掲示板に戻る / 全部 / 1- / 最新50
Pocket Friends!
- 1 :September :2008/01/14(Mon) 13:21:41 ID:On4dqz3c
- お初にお目にかかります、七月生まれのSeptemberです。
ゲームの設定を中心に、ちょこちょこ書き進めたいと思います。
多分書くのは素晴らしく遅いです。
宜しくお願いします(*- -)(*_ _)_
- 2 :September :2008/01/14(Mon) 13:31:41 ID:On4dqz3c
「よお!アキラ、遅かったな」
コトキタウンの外れ、ため池の前で待ち合わせ。
「…ってか、あたし15分前をメドに来たんだけど。サトル一体いつからここに居るの」
「2時間前」
「バカ」
二人は、ポケモントレーナーを目指していました。
Pocket Friends!
アキラ。
それが、少女の名前でした。
名前負けしない男勝りな少女は、一年前に10歳の誕生日を迎え、ミズゴロウを貰いました。
しかし、旅には出ませんでした。
「旅に出るなら、強くならないとね」
そうして、一年間家のあるコトキタウンの傍で修行していました。
そして、修行のお相手であるこの少年の名前は、
サトル。
コトキの隣町、ミシロタウンに住む、アキラと同い年の少年でした。
二人は、ことあるごとに競い合ってきました。
今日も、いつもと同じ場所で、いつものバトルの開始です―
- 3 :September :2008/01/14(Mon) 13:46:58 ID:On4dqz3c
「いっけぇ、ミー!」
アキラの投げたボールから出たのは、ミズゴロウ―
「ッマクロ!」
―ではなく、ヌマクローでした。
一年間の修行の間に、進化していたのです。
「いけ!まくま!」
一方、サトルが出したのは、ジグザグマでした。
「ミー、みずでっぽう!」
「まくま、ずつきだ!」
みずでっぽうはまくまを直撃、しかしまくまはそのダメージをもろともせずにミーに突っ込み、
みずでっぽう後でスキのできたミーにずつきをクリティカルヒットさせました。
「ミー!がまんして!」
ミーは身構えました。
「よし!まくま、今のうちに倒せ!」
まくまはもう時間との戦いです。ずつきとたいあたりをひたすら打ち続けました。
「ミー…!」
ミーがついに倒れかけた、そのとき。
がまんが解かれました。
「グゥゥ!」
まくまは今までのお返しを受けて吹っ飛び、木の幹に激突しました。
「まくま!」
慌てて駆け寄るサトル。
まくまはすっかり戦闘不能です。
「勝負アリ!ね」
アキラはそういうと、勝手に傷だらけのまくまを抱え上げ、
「早く行きましょ!」
ポケモンセンターへ走っていってしまいました。
「…オレのポケモンだぞテメェ!!」
サトルは叫んで走り出しました。
その後を、ヌマクローのミーがとっとこ走っていましたとさ。
- 4 :September :2008/01/15(Tue) 20:19:04 ID:DSSZLvaQ
「サトルは全く成長しないやつだねー。がまん発動中は様子を見るか、ダメージを与えない補助技を使っておけばいいのに」
「そんなんはオレのポリシーに反するの。攻撃第一!補助技は覚えさせてねーんだよ。……よしっ!休んだら、もっと修行だ!」
サトルは、ポケモンセンターから出てきたばかりのまくまを抱え上げました。
「グマ!」
「ミーったら足が遅いんだから、今日は走りこみかな?」
「マッ、マクロッ!?」
そんな二人とポケモンの微笑ましい様子を、コトキタウンポケモンセンターのジョーイさんは笑顔で見守っていました。
(あの二人ったら、いくつになっても変わらないんだから)
「さ、ミー、行こっか?」
「ックロ!」
「よっしゃ、オレらも負けてらんねーぞ、まくま!」
「グマ!」
「ちょっと二人とも、センター内は走らないで!」
ジョーイさんの制止も聞かず、センターを飛び出す二人。
ジョーイさんはふぅとため息をつきました。
そんな二人と入れ違いに、一人の女性が入ってきました。
背の高い、赤毛の女性です。一人、少年を引き連れています。
「すみませーん!このコいいですか?」
「はい。こちらへどうぞ」
ジョーイさんは、女性からボールを受け取ると、仕事へ戻っていきました。
- 5 :September :2008/01/15(Tue) 20:35:43 ID:DSSZLvaQ
あくる日。
今日はサトルが「オレはトウカの森で個人練習をする!」と宣言したので、アキラは一人で修行していました。
「リーアン!つつく!」
アキラはもう一匹の手持ち―スバメのリーアンを修行させていたのです。
相手は野生のケムッソでした。
「ゲムッ」
一撃です。
しかし、ケムッソはあとからあとから大量に出現するので、
「ゲムーッ!」
「リーアン、避けて!ほら、右からも!」
「スバァ!」
吐き出す糸を避けながらのバトルはなかなか大変です。
そして、そんな修行も一段落し、
「はーっ、リーアン、糸だらけになっちゃったね」
「スバ」
草むらから離れた木の下で休憩していた時です。
どこからともなく、拍手の音が聞こえました。
「ブラボー!すごいわね!」
見れば、木の陰から、女性がひょっこり顔を覗かせています。
背の高い、赤毛の女性でした。ぱっちりした目でこっちを見ています。
「見てたわよ!見かけ新人っぽいのに、ポケモンとの息もピッタリで、……うん、ホントすごかった!」
女性はにっこりと笑いました。太陽のような笑顔です。
「あの、どなたですか?」
「アハ、ごめんごめん。アタシはアスナっていうの。あなたとおんなじポケモントレーナー!よろしく!あなたは?」
「あたしはアキラです。よろしく、アスナさん!」
二人は一緒に笑いました。
「……ところで、さっそくだけどアタシとバトルしない?」
「え?」
「トレーナーと名の付くもの、申し込まれたバトルは断れない!……わよね?」
「…はい、もちろんです!」
アキラとアスナは、少し離れて向かい合いました。
- 6 :September :2008/01/15(Tue) 20:44:54 ID:DSSZLvaQ
- 「じゃあちょっとまってね、ジュンジくーん!ジュンジくん、どこぉ?」
アスナは叫びました。
「ここでーす!」
草むらからがさごそと音がして、一人の少年が飛び出してきました。
「アスナさーん、どこいってたんですか?全く寄り道ばっかりして…本当にフエンに戻る気あるんですか?こっちはケムッソに刺されそうになりながら探してたのに…」
少年の表情は、どこかうんざりしています。
「いいから!あのね、このコとバトルしたいの!審判、お願いね!」
「えええっ!?」
「ちゃんと試合形式でね!…ところでアキラちゃん、本物の試合形式はやったことある?」
「ありません。けど…見たことはあるので、大丈夫です!」
「へーえ、どこで?」
「友達ん家がジムなんです」
「わっ、そーなんだ!このへんでジムって…センリさん?あーっ、へぇ、そーなんだ!」
どうやら結構驚いているようです。
