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Blue Sky(171話〜)
- 1 :エンタ :2006/03/21(Tue) 15:24:55 ID:QCQts6D6
- どうも、エンタです。
目障りとは思いますが、二つもスレを作らせていただきました。
なので、せっかくですから最後まで読んでくださると光栄です。
最初にここを見た人は、掲示板で1話〜170話を探してそっちを先に読んでみてください。
はい。ちゃっかり宣伝です。
では、171話から始まり始まり〜
- 57 :エンタ :2006/06/05(Mon) 19:10:45 ID:ddWj0mrU
- 第221話 突入!アクア団のアジト
午前1時30分。
ミナモシティの片隅にある沈没船を改造して作られたアジトに到着すると、ハルカを入り口に残して全員突入した。
アクア団員A「…?お、おい!!思ったとおりだ、襲げ…」
イッセン「遅い」
声をあげようとした男は、イッセンの当て身で無残にも崩れ落ちる。
イッセン「修行が足りぬわ」
セツナ「よし、分かれ道まで全員で行動するよッ!!」
ツチオ「わかった!!」
ミツル「あ、あんまり大声を出さないほうが…」
ワビスケ「うつけが、出したほうが効果的でござるわ」
セツナ「お、わかってんじゃんニンニン!」
ワビスケ「ニンニンではないッ!!」
セツナ「アオギリのガードを少しでも落とすために、警戒させておびき出す必要があるのさ」
ツチオ「時間稼ぎは俺たちがやるし、今のうちに敵戦力を分散させておいたほうがいいからね」
ミツル「なるほど…これでハルカさんもいれば…リーダーはノーガードですね!」
セツナ「いや、ノーってわけじゃないけどな…少なくとも、1対1ならとーさんは絶対負けない」
ミツル「待ってれば相手も動けないというアレですか?」
ちなみに、イッセンは自分の能力を勝手に『一閃流絶対先制絶待防御』と名づけている。
ツチオ「お、分かれ道だ。俺が行くよ」
道は、まっすぐ大きな道と右に小さな道に分かれていた。
セツナ「死ぬなよ〜?」
ツチオ「はは、イザとなれば札を使うことにするよ」
ミツル「ツチオさん…頑張ってください!!」
午前1時56分、七瀬ツチオ、別行動開始。
ツチオ「着いて来い…大部屋に出れば楽になる」
すでに彼の後ろにはかなりの音量の足音が響いている。彼は足音の量から自分を追って来た者のほうが多いことを把握した。
ツチオ「…しめた!」
大部屋に出た。しかもみずの無い、だだっ広い部屋だ。沈没船を引き上げるのに使ったのであろう機械の残骸が散乱していた。
ツチオは部屋の真ん中まで行って振り返った。
???「はーっはっはっはっは!飛んで火に入る水の虫とはこのことだぜ!!」
アクア団員A「ウシオさん…夏の虫っす…水虫火に入れたらイタイっすよ…いろんな意味で」
ウシオ「ゴ、ゴホン!まあいい。一人できたからには、覚悟ってモンがあるんだな、小僧…」
ツチオ「え?あんた達をコテンパンにする覚悟のことかい?もちろん、とっくにできてるけど」
ウシオ「く…こいつ、どこかあのガキに似てやがる…」
アクア団員B「どうします、ウシオさん?全員でかかりますか?」
ツチオ「あれ?全員、俺にやられる覚悟ができてるの?そりゃ話が早いや」
ウシオ「こんの、ナメやがって…!かかれッ!!」
アクア団の鬨の声が響く。
ツチオ「何十人いるんだろ?ま、いいか…フライゴン!!」
午前2時07分、七瀬ツチオ、午尾ウシオ率いる隊と…戦闘、開始。
セツナ「広いなこのアジト…また分かれ道だぜ…今度は同じ太さだ」
ミツル「じゃあ、兵力を分散しましょう。今ちょうど4人なので、二人ずつに分かれます」
セツナ「…野生の勘ってやつかね。あたしゃこっちに行きたくなってきたよ」
イッセン「奇遇じゃな、ワシもじゃ」
ミツル「…それじゃ、お二人はそっちの道へ…僕と彼女はこっちの道へ行きます」
ミツルがワビスケを指差していった。
ミツル「…それでいい?」
ワビスケ「勝手にすればいいでござる。拙者はもともと共闘する気など無い」
セツナ「口ではそういっても、やっぱホウエンが大事なんだよな〜♪」
ワビスケ「別に。拙者はホウエン出身ではないでござる」
イッセン「何?そうじゃったのか?」
ミツル「なら、どこの出身なの?」
ワビスケ「知らぬ。拙者は生まれ育った場所の記憶が無いでござるから…」
セツナ「え…そ、そいつぁ悪いことを聞いたなァ…」
ワビスケ「ふん。お主に同情されるほど落ちぶれてはいぬでござる」
セツナ「はっ。そーかい。でもま、あんたが思うほど軽い同情でもなかったんだがね…」
イッセン「…!!おいセツナ……!?」
???「あー!いたぞー!!」
ミツル「あ…見つかった!?」
セツナ「ちっ、さっさと行こーぜ!!」
ミツル「はい…頑張って!」
セツナ「…おーよ!!」
午前2時42分、芦田ミツル・椿木ワビスケ、桐崎イッセン・桐崎セツナ、別行動開始。
- 58 :エンタ :2006/06/05(Mon) 19:11:03 ID:ddWj0mrU
- 第222話 マグマ団のアジトへ
夜の山道は暗い。
だが、センリの『眼』にかかれば、見えないものなど何も無い。
センリ「…なるべく足音を立てるなよ。夜中とはいえ、決闘が囮ということくらい、すでにバレているはずなのだからな」
ミナヅキ「はい、センリさん…」
ヒサヤが自分の足もとの感触から空洞の位置を把握する。
ヒサヤ「…空洞がだんだん狭まって…近くなってきたな」
ミナヅキ「ということは、入り口はもう近くですね」
ふと、センリが足を止めた。
センリ「…見張りがいるな…寝ているようだが…」
ヒサヤ「マジ?でも見張りに抜擢されるくらいだから、すぐ起きるよな…」
ミナヅキ「ラフリンにやってもらいますか?」
センリ「いや…ポケモンを出すと気づかれる恐れがある…私が行こう」
ヒサヤ「えっ…大丈夫なの?」
センリ「心配するな…これでも日頃から鍛えている」
センリが二人を離れて歩き出した。
2分後…
トスッ!「ぅ」「ん?どうし…」トスッ!ドサドサッ…
ヒサヤ「…………」
ミナヅキ「…………」
センリ「よし、来い」
ヒサヤ「意外と無茶するなー…」
一行が入り口にたどり着くと、入り口は閉まっていた。
ヒサヤ「…『マグマのあかしを示せ』…?」
頭のライトでその鉄扉を照らしながら、ヒサヤが読み上げた。
センリ「こういうことじゃないのか?よっ…しょ…っと」
だらんとした手が扉に触れた途端に、鬼のごとく閉じきっていた扉がいとも簡単に開いた。
ヒサヤ「おいおい…アリかよ」
センリ「よし、突入だ」
午前3時15分、大空センリ、堀岡ヒサヤ、桃花ミナヅキ…マグマ団アジト、突入。
ホタル「…もういいぜ、バルビート。火口からは明るい」
バルビートが灯りを消す。彼のはっこうに集まってくる夜行性ポケモンたちも多数いたが、すべて撃退した。
ギャロップの脚力で火口に入り、着地すると…そこはすでに地獄だった。
ホタル「ちッ…この服が耐火性とはいえ、こうまで熱いと防げねェってか…」
マグマの滾る音が響く空洞を、汗を拭いながら歩く。
???「…誰だ?火口付近には断熱装置が無いから近づくなと言ってあるはずだが…」
よく通る、聞きなれた声…。
ホタル「久しぶりだな…ウスバカ」
ウスバ「…何故…お前がここにいる」
午前3時34分、桂ホタル、日代ウスバと遭遇。
- 59 :エンタ :2006/06/11(Sun) 15:47:56 ID:o5jLWXHg
- 第223話 決闘の朝日
ユウキ「…日の出まで…あと10分ほど…か」
はっきりと計算できない時間。彼にとってそれは、『不安』という言葉に置き換えることもできた。
ユウキ「いや…不安なんて無い…ホタルと、あんなに特訓したし…師匠と、約束もしたはずだ」
彼は独り言で不安をかき消すと、空を見上げた。
ユウキ「今日も青空は…オレの味方だ」
やがて、視界に日の光が射しこんだ。
ユウキ「…来たか」
まぶしさに耐えて目を開けると…そこに、100人のトレーナーが立っていた。
マグマ団員「オラ、クソガキ!始めようぜェ!!」
アクア団員「血祭りだ!ウシオさんたちの借りを返しに来てやったぜ!!」
ユウキ「…チー、……行くぜ」
山あいに、雄叫びがこだました。
午前3時32分、大空ユウキ、決闘開始。
そこは、どうくつを改造して造られたような、入り組んだ場所だった。
センリ「…さすがに中は暑いな…だが、おかげで人も少ないようだ」
ヒサヤ「今のうちにガンガン中に進もう」
センリ「…ああ。ミナヅキ、大丈夫か?」
ミナヅキ「…はい。行きましょう」
センリ「…よし」
大きな空洞と、廊下のような狭い空洞を進んでいくと、段差と機械類がある部屋にたどり着いた。
ヒサヤ「…ありゃ、冷房装置の一種だな。ここだけ涼しいし、温度も今来た道より低い」
ヒサヤがメガネのスイッチ(サーモグラフィー)を入れて部屋を見渡す。
センリ「ということは、ここには人がいるかもしれないな」
ミナヅキ「…センリさん、道が…分かれてます」
センリ「…狭い道と、広い道か…敵がいるなら、狭いほうに誘導できれば…」
ヒサヤ「それで広いほうに行くんだな…っと!人がいる…」
どうやらこの部屋は、人肌以下の温度まで下げられているようだ。メガネの機能…サーモグラフィーが、人温を感知している。
センリ「…私が見てみよう」
センリが再びコンタクトを外し、『千里眼(エターナル・インディゴ・アイズ)』を発動する。
センリ「…8人」
ヒサヤ「う…結構いるなァ…」
センリ「当然だろう。今ユウキと闘っている者たちを差し引いても、30人はいるのだから」
ミナヅキ「…ユウキさん…」
ヒサヤ「…で、どーするよ?さっき言ったとおり、広い道に行くか?」
ミナヅキ「…あ、あの…それなら私…っ、敵を狭いほうの道に誘導しますっ!!」
センリ「む…平気か?」
ミナヅキ「大丈夫ですっ!多分私が一番弱そうに見えると思いますから!!」
ヒサヤ「そ…そんな理由でか?」
ミナヅキ「はい!」
センリ「…それなら…私たちでこの部屋の機械類を破壊し、その混乱に乗じてミナヅキは狭いほうの道へ敵を誘導してくれ」
ミナヅキ「はいっ!」
センリ「準備はいいか?」
ミナヅキが力強く頷く。
ヒサヤ「よし、いくぞ…1、2の…そりゃッ!!」
ドッカ―――――――――――――――――ン!!!!
