冬――。
ひんやりと、室内に冷たい空気が流れてくる。
一心不乱に作業机に向かっていた男は、その空気にブルリと体を震わせた。
「お爺ちゃん、見て!」
窓の外を指差し、興奮を抑えるような声で、少女が言った。口振りから見て、彼の孫娘だろう。
その言葉に、立ち上がった男――ガンテツは、窓へと向かった。
見ると、銀色の雪が、見事な舞いを見せ付けるように降っている。
「冬なんだな――」
その言葉に、少女が嬉しそうにうなずく。
私の名は、ガンテツ。このジョウトで唯一のボール職人だ。
もう、この地で冬を迎えるのは何回目になるだろうか。
数えるのも面倒くさい。何しろ私は、生まれた時からずっとこの地から出ていない。
その事で、現在、私は困っている。
私は、いつでも自分の腕を上げる事を目標にボールを作っている。
新しいものが作れるなら作りたい。だが、このジョウトには、ぼんぐりの種類は少ない。
私は、ぼんぐりから、ボールを作っているのだが――。
私の知らない地――ホウエンの奥深くには、かなりの種類のぼんぐりがあるという。
それを使えば、新たなるボールを作ることができるだろう。
しかし――。
私は、この地から――いや、ヤドンや虫ポケモンの沢山いる、この小さな町からさえ離れるのが嫌だ。
私の孫娘は、決まってこう言う。
「いいよ、お爺ちゃんの好きなようにすれば。私は、どこに行ってもお友達、できるから――」
それで、私はいつも悩んでしまう。
見ると、孫娘は、まだ、雪に覆われていく風景を見ながら、微笑んでいる。
――その笑顔を見て、私はついに決めた。
この風景は、まだまだ捨てはしない。そして、この家を離れはしない――と。