それもそのはず、サトルの父センリのトウカジムは、なかなか強いジムとして名前が通っているのです。
「いいですからアスナさん、早く始めてください」
「ハイハイ」
「それじゃ、えーっと…アスナVSアキラ、試合開始!」
こうして、バトルが始まったのでした。
「こう見えても、ジムリーダー候補で腕には自信があるんだからねっ!」
アスナはそう言って、モンスターボールを投げました。
- 7 :September :2008/01/16(Wed) 20:17:20 ID:tTHzIEPQ
「マグゥー」
出てきたのはマグマッグでした。
「いっけー!ミー!」
アキラのボールからはヌマクローが飛び出します。
「ッマクロ!」
「マグマグ!ひのこ!」
「マグッ」
マグマッグの口から高温のひのこが飛び出しました。
動きの遅いミーは避けきれず、
「クロロッ」
直撃。
熱かったのか驚いています。
「ミー!みずでっぽう!」
ミーの口からみずでっぽうのお返しです。
「マググッ!?」
みずでっぽうで冷えた部分が、黒く冷えて固まりました。
「たいあたりッ!」
ミーはそこへすかさず体当たりを繰り出します。
鈍い音がして砕けました。
「グググッ…!」
「負けないで!マグマグ、スモッグ!」
アスナのマグマッグは、至近距離からスモッグを放ちました。
ミーはやっきになってそれを振り払おうとしますが、先に毒が回ってしまいました。
いけない!アキラはミーにモモンの実を投げます。
しかし、ミーがそれを受け取った瞬間、
「マグマグ!」
マグマッグがまたもひのこを放ってきました。
しかし今度はミーが指示も無しにみずでっぽうで迎撃。
ジュウと炎の消える音と共に、ミーがモモンの実を食べるシャリシャリという音が聞こえます。
「ミー!全快パワーでみずでっぽうゥ!」
「クロォー!」
みずでっぽうはマグマッグにクリティカルヒットし、マグマッグはふらふらと倒れました。
「…戻って、マグマグ」
マグマッグをボールに戻したアスナの顔は、汗が吹き出ています。
「…楽しいじゃない!」
そして笑いました。
「二匹目!ドンベエ、行っちゃえっ!」
モンスターボールから出てきたのは、ドンメルでした。
それも、大きい。通常の1.5倍の大きさでした。
しかし、アキラは実物のドンメルを見たことがなかったので怯みません。
「ミー、まだ大丈夫?」
「マクロッ」
ミーは頷きました。
- 8 :September :2008/01/16(Wed) 20:40:37 ID:tTHzIEPQ
「ドンベエ、マグニチュード!」
衝撃がミーを襲います。
しかし、ミーは微動だにしません。
アスナは苦し紛れに呻いて、ドンベエの背中をぽんと叩きました。
ドンベエは思いっきりミーにたいあたりします。
「ミー!」
アキラの叫びにもドンベエのたいあたりにも答えず、ミーは直立不動しています。
しかし、限界は間近のよう。
「ドンベエ!もう一回!」
ドンベイが止めの一撃を放とうとした瞬間―
「メルッ」
ドンベエは軽く3メートルほど吹っ飛び、地面に叩きつけられました。
「えっ!」
「ミー、みずでっぽう!」
みずでっぽうを受けたドンベエは、あっけなく転がりました。
「………」
そう、がまんを使っていたのです。
指示は出なかった。どのタイミングで―?
「…ドンメル、戦闘不能―」
まさか、言うとは思ってもいなかった言葉。
アスナさんが―負けた?
「ちょっとまって」
敗北を宣言しようとしたジュンジを、アスナが手で制しました。
「ドンベエ」
アスナは凛とした声で呼びかけます。
すると―立ちました。
「メルルゥ…」
息も絶え絶えのドンベエが、立ち上がりました。
「すごい…っ!」
アキラはつぶやきました。
ジュンジは息を呑みました。まるで、本物のジム戦を見てるみたいだ―
「ドンベエ―」
アスナは一瞬、言葉を切りました。
「ドンベエ、かえんほうしゃ!」
「えっ」
アキラの呟きは、空気を裂いて飛んでくる圧巻の炎の音のかき消されました。
炎は間違いなくミーを飲み込みました。
「…ヌマクロー、戦闘不能」
それは、正しい判定でした。
アキラは、ミーをボールに戻すと、二つ目のボールを手に取りました。二つ目にして、最後のボールです。
「あたし…勝ちに行きます!」アキラは、ボールを投げました。
現れたのはスバメです。
「ドンベエ!かえんほうしゃ!」
「リーアン!でんこうせっか!」
- 9 :September :2008/01/16(Wed) 22:11:56 ID:tTHzIEPQ
ついに勝負がついて。
「…勝者、アキラ」
それは、一瞬の話。
でんこうせっかで駆けたリーアンを、しかし確かに炎が包み込んだのですが、リーアンは根性と気力と『勝ち』に対する執念で、ドンベエにぶつかったのでした。
そして―最後まで立っていました。やけどを負いながら。
「リーアン!」「ドンベエ!」
トレーナー二人は同時に自分のポケモンへ駆け寄り、抱き上げました。
そして、ボールに戻し、全速力でポケモンセンターへと走ったのでした。
「あのタイミングで、指示なしでがまんっていうのには驚いたなー!」
アスナはポケモンセンターのソファにふんぞり返って言いました。
隣ではジュンジがうつらうつらしています。
「いえいえ、アスナさんのドンメルのかえんほうしゃには驚きました!」
二人は、さっきのバトルについて語り合っていました。
「そういえば」と、ひとしきり話したころにアスナが切り出しました。
「これ、もらってくれないかな」
それは、炎のカタチに象られたバッジでした。
しかし、色はただの鉄の色。冷たい色でした。
「これ、いちおうヒートバッジ…なんだけど」アスナは苦笑しました。「まだ未完成なんだよね…」
そして、続けます。
「アタシと同じなんだよね。アタシもまだまだ未完成。もっともっと強くならないと、ジムリーダーになるなんて夢のまた夢だね。…はあ」
「そんなことないですよ!」アキラはつい大声でいいました。「アスナさん強かったです!きっとなれますよ、ジムリーダー!」
アスナは、一瞬驚いたけれども、笑いました。
太陽みたいな笑顔でした。
「…うん、そうだね!頑張るよアタシ!…だからさ、いつか―」
アスナはアキラの手に未完成のヒートバッジを握らせました。
「このバッジ持って、アタシのジムに来て。フエンタウンのジムだよ。遠いけど、アキラが来るまでに、アタシもっと強くなって、ジムリーダーになってるから。それで、そのときそれでもアキラがアタシに勝ったら…それ、ちゃんとヒートバッジにしてあげる」
「…はい!」
「ん!」
アスナは、元気になったポケモン達をつれて、行きました。
「今度会うときは、負けないからね!」
「こっちこそ!」
それは、トレーナーどうしの挨拶でした。
しかしそれは、アキラの果てしない旅路の、ほんの序章だったりするのでした。
- 10 :September :2008/01/16(Wed) 22:17:57 ID:tTHzIEPQ
- 作者のつぶやき
ここまでで序章です。