マグマ団員A「んな!?何だ、一体!?」
マグマ団員B「あつつつつ、冷房ぶっ壊れた!?」
マグマ団員C「ッ違う、ぶっ壊されたんだ!!」
センリ「…いまだ、行けッ!」
ミナヅキ「や…やーいやーい!!こ、こっちですよ―――ッ!!」
マグマ団員C「追うぞ、オメェら!!」
ミナヅキのベタな挑発に、ものの見事に引っかかり…団員たちは、狭い道へ消えていった。
ヒサヤ「…なあ、センリさんよ…あいつ、誘導向いてないんじゃ…」
センリ「言うな…仕方あるまい…」
午前3時47分、桃花ミナヅキ、本隊と別行動開始。
- 60 :エンタ :2006/06/11(Sun) 15:48:23 ID:o5jLWXHg
- 第224話 真実と驚愕
ウスバ「…何をしに戻ってきた?お前は死んだとリーダーに聞いたが…」
ホタル「ケッ。そのリーダーさんの腹の底を誰かに伝えてやらにゃ、死んでも死にきれねーんだよ」
ウスバ「腹の底…だと?その場所に黒い物を持っているのは、お前のほうだろう」
ホタル「…お前になら、分かってもらえると思ってな」
ウスバ「…裏切り者の命乞いなど聞くだけ時間の無駄だ。ここで死なせてやる」
ボールを取る音が、火口に響き渡る。
ホタル「俺が何故マグマ団に入ったか、分かるか?」
ウスバ「…私が知る必要はないことだ」
ホタルは、ウスバの心の揺らぎに気づいた。『必要はない』、つまり…必ず要るわけではないが、要らないわけでもない…。
ホタル「俺がマグマ団に入ったのは、スパイのためだ」
ウスバ「なッ!?ではお前は…最初から裏切るつもりで…ッ!!許さんッ!!」
ホタル「まー、ジーチャンに言われてだがな。それに、最初から裏切るつもりだったわけじゃない」
ウスバ「黙れ!!」
ホタル「俺が裏切ったのは他でもなく…『スパイが成功した』からなんだぜ」
ウスバ「…何が言いたいのか分からない…」
ホタル「分かるはずだぜ、エリートのお前になら」
ウスバ「…分からないが、今お前が死ぬ運命にあることは変わらないッ!!」
ホタル「…!!ちッ、いつからんな血の気が多くなりやがった!?」
ビブラーバのでんこうせっかが炸裂する。
ウスバ「消えろッ!!」
ホタル「死ぬ運命、だァ!?ざけんな!!『死ななきゃいけねーヤツ』なんているわけねェだろがッ!!」
でんこうせっかよりも迅く、ギャロップがその成長途上の羽根をふみつけ、動けなくした。
ホタル「俺が裏切ったのは、スパイが成功したから!マツブサの本当の目的を、知ったからだ!!」
ウスバ「な…?」
ホタル「マツブサに最も近いはずの幹部のお前ですら知り得なかった…ヤツの本当の野望を…掴んだからだ」
少し言葉を変えて、『理由』を繰り返す。ウスバが、ビブラーバをボールに戻した。
ウスバ「…言ってみるがいい。聞くに堪えぬ戯言だったならば…全力を持って殺してやる」
ホタル「っておいおい…弱ったぜ、俺自身聞いた時はにわかにゃ信じられなかったっつーのに…」
ウスバ「さっさと言え!!」
ホタル「わーったよ。ったく…お前のカタイ頭じゃ理解に数秒かかるぜ?」
ウスバ「さっさと言え、といったのが聞こえなかったのか?それとも、今すぐ殺されたいか」
ホタル「松房炎次郎の目的は…自分から全てを奪った世界を、……滅ぼすことだ」
ウスバ「…な……に……?」
ホタル「26年前の悲劇から…話す必要がありそうだな」
ウスバ「…やめろ!その話なら私も知っているッ!!私と同じ…」
ホタル「そう。俺やお前より以前に、幻海大災禍で家族を失った」
ウスバ「やめろ…嘘だ…そんな…ッ、マツブサ様の目的は…二度と同じ悲劇が起こらぬよう、陸地を増やし…」
ホタル「…陸地を増やし、この世から海を…母なる海を、消すこと…だよな?」
ウスバ「ッ黙れ!!」
ウスバがホタルの胸を両手で叩いた。ホタルの胸に顔をうずめて、泣き崩れた。
ウスバ「嘘だ!嘘だと言ってくれ、ホタル…ねぇ…お願いだから……嘘だって言いなさいよ!!」
ホタル「…すまねぇ。全部、本当だ。ヤツ自身の口から聞いた事実だ…」
ウスバ「うぁぁぁぁ!!黙れ!黙れ!!黙れ…っ」
ウスバが、ホタルの胸を力なく叩き続ける。子供のように。
ウスバ「…っう……ぐすっ……ひっ…ぐ」
マグマがたぎる音で騒がしいはずの空洞が、すすり泣く声で埋め尽くされていた。
ウスバ「…ホタル……お前は私と同じ境遇で…マツブサ様以外に唯一信じることのできた相手だったのに…」
ウスバが涙でくしゃくしゃになった顔を上げ、悲しい笑顔を浮かべた。
ウスバ「私は…信じる者すべてに、裏切られたのか?」
ホタル「…俺は、『お前』を裏切っちゃいない…俺の目的は、お前の生まれたホウエンを、守りぬくことだ」
ウスバ「…ホタル……ありがとう……」
ホタル「な、なんでぇ気持ち悪ぃ。ウスバカに感謝されるなんてよぐっ」
今度は胸ではなく、腹を叩いたようだ。
ウスバ「…なぁ、ホタル。私は、どうすればいい?…どうすれば、悲しみの連鎖が断ち切れる……?」
ドスッ。
???「あ〜、それならね〜」
苦悶の表情を浮かべたウスバが倒れるのが、ホタルにはスローモーションに見えた。
???「君が死ねばいいんだよ〜、ウスバカちゃん♪」
驚愕に固まった表情で、彼が見たのは……血塗られたような紅いマントと、『漁火』の文字…だった。
???「…このどく使いイサリビの手にかかって…ね♪」
午前4時04分、桂ホタル、“裏”が刺客、『唯牙毒尊』七門イサリビと遭遇……。
- 61 :エンタ :2006/06/11(Sun) 15:49:07 ID:o5jLWXHg
- 第225話 決闘・其の一
ユウキ「チー!!ソーラービーム弾、連射ッ!!」
普段、光線として放射される太陽エネルギーを、『弾』という形に収束することで、連射が可能になる。
マグマ団員A「何だコイツ、バケモンかッ!?」
ユウキ「…ポケモンだよ」
たちまちのうちに、ユウキの周りのポケモンたちが吹っ飛ぶ。
ユウキ「考えてみりゃ、こんな広場でも100人いれば狭くなるか…どうやら同時に戦えるのは6人が限度だな。ホッとした」
それでも、1対6で圧倒的な強さを見せるユウキは、化け物に見えなくもないだろう。
ユウキ(問題は、どのタイミングでチーを剣にするか、だな…)
一応特効薬は持ってきてあるが、決闘中の副作用は痛い。10分間はやはり長いだろう。
ユウキ(目安を立てておくか…?いや、計算づくの戦術はダメだ。想定外のことが起きたら対処できない)
考えている間にも、みずポケモンの攻撃をチーが吸収して、ほのおポケモンにぶつけている。
ユウキ(かといって、軽はずみな行動は死を招く…1歩間違えばリバースでダウンだ…どうする…?)
ふと、ユウキは上を見上げた。
ユウキ「あ……」
空が、青い…。
ユウキ「……そうか……今しかないんだ……!チー!!」
すばやく反応したチーが、ユウキのもとにとんできた。
マグマ団員B「逃がすなデルビル!!おいうちだ!!」
ユウキ「…つるぎのまいッ!!」
チーが黒き剣のかたちをとった…瞬間。
ユウキ「一閃流奥義!一閃の剣舞!!」
ズバンッ!!
おいうちをかけてきたデルビルが、石ころのように吹っ飛んだ。
ユウキ「一閃流は…命を絶たぬぜ!!」
彼が言うとちょっとダサい。
アクア団員A「い、一閃流だと……!?」
ユウキ「おっ、知ってんの?」
アクア団員A「くそ、バカな…ペリッパー!ハイドロポンプ!!」
ユウキ「たくわえる!!」
ペリッパーの巨大な口から噴射されたみずは、たちまちチーの巨大な口にたくわえられた。
ユウキ「はきだす!」
ユウキは正面ではなく背後にみずを噴出し、その推進力でいっきにマグマ団のポケモンがかたまっているところに突っこんだ。
ユウキ「一閃流オレ式奥義・水龍の剣舞!!」
みずが噴出し続ける剣先を、体ごと回転させて切り払うように振り下ろす。
マグマ団員C「くっ…もどれ!ドンメル!!」
ユウキ「まだまだッ!!チー、うずしおだ!!全員逃がさない!!」
てっぺき+はきだす…もはやチーの得意技となった、うずしお。
みずの奔流に巻き込まれたほのおポケモンたちは、みんなダウンした。
ユウキ「…ん、みず切れか…」
マグマ団員D「何をよそ見してやがる!!この間抜け野郎!!くらえ、かえんほうしゃ!!」
ロコンの口から発射されたほのおが、ユウキを飲み込んだ。
マグマ団員D「ははは!ザマーミロ!!よそ見なんかしてっからだぜ、この間抜……」
目の前でキャンプファイヤーのように燃え盛るほのおを見ながら、マグマ団員が呟く。
マグマ団員D「し、死んじゃいねーよな…?もし死んでたら俺殺人犯!?」
途端、ほのおの中から天に向かって剣が突き出され、鋭い声が彼を突き刺した。
ユウキ「…背後からの奇襲にしちゃ、おしゃべりすぎなんじゃないか?」
マグマ団員D「うっ、うわぁっ!!生きてる!?」
ユウキ「勝手に殺すなって。こっちは火に慣れてんだ…よ!!」
突然たつまきが発生し、まわりの人々が吹っ飛んだ。ついでに、彼を取り巻く火も吹っ飛んだ。
ユウキ「サンキュー、ホタル…お前が鍛えてくれたおかげだぜ!!」
と、今は姿無き鍛冶屋(火事屋?)に感謝した。
そのホタルが今、死の危険に直面していることを知らずに。
- 62 :エンタ :2006/06/17(Sat) 20:47:58 ID:FwVEdpv6
- 第226話 毒牙
イサリビ「まったく…本当にウスバカだよね〜、こいつ。いまさら真実知ったくらいで、軽〜くマツブサさん裏切ろ〜としてさ〜」
ホタルが見ると、苦しそうに喘ぐウスバの背中にはキバのような物を突き刺した痕がある。
イサリビ「ま、僕の仕事が増えるだけなんだけどね〜。『裏切り者の始末』っていう、ね〜♪」
その、ヘラヘラ笑っている20代前半くらいの黒ブチ眼鏡の男から、薄笑いがフッと消える。
イサリビ「…もちろん、キミも例外ではないよ?裏切り者のホタル君」
ホタル「テメェェェェェェェェッ!!!」
叫ぶが早いか、ホタルはガーディを繰り出した。
イサリビ「はっはははは、キミには目でとらえる事すらできやしないよ〜!!」
確かに、何がウスバを襲ったのか皆目見当もつかない。イサリビの周りには誰もいないのだから。
だが。
ホタル「んな事ァ…どーでもいいッ!!」
ガーディが息を大きく吸い込む。
ホタル「どこかにいるんなら、炙り出すまでだ!!桂流炎戦術…黒叢波(こくそうは)!!」
ガーディが、四方八方にねっぷうを放射する。その名の通り、草原さえも黒コゲにしてしまうような熱波を。
イサリビ「ん〜ぜんぜんだなぁ〜…がっかりだよホタル君…」
ドスッ。
突然、ホタルの背中に何かが突き刺さった。
イサリビ「キミがそんなに、ヌルイ相手だったなんて」
ドサッ。ホタルがじめんに倒れ伏した。
ホタル「かっ……は!!バカ、な……」
イサリビ「キミの着てる服は耐火服なんだから、キミの背後にいれば安全に決まってるっしょ〜?頭使いなよ〜」
ホタル「…くっ……クロバット……!!」
その翼は、静寂の夜空に一片たりとも音をこぼさないという。
イサリビ「フフフフ…じわじわとどくが効いていくよ〜…僕はこういう殺し方が一番好きなんだ〜♪」
ホタル「くっそ…俺は……こんなところで……ッ、負けるわけにはいかねェ…んだ……!!」
イサリビ「はっはははは、二人まとめて仲良く死んでいくがいいよ!あっははは……」
