掲示板に戻る / 全部 / 1- / 101- / 最新50
Blue Sky 第二部
- 42 :エンタ :2008/06/21(Sat) 23:38:42 ID:BUHs/.jc
- 第38話 昏き微睡・其の一
「さぁ、着いたぜ」
船乗りナミキの声で、シンジは我にかえった。
見れば、真っ黒な空と海の中、ぽつんと浮かぶ小島に数艘の船が寄せられていた。
疲れて…眠っていたのか。
たかだかボール1個で精根尽き果てるとは、何とも情けない。師匠には遠く及ばない。…精進せねば。
「おい、兄ちゃん?」
「あ、ああ。すまない」
考え事をしていると周りが見えなくなるのは、彼の悪い癖だった。
「ここがしんげつじま…か」
ぽつりと呟いたのはシンジではなくナミキの方だった。当然だ。その存在の真偽さえあやふやだった幻の島に、いま自分がこうして船をつけているのだから、感慨深くもなる。
「ここにダークライが…」
「お、おい。あまり進みすぎるなよ。何しろ相手は闇を司る伝承のポケモンなんだからな?」
しんげつじまの存在が明らかになったことで、ナミキの中に段階的にダークライの存在に対しての確信が芽生えていた。今となっては伝承すら疑うことなどできはしない。
「わかっているさ。船乗りの皆はここで待機していてくれ。もし何かあったら迎えに来てくれると助かるがな」
「なんだ、ちゃんとビビってんじゃねぇか」
「周到な措置と言ってもらいたい」
とはいえ、シンジも確かにビビってはいた。
それが自分でわからないほどバカではないし、自分の力も弁えているつもりではある。
ただ、過去に一度伝承のポケモン――セレビィを捕獲した経験があるという過信が、ほんの少しの油断を招いていた。
「では、行ってくる」
明かりも何も無い真っ暗闇の森の中へ、シンジは勇んで足を踏み入れた。
「思ったほどではないな」
新月の夜、人里から遠く離れた海の上…。視界は最悪だろうと思っていたが、いざ目が慣れてくると案外とよく見えるものである。
木を避け、草を掻き分け進むことができるほどには、シンジの視界は良好だった。
方向感覚には自信がある彼が、森をどんどん奥へ奥へと進んでいくと、やがて開けた場所に出た。
「いかにも何か出そうな場所だな」
冗談まじりに呟く。ドサイドンをボールから出した。
腰につけてあったダークボールを取り、神経を研ぎ澄ます。作ったときから、このボールで捕獲すると決めていた。
耳を澄まし、その伝承のポケモンの足音を聞き取ろうとする。…何も聞こえない。静寂。静寂。
(…こっちか?)
一応、耳を澄ましながらでも全方位に気を配ることは重要である。そう思い立った彼が振り返った瞬間――
目が合った。
青く、暗い光を宿した双眸。
息を呑む。
あまりに突然のことで、何をしていいか分からなかった。
相手はぷかぷかと浮かんでいた。だから足音が聞こえなかったのか。
と、黒い衣のような身体からいきなり脚が生えた。いや、隠していた脚を出したというのが正しいのだろう。
両の手で、眼前に広がる景色よりも黒い球体を形作り、
相対するシンジの足元に向かって投擲する。
その一連の動作を、ただ呆けて見ていることしかできなかった。
気付いたときには遅かった。
一人と一匹は、すでに相手のわざの支配下にあった。
『そのダークを冠するわざとは、何なんだ?』
『…“ダークホール”。永眠へと誘う暗闇の淵』
『永眠……!?』
『そのわざにだけは気をつけろ。喰らったが最後、特殊な方法を使うまで悪夢から醒めることは絶対に無い』
「くっ……しま、っ」
ドサッ。音を立てて、シンジが崩れ落ちる。途端にもがき苦しみ、大量の汗をかき、悲痛な叫びを上げはじめた。
「がっ…あ、あぁああぐぁあああああああっっ!!!!」
『喰らうと、具体的にどうなるんだ』
『詳しいことはわからん。しかし、そのわざを喰らえば醒めることの無い眠りに陥り、付近から相手が離れるまで悪夢に苛まれ続ける。もっとも離れる頃にはすでに、夢中において精神崩壊を起こしているだろうが…』
『…まさか…』
『もちろん、わざの組成はダークオーラだ。つまりは……』
――お前が『葬る』と称している、ダークわざによるポケモンの精神完全破壊と似たようなことになるだろうな――
叫び声は、そこで止まった。
217 KB
Colorful Board System Version1.01 by ミライいろ。