長くなりそうな終わり方にしてしまったのを今更ながら後悔しています。
折角ポケモンの小説が書けるところが見つかったので、どうやら張り切りすぎたっぽいですね。
がまんの使いどころが奇跡多いです。芸の無い…
ここまではカイリューが飛ぶようなスピードで更新してきましたが、ここから先もうまくいくとは思われません。
それでも続きます。続けられるなら、続けていいのなら、続けられる限り、続くかもしれません。
…意味不明に長く喋ってしまいました。申し訳ありませんでした(-人-)
- 11 :September :2008/01/21(Mon) 20:58:27 ID:oNrCiowI
そんなことから僅か一週間。
「よぅアキラ!」
二人はいつもどうりため池の前に集合していました。
「この間トウカの森で捕まえたオレのスーパールーキーちゃんの初お目見えだぜ!もうミーには負けないぞ!……って、ん?」
サトルは、まじまじとアキラを見ました。
アキラは、何故かリュックを背負い、肩にまた大きなカバンを引っさげていました。
まるでどこかに出かけるかのようでした。
「アキラ、オマエ…どっか行くのか?」
「うん。あたしは……旅に、出る!」
…サトルは、口をあんぐりと開けて、目を見開いて、自分の中で確認するみたいにうんうんうんと頷きました。
「…ちょ、ちょっと待てよ、いきなり旅って…え?ど、どーいうことなんだよ!説明しやがれ!」
「いーよ。あたしは強くなりました。旅に出たいです。だからおかーさんに相談して、いいよって言われたから旅に出ます。以上」
「………何だよ!何でオレには教えてくれなかったんだよ!」
サトルは大声で怒鳴りました。
「今教えたじゃん…そんなドゴームみたいな声出さないでよ、耳痛いよ」
「い、今から行くのか!?」
「うん」
サトルは、考えました。
今まで、毎日アキラと修行してきたのです。
アキラとのバトルのない明日―――想像が付きません。
「っそんなのオレが許さねぇ!」
「なんでアンタの許可がいるの?」
ごもっともでした。
しかし、まさか行ってほしくないなんて言えません。
「…じゃあ」
サトルは、よく考えて、言いました。
「今日、オレは父さんにバトルを申し込む!だからオマエは、オレが父さんを越えるところをしっかりと見届けてから行け!」
- 12 :September :2008/01/28(Mon) 18:58:09 ID:JmpiPcZs
そして。
「たのもぉー!」
サトルはわざわざ自動ドアを両手で押し開いて中へ入りました。
ここは、トウカジム。
サトルの父―センリがジムリーダーを務める、ホウエン地方指折りのジムでした。
中では、数人の新人が、床を磨いています。
そして、先ほど修行を終えたばかりなのか、汗だくになったセンリが、部屋の片隅でヤルキモノ達と休んでいました。
「おっ、サトルじゃないか。それにアキラちゃんまで…何しにきたんだ?」
「父さん!オレとバトルしてくれ!」
サトルは率直に言いました。
一瞬目を点にして我が息子を見つめたセンリでしたが、すぐにはっはっはと笑い出しました。
「サトル、お前はまだまだ強くなれる。だから、そのうちに、な」
サトルは、ぎりっと歯噛みしました。
「親父はいつだってそうだ…オレのことを認めないっ…!」
そして、叫びました。
「だけどなぁ!オレは強くなったんだ!だからオレとバトルしてくれよ!」
「………」
センリは、サトルを見ました。
その目は、何かに突き動かされている、強い瞳でした。
「そうか。しかし…何でまたいきなりバトルを申し込みにきたんだ?」
うっ、と言葉に詰まるサトル。
「それは…」答えたのはアキラだった。
「サトルはあたしが旅に出るから、とかなんとか言って…」
それを聞くなり、センリは大声で笑いました。腹を抱えて笑いました。
「それはまた、サトルらしい訳の解らん理由だな!親の私にもよく解らないよ…だが、解決策はあるぞ」
センリは、提案しました。
「サトル、お前も一緒に旅に出ればいいじゃないか」
- 13 :September :2008/01/28(Mon) 19:05:54 ID:JmpiPcZs
「なっ…ええ!?」
サトルはうろたえました。
まさか、そんなことを言われるなんて思ってもみません。
「そうすれば、アキラちゃんがいなくて寂しいなんてことも無いし、修行もし放題だぞ」
「さっ―」サトルは慌ててアキラを振り返りました。「寂しくなんか、あるわけあるか!」
アキラはきょとんとしています。
「そうだなあ…お前が、ジムバッチを片手で数えられないぐらい集めたら、バトルしてやってもいいぞ」
センリはそういいました。
「マジか!?じゃあ、オレ、旅にでるぜっ!」
父さんと、親父と全力でバトルしたい―
それは、サトルの目標であり、遥かな夢でもあったのです。
「ちょっとお、サトル、真似しないでよね」
「真似じゃねーよ、オレもちゃんと立派な一人の男として旅立つだけだ!」
そうして、三人がジムで笑い合っていた時。
「センリさーん…います、か?」
ぎくしゃくした声がしました。
振り向くと、ジムの入り口に、誰か立っています。
- 14 :September :2008/02/03(Sun) 23:02:24 ID:EFIu.IO.
「おっ、ミツルじゃないか」
センリは、ジムの入り口で緊張に震えている少年―ミツルを手招きしました。
両手両足を同時に出してしまいそうな勢いで歩いている彼は、サトルよりもかなり背の低い、いかにも病弱そうな青白い少年でした。
そんなミツルが、ちょっとうつむき加減に佇んでいます。
「彼は、トウカシティ在住のミツル君だ」
ミツルはぺこっと礼をしました。
「え、えと…初めまして」
「初めまして!よろしくね、ミツル君!」
アキラはミツルの震える手をとって、ぶんぶん立てに振りました。
ミツルはぽかんとしていましたが、何だか恥ずかしくなって、照れ隠しに笑いました。
アキラも、それを見て笑顔になりました。
しかし、何だかサトルは面白くありません。
「何だよ、なよっちいの。お前、何しにジムへ来たんだ?お前なんかが戦ったってな、父さんにはこれっぽっちも叶いっこないぞ」
「ち、違うよ!」
ミツルは首をぶんぶん横に振って訂正します。
「サトル、ミツルはバトルしに来たわけじゃないんだ。私に頼みごとがあって来てるんだよ」
センリは笑って言いました。
「そうなんです」
「ねえミツル君、センリさんに頼みごとって、何なの?」
「そ、それは―」
ミツルは、ところどころ詰まりながら、話してくれました。
「…僕は、明日でちょうど10歳なんです。でっ、でも、今日僕は、引っ越さないといけなくって…だ、だからっ、今日、せめて今日、僕の住んでる、住んでたこの町で、僕のポケモンが欲しいんです。だから…」
ミツルは、センリを見つめました。
「セ、センリさんに、ポケモンを借りて、捕まえに行きたいんです!」
- 15 :September :2008/02/03(Sun) 23:07:03 ID:EFIu.IO.