ホタル「俺は…俺は……うおおおおおッ!!」
雄叫びと共に、ホタルが立ち上がった。
イサリビ「おほ♪まだやるの〜?面白いね〜、相手になるよ?」
イサリビが指をパチンと鳴らすと、クロバットの姿は再び静寂に消えた。
ホタル「俺の目的は…ホウエンを、守りぬくことだァッ!!!」
イサリビ「それに対して僕の目的は、裏切り者を始末すること〜♪どうやら意見が一致しないね〜」
ホタル「うっせぇぜ、おっさん!!時間稼ぎは終わりにしようや!!」
ホタルがガーディのふさふさの体毛を4、5本ほどプチプチッと抜いた。
イサリビ「おお、よく気づいたね〜。その通り、これは時間稼ぎだよ〜…君が死ぬまでのね♪」
ホタル「だったらテメェには稼ぎきれねぇな!!ガーディッ!!」
空中にまいた毛を、ガーディのほのおがつつむ。
ホタル「桂流炎戦術・天幕(てんまく)ッ!!」
天に向けて放射されたほのおが、雲の形をとる。
イサリビ「…何が始まるんだい?」
その声から、余裕は消えていた。
ホタル「降らせ、火の雨!!桂流炎戦術・炎天下(えんてんか)!!!」
ほのおの雲から、灼熱の雨が降り注いだ。
ホタル「これなら死角はねェってモン…よ……」
ドッ。
イサリビ「…はは……ははははは!!今頃どくが効いてくるなんて!!キミは本当に運が無いね〜!!」
運が無い。果たして本当にそうだろうか。
倒れた彼の懐で輝く物の存在を知っていれば、イサリビも彼に止めを刺していただろう。
イサリビ「……ッ!?ま、眩し……ッ!!」
火の雲を晴らし、1羽の希望が、舞い降りてきた。
ホタル「…ファイヤー…?」
午前4時27分、伝説の火の鳥ファイヤー……ホウエン地方えんとつやまに、降臨。
- 63 :エンタ :2006/06/17(Sat) 20:48:15 ID:FwVEdpv6
- 第227話 両雄、邂逅す
セツナ「にしても広いな、このアジト……」
イッセン「このワープパネルのせいでそう感じるだけじゃ。アオギリのヤツめ、考えたな。時間稼ぎにはよい策じゃわ」
セツナ「感心してるばーいか!もう日は明けてんだ、連中がアジトに戻ってくるかもしれないよ!」
イッセン「安心せい。ハルカを信じようではないか」
セツナ「…そうね」
ワープパネルの迷路を抜けると、広い廊下にたどり着いた。
二人の直感が告げる。
この先にいるのは…
イルカ「…キャプテン、ウシオくんの部隊が苦戦している模様ですよ」
アオギリ「フン…クソガキが、無ぇ知恵絞ってアジト襲撃…か。クック」
イルカ「残り二つの部隊はどうしますー?」
アオギリ「待機だ。レーダーじゃ三手に分かれたらしいが…こっちにはあのお方がいる…ククククッ」
イルカ「でもでも、この二人はまっすぐこの部屋に向かってますよ?」
アオギリ「いざとなりゃこいつを使って海底に行くのみだ。この部屋の心配はいらねえ」
イルカ「でもでも、ミズホが帰還するまでは…」
アオギリ「遅れたら自動操縦でも何でも使ってここに戻しゃいい話だろ。だが…ふむ」
イルカ「どうしました?」
アオギリ「いや…このジジィの格好に興味がでてな」
監視カメラに写るイッセンの姿を見る。
イルカ「道着…ですか?…特に変わったトコは…」
アオギリ「バーカ。あわせをよく見てみな」
イルカ「…あ!逆になってる!!死人の着方に!!」
アオギリ「死装束…そして、腰の刀…ほほう、死神の流派…ねぇ」
イルカ「…そ、それってもしかして……」
アオギリ「わかってんな、イルカ。ヤツを引き合わせろ」
イルカ「あ、ははは…キャプテンも、つくづく酷ですねぇ…彼の事情、知ってるんでしょ?」
アオギリ「おう。だからこそ…ってヤツだぜ。かつての師弟対決…ミモノじゃねえか」
イルカ「はぁい、わかりましたよー。でもでも、あえて彼には何も言わずに向かわせますからね」
アオギリ「わかってるじゃねえか。それでこそ…より面白い対決になるだろうぜ」
イルカ「カイくんとイサナちゃんは待機でいいんですね?」
アオギリ「おう。えんとつやまに行ってる連中が帰ってくりゃ、駆り出す必要性もなくなるだろうしな…っと、まてよ」
イルカ「はい?」
アオギリ「…いや、イサナは出撃させろ。んでお前も行け。この暇してる二人のトコへなぁ…クックックッ」
イルカ「うわぁ…完膚なきまでに…って感じですねぇ。危険因子は早いうちに…ですか?…まさかね」
アオギリ「クククク……わかってるじゃねえかイルカ。そう、楽しむためだ……クククッ、フハハハハッ!!!」
イルカ「…まさに、キャプテンに相応しい人材…ですねぇ」
誰にも聞こえない声で嬉しそうに呟くと、彼女はひとり、暗い部屋を出て行った。
イッセン「ワシの直感が告げておる…この先にアオギリはいる!」
セツナ「…だからこそ、妨害も多いと思うけど…そこはあたしに任せて」
イッセン「うむ。ワシはただひたすら突破するのみ…アオギリの元にたどり着くまでな」
セツナ「んじゃ、行こか………、ッ!?」
正面に伸びる暗い廊下から響き渡る、ありえないくらいの余裕と強者の風格を感じさせる足音。
一閃流を前にして、ここまでの余裕を持てる相手は、ただ一人。
イッセン「…最悪の相手じゃな」
一閃流の剣士だけである。
???「やはり、お前たちだったか…唐突に出撃命令を受けたとき、まさか、とは思ったが」
セツナ「……こんなに早く再会できるとは、思ってもみなかったな」
???「つれないことを言うなよ、セツナ。同じ剣を執りあった仲だろう?」
セツナ「まあ、お前とあたしは対の存在。切っても切れない関係だとは思ってはいたけどな」
???「そう、対の存在だ。光と影が対義語なら…日向と日陰が対義語なら」
暗闇から、その剣士が姿を現した。足音が、止まった。
コウ「刹那と劫もまた、対義語ということだ」
午前4時55分、桐崎イッセン・桐崎セツナ、アクア団が孤高の剣士、伊達コウと遭遇。
- 64 :エンタ :2006/06/17(Sat) 20:48:32 ID:FwVEdpv6
- 第228話 決闘・其の二
ユウキ「あと、42人…うちマグマ団35人、アクア団7人!」
と、言っている間に残り41人になる。
マグマ団員E「くっそ、ひとり当り1〜5匹、平均4匹は持ってるってのに……これだけ減らされてるだと!?」
ユウキ「よそ見は禁物だぜ!チー!!」
ユウキがチーを深々とじめんに突き刺すと、チーはそれに応えるかのように大きな口を勢いよく開き、大地もまた大口を開ける。
ユウキ「一閃流オレ式奥義・土爆の剣舞!!」
まるで大地に線がなぞられたかのように奇妙にくねったじわれは、見事ポケモン『だけ』を飲み込んだ。
そして、剣を構えたユウキがじわれに沿って走り出し、ヒビに落ちたポケモンたちをきりさいた。
アクア団員B「あああ!!ドジョッチ〜!!」
アクア団員C「くっそ、アメタマ!あまごいだ!!」
あまごいをするだけで雨が降ってしまうのだから、ポケモンは謎が多い。
さっきまでユウキに勇気を与えていた青空が、雨雲に覆われてしまった。
ユウキ「あ、雨……こんの、遮んなよ!!一閃流オレ式奥義、雲断の剣舞っ!!」
アクア団員B「い、いくつ奥義があんだよ!?」
ユウキ「チーだけだと10個かな?元祖とオレ式あわせて」
アクア団員C「っざけるなァ!!俺たちアクア団が、お前一人にやられてたまるかッ!!」
ユウキ「んなこといったって、やるしかないんだから仕方ないだろ!てい!」
後ろからの不意打ち(スバメ)を軽くいなし、またマグマ団員ひとりの手持ちを0にする。
マグマ団員E「ああっ!最後の砦が!!」
ユウキ「へへっ、せっかくだからもっとたくさん奥義をお見舞いしてやるよ!!」
ここに来てユウキは、もはや負けることへの恐怖など微塵も感じなくなっていた。
それほどまでに、彼には勇気があったのだ。
チーがまたもやほのおを口の中にたくわえた。だが、次の指示はいつもと違った。
ユウキ「のみこむ!!」
あろうことか、燃え盛るほのおをその体内に封じ込めてしまったのだ。
もちろん、無事でいられるはずも無いのだが…
ユウキ「オーバーヒート!!」
チーの体温が熱くなりすぎて剣を持てなくなる前に、呼気と共に勢いよくほのおをはきだす。
二酸化炭素にまとわれて口内でくすぶっていたほのおは、外へはきだされると同時に爆発を起こした。
爆風で、ホエルオーの巨体がすっ飛ぶ。
アクア団員D「あっ……!!」
しかし、その巨体がもつ体力は、残らず削り取られてしまった。
アクア団員D「……え?」
宙に浮くホエルオーの巨体の上に、ユウキが立っていた。残り火の爆風で空高く飛んだのだ。
ユウキ「うげ…滑るな、ここ…」
言いながらも、落下するホエルオーに乗ったままリュックから『何か』を取り出し、チーの口に放り込む。
ユウキ「よっ…と」
アクア団員E「げぇ!?と、とと飛び降りたァッ!!」
ユウキ「一閃流オレ式奥義・瓜射の剣舞!!」
アクア団員E「たッ…タネマシンガン!?しまッ、くさタイプ……!!」
カイスの種が、チーの口からマシンガンのように撃ち出された。上空からの奇襲。
当然のごとく、場に出ていたみずタイプは全滅。外れた種はじめんに落ちた。
アクア団員F「くぅッ、戻れコダック!いけ、ニョロゾ!ハイドロポンプだ!!」
ユウキ「チー!たくわえる!!」
遠隔攻撃は逆効果、というユウキの戦術の特異さに、場数を踏んでいない両団員は大苦戦するはめになった。
やがて、アクア団員が全滅した。
アクア団員G「ば、バカな……ッ!!う、動ける奴らは全員撤退だーッ!!」
ユウキ「あ、待ちやが……ちぇ、逃げ足だけは……」
マグマ団員F「よそ見してていいのか?俺たちはまだ20人以上いるんだぜ!!」
ユウキ「そうだな…みずもたくわえて、アクアもいなくなったことだし…いっちょ、自分で空を遮ってみるか」
マグマ団員F「何ブツブツ言っ…って!?」
見れば、チーが霧状に水をはきだしながら、高速回転している。
ユウキ「回転で作った上昇気流に、霧状のみずを乗せれば…何ができるかわかるよな?」
マグマ団員F「し、しまった…インスタント雨雲!!?」
ユウキ「一閃流オレ式奥義・出雲の剣舞だ!!これで優勢だぜ、マグマ団……ッ!?」
きて、しまった。
リバースだ。
だが。
ユウキ「ッこいつを…飲めば!!」
視界は霞むが、動けなくなるよりマシだ。
ユウキは薬を飲み込んだ。
それから、ボソッと呟く。「…ねむる」と。
そして。
マグマ団員G「な……こ、こいつ……!!」
マグマ団員F「戦いの最中に…目を閉じて、いやがる……!?」
- 65 :エンタ :2006/06/23(Fri) 19:39:09 ID:WbjMfPlk
- 第229話 裏切
ミツル「…しまった、行き止まりかぁ……」
二人は、巨大なプールのような排水施設と思われる水溜りがある、広々とした部屋に出ていた。
ワビスケ「…ふん。そのようなことを言って、心の中ではホッとしているのでござろう?」
ミツル「そっ、そんなことないよ!!みんなが頑張ってるときにそんな不謹慎な……」
ワビスケ「…情けない限りでござるな。虹の翼の継承者ともあろうものが」
ミツル「……それを引き合いに出さないでよ…」
ワビスケ「仮にも神に選ばれし戦士ならば…それ相応の覚悟を持つでござるよ」
ミツル「わかってるよ。神の怒りを虹色の翼がとどめし時…ひとつの命が失われ、ひとりの継承者が生まれ出づ…でしょ?
