私の死にたかった衝動(1/2)

「もう疲れたよ。今日一日はゆっくりと過ごそうと思う」

行ってらっしゃい、と笑顔を見せる母を背中に、私は家を出た。扉を開けた途端、冷たい冬の外気が自分の胸の奥へと入って行くのが判った。――寒い。私は思わず身を震わせる。子供の頃から寒さは苦手だ。

吐く息が白い。そういえば子供の頃に『外気と吐息の温度差が……』と長々しくこの現象の説明がしてあった本を読んだ事がある。確かあれは父が「為になる」と言って買ってきてくれた物だったか。

しかしあの本、為になったかもしれないが役には立たなかった。いや、役に立ったのかもしれないが少なくとも私の生活に影響を及ぼしているとは思えない。

「だからこその――」

言い終わらないうちに口を閉じた。この寒さでは独白すらも充分に出来ない。本当に私は寒さが苦手なのだな、と実感した。

ところで私はさっき母に「今日一日はゆっくりと過ごそうと思う」と告げた。この言葉は追求の余地はあると思うのだが、別に嘘は無い。

ただ、今日は――否、もう二度と家へ帰るつもりは無かった。一日ゆっくり過ごした後の予定は決まっている。

それは――自殺だ。

当然ながら私は特技の如く暇つぶしの如く退屈しのぎの如くに自殺をするような趣味は無い。この決断は考えに考え抜いてのものだ。どんな次第でこの結論に至ったかは言いたくないし言う必要も無いだろう。

私は気持ちを落ち着かせるため、もう一度外気を大きく吸った。

<Fin>

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