- 作者のつぶやき2
ミツルくんのお願いの話ですが、これじゃあオリジナリティが無いですね。
しかもこの先の展開は容易に読めます。哀しいかな。
『ゲームの設定を中心に』どころかゲームを地でいってますね。はい。
すみませんでした…。
ちなみにここは章の幕切れではありません。
第一章はまだまだ途中でございます。
末永く見守ってやってください…。
- 16 :September :2008/02/08(Fri) 21:37:50 ID:PsJnLa7.
ミツルは今、モンスターボールを片手に、草むらを睨んでいた。
「…入らないのか?」
サトルは妙に鼻にかかる声で言った。
「…い、いきますよっ」
ミツルは勇気を出して、草むらへ一歩、踏み込んだ。
とたんに、草むらはがさがさと揺れ、ポケモンが飛び出してきた。
「わ、わあっ!?」
ミツルはすっとんきょうな声を上げて、地べたにひっくり返る。
アキラははらはらしていたが、サトルはそのミツルの滑稽な姿が愉快で堪らなくて、笑い飛ばしてやろうと思ったが、
「…ん?」
サトルは我が目を疑った。
そこに居たのは、
「ルルゥ…?」
このあたりの草むらに、居るとも居ないとも言われ、近所の子供にはその存在が伝説とも噂されていた、
ラルトスだったからだ。
「ラルトス、だとぉ…!?」
サトルは、同じ町に住むオダマキ博士―――近所の悪ガキ(サトルなど)には変人博士とも呼ばれている―――が言っていたことを思い出した。
(ラルトスは、人の心を読めるんだ。サトルみたいな、検証器具を壊す悪ガキなんかには、姿を見せたりしないだろうね)
何だか、ありとあらゆるものに馬鹿にされているような気分だった。
「ミツル君!」センリが叫んだ。「落ち着いて、モンスターボールからポケモンを出すんだ!」
ミツルはゆっくりと立ち上がると、うなずいて、えいっとボールを投げた。
そこからは、標準的なスタイルのジグザグマが飛び出す。
- 17 :September :2008/02/08(Fri) 21:38:51 ID:PsJnLa7.
- 容
「え、ええと…」
「指示しなよ!」
アキラは、うろたえるミツルに言った。
「う、うん…じゃあ…た、たいあたりっ!」
ミツルの声に反応しおて、ラルトスにぶつかるジグザグマ。
「ルッ」
ラルトスは、力なく地面にへたり込んだ。
そして、ただひたすら、か細い声で鳴いている。
「ラルトス…」
ミツルの心の奥に、何か熱いものが湧いて、いてもたってもいられなくなる。
「む、無理だよ…可哀想だよっ。こ、これ以上、僕には…」
ミツルの足がガクガクと震えて、今にも泣きそうに言う。
そしてついに、草むらに背を向けてしまった。
「ミツル君っ!」
アキラは町に戻ろうとするミツルを止めた。
ジグザグマは不安になって跳ね回っている。
「ミツル君、ラルトスを捕まえないの?」
「僕には…無理だよ…」
ミツルはうつむいた。
「だめなんだ。ポケモントレーナーになって、ポケモンと一緒に旅したい。バトルもやってみたい。けど…ポケモンが傷つくのが怖いんだ。あの表情を見るのが…堪らなく怖い。だから…僕には、トレーナーは向いてないのかも…」
「バッカじゃねーの」
言ったのはサトルだった。
「何が怖いだよ、弱虫。逃げたってどーにもならないんだぞ。何が向いてないだ。自分のチャンス自分で潰して、一人芝居してカッコつけてんじゃねーよ。
…あのな、お前が戻ったところでラルトスは怪我したまんまなんだぞ、傷つけるのが怖いとかいうなら最後まで面倒みるのがフツーじゃないのか?ラルトスなんてな、滅多に捕まえられないんだぜ」
サトルは言いたいことを言った。
センリは、ただじっとミツルを見ている。
ミツルは、振り向いた。
そして、徐に空のボールを取り出して―投げた。
- 18 :September :2008/02/09(Sat) 20:25:38 ID:dauAdvI.
ボールはラルトスを包み込み―止まった。
「………」
ミツルは一瞬その感動に泣きかけたが、はっと我に返って、地面にころがっているボールを拾い上げると、一目散にポケモンセンターへ向かって駆け出していった。
「あ、ミツル君!」
アキラは後を追う。
「おいっ!おまえジグザグマ置きっ放しだぞ!」
サトルはジグザグマを抱えあげるとその更にあとを追う。
センリは―そんな三人を見て。
「ったく、素晴らしい奴らだな」
笑っていた。
そして、思った。
きっと、今にあいつらは、物凄いポケモントレーナーになるんじゃないか…?
- 19 :September :2008/02/09(Sat) 20:31:08 ID:dauAdvI.
- 作者のつぶやき3
ぼやきが多いダメダメなSeptemberです。
ポケモンドリームでは大・大・大先輩たるエンタさんの作品を読み、
…自分の作品に自信を失いそうになったorz
謎の残る設定から何から全く読み手を飽きさせなくて、
こんな単調でゲームを書き写しているだけみたいなお話じゃ
見劣りします…。
と言いながらも書き続けることは止めない予定です。
こんなお話を面白がって読んでくれている方なんていないと思いますが、
只管究極の自己満足を目指したいと思います。
ファイト、自分!(悲)
- 20 :September :2008/02/09(Sat) 20:32:35 ID:dauAdvI.