青山のアオイさんの命と、虹の欠片の碧色…僕はいろんなものを背負ってるから戦えるんだ」
ワビスケ「生まれながらの使命、か…少し、羨ましいでござるな」
ミツル「え…?」
ワビスケ「拙者ら忍びには、自らの使命というモノが無い。みな、ただ誰かの影に生き、主の望む使命を全うするのみ…」
ミツル「でも、忍者には望んでなったんでしょ?」
ワビスケ「さあな。記憶がある限りには…つい去年からだが…すでに拙者は忍びであった」
ミツル「あ…ご、ごめん」
ワビスケ「お主に同情されるほど落ちぶれておらぬわ。拙者の記憶とて、無くて困るようなものではない」
ミツル「で、でも…親、とかも…わかんないわけで…」
ワビスケ「必要ない。兄者もいるし、拙者にとっては椿木忍群が兄弟であり、老松(オイマツ)殿が親であるゆえ」
ミツル「椿木忍群?オイマツ?」
ワビスケ「む、お主には話していなかったでござるか。まあ、知っている者といえば兄者くらいのもの」
ミツル「ふーん?まあ、深く追求はしないけど…」
ワビスケ「ふん、人の過去を覗くこと、少しは自重するようになったでござるか」
ミツル「って、まだ根に持ってたの?」
ワビスケ「馬鹿を言うな」
ミツル「もう、執念深いんだか…」
ワビスケ「馬鹿を言うな、と言っている。気づかぬか、うつけが」
ミツル「…今、気づいた」
???「フフフフフフフフ…実にトレビアン…この私の気配を見抜くとは、ね」
ミツル「っていうか、いまさら気づいといてなんだけど…違和感、丸出しなんですが…」
そこには、いかにもなヒゲを生やしていかにもな言語を操る、いかにもな男が立っていた。
ワビスケ「……その声……その話し方」
???「ボンジュール、ジャポネーゼNINJA。名前はワ・ビ・ス・ケー…だったね?」
ワビスケ「…ま……マスター……!!」
ミツル「えぇ!?じ、じゃあ…この人が…ルネジムリーダーの!?」
アダン「そう。ワタシがアダンです、少年よ」
ミツル「どういうことですか?…何故貴方がここに?」
アダン「…おや、わかりませんか?ワビスケー…ヴィヤン イスィー…」
少し嘘くさい発音だったが、ワビスケは彼の真意を違えなかった。
ワビスケ「……御意」
ミツル「……え?」
信じられないことに、
ワビスケが…アダンの側についていた。
ミツル「どういう…こと?」
アダン「簡単に説明すれば…アナタにとってこれは…裏切り…でしょうね」
ミツル「…う……そだ」
ワビスケ「…先ほども言ったはずだ。拙者ら忍びは…主人の望む使命を全うする。マスターが望めば、お主の敵にもなろう」
ミツル「な…んで?みんなは、仲間じゃないか!!どうしてそんな簡単に、裏切ることができるんだ!!」
アダン「ワタシが、エルの望むアルジョンを報酬として出す代わりに…ワタシの忠実な護衛となることを頼んだのです」
ミツルは彼の操る言語を直接理解はできなかったが、つまりはお金を積まれてアダンに従っているということだ、とはわかった。
ミツル「…貴方は…僕らの味方ですか?それとも…」
アダン「…エネミ」
その言葉が『敵』を示すということだけは、ミツルにも容易にして理解できた。
ワビスケ「…覚悟」
テッカニンが、ミツルに飛び掛ってきた。
午前5時13分、アクア団討伐軍(仮)メンバー・椿木ワビスケ…裏切。
- 66 :エンタ :2006/06/23(Fri) 19:39:30 ID:WbjMfPlk
- 第230話 戦う覚悟
ミツル「……っく!」
間一髪でテッカニンのツメを1歩引いてかわし、ミツルが冷や汗をたらす。
その間に、背後にテッカニンの姿が現れ、あしらうように飛び回る。
ミツル「どうして…ッ、キミと戦う必要があるんだ!」
ワビスケは答えない。テッカニンはスピードを上げ、ミツルはかわすどころか目で追うのがやっとだ。
アダン「…どうした、少年。はやくポケモンを出しなさい。そして、チカラを見せなさい」
ミツル「…やっぱり貴方、僕の能力やエスパータイプのポケモンを狙ってるんですね…彼女から聞きました」
アダン「ホウ。なら話は早いですね。ワタシの言おうとしていることは分かるでしょう?」
ミツル「ええ。わかりますけど、ね」
アダン「…従う気は無い、と」
ミツル「だから彼女をけしかけたんでしょう?」
予想を大きく外れた一撃が、彼の頬をかすった。
アダン「フフ、次は首ですかね?早く出しなさい」
ミツル「ゴメンですね。ラルトスは僕の大事な友達ですから」
アダン「そうですか…仕方ありませんね…」
ミツルは、実は鎌をかけていた。
ミツル(まだアダンはラルトスが進化したことを知らない…なら、あのわざで奇襲が可能なハズ)
ワビスケ「余所見をするな」
先ほどまでなんとかやり過ごしていた攻撃が、ミツルの右肩をかすめる。
ワビスケ「テッカニンは…お主が余所見をしていて勝てる相手ではない」
ミツル(チャンスを窺うんだ…アダンのボールのスイッチを破壊すれば、彼は戦えなくなる!)
かそくした体に乗せての重い一撃がミツルの目の前をかすめる。
ミツル(そのためには…一瞬でも隙を作らないと…)
ワビスケ「くッ、ちょこまかと…ッ。だが、なかなかでござるぞ。テッカニンのスピードについてこれるとはな…!」
言うが早いか、彼女は驚くべき速さで印を組む。
ワビスケ「丁子流忍法椿、抱月!」
途端に、テッカニンの体が淡い光に包まれた。
と思った矢先、テッカニンの体が…消えた。
ワビスケ「お主に見えるかな?『しのびポケモン』の…最速の動きが」
ミツル「……!!」
ミツルが息を呑んだ。これでは、隙を探るどころではない。やはり、こちらもポケモンを出すしかないのか…?
