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Blue Sky 第二部
- 45 :エンタ :2008/07/06(Sun) 19:48:24 ID:Bk1mNjCo
- 第41話 黒空の神子・其の二
「こ、この子は…?」
「イーブイの、新たな進化形だというのか!? しかし何故…」
困惑する2人をよそに、ヒスイの身体を乗っ取っている何者かは、状況を理解しているかのように呟いた。
「ちっ。『永久氷壁』の影響か。この状況下で進化を遂げるなどと、まったくもって悪運の強い巫女だ」
言ってから、『彼女』はしばし自分の言葉を反芻する。
「いや…『海幸(ラッキー・カード)』の能力のうちなればこそ、その進化も必然…か」
途端にトゲチックが背中の羽根を輝かせ、空を飛びまわるスピードをさらに上昇させる。
(このポケモンは筋がいい。さっきのやつに比べて、さほど強い暗示を与えなくともかなりの速度を誇る)
命令無しで、シャドーボールを四方八方から乱射する。
トゲチックの体力も徐々に削られ、完全に不利となり始めた『彼女』に、もはや全力を出さない理由は存在しなくなった。
「さぁ、影に果てろ!! 愚かな人間どもよ!!」
撃ち出された全てのシャドーボールが、ほぼ同時にミズホたちに襲い掛かった――。
「……なぜだ」
ヒスイではない何者かは、憎々しげに呻いた。
「なぜ一発も命中していない!?」
全てのシャドーボールをその身に受けたかに見えたミズホとイーブイの進化系は、『彼女』の予想に反してまったくの無傷だった。それどころか、状況が理解し切れず立ち尽くすミクリと、そのポケモン、レジアイスまでもが。
「ふふふ……。ラッキー、でした」
「全て…回避した!? バカな、そんなことが!!」
「そこに1%でも確率が存在しているなら、私の望み方次第でその確率を引き当てることができる。どうやら私の能力は、そういうものだったようですね」
さっきまでとはうって変わって得意げに、ミズホが微笑を浮かべる。
「巫女の能力は、生まれた時から発現している。私の場合は自覚無しに使っていたですが、先ほどの攻撃の中で、確かに声を聞いたです。ラッキー・カード…とね」
「レジアイスを自分のもとに『運良く』流れ着かせたのも、遥か海底から『運良く』生還できたのも、その能力か…。し、しかしトレーナーの経験から考えて、今のシャドーボールが外れる確率は0%だったはず。どうやって回避率を生み出したんだ…?」
戸惑いながらも冷静な意見を述べるミクリに、ミズホは笑って答えてみせた。
「この子の能力みたいです。砂に隠れて敵を討つ砂漠のポケモンに似た、あられに紛れ、敵の攻撃を回避するとくせい――そう、言うなれば「ゆきがくれ」ですね」
「そんな僅かな確率から、全てのシャドーボールを回避するという恐るべき事象を引き当てたというのか…」
「くっ…。この私が、敗北…だと? おのれ…!」
本来の目的――『彼女』の言う、空の裁きを与えられず敗北したことに、『彼女』は怒り、震えていた。
意識を回復しはじめたホタルがよろよろと立ち上がり始める。
「さぁ…きみは負けた。おとなしく、ヒスイ君の身体を返してもらおうか」
「ちっ…覚えていろ。空は必ず、再び貴様ら人間を潰す! これは土産だ、とっておけ!」
鬼のような形相が一瞬にして崩れ、眠るように目を閉じたヒスイが冷たい床へと倒れ込んだ。
「ヒスイさんっ!!」
あられが止み、それでも寒さの残るほこら内の状況に混乱したホタルが、ミクリに向かって悪態をついた。
「寒ッ!? おいどういうことだアホミクリ、状況説明しやがれ!!」
「…悪いが、どうやらそんな悠長なことを言っている暇はないらしい。ミズホ君、ヒスイ君を急いでこっちへ!!」
「えっ!? は、はい!!」
ミズホがヒスイの身体を抱きかかえて、ミクリの傍へと移動した。青い水晶のようなものがところどころ床に刺さっている。これはあいいろのたまの破片なのだと思い出すのに、そう時間はかからなかった。
「おい、どうなってんだよ!!」
「こっちへ来るな!!」
「…あァ? 意味が…」
いまだボールに戻していなかったレジアイスのパンチが、ホタルを反対側の壁へと突き飛ばしていた。
「っ痛!! おいテメェ、何しやが」
ズズゥゥゥゥゥゥウウウウウン……
「………は?」
罵倒しようとした相手は、すでに視界の先にいなかった。
あるのは、黒い水晶のちりばめられた壁だけ。
「み、ミズホ!? ミズホっ!!」
壁の向こうと思しき場所から、声が聞こえる。
「だ、大丈夫ですぅぅ」
「無事なのか!? 良かった…」
心からの安堵。すでにホタルにとって、ミズホはここまで大きな存在になっていたということらしい。
「ホタル、聞こえるか?」
「ああ、聞こえてるぜ。何なんだよこれぁ」
「どうやら、我々を良く思わない黒空という者が、このほこらを出口ごと埋めてしまったようだ。分断されたのも、計算のうちだったのかもしれないが…」
「…下らねぇごたくはいい。こっから脱出する方法を、さっさと教えやがれ」
「そのつもりだ。…なに、由緒正しくとも地下施設だ。緊急時の経路は用意されている。…しかし、そちら側にだけだ」
「何だと!? テメェ、それじゃミズホはどうなるってんだ!!」
「少しは私やヒスイ君の心配もしてほしいものだな…。しかし、手段はちゃんとある。まずは私の指示に従うんだ」
厳かに告げるミクリの声に、ホタルはむすっとしながらも押し黙った。
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Colorful Board System Version1.01 by ミライいろ。