- しかも途中から敬体→常体になっていました。
すみません…精進致します。
- 21 :September :2008/02/16(Sat) 22:46:16 ID:.yaUf6JY
「ありがとうございましたっ…」
ミツルは何度も頭を下げながら、引越しのトラックの荷台に乗って去っていきました。
「ミツルくーん!また会おうねーっ!」
アキラは力いっぱい手を振ります。
ミツルも、満面の笑顔で、大きく手を振り返しました。
傍らでは、あのラルトスも、小さく手を振っています。
サトルは、結局最後まで手を振りませんでしたが、最後にトウカの森へ消えるトラックを見て、「またいつか、な」と言ったのを、アキラは聞き逃しませんでした。
「さて…と!あたしもそろそろ出発するかなー」
アキラは大きく伸びをしました。
すると、サトルは「しまった」と言って舌打ちし、ダッシュで家のあるミシロタウンまで駆け戻って行ってしまいました。
「じゃ、センリさん、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
センリはそう言って、彼女を見送りました。
そして、アキラはゆっくりと、清々しく旅立って行きました。
しかし、途中で立ち止まると、センリを振り返って、
「…あたし、強くなりたい。強くなりたいんです。だから、いつか、センリさんとも戦います。そのときは…」
アキラは笑いました。「バランスバッジはいただきです!」
センリは、悪戯っぽい笑みを浮かべました。
「楽しみにしているよ」
- 22 :September :2008/02/22(Fri) 20:09:19 ID:8LmysplY
アキラは、浜辺に座っていました。
トウカシティを出てすぐの、トウカの森の前の浜辺です。
よく、アキラはここでミーと走りこみをしていました。
夏には、サトルや近所の子供たちと水遊びをした思い出もあります。
遠い空を、キャモメがにゃーにゃー鳴きながら飛んでいきました。
春の冷たい海は黒く、しかし優しい風に煽られて僅かに波を立てています。
アキラは、とりあえず行き先を考えました。
初めは、川を横断してシダケタウンへ行こうかとも思っていました。
しかし、海を見て思い出したのです。
水は冷たい、そして、ミーはまだ人を乗せては泳げないということを。
そこで、トウカの森を越えて、カナズミへ行こうと思いました。
そこには確かジムもあったはずです。
「っよし」
アキラは立ち上がって伸びをしました。
そして、トウカの森を見ます。
ここへ入ったことなら何度もありますが、越えたことはありません。
と、そのとき。
「おーいっ!」
アキラは、ぱっと振り向きました。
- 23 :September :2008/02/22(Fri) 20:10:36 ID:8LmysplY
- 作者注、色ミスですorz
- 24 :September :2008/04/04(Fri) 22:15:19 ID:DurJ0JPM
そこには、仁王立ちするサトルの姿が。
「あ、サトル!」
「よ」
サトルは、ざっざか歩いて砂浜に飛び降りると、少しつんのめりました。
「ぷっ」
「わ、笑うなよ!」
さっそく砂にまみれたジーンズのすそを叩くサトルを笑いながら、
「そっか、そういえば、サトルも旅に出るんだっけ」
「ん。オレだって、お前にこれ以上突き放されちゃ敵わないからな」
「今だって敵わないじゃん」
「うるせえっ!」
アキラは、そんなサトルを見てまたころころ笑いました。
「いいか、オレはトウカの主だ!トウカの森の抜け道を知っている!だから、さっさと抜けて、一足先にカナズミシティに行って、ジムを制覇するっ!」
サトルは、釣り人が思わず振り向くような大声で宣言しました。
「じゃなっ!」
そして、草むらの向こうに消えていきました。
アキラは、それを呆然と見送った後、
「…ミー!」
モンスターボールを高らかに投げ上げ、ミーを召喚し、
「行こっか、一緒に」
「マクロッ」
一緒に、暗い森の中へと入っていきました。
- 25 :September :2008/04/08(Tue) 17:11:45 ID:iD70ItTg
「…ひょえー、いつ来ても暗いね」
アキラとミーは、時折マユルドの巣に引っかかったりしながらも、どうにかトウカの森を進んでいました。
暗いとはいえ、人通りの多い道です。
踏みしめられた道があるので、迷うことはありまん。
アキラはゆるやかなカーブを曲がりました。
と、
がさがさ、落ち葉を掻き分けるような音が聞こえます。
「え?」
ふっとカーブの向こうを覗いた瞬間、
どんっと、誰かがぶつかってきました。
「わっ!」
突然の出来事に、アキラは心底驚きました。
そして、相手は後ろに倒れこんでしまいました。
「痛たたた…」ぶつかってきた人物は、頭から木の葉を被り、アキラの足元に転がっています。
「だ、大丈夫ですか!?」
「はい…すみません、手を貸してもらえますか?」
アキラが手を差し伸べると、激突してきた人物はさっと立ち上がりました。
「はぁーぁ…すみません。」
それは、白衣を羽織った女の子でした。
黒髪に丸い眼鏡が良く似合っています。
そして、大きな鞄を肩から提げていました。
- 26 :September :2008/04/12(Sat) 19:27:15 ID:FhJaDfM2
「あ、こんな事してる場合じゃない!場合じゃないんです!」
その、アキラよりほんの少しだけ背の高い少女は、突然あたふたと辺りを見回し、駆け出そうとして――また、転びました。
「…大丈夫、ですか?」
「はい……ご迷惑お掛けします……。」
再び立ち上がると、彼女はあたふたと白衣から木の葉を叩き落とし、
「…そ、そうです!あ、あの、すみませんが、私のポケモンを探すの、手伝ってもらえませんか!?」
「…え?」
アキラは首を傾げました。
「…どういうことですか?」
「あ、実は…」
少女は、古ぼけたモンスターボールを一つ、ぽんと出しました。
空っぽです。ポケモンは入っていません。
「ここに、私の『ぴか』が入っていたんですけど、森の入り口で転んだときに、モ、モンスターボールから飛び出しちゃって、森の奥に!」
少女はだんだんと地団駄を踏みました。
「お願いです!『ぴか』を探してください!」
呆然と立ち尽くすアキラの手をとり、泣き出さんばかりに瞳を潤ませた少女は、必死に懇願しました。
それを、断る理由も残酷さも、アキラは持ち合わせてはいませんでした…。
- 27 :September :2008/04/19(Sat) 15:36:07 ID:Au5/09as
「おーい!ぴかーっ!」
「マクローっ!」
アキラとミーは、一旦冒険を中断して、白衣の少女のポケモンを探していました。
少し離れた草むらから、あの少女の声も聞こえます。
「ぴかは、ピカチュウなんです」
アキラは、少女のくれた走り書きのメモ――たった一つの手がかりを見つめながら、彼女との会話を思い出していました。
「ぴか、ちゅう……?」
「そうです、ピカチュウです。でんきタイプで……あ、ホウエンには生息してないんでしたっけ」
彼女は呟くと、ポケットからメモ帳と取り出して、何かを書き付け、アキラに手渡しました。
『ピカチュウ/ぴか でんきタイプ
高さ 35cmぐらい、
重さ 太り気味
すばしっこい』
そして、余白にはイラストが描かれています。
急いで描いたからか簡素化はされていましたが、なかなか上手く描かれています。
耳の先が塗りつぶされ、しっぽは稲妻型、頬がふっくらしている、可愛いポケモンでした。
「う〜ん……」
アキラは思いました。
他人の私が探しても、意味無いんじゃないかな……
つい、苦笑いと同時に、ため息がこぼれました。