ミツル「…っつ!!」
思考を巡らせる間に、見えない何かがミツルのわき腹をかする。
ワビスケ「…覚悟はできてござるな?」
ミツル「やるしか…ないのか…?」
ついさっきまで仲間だと思っていた相手と『戦う』ことを選ぶ罪悪感。
その契約者であり現在最強のジムリーダーと『戦う』ことになるかもしれない恐怖。
そして、『戦う』ことそのものに対しての、良心の呵責。
だけど僕は、決めたはずだ。
サミットに、実行部に、協力すると。
誰にも負けないと。
心を、強く持つと。
ミツル「ザングース!!」
これで、アダンにキルリア以外のポケモンを持っていることがバレてしまった。
いや、以前の勝負のあとワビスケはおくりびやまを去った。そのときに再びアダンと契約しなおしたなら、既に知っているかも…。
とにかく、もうこれで後戻りはできない。
ミツル「僕は…ポケモンと一緒に強くなったんだ。負けないよ…負けるわけにはいかないんだ!!」
ワビスケ「来るがいい!!影に生きた者達の秘術、その身に刻めッ!!」
- 67 :エンタ :2006/06/23(Fri) 19:39:48 ID:WbjMfPlk
- 第231話 戦況変化
驚くべきスピードで、ミツルに迫り来る見えない攻撃を弾き飛ばすザングース。
ザングースの動体視力は並ではない。ミツルには見えないが、彼の目にはしっかりとテッカニンの動きが見えているのだ。
ミツル「センリさんのザングースだったから可能な、極限の集中力!もうテッカニンの速さは捉えた!!」
ワビスケ「おのれ…テッカニン!!ぎんいろのかぜ!!」
言う間にテッカニンが高速の羽根で風を起こし、その風よりも迅くザングースに詰め寄る。
ミツル「時間差……!ザングース!!かまいたち!!」
とっさに空を切り裂いて風の刃を作り出し、ぎんいろのかぜを相殺する。
が、かまいたちをもくぐり抜けたテッカニンが、ザングースに攻撃をくわえようとした、刹那。
ミツル「甘いよ」
ワビスケ「な……今のが、みきられ…た!?」
ザングースのツメが、深々とテッカニンの羽根に突き刺さっていた。
パチパチパチパチ…
アダン「お見事」
ミツル「…アダンさん…ひとつ、聞いてもいいですか?」
アダン「なんでしょう?」
ミツル「…貴方は何故、アクア団に協力しているのですか」
アダン「…フフ、それは答えかねます。自分の手で答えを拾ってきなさい」
ミツル「なら、質問を変えましょう。何故カイオーガを目覚めさせるのに協力しているんですか?」
アダン「…キミは実に面白い子です」
ミツル「はぐらかさないでください。貴方ほどの歳なら、幻海大災禍のことを知ってるはずです」
アダン「…虹の翼の継承者、とは薄々気づいてはいましたが…キミは幻海の贄の輪廻でしたか?」
ミツル「ニエのリンネ…?」
アダン「幻海大災禍の時にホウオウに身を捧げた人の生まれ変わりですか?という意味です」
ミツル「いえ…違います。僕は10歳ですから」
アダン「ならキミが止めるべきは、グラードンの復活のはず」
ミツル「違います。両方、です」
アダン「ははは。面白いことを言う。そんなことは英雄でもなければ不可能」
ミツル「いいえ、できます。もしできないのなら英雄を連れてくればいい」
アダン「あまりワタシを怒らせてはダメですよ、少年。おとぎ話と現実は違う」
ミツル「それに、現に40年前、英雄は現れたはずです」
一瞬、ほんの一瞬だったが、アダンの表情が揺らいだ。
アダン「…なぜそれを…ホウエンの人間どもは40年より以前の記憶を、完全に失ったはず。ホウオウの処置によって」
ミツル「計算違いですね、アダンさん。40年前の悲劇、幻星大災禍を生き残った人なら…その事実を知っています」
アダン「何…?」
ミツル「あるいは、貴方の言葉を借りれば…幻星の贄の輪廻として生まれた者なら」
アダン「……!勇者の息子…大空センリですか……」
ミツル「僕の中に、生まれる前の記憶が少しだけあるように、センリさんの中にも大災禍より以前の記憶がある」
アダン「なるほど…藍はホウオウの記憶をつかさどる色…そしてその能力で、視覚情報として記憶を取り込むことができるのか」
ミツル「そして、40年前の約束を人類が守っていくために…超古代ポケモンの復活を防がなければならないんです」
アダン「…すでに、手遅れですね。人類は、破壊しすぎた」
ミツル「いいえ。まだ遅くありません。桃花家や桐崎家の人たちは、まだ諦めていません。約束を忘れていません。まだ間に合う」
アダン「遅いのです。彼らがいくら頑張ろうと、約束の日はもう……、いや」
ミツル「……?」
アダン「おしゃべりが過ぎましたね。少年、キミは知りすぎてしまった。これ以上知ってはならない。ここで、消えなさい」
アダンが指をパチン、と鳴らすと、ワビスケがすばやくボールを抜き取った。
ワビスケ「ハブネークッ!!」
ミツル「!!ザングース…!!」
2匹の衝突を。
『かべのような何か』が、阻んだ。
見ると、天井に穴が空いていた。来た時は少しも気づかなかったが、恐らく最初から空いていたのであろう。
甲板部分に空いた大きな穴から…二人の人影がのぞいていた。
???「まったく、いつまで遊んでるつもりだ。本当の目的を、忘れてやしないか?」
ワビスケ「…お主は!」
ミツル「すすすすすスグルさん!!」
午前5時24分、天童寺スグル、天童寺リツコ、アクア団討伐軍(仮)に合流、増援。
- 68 :エンタ :2006/06/23(Fri) 19:42:50 ID:WbjMfPlk
- 第232話 アダンの正体
リツコ「さぁー、覚悟なさい!悪はこの天童寺リツコが、許しませんことよー!!」
スグル「姉さんは、先に進んでミクリさんと合流してて」
リツコ「えー、私も一緒に悪と戦いたいですのよ!」
スグル「そっちに悪の大ボスがいるから」
リツコ「待ってなさーい、悪のボス!!この閃光のリツコが、成敗しますわよぉぉぉ………!」
言う間にその人影は、水色の長い髪を翻してミツルの視界から消えた。おそらく、甲板の上を渡っていったのだろう。
スグル「さて、と…プクリン!」
スグルはプクリンをボールから出すと、宙に浮きながら穴から降りてきた。
ワビスケ「…忍術……?」
ミツル「違うよ。わずかだけどサイコキネシスの波動を感じる。たぶんエスパー系のわざなんじゃないかな」
アダン「…ほう、天童寺…ですか。少年、もしかするとキミの言っていた英雄は……」
ミツル「え…?」
アダン「……いや、何でもありません」
スグル「…アダン……貴様のようなヤツが…」
いつものスグルじゃない。その顔は怒りに満ちていた。
アダン「私が、何です」
スグル「とぼけるな!!貴様がアオギリの師であったことだ!!」
ミツル「っ…な……今、なんて……」
アダン「驚いた。もう25年も前のことです。なぜアナタがそれを?」
スグル「ミクリさんがルネジムから貴様の日記を発見した。以前から貴様の動きを不審がっていたそうだ」
アダンは余裕の表情で笑った。まるでこの状況を楽しんでいるかのようだ。
アダン「これは、弱りましたね。するとミクリは今、アオギリのもとへ?」
スグル「当然だ。予定が変わった。アオギリは、ミクリさんが倒す」
アダン「ほう。弟子同士の対決…ですか」
スグル「…そして貴様は、この僕が倒す」
ミツル「……!!スグルさん!無茶です!!あのミクリさんの師匠で、ホウエン最強と謳われるジムリーダーなんですよ!!」
スグル「ルネジムのリーダーに相応しいのは、アダン、貴様じゃない」
アダン「フフッ、ミクリですか。まあ、一時のささやかな幸福に浸るのもアリでしょう。どうせ我々人間は、いずれ滅ぶ」
スグル「そうだ。貴様は滅ぶ。貴様のような者は、ホウエンに必要ない!!」
仕方ない。ミツルがボールに手をかけた。
ミツル「チルチル!!しろいきり!!」
途端に視界が白くなった。
ミツルがその中で、キルリアをボールから出し…そして…
ミツル「くらえ…!」
きりが晴れた。そして状況を確認したアダンが、苦笑した。
アダン「トレビアン…見事な手際です、少年」
その腰のボールのスイッチを、松の葉のような形をしたマジカルリーフが、深々と貫いていた。
アダン「ワビスケー、ヴィヤン イスィー」
ワビスケ「……!しかし、まだ決着は……」
アダン「今は退きましょう。なかなか腕のある相手です」
ワビスケ「く…承知……いたした」
アダン「オールヴォワー、お二方」
一跳びでアダンの傍らに着地すると、アダンが指をパチンと鳴らして後ろの巨大なプールのような排水施設からみずを呼び寄せ…
スグル「…今は去るか。それもいいだろう。だが、いつか必ず…」
渦巻くみずに包まれて消えたアダンに向かって、高らかに言い放つ。
スグル「必ず、人の道を外れた貴様を…この手で倒してみせるからな!!」
言い終わると、すべての『かべ』が解除され、スグルは床に膝をついた。
ミツル「スグルさん!!」
スグル「や、やあ…助かったよ…さっきのマジカルリーフ…君がいなかったら、僕は負けてしまったかもしれないな」
ミツル「ずっと能力を発動させてたせいで…リバースが…?」
スグル「コイツを飲めば、もう平気だから…」
アキに渡された小瓶を、ぐいっと一気飲みする。
ミツル「…アオギリにカイオーガ復活の方法を吹き込んだのは、あのアダンだったんですか…」
スグル「その通り。ヤツはホウエンを滅ぼすてだすけをしているんだ…くぅ〜、本当に目が霞む」
突然、何かを発見したようにミツルは立ち上がった。
ミツル「スグルさん…戦いはどうやら…これかららしいです」
先ほどアダンが脱出したと思われるプールから、ホエルコの群れが浮上してきた。
???「ミナモ湾岸ホエルコ部隊、しゅつどーっ!!」
中央のホエルオーの上に、小柄な少女が乗っている。服装は…青装束の、海賊服。…アクア団の、団服だ。
???「うてーっ!!」
ホエルコがしおふき穴をいっせいに二人に向ける。
スグル「くっ!ミツル!!」
スグルがミツルの袖を引っ張り、そばに引きずり寄せた。そしてプクリンが、球状にひかりのかべを展開する。
完全に防がれているはずなのに、ものすごい衝撃が二人を襲った。
???「充填(チャージ)っ!」
スグル「くっ…誰だ、お前は!!」
???「…ふぅ。人のアジトに乗り込んでおいて、その態度は無いんじゃないですか?」
部屋の入り口から、もうひとつの声が聞こえた。
???「あ!イルカさまぁ!!」
あきれたように目を閉じ、諭すようにイルカと呼ばれた女は言った。
イルカ「弁えなさい、イサナ。今は戦いのときですよ」
イサナ「わっかりましたぁ!あたし、イルカさまの言うことなら何でも聞きまぁす!!」
スグル「声の数は二人……か」
イルカ「さて、お二人さん。不法侵入は重罪ですよ?」
スグル「…ミツル、わかってるな?」
ミツル「はい」
ボールの開く音が、広い部屋にはじけてこだました。
午前5時29分、天童寺スグル&芦田ミツルVS嵯峨野イルカ&有間イサナ、戦闘開始。
- 69 :エンタ :2006/06/23(Fri) 19:43:13 ID:WbjMfPlk
- ちょこっと休憩コーナー 〜アダンの駆使する謎の言葉の解説〜
『トレビアン』…tresbien/素晴らしい
『ボンジュール』…Bonjour/おはよう(5時だし)
『ジャポネーゼNINJA』…JaponaisNINJA/極東の「ニンジャ」
『ヴィヤン イスィー』…Vien ici/こちらへ来なさい
『エル』…elle/彼女
『アルジョン』…argent/お金
『エネミ』…ennemi/敵
『オールヴォワー』…Au revouir/さようなら
- 70 :エンタ :2006/06/28(Wed) 19:44:22 ID:cJQMGeOs
- 第233話 最後の岐路
センリ「この部屋には7人…か」
コンタクトを元に戻しながら、センリが呟いた。
ヒサヤ「まったく、冷や汗モンだな…これだけ熱いのに背筋だけは寒い」
センリ「また道が二つに分かれているな…どうする」
ヒサヤ「ッとその前に…なぁ、センリさん」
センリ「何だ?」
ヒサヤ「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか?」
メガネの奥から、ギラついた瞳がセンリを見据えた。
センリ「…何のことだ」
センリは微動だにせず、その目を見つめ返している。
ヒサヤ「ああ、誤解しないでくれよ。あんたの事を敵だと思ったとか、そーゆーありがちな猜疑心とかじゃないから」
途端にヘラッと笑って、軽く話し始める。
ヒサヤ「ただあんたとマツブサの過去とか…どーしても気になっちゃってさ」
センリ「…お前に言わなきゃならんのか?」
ヒサヤ「えー、いいじゃん別に。減るもんじゃないし」
センリ「…いや、いずれにせよ知ることになるのか。全てが集う未来で」
ヒサヤ「そうだよそうだよ」
一呼吸おいて、センリが口を開いた。
センリ「…なら、今言う必要性はあるまい。オレとマツブサは昔知り合いだった、それでいいだろう」
ヒサヤ「えぇ!?何で?…って、ん?」
センリ「どうかしたか」
ヒサヤ「いや…(今…『オレ』って言ってたような…気のせいか?)」
センリ「それで、分岐路だが」
ヒサヤ「あ〜はいはい、そーですね」
お目当ての話が聞けないので、半ばやけくそ気味だ。
センリ「私はもちろん、あちらの大きな道を行くつもりだが、お前はどうする?
