを見つめる。
「強いトレーナーと戦いたいんです。ジムリーダーなら、強いトレーナーと戦う事ができるでしょう?」
シバは、しばらく何も言わなかった。やがて、ゆっくりと腕立ての姿勢に戻った。
トウキは、そんな様子をまっすぐに見つめている。
その眼差しに耐え切れなくなったシバは、溜息交じりの微笑と共に、また口を開く。
「俺も、同じさ。強いトレーナーと戦いたい。だから、強くなってそういう職に就きたい――」
夕焼け色の海が起こす波の音が、ゆっくりと響く。
それと同時に、シバの意識もだんだん――。
気付けば、シバの前には、一人の少年が立っていた。
赤い帽子には、八つのポケモンリーグ公認バッジ。
手に構えたモンスターボールからは、闘いたい、という気が伝わってくる。
久々の名勝負になりそうだ――そんな事を感じつつ、シバはボールを持った。
ボールの中のポケモンが、溢れんばかりの興奮に震えているような気がした。
<Fin>