- 28 :September :2008/04/23(Wed) 22:34:39 ID:RtTbzTBc
そうして、アキラとミー、白衣の少女がピカチュウ捜索を開始して、どれだけたった頃でしょう。
白衣の少女が、「あの……」と声を掛けてきました。
「えっと、……大分たったですし、ちょっと休憩しませんか?」
「え?」アキラは素直に驚きました。「ぴかちゃんは?いいの?」
「あ、あの子なら、大丈夫だと思います!」白衣の少女は随分とやっきになって言いました。
「だって、だって、トレーナーの私よりたくましいぐらいですから!」
アキラは、つい噴出してしまいました。
「逃げられちゃうぐらいだもんね」
「……はい、ふがいないですぅ……」
白衣の少女は落ち込み気味に俯いて、それでもその大きな鞄からレジャーシートを引っ張り出し、草むらの遠いところに敷きました。
「どうぞ!座ってください」
アキラは、屈んだり伸びたり、とにかく心身疲労困憊していたので、遠慮なく座りました。
「あ、お茶ありますよ」
彼女は、やはりどこか慌てたような仕草で水筒を出しました。
「ありがと」
高性能な水筒に守られて、ほのかに湯気を立てるお茶を啜って、アキラはほっと一息つきました。
「あの、見ず知らずの方なのに、手伝ってもらっちゃって、その……ありがとうございますっ」
「いーよいーよ、トレーナー同士助け合わなくっちゃあ」
アキラは微笑みます。
「ううっ……いい人です……!」
瞳を潤ませて、白衣の少女はアキラを見つめています。
「そんな通りすがりの善人さん、お名前は何と言うのですか?」
「あたし?あたしはアキラ。アキラって名前。男みたいでしょ」
そして苦笑い。
「いえいえっ!とっても凛々しくて、いいお名前だと思いますですっ!」
白衣の少女はぶんぶんと首をふります。
「私は、えっと、ユウキっていいます!ユウキです!」
言うなり、彼女は頬を赤く染めました。
「……な、名前負けしてますよね?」
「うん」
「……は、はっきり言いましたねっ!?」
「うん♪」
「ううっ、でも否定できないですぅ」
二人は、薄暗闇の森の中で、お茶を啜りながら、楽しく喋りあっていたのでした。
――しかし、そんな二人を見つめる人影が、一つ。
- 29 :September :2008/04/26(Sat) 16:44:35 ID:6KlYu.Ws
「がぉぉぉ!」
突然、草むらからそんな奇声と同時に何かが飛び出しました。
「ひぃぃぃ!」
白衣の少女、もといユウキは、ショックに青ざめ、飛びのきました。
「わぁぁぁ!」
アキラもどんっと尻餅をついて、お茶を取り落としました。
何!?ポケモン!?てか、こんな鳴き声のポケモン、トウカの森にいたっけ!?
――と、湧き上がる疑問を押さえもせず見上げると、
どうということはありません、そこにいたのは人間でした。
それも、いい年した青年です。
青を基調とりた格好に、英字のAを象ったようなマークのシャツを着ています。
「何だ何だ!そこの白衣のお前、待ち伏せしてる俺を無視して、楽しくお茶会なんかしやがって!」
男は怒鳴り散らしながら草むらから出てきました。
ユウキががたがたと震えているのが、ひっつかれたアキラにも感じられます。
出されっぱなしのミーが、くっと男を睨みます。
「とにかくだ!おいクソガキ、お前デポンの専務から何か渡されただろう!」
男はびしっとユウキを指差しました。
ユウキは震えてしまって、何も言えません。
「こっちによこせ!」
男はユウキの鞄へと乱暴に、手を――
「ミー!みずでっぽう!」
- 30 :September :2008/04/26(Sat) 16:55:59 ID:6KlYu.Ws
一瞬の後、男は水浸しでアキラを振り向きました。
「何だお前!」
アキラだって普通の女の子です、
こんな状況が恐ろしくない訳がありません。
しかし、気丈にも、
「そっちこそ、何者よ!」
言い返しました。
「クソガキがぁ……邪魔するやつはぶっ潰す!」
男はモンスターボールを取り、ポケモンを召喚しました。
ポチエナです。ミーを見て、ぐるると唸っています。
「ミー!も一度みずでっぽう!」
「ミィー!」
ミーの口から放射される水が、ポチエナをいとも簡単に吹き飛ばし、木にぶつけました。
一撃でした。
「くぅ……」
男はたじろぎました。そして、
「この野郎ぉ、子供だと思って手加減してたらぁ……!」
キレました。
ぷつんと糸が切れたように、男は何の前触れも無く、アキラに殴りかかってきました。
アキラは、その刹那、
男の狂気の表情を、全く呆けたような表情で見つめていました。
まさか、だって、ね。
バトルで負けて逆上するような、人間がいるなんて、ね。
反則じゃない?
迫る拳に、恐ろしさより何より哀れみと侮蔑を感じて、アキラは顔を背けるように、目を閉じました。
- 31 :September :2008/04/26(Sat) 17:08:40 ID:6KlYu.Ws
それもまた、一瞬の話でした。
目撃者はユウキです。
木の上から、不意に何か、小さな影が飛び出して、
「ピカァ……」
宙を舞ったのです。
そしてそのシルエットは、見慣れた動作で、見慣れた技を繰り出しました。
「チュウゥゥゥ!」
カッ、と視界が閃き、言い表し様も無いような、轟音が轟きました。
聞きなれた音でした。
「ギャァァァ!?」
刹那、アキラに殴りかかった男は、感電して衣服を焦がしながら、衝撃で舞い散った木の葉の中に倒れていました。
「あ……」
ユウキは、見事に一回転捻りの着地を決め、得意げに尾っぽを立てる、電気ねずみを見つめました。
「ぴか!」
再開の喜びと救世主的な活躍にいても立っても居られなくなったユウキは、すぐさま愛しいピカチュウを抱き上げました。
しかし、毛皮に帯電された電気に触れて、ユウキもまた感電し、
「う゛ぅ……」
地面に転がることとなりました。
「ピッカチュウ」
ぴかは、そんな頼りない主人の頬を尾でぺしぺし叩きました。
一方のアキラは、無様に地面に転がる男を見、抱き合い感電するユウキを見、我と我が手を見ました。
「ありえないね……」
こんな人間がいるなんて、さぁ。
世界は広い。広すぎる。故に収拾がつかない。
アキラ12歳が、世の中に矛盾、そして悪というものの存在を悟った瞬間でした。
- 32 :September :2008/05/03(Sat) 23:14:32 ID:NsWvXkz2
「ユウキ!大丈夫!?」
間を空けた後、アキラは感電して尚ぴかを抱くユウキに駆け寄りました。
「…はぃ……大丈夫です慣れてますからぁ……」
ユウキはそう言い、起き上がりました。
「ピッカ」
随分と勝気そうなピカチュウは、ユウキを見上げました。
その顔に、「何だよ、こんなことで倒れてさ」と書いてあります。
ため息が出ました。
「でも、よかったじゃん、見つかってさ!」
アキラの笑顔に、ユウキも照れ笑います。
「いえ、あの、アキラさんこそ、怪我ありませんか?」
「大丈夫、大丈夫。ぴかちゃんのおかげで助かったよ」
アキラはぴかの頭を撫でました。
また多少バチバチしていましたが、電気も随分逃げたようで、ふわりとした毛皮の優しい感触が帰ってきます。
「ぴか、それじゃあ、ボールに戻ってくださいね?」
ユウキの言葉に、ぴかは、一瞬ぴくと耳を動かしましたが、「仕方がない」とでも言うように、自らモンスターボールを開き、中へ収まりました。
「へぇーっ、賢いねー」
「…持ち主よりも賢いのは考えものですけどねぇ」
二人がまた笑い会っている間に、
「…お、おおお覚えてろよっ!カ、カイナでも仕事があんだからな!……てか聞けよぉっ!」
男は起き上がり、去っていきました。
- 33 :September :2008/05/03(Sat) 23:36:46 ID:NsWvXkz2