あの連中と戦うか、それとも二手に分かれてそちらの道を進むか」
ヒサヤ「こんな暑いトコでじっとしてたくないしなぁ。なんかこの辺のクーラーも限界突破してるみたいだし」
そう。この辺は冷房装置が作動してるにはしてるのだが、火口に近づくにつれてそんなものは無意味になってくるのだ。
ヒサヤ「というわけで、僕は進むとする」
センリ「決まりだな。いいか、冷房を破壊した瞬間ここは地獄になる。そこにたむろしてる連中はみんな熱中症でぶっ倒れるだろう」
ヒサヤ「うげ…冗談に聞こえないのが辛い…」
センリ「それでもしぶとく追ってくる場合は、容赦なく迎撃しろ。いいな」
ヒサヤ「サー、イエッサー!!」
センリが音もなくケッキングをボールから出す。この技術にはヒサヤも驚きだ。
センリ「ヒサヤ。お前に言っておくことがある」
ヒサヤ「ん?平気へいき、死にゃしないさ。多分」
冗談のように笑い飛ばしたが、何故か最後の『多分』にだけ重みがあった…。
センリ「そうじゃない。いいか、よく聞け。この先お前は、大きな宿命の戦いに巻き込まれるかもしれない」
ヒサヤ「は?」
センリ「そんなとき、お前のそばには必ず、支えになってくれる人がいるはずだ。その人を大事にするんだぞ」
ヒサヤ「…何のこっちゃ?」
センリ「…ではいくぞ」
ヒサヤがコクリ、と頷くのと、ヒサヤがゴクリ、とつばを飲むのは同時だった。
センリ「ケッキング!!はかいこうせんッ!!」
ドッッグォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!
壮絶な破壊音と共に、地獄が訪れた。
午前4時38分、大空センリ、堀岡ヒサヤ、別行動開始。
センリ(この眼に、今なら感謝できる…待っていろ、マツブサッ!!)
コンタクトはいつの間にか床に放り出されていた。
重すぎる宿命を背負った瞳が、今、運命の宿敵を捉えた。
- 71 :エンタ :2006/06/28(Wed) 19:45:13 ID:cJQMGeOs
- 第234話 決闘・其の三
マグマ団員H「ふ、ふざけやがって!!たたみ掛けろッ!!」
マグマ団員G「いけェ、コータス!!」
ユウキは目を閉じ…チーは元の形態へと戻っていた。
ユウキ「チー、ちきゅうなげ!!コータスを、ゴルバットにぶつけるんだ!!」
敵の姿は見えていないはず。つまり、目以外の全ての器官を全開にして、『見ている』のだ。
マグマ団員H「こッ、こいつ人間じゃねぇ……っひぃぃぃぃぃッ!!」
マグマ団員I「うろたえるなッ!!俺たちは…崇高なる大地の復興者となるマツブサ様の部下だ!!こんなことで…ッ」
ユウキ「チー、前方6m58cm地点にソーラービーム弾3発!後ろのズバットはメガトンキックで墜とせ!!」
言い終わらないうちに指示は実行された。瞬く間に敵の数が減っていき…残りはわずか5人。
先ほどの、マツブサ至高宣言を高らかに言い放った男のみ、いまだ戦意を維持していた。
マグマ団員I「お前たちには、マグマ団員であることの誇りが無いのか!尻尾を巻いて逃げ出して…恥を知れ!!」
全てのボールを失って、アジトに戻っていく団員たちを、彼が大声で怒鳴る。
その団員たちも、落石やじわれに道を阻まれて、帰還することができないのだが。
マグマ団員I「俺はたとえ一人でもこの少年と戦ってみせる!!」
マグマ団員G「馬鹿、分かってないのはお前のほうだ!そのガキの目的は時間稼ぎなんだよッ!!」
マグマ団員I「ならば、臆病者だけが戻ればいい。売られた喧嘩から逃げ出すような鶏に、マツブサ様の部下は務まらないがな!!」
どうやらこの男は、盲目的にマツブサを崇拝しきっているようだ。
マグマ団員H「そうかい。どうやら俺たちとは宗派が違うらしいな、この盲教徒!あばよ!いつか身を滅ぼすぜ!!」
マグマ団員I「ご忠告ありがたく受け取っておこう。それで用は済んだはずだ。さっさと去ぬがいい、腰抜けども!!」
ユウキ「ふぃ〜、こっちもなかなかありがたかったぜ。無駄話してくれたおかげで、やっと眼が落ち着いた」
確かに、薬を飲んでからすでに10分が経過している。
マグマ団員I「残ったのはどうやら俺だけのようだ。正真正銘の決闘というわけだな」
1対1では、ポケモンの数が多いほうが圧倒的に有利。そして、チーの疲労はほぼ限界に達していた。
だが。
ユウキ「オレも、負けるわけにいかないんだよ。誓ったからな」
マグマ団員I「そうか。…マツブサ様がお前に興味を示された理由も、分からないでもないかもしれないな」
ユウキ「は?何のこと?」
予想だにしなかった言葉が彼の口から飛び出したので、思わず間抜けな声を出してしまった。
マグマ団員I「お前がアジトに侵入したあの時、マツブサ様が言った言葉は冗談ではなかったといっているんだ」
ユウキの頭におぼろげながら数日前の記憶が蘇った。部下にするのも悪くないとか何とか。
マグマ団員I「そして、お前はマツブサ様の期待を裏切った。まあ、当然なのだろうな、お前ら勇者にとっては」
ユウキ「勇者?」
マグマ団員I「お前たちが正義の勇者であるとするなら、マツブサ様は悪の魔王なのだろう。
正義はいつの世も、『希望』を救い、『野望』を滅ぼしてきた。なぜなら、それが『正しい』からだ」
ユウキ「…………」
マグマ団員I「だが、いずれ滅びる運命にあれど、彼ら悪は、自らが『正しい』と思えることを貫いた。
お前たちは、バカバカしいと思うかもしれない…だが、本物の悪役は、決して自分をバカバカしいなどと思わない」
ユウキは、だんだんと彼の理論に引き込まれていくのを感じ取っていた。
マグマ団員I「だがみんなは口をそろえてこう言う、『正しいのは正義だ』と。
大いに結構。正義とは正しいから正義なんだ。何よりも正しいことに意義があるからな」
ユウキ「…いったい、何が言いたいんだ?時間稼ぎが目的か?」
マグマ団員I「いや…ただ、世の中にはいろいろな考えがあるということを知って欲しかっただけだ」
ユウキ「…不思議なヤツだな」
マグマ団員I「…長くなったが、これでもう言い残すことは無い。……」
そう言うと彼は、無言で後ろを振り返り、マントを脱ぎ捨てた。
そのマントがちょうどユウキに覆いかぶさって、一瞬前が見えなくなった。
マグマ団員I「…いいか。お前はお前が正しいと思うことをするんだ。それがマツブサ様へのせめてもの敬意と知れ……あとは、頼んだ」
その『一瞬』に、物凄い衝撃がユウキを襲った。
ユウキ「…っぐ…な、今のは……?」
マントをかなぐり捨て、ユウキは回復したばかりの目で前を見た。
先ほどまで彼の立っていた場所には、黒い炭のような印がじめんに焼きつき…
かわりに、フードを目深にかぶって顔を隠した、明らかに他と異なる格好をしたマグマ団員が数メートル先に立っていた。
午前4時52分、大空ユウキ、100人抜き達成。そして、新たな敵との遭遇…。
- 72 :エンタ :2006/06/28(Wed) 19:45:36 ID:cJQMGeOs
- 第235話 胸騒ぎと憤り
ミナヅキ「はぁっ、はぁ……ふぅ、ここまでくれば大丈夫…かな?」
誰にも聞こえないほど小さな声で、ミナヅキが呟いた。
彼女はセンリたちと別れてからほぼ2時間、曲がりくねった通路を逃げ回っていた。
それだけでも、このアジトの広さが窺い知れるというものだ。なにせ、山の内部に作られているのだから。
ミナヅキ「……あれっ?ここって……」
彼女がいた場所は、先ほどマグマ団員を気絶させて開いた入り口の扉がある大部屋だった。
ミナヅキ「めぐりめぐって、戻ってきちゃったってこと…?」
多少骨折り損のくたびれもうけ的な状況に、ため息をつきながら少し遠くの扉を眺めていると…
突然、鼓動が高鳴った。
ユウキさんが危ない。彼女は直感的に悟った。
ミナヅキ「…ココちゃん、ムドーくん、みんな……みんなも感じるよね?この胸騒ぎ…」
ボールの中のユウキの仲間たちが、主人のもとへ1秒でも早く!と言いたいかのようにあばれはじめた。
ミナヅキ「行こう、みんな!……待っててください、ユウキさん…!!えーいっ!!」
少しだけ音量の上がった声でそう言い放つと、彼女は段差を飛び降りた。
ユウキ「…参ったな……さっきのアイツで100人目かと思ってたんだけど」
無理に平静を装おうとしているのが、手にとるように分かる。
目深にかぶったフードだけではなく、足が見えなくなる程長いマントの肩の部分にも黒光りするツノをつけたその団員が、口を開いた。
???「…見ての通り、あの男は消し炭になった。今は私が100人目だ」
ユウキの脳裏に、出動時のホタルの言葉が蘇る。彼はマグマ団の制服のことを、『耐火ユニフォーム』と言っていた。
つまり、さっきの団員は……。
???「お前も一緒に燃やしてやろうと思ったが、そのマントに守られたようだな。私のほのおは燃え移らなければ意味は無い」
ユウキ「……も…」
ユウキの心に、火山のように怒りが溢れてきた。
ユウキ「よくも、アイツをッ!!」
???「…ククッ、名前も知らぬ赤の他人に、そこまで肩入れするか?面白いものだな」
ユウキ「ふざけんな!!命を奪っておいて…よくも平気で笑ったり……!!」
???「お前が怒れば怒るほど、私にはそれが滑稽に思えてくる。どうせ死ぬのに、無駄な感情を…憐れみを通り越して滑稽だ」
信じられないことを、平気で言ってのける。
ユウキ「…お前は、人間じゃない……」
???「同種であることの否定か?それは逃避でしかない。お前も私と同じく奪うことを本質とする『人間』と言う名の種族」
この言葉を聞いてユウキは一瞬、祖父の時代のことを思い浮かべたが、目の前の状況を確認してすぐにやめた。
ユウキ「…お前は、“裏”なのか?だから人を殺すのもそれを笑うのも、平気だっていうのか?」
???「私は“裏”ではない。表にも名は知れているからな。お前も一度だけ聞いただろう、レッカという名を」
ユウキ「レッカ……?あ…」
マツブサ『大地の巫女は、そうだな…レッカの研究室にでも案内してやれ。
あそこは逃げ場どころか、ピカチュウ一匹抜け出す隙もないからな』
ユウキ「あの幹部のオッサンいわく、死んでもお世話になりたくないピカチュウ監禁野郎か…」
レッカ「改めて自己紹介と行こう。“裏”を束ねる幹部、狐火のレッカだ。表ではお前の言うとおり監禁野郎で通っている」
口だけしか見えないフードの下で、レッカが妖しく笑った。
ユウキ「で…目的を聞こう。オレを足止めすることか?それとも、オレを殺すことか?」
レッカ「言うまでも無く後者だ」
