シオンタウンの夜は更けて

迷える魂が、今宵もこの街を彷徨う。この世にまだ未練が残っているのだろう。

それを、無理に天上へと昇らせる事など出来ない。それは、私も同じだからだ。

貴方の知らない、忘れ去られた歴史。それが、シオンタウンには秘められている。

数十年前は、この街にもジムは有った。グレンタウンがカントーの領土と認められる以前の話だ。

しかし、ある乾燥した日に起きた火事――。それが、全てを焼き尽くしてしまった。

あっという間に全てが焼け――物凄い数の死者を出し、街は焼け野原になった。

やがて、フジという名の若者がやってきて、迷える魂を成仏させるため、ジムの跡地にポケモンタワーを創った。殆どの魂は成仏していった。だが、別れ別れになったカラカラとガラガラの霊だけは、今でもこの世に留まっている。

そして、私もこの世を立ち去る事が出来ない。

シオンジムリーダーとして、この跡地に立てられた塔で、ポケモンと触れ合い、ポケモンを無事に成仏するのを見守っていたい。

……これは――真実から目を背ける為に良い聞こえの言葉を並べ立てただけだろうか?

現世を生きる死霊――それが、真実の私なのだろうか?

私は、この世の未練を捨てる事が出来ない悲しいゴーストなのだろうか……?

<Fin>

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