二人は、のんびりと会話を広げながら、トウカの森を出ました。
「ふぅ、森はキライですぅ…」
ユウキは、白衣の袖で、額の汗を拭いました。
「ねえ、」アキラはユウキに言いました。
「さっきの人、デポンがどうのって言ってたよね?デポンってなに?」
「デポンじゃないです、デボンですよー」ユウキは答えます。
「デボン・コーポレーション、大会社ですよ。私の父は発明家で、デポンの地方支部で働いているんです。あ、働かしてもらってる、っていうのが正しいんですけど…」
はにかむように笑って、続けます。
「私がホウエン地方に来ると聞いたデボンの専務さん――知り合いなんです――が、私に頼みがあるって。それで、」
ユウキは鞄を探り、小さなケースを取り出しました。
何か、灰白色の小石が、さも大切そうに入っています。
「これを、ハジツゲのソライシ博士に届けてくれって、頼まれたんです。何でも、社長さんの息子さんが石マニアで、いえ社長さんもそうらしいんですけど、それでその……」
段々とユウキの話がまとまらなくなってきました。どうやら、随分とデリケートな性格のようです。
アキラは相槌を打ってやることにしました。
「それで、この石ってそんなに大事なものなの?」
「は、はい!そうなんです、何でも……」
ユウキは囁くように言いました。「隕石、だとか。」
「隕石!?」アキラは、その何の変哲もない石を見つめなおしました。
何度見ても、ただの石です。
「隕石って、ロマンティックですよね〜!しかも、溜め込まれた宇宙波が膨大なエネルギーになるとも言われていて、まさに人類の宝ですよぅ!」
ユウキは楽しそうに手を振りました。
人類の宝…って、そんなものを左手でシェイクしてていいのかな。
ごもっともなことは、言わないことにしました。
- 34 :September :2008/05/03(Sat) 23:48:44 ID:NsWvXkz2
「…あれ、カナズミから来たなら、こっち側って戻ってきちゃったんじゃない?てか、ユウキってホウエンの外から来た人なの?社長の友達ってすごいよね!」
「ううー、一気に質問しないで下さい!頭パンクしちゃいますぅ」
ユウキは暫く頭を抱えていましたが、不意に起き上がると、
「…花屋さんで木の実を買おうと思って、来たらピカが逃げちゃって…ううう、そんなことでもなければ森なんて入りませんよぅ。本当なら、カナズミの北なんですから、ハジツゲタウン。
はい!私はカントー地方……っていうか、ナナシマの出身なんですようー。シィ島…あ、観光の人たち曰くの4の島が私の家です!綺麗なとこですよ〜。
しゃ、社長さんとは喋ったこともないですよ!専務さんですよぅ!」
ユウキは一気に喋り終えると、ぜいぜい息を吐きました。
「…あ、しかも、聞くところによりますとですね、社長さんの息子さんは、すっごぉくポケモン強いらしいですよぉ」
「へ、へぇぇ…」
アキラは、ユウキの話し方に絶句しながらも、
「…じゃあ、ユウキは何でホウエンへ?」
一瞬、ユウキはきょとんとしましたが、にっこり笑うと、白衣のポケットから、赤い機械を取り出しました。
「これは、ポケモン図鑑のβ.verです」
「ぽけもん図鑑のべーたバージョン?」
アキラは目を丸くしました。
「はい、これに、ポケモンの生態とかを登録するんです。面倒ですけど、手動で。」
ユウキの目は、遠くを見ていました。
「それが、私の仕事です。これの完成は、私と…父の、夢ですから。」
アキラは、そのとき初めて、ユウキの中に輝くものを見つけました。
- 35 :September :2008/05/04(Sun) 23:04:07 ID:dLoezy3w
- この辺りで一区切り。
第一章(一話…?)、『アキラ、森を越えて』終了です。
次からはサトル視点に移ります。
何だかころころと移り面倒ですが、混乱しないようにキーの実でも食べながら御覧下さい。
- 36 :September :2008/05/04(Sun) 23:14:29 ID:dLoezy3w
トウカの森へ入って、人の通った跡でもある小道を外れ、奥地へ。
そこは、昔々、カナズミが開拓され始めた時代に使われていた道だといいます。
しかし、今は、既に道だった跡など殆ど残っていません。
サトルは、長年(?)の経験と勘で、道を辿りました。
ふと、朽ちかけた看板が目に留まります。
『迷いポケモン多し!注意』
やれやれ、とため息が出ました。
―と。
「ぴひょー!」
草むらから、甲高い鳴き声と共に、
「うわっ!……な、キャモメ?」
キャモメが飛び出してきました。
咄嗟にボールを構えましたが、そのキャモメは酷く怯えた様子で、何より首の辺りにスカーフを巻いています。
「…そ、そりゃ、森ん中にキャモメはいねーよなぁ……」
サトルは、忌まわしげに看板を蹴り倒しました。
「おーし、大丈夫か?」サトルは腰を屈め、震えるキャモメに手を伸ばしました。
キャモメはその手に怯え、ばたばたと羽ばたこうとしましたが、撫でられて敵意が無いことが伝わると、収まりました。
「よしよし、今お前の主人を探してやるからな」
サトルは、キャモメを抱えると、また森を歩き出しました。
- 37 :September :2008/05/10(Sat) 21:34:01 ID:An.aWJwU
「――オレとしたことが……」
サトルは、独り頭を抱え、呟きました。
そこは、さっきの海を一望する、丘。
――つまり、カナズミとは逆方向に戻ってきてしまったのでした。
「……あーあ、ついてねぇな」
トウカの森は、サトルの主な修行場所あり、ホームグラウンドでした。
だからこそ、知らない道があったのも、知らない絶景があったのも、何だか無償に悔しいのでした。
「ま、……いいか、これでも」
サトルは、とやかくいうよりも、その蒼い眺望を目一杯楽しむことにしました。
と、
「あー、海見てると、イヤなこと吹っ飛んじゃうわね。……ピーコも、同じ空の下にいるのかなぁ……」
独り言、そう割り切るには大きすぎる声が聞こえました。
ふと見ると、ポニーテールの少女が、脚を放り出し、小手を翳して、同じように海を見ています。
「おいおい、先客かよぉ……」
やっと、こんな絶景を一番乗りなら落ち込む必要ないかとか思って持ち直したところなのに。
少女は、サトルの声に振り向きました。
そして、秘境にたどり着い他人の存在にまず驚き、さらにその腕の中のポケモンに気がつき――
「あぁぁぁぁーーー!」
飛び起き、叫びました。
「なっ……」
サトルはその大声と、意外な彼女の背の高さに驚き、一歩引きました。
そして、その指の先にある、迷いキャモメを見ました。
「こ、こいつか?」
さっき森の中で見つけたんだけど、そんな言葉を伝えもしないうちに、彼女は再び叫びます。
「ドロボーーーッ!」
「はぁぁぁ!?」
彼女はボールを投げると、マッスグマを出しました。
「返しなさいよ、あたしとお爺ちゃんのピーコ!」
「か、返すも何も、」
弁明することもできず、両手でキャモメを抱えているためボールも出せないサトルに、マッスグマは迷わずとっしんしてきました。
「わわっ!?」
咄嗟に避けましたが、マッスグマは素直に追尾してきます。
「ヒトのポケモン盗ったらドロボーよ!」
少女の怒鳴り声とマッスグマの風を切る音をBGMに、サトルはともかく逃げ、ふと足元を見れば、
そこは丘の淵でした。
極限の精神状態で、バランスを取ることの出来る人間がどれだけいるでしょうか。
「のわぁぁぁー!?」
真っ逆さまに、滑り落ちていきました。
――キャモメを抱えたまま。
- 38 :September :2008/05/17(Sat) 17:57:28 ID:Z.S/i7G.