ユウキ「…選択を誤ったな。足止め程度ならお前にもできたかもしれないけど」
その顔には、いつのまにか不気味な笑みが浮かんでいた。
ユウキ「殺すとなると役不足だ」
レッカ「…これは弱った。さっさとお前を始末して、先ほど火口に舞い降りた光の正体を探りたかったのだが…」
場にはいつの間にかキュウコンが放たれていた。
レッカ「殺せないなら先ほどの男のように、消すしかあるまい…」
ユウキが再び剣を執った。
午前5時06分、大空ユウキVS狐火のレッカ、戦闘開始。
- 73 :エンタ :2006/06/29(Thu) 21:22:40 ID:ajO1zefw
- 第236話 癒えた傷、癒えぬ傷
ユウキとレッカが対峙するしばらく前、火口には静寂が流れていた。
イサリビがさまざまな刺客をファイヤーに放つも、そのことごとくが不死鳥の威光によって阻止されていた。
憤怒の形相を浮かべながら焦るイサリビの姿には、先ほどの余裕は微塵も残っていなかった。
やがて、ファイヤーが威厳ある鳴き声を夜明けの空にとどろかせ、火口から飛び立った。しかし、肝心のホタルが見当たらない。
イサリビ「くそッ!くそがァッ!!どこに消えた、ゴミ虫どもォッ!!!さっさと出てきやがれェェッ!!!」
ホタル「…う、っく………ッ」
ホタルが目を覚ましたのは、空高く飛んでいるファイヤーの背中の上だった。
ホタル「って、どわああああああぁぁぁぁぁッッ!!?」
自分の声に驚いてあたりを見渡し、状況をひとつずつ確認する。
ホタル「…俺のどくが無くなって、ウスバカがいて、ファイヤーの背中に乗ってて…俺の手にはこうえんのはね?」
いまや燃え盛るように輝いているこうえんのはねは、紛れも無くファイヤーの羽根であることを顕していた。
ホタル「どくを浄化してくれたのか。ありがとよ、ファイヤー」
ファイヤーのほのおには浄化作用がある。ファイヤー自身が傷ついたときも、ほのおを操り自らを燃やすことで傷を癒すのだ。
ウスバ「…っぐ……ぅぁ……」
ホタル「ウスバ!気づいたか」
ウスバ「…こ……こは……」
ホタル「安心しろ。お前の体内のどくは、全部ファイヤーが消してくれたぜ」
ホタルは、自分が知る限りのことをウスバに話して聞かせた。イサリビのことや、負けそうなその時ファイヤーが現れたこと…。
ウスバ「…そう、か。どうやらお前の話では、どくは消えたらしいな。どくは……だが」
ホタル「何?……ッ、まさか…?」
ウスバ「…そうだ。どくは浄化されたものの、キバによって穿たれた傷…は、癒えてはいな…い。
お前の傷は浅かっ…たようだが、私はお前ほど体が…がん、じょうではない…もしかすると、すでに手遅れかもしれない」
先ほどホタルの話を聞いている最中も、ウスバはわずかにだが苦しそうに顔をゆがめていた。
ホタル「う、嘘だろ…それじゃ、もう…」
ファイヤーも申し訳なさそうな声でクェーッと鳴いた。
ウスバ「ファイヤー、お前を責める、つもりは無…い。むしろ、感謝している…。ホタルは、全快したの…だから」
ホタル「…何か…打つ手は無いのか!?もう手遅れって…ふざけんなよ!!せっかく…」
ウスバ「せっかく、マツブサ様の真…意に気づき、それを止める決意をしたのに…か?」
見れば、ウスバは苦しそうにだが、今までにない笑顔で笑っていた。
ウスバ「私は後悔はしていな…い。何故なら、全てを任せられる男が、目の前にいる…からだ」
ホタル「…ウスバ……」
ウスバ「そんな顔を…す、るな。マツブサさ…まの事は、お前に任せ…る。私はここ、で身を引…こう」
ファイヤーが、くちばしで自分の首を必死でつついていた。
ホタル「そうだ、生き血!ファイヤーの生き血を飲めば…!!」
ウスバ「ホタル、その伝説なら私も知っ…ている。永遠に生きるか、ここで死ぬか…。私の選択…は、言う、までもない…だろう?」
ホタル「そんな…そんなのってアリかよ!!ふざけんな!!」
ウスバ「…ホタル。さっきも言った…が、お前は私を裏…切らないでくれれば、それでい…い。
お前が私の信じる、に足る…男でいてくれ…れば、私は安心し、て……死んでいける」
ホタル「…死ぬなんて…言うんじゃねえよ…ッ、さっきも言ったろうが!!死ななきゃいけねえヤツなんて、いねぇんだ!!」
ウスバ「だが…救えぬ命…があるというこ、とは…お前も知っ…ている、だろう?贄がまさ…にそれだ」
ホタルは、幼い頃目の前で贄になった少女を思い出していた。そして、その時初めてウスバに出会ったことも。
ウスバ「お前の覚…悟は、変わっていないのだ…ろう?お前の目的は、何だ…?
私が生まれ、私が愛し、私が死んでいったホウエンを、守りぬくことではなかっ…たのか?」
ホタル「俺は……俺は」
ウスバ「悲しみの連鎖を、断ち切るには…お前が全…ての悲しみを、ここに置いていくほか…ない。
そうすることで全てが救われるなら…この命、喜んで差し出…そう。私の命には…それだけの価値があると自負…している」
ホタル「命に価値なんて関係ねぇよ!!天秤にかけるモンでもねぇ!!」
ウスバ「だが…お前の目の前、で散った贄の少女は…多くの者を救…った。
たとえそれ…が私たちの家族、でない…にしても…私たちが戦わない理由が、どこにある…?」
ホタル「だったら!お前も一緒に、戦うんだ…!!」
ウスバ「私は、贄となろう。私の死こそが平和の礎となるのなら」
その言葉だけが、はっきりと聞こえた。それから、長い静寂が訪れた。
ホタル「お…おい!!何考えてんだよ、ウスバ!死ぬな…!!おいッ!!!」
しかし、返事を返してくれる者は、今、この世を去った。
ホタル「こんの…ッ……ウスバカやろォォォォォォォッッッ!!!!」
滴った涙が、ファイヤーの体に触れて蒸発した。
ホタル「…約束するぜウスバ…俺はお前の気持ちを裏切らない…決してお前の死を無駄にはしない…!
必ず、この手で……全てを守り抜き、全てを終わらせてみせるからな…!!」
突然、ウスバの手の中で、何かがきらめいた。その手には、ほのおのいしが握られていた。
ホタル「炎のようにたぎる熱い意思…お前の形見として、もらっとくぜ」
ウスバは、しっかりと自分の意思をホタルに預けた。ひとりの戦士が、ほのおの中に散っていった。
午前4時56分、マグマ団幹部・日代ウスバ……戦死。
- 74 :エンタ :2006/06/29(Thu) 21:23:00 ID:ajO1zefw
- 第237話 狐火
ユウキ「…く……ッ!!」
レッカ「どうした?よけるので精一杯か?」
完全に、甘く見ていた。
戦いはユウキが劣勢だった。レッカはスペックに目覚めたトレーナーだったのである。
レッカ「緑の炎は取り囲む炎。お前に逃げ場はない」
確かに、ユウキの周囲10mほどの範囲に緑色の不気味なほのおがドーム状の囲いを形成している。
先ほど脱出を試みて、左手にやけどを負ったばかりだ。
レッカ「次だ、菫の炎は這い回る炎。せいぜい籠の中で逃げ回るがいい!!」
ドームの外にいるレッカのキュウコンの、右から2番目のシッポが菫色に輝き、口から同じ色のほのおを吐き出した。
ほのおはじめんに落ち、ヘビのようにうねりながらユウキの足元に襲い掛かってきた。
ユウキ「く…ッ」
跳んで避けることは可能だが、それは空中で無防備になることを意味する。ユウキは逃げ回るしかなかった。
レッカ「無様だな。100人抜きの偉業を成し遂げた者が。さっきの威勢はどうした?」
もはやドーム内の菫のほのおは3塊となっていた。何とかして消せないものか。
とっさにユウキはリュックからシャワーズじょうろを取り出した。蓋がついているので、みずを入れたまま持ち運べる。
チーの口にだいぶ前のちょっと匂うみずを流し込むと、一気に噴射させた。
地を這うほのおは掻き消え、ドームに穴が空いた。とっさにユウキはその穴からドームの外に出た。
レッカ「今のはなかなかの奇策だった。しかし、みずはまだ残っているのか?」
図星だった。今ので完全にみず切れだ。
レッカ「ククッ、キュウコンのほのおは、お前の破った2種をのぞいても、まだあと7種もあるぞ?さぁ、どうする?」
完全に弄ばれている。だが、レッカの真の強さはこの能力ではない。
レッカのこの余裕は、人を殺す覚悟にあるのだ。
レッカ「橙の炎は燃え盛る炎。全てを飲み込み燃え広がる、本来のほのおとしての姿だ」
キュウコンが左から3番目のシッポを橙色に輝かせ、そこら中にほのおを撒き散らした。
ユウキ「…チー!!たくわえる!!」
大量発射されたうちの1塊のほのおを、チーが口に含んだ。
レッカ「愚かしいな。そのほのおがキュウコンに効くとでも思うのか?」
しかし、ユウキはチーをじめんに突き刺していた。この構えは奥義・土爆の剣舞だ。が…
ユウキ「これなら効くだろ!一閃流オレ式奥義、崩獄の剣舞ッ!!」
いわくだきにより出来たじわれからマグマが発生し、キュウコンだけを飲み込んだ。
レッカ「…青の炎は守り抜く炎。そんなものは通用しない」
どうやら、ひかりのかべと同じような効果を持つ守りのほのおのようだ。
レッカ「…もう作戦切れか?」
ユウキ「くっそ…ッ!一閃流オレ式奥義・雲断の剣舞ッ!!」
風の圧力なら、ほのおで防げはしないはず。ユウキは思いっきりたつまきを振り下ろした。
レッカ「…大振りで、仕留められると思ったか?」
何故か、背後から声がした。
レッカ「申し忘れた。藍の炎は繋ぎ合す炎」
振り返ってみると、そこにはトンネルのように深く暗い色のほのおと、レッカ、キュウコンがいた。
ユウキ「ほのおのトンネル…!?それを、通ってきたのか!?」
レッカ「ご明察だ。そろそろ本当に作戦切れなんじゃないのか?」
ユウキ「…ッ!!」
返事もくれず、ユウキはキュウコンに向かってソーラービーム弾を撃った。しかし、どんなに撃っても青い炎に阻まれてしまう。
レッカ「無駄だ。キュウコンの反応速度をなめるな」
ユウキ「…かかったな!」
突然、チーのツノ…刀身が、太陽のように輝いた。
レッカ「な……!?」
ユウキ「青いほのおはどうやら時間切れだ!これでもくらえッ!!」
ひかりのかべと同じ効果…つまり、スグルのような能力でもない限り、そのうち消えるということだ。
ユウキ「一閃流オレ式奥義……!灼陽のッ…剣舞!!!」
口まで出たソーラービームを再度のみこみ、太陽の剣となったチーが、キュウコンの体を撃ち貫いた。
レッカ「……ッ!!」
吹っ飛んだキュウコンが激しくバウンドし、ダウンする頃には、ユウキの体力は限界だった。
しかし、ここで薬を飲むわけにもいかない。レッカに対しては、一瞬の隙も見せられない…。
レッカ「クククク……ッ、ハハハハハハハッ!!面白い!!…続きといこう。殺し合いの、な…ククッ」
信じられないことに、レッカの前にもう一匹のキュウコンが立っていた。
レッカ「何をポッポが豆鉄砲食らったような顔をしている?まさかとは思うが…、
『九恨(エイシェント・フォックス)』を持つ私の手持ちが、キュウコン一匹だと思ったのか?」
万事休すだ。ユウキはそう思った。しかし、諦めるわけにはいかない…。
と、その時。
???「ユウキさぁぁ―――んっ!!!」
レッカ「な……、っぐ!?」
突然、じめんから物凄い量の植物が伸びて、レッカを天高く持ち上げた。
ユウキ「カイスのツタだ…!」
さきほど蒔きちらしたカイスの種が急せいちょうしたのだ。
そして、これだけの植物を一度に『せいちょう』させられるのは……
ミナヅキ「ユウキさん!今いきますっ!!」
ユウキ「ミナヅキ…!!」
午前5時23分、桃花ミナヅキ、大空ユウキと合流。
- 75 :エンタ :2006/06/29(Thu) 21:23:29 ID:ajO1zefw
- 第238話 堀岡ヒサヤの憂鬱
ヒサヤ「…って……行き止まりかよ……」
先ほど分かれた道から小1時間と経たぬうちに、行き止まりの部屋に出てしまった。
ヒサヤ「この部屋…メカがいっぱいあるな…ドリルがついてるって事は…」
この先を、ヒサヤは声に出さないようにした。ここであなをほるモードが暴走してしまっては大変だ。
別に多重人格なワケではないので、何とか自制は出来るのだが…声という形で脳がその単語を認識してしまうと、ヤバい事になる。
ヒサヤ「ま、行き止まりにいたってしょーがないし、戻るとすっかな…」
ヒサヤがくるりと向きを変えた時。
ズドドドドドドドド―――――――――ン……
あまりに見事なタイミングで、大量の落石がもと来た道を塞いでしまった。
ヒサヤ「ってお―――――い!?!?」
思わずツッコミたくなるほどの状況だった。
ヒサヤ「罠か!?誰かこの部屋にいるのか!!」
???「フッフッフッ…ご名答」
ヒサヤ「いるし!!」
掘削機と思われるタンクのハッチが開いて、赤装束の男が現れた。
???「飛んで火に入る夏の虫とはこのこと!!不法侵入の罪を、たっぷりと償ってもらうぜ!!みんな!!」
ヒサヤ「みんなぁ!?」
ガコガコッ キュルルルルルル… ギュイイイイイイイイイイン
ヒサヤ「だぁぁぁあ!?ドリル回すなぁッ!!」
???「マグマ団第3小隊のみんな!!この小隊長・沢村ヤイトに続けぇ!!」
ヒサヤ「何ィ!?なんだよそれ!!マグマ団に部隊なんてあったのか!?」
ヤイト「無論!いまオレが作ったぜ!!」
ヒサヤ「黙れよお前!?」
ヤイト「ゴチャゴチャ言っている余裕はないぞ!!みんな、かかれッ!!」
ドリルを高速回転させながら、8〜9台の掘削用タンクが突進してきた。
ヒサヤ「んな―――――――――――――ッ!?!?」
そして、一気にじめんの下に埋もれた……。
ヤイト「な!?何が起こった!?」
ヒサヤ「フッフッフ…かかったな、戦車軍団!!」
ヤイト「何!?」
ヒサヤ「実は、お前さんと話してる間に僕の永遠の相棒であるディグズに落としあなをほらせていたのだ!!って…」
言って、しまったと思った。
ヒサヤ「落とし…あなを、ほる…ウフ…ウフフ……ウフフフフフフフフフフ」
『ヤバい事』に、なってしまった。
突然、かべが大きな音を立てて崩れ落ち…奥からもう1台の戦車が…と思いきや、
そこにいたのは戦車ではなく…巨大なポケモンと人間、だった。
???「…そこにいるのは、侵入者だな?」
ヤイト「えっ?そ、そうだけど…あんたは……」
???「リザードン…焼け」
ボッゴォォォオオオオオオオオン!!!!
物凄い爆音を上げて、リザードンの火炎が炸裂した。
ヒサヤ「…な……な……!?」
ヒサヤが正気に戻った…。
ヤイト「うひゃぁぁぁぁ……お、おいこらっ!!危ねえじゃねーか!!味方の事も考えろよ!?」
穴に落ちていたおかげでヤイトたちは無傷だったが…そのことを計算していたようにも見えない。
???「…俺の異名の意味は…『小さいことにこだわらない』…だ、そうだ」
ヒサヤ「小さいことに…?えーっと…『幕天席地』…か?」
???「…そう。『爆天赤薙』……爆炎使いの、好摩ヒダネだ」
午前5時36分、堀岡ヒサヤ、“裏”が刺客…『爆天赤薙』好摩ヒダネと遭遇。
- 76 :エンタ :2006/06/29(Thu) 21:23:49 ID:ajO1zefw
- 第239話 天才ふたりのタッグバトル
イサナ「はっしゃぁ!!」
重さにして数tはあろうかという量のみずが、ホエルコのしおふき穴から一気に噴出される。
ミツル「…っく!!」
ミツルがザングースの腕につかまってこうそくいどうし、辛うじて避ける。
もはやこれはみずタイプの攻撃ではなく、巨大な圧力だ。タイプ相性など関係ない。
だが、この一撃を放つとチャージに時間がかかるため、大きな隙が出来る。
その隙にミツルが間合いを詰めようとするも、イルカの遠隔攻撃に阻まれ、なかなか近づけない…。
スグル「させるか!!ハクリュー!!」
スグルにドラゴン使いの素養はないものの、彼のハクリューはしんそくとまではいかないが超こうそくいどうなら出来る。
イルカのサメハダーが発射したハイドロポンプに追いつき、りゅうのいぶきで蒸発させる。
だが、その間にスグルに隙が出来てしまう。
ハクリューはサメハダーのハイドロポンプを急所にくらって倒れた。
スグル「くそ……すまない、ハクリュー。戻ってくれ」
だが、この短時間でイルカの戦術が読めてきたのは、なかなかの収穫だったはずだ。
彼女は、相手の隙を突いて攻撃するのが、驚くほど上手い。ならば、隙を作らなければいい。そのためには…
ミツル「スグルさん!すみません、こっちは平気です!ここからはお互いの相手に集中しましょう!!」
スグル「よしきた!その言葉を待ってたよ!!」
隙を作らないためには、仲間を信用すればいいだけだ。
ミツル「ザングース、戻ってて。キルリア!!」
イサナ「チャージ完了ぉーっ!!」
ミツルが全神経を集中する。
イサナ「うてーっ!!」
ミツル「…今だ!」
フッ。
ミツルとキルリアの姿が消えた。
イサナ「え?えぇ??どこどこぉ!?」
ミツル「……ここです」
イサナの背後に、ミツルとキルリアが浮かんでいた。テレポートとねんりきの瞬間コンビネーションだ。
ミツル「キルリア!10まんボルト!!」
でんきの塊はホエルコではなくプールの上に落ち、全部のホエルコをしびれさせた。
イサナだけは、キルリアのねんりきで持ち上げられていたのだが。
ミツル「人間に10万Vは、ちょっとマズイですしね…」
イサナ「フ、フ、フンだ!!ホエルコちゃんたちの体力を、甘く見ないでよねーだ!!みんなー!接近戦用作戦に変更よ!」
今度はホエルコ1匹1匹が、時間差でみずでっぽうを発射してきた。
ミツル「くっ…これは…よっ、ほっ…ねんりきの増幅が…っ、必要です、ねっと」
イサナ「むっきー!!ちょこまかとーっ!!」
キルリアのツノに、サイコパワーが集中する。
イサナ「捉えた!!いっけーっ、あったれーっ!!!」
ヴ…ンッ……。
イサナ「…?な、な、な、何よこれぇーっ!?」
突然、周囲の景色が変わったのだ。宇宙空間のような、どこまでも果てしなく続いているかのような空間に。
イサナ「イルカさまは?どこ行ったの??ねぇっ、何なのよコレー!?さいみんじゅつ!?」
ミツル「いーえ。キルリアの異能力『神通空間』ですよ。空間を操ることに長けているキルリアの特殊能力です。
キルリアのツノで限界まで増幅されたサイコパワーの解放の際、空間がねじれて別の景色が見えるんです」
イサナ「ってことはぁ…いま、キルリアのねんりきが最強モードってこと…?」
ミツル「そうなります」
イサナ「いやあぁぁぁ!?ヤメテーっ!?」
ミツル「ご容赦ください。貴女は敵なので、手を抜くわけにもいきません…ッ!!」
言うと、空間が完全に『ねじれ』て、イサナの意識が遠のいていった。
プールから打ち上げられたホエルコの下敷きになって、有間イサナはダウンした。
ミツル「スグルさん!こっちは終わりました!!」
スグル「そうか。僕のほうもそろそろ終わる」
イルカ「…ッ、あなたは…何者ですか……!!眼は、視えていないのでしょう……!?」
立方体のみずの中で宙に浮かんだまま気絶しているサメハダー達に囲まれながら…イルカがスグルを見上げた。
スグル「プクリン…解除だ」
宙に浮かんでいるサメハダーが、水が流れ落ちるのと共にじめんにたたきつけられた。
イルカ「…ノーマルタイプのプクリンが…さめはだにまったく触れずに…それに、あの立方体は…」
スグル「あれが『箱庭』さ」
イルカ「箱庭…?」
スグル「目に見えなかったからみずが浮いているように見えたんだろうけど、あれはひかりのかべで作った…箱さ。
そいつでサメハダーを囲み、サイコキネシスでホエルコの発射してたみずごと宙に浮かせた…それが『箱庭』だ」
イルカ「……参りました。あなたの勝ちですね」
スグル「そりゃどうも」
イルカ「行くわよ、イサナ。あーあ、リーダーに怒られちゃいますね」
イサナ「あう〜、ずみまぜぇん…」
イルカ「もうっ、泣かないの!」
2人は、そんな微笑ましい光景を見せながら部屋から出て行った。
ミツル「…僕らも、行きましょうか」
スグル「ああ。こんなところでぐずぐずしてはいられない。今頃、ミクリさんがアオギリのもとにいるはずだ」
アオギリ「…なんでェ、感動の邂逅だってのに、言うことはそれだけか?」
ミクリ「お前にくれてやる言葉など、罵詈雑言で事足りる」
アオギリ「つれねェことを言うんじゃねぇよ。時期は違えど、同じ師の下修行した者同士なんだからよ。知ってたよな?」
ミクリ「それが私には許せない。何故師匠のわざを継いでおきながら…みずタイプのエキスパートを捨てた?」
アオギリ「…甘々ちゃんだな、テメェは。こんな言葉を聞いたことねぇのか?」
ミクリ「…何?」
アオギリ「氷は水より出でて…水より寒し、ってな」
午前5時40分、陸海ミクリVS青桐大洋、戦闘開始。
- 77 :エンタ :2006/07/11(Tue) 22:32:06 ID:NE/HOFIE
- 第240話 刹那と劫
セツナ「カモミール!一の刀と三の刀で、マサムネの剣を封じるんだ!」
コウ「させねーよ。逆式一閃流、劫火の双剣ッ!!」
青白いほのおが、カモネギの右手と両足で繰り出したネギを焼き尽