思い切り背を打ちつけ、ばたばたと騒ぐキャモメをそれでもしっかと抱えたまま、サトルは舌打ちしました。
「痛てて…何だってんだよ、思い込み女め」
しかし、頭上から鍵爪をぎらつかせたマッスグマと少女が駆け下りてくるのを見ると、そんなことを言ってもいられなくなりました。
サトルは血相を変えて飛びのき、本能の赴くまま駆け出しました。
「待てぇー!」
ふと視界に移る、桟橋、掘っ立て小屋、小さな船。
何とも無くに桟橋を駆け上がってしまったサトルは、ふと失敗に気が付きます。
桟橋じゃ――逃げ場は、船か、海だけ。
サトルは迷うことなく船に飛び乗りました。
少女の表情が変わります。
「あ、ちょっと、それ、なっ、で、出なさいよぉっ!」
しかしサトルも命がけ(?)。ふっと船室を見渡すと、よく解らない機器やパネルの上、目立つ赤と緑のボタンが眼にとまりました。赤のボタンには『1』、緑のボタンには『2』と書かれています。
そして、ボタンの横には、白い文字で大きく一言。
『ここを押す』
ぽちっ。
サトルは、それを押しました。
まさに無我夢中の極致、無意識下の話でした。
- 39 :September :2008/05/17(Sat) 18:09:02 ID:Z.S/i7G.
「あっ―」
少女の声を聞く間もなく。
船は、滑るように動き出しました。
――自動操縦。
「え?ええっ―」
サトルが何をする間も残さずに、船はどんどん浜辺の桟橋を遠ざかっていきます。
少女の「船ドロボー!」という声が、遠く聞こえたような気がしました。
遥か風と非日常の彼方に、懐かしきトウカは消えていきます。
「ああ……」
夢であって欲しいことが、もしも全て夢で在り得るなら、世界はかなり平和でそれなりに平等になっているだろーなぁ……。
真っ白になったような気がしました。
蒼い海を眺めながら、船はどこかへと走り続けます。
「これじゃ、まんまほんとにドロボーじゃねーか……」
もう、笑うしかありません。
「ははは……」
どうしようもない状況に放心するサトルの腕の中で、等のキャモメ――ピーコは、何事も無かったかのように、ぴひょーと一声、能天気に鳴きました。
拾いポケモンなんてするもんじゃない。
そんな言葉の書かれたステッカーが、瞬間接着剤でサトルの心に貼り付けられました―。
- 40 :September :2008/05/17(Sat) 18:16:11 ID:Z.S/i7G.
驚愕に硬直する彼女の前で、ドルンとエンジンが一際大きく鳴り響き、船はゆっくりと動き出しました。
「ちょ、あんた、……船どろぼーっ!」
それはゆっくりと速度を増し、暫しのうちに、水平線の向こう側へと消えてしまいました。
彼女は、その場にへたりと座り込んでしまいました。
折角、おじいちゃんに、船に乗ってもいいって、言ってもらったのに。
自動操縦で、ムロやカイナに行けるようにしてもらったのに。
そうだ、おじいちゃんは、乗り終わったら、どんな些細なことであっても、ちゃんとエンジンは切りなさい、そういっていた。
ばちが当ったんだ。
「……ふぇ……」
涙をこぼしそうになるのを、気合とプライドで踏みとどまり、おじいちゃんの小屋を振り返ります。
「…おじいちゃん」
マッスグマの心配そうな鳴き声にも心揺らさず、叫びます。
「おじいちゃん! ドロボーが、ピーコと船盗ってったぁー!」
そして、駆け出しました。
「警察呼んでぇーっ!」
サトルが、お尋ね者リストに仲間入りするのは、そう遠くない未来のお話でした。
- 41 :September :2008/05/17(Sat) 18:19:57 ID:Z.S/i7G.
ここまでで、第二話『サトル、海を越えて』終了です。
以下から、またもやサイドチェンジ致します。
- 42 :September :2008/05/21(Wed) 17:48:47 ID:SE29CLJE
その町では、風が息づいていました。
ミツルには、花畑の中を駆けてゆく風の姿が見えました。
ふと舞い、風に煽られ峠の彼方に消えてゆく花びらに見惚れていると、
「ようこそミツルくん、シダケタウンへ!」
声の先に居たのは、若草色のワンピースがよく似合う、懐かしいあの人。
「……ミチル姉さん」
それは、従姉のミチルでした。
幼少の頃はよく遊んでいた仲でしたが、最近はとんと会っていませんでした。
「大丈夫?長旅で、大変だったでしょう?」
「大丈夫ですよ」ミツルはぎこちなく笑いました。「それにしても……」
風の度に町を彩る花びらが、ミツルの頭の上に舞い落ちます。
「ここは……いい町ですね。」
ミチルも、笑って答えます。
「でしょう、最高の故郷です」
「ルルー……」
ミツルが微かな呼び声に振り向くと、そこには、小さなポケモンなどすっぽり埋まってしまうような花畑を、懸命に進むラルトスの姿が。
「ラルトス!」
「ルッ」
転びました。
花びらが散ります。
「ラルトス……」
ミツルは、ラルトスを抱え上げました。
「大丈夫?」
「ルゥ」
ラルトスを撫でると、その頭の花びらも剥がれ落ちました。
ラルトスがしきりに手を伸ばすので、何かと思いふと顔を上げると、自分の前髪にも花びらが。
「……あははっ、ありがとう、ラルトス」
ラルトスも、笑っていたように見えました。
「それは……ミツルくんの?」
「はい。僕のラルトスです」
ミチルは、まじまじと一人と一匹を眺めました。
そして、
「あなたのラルトス、とっても幸せそう」
一言、そう言いました。
48 KB
Colorful Board System Version1.01 by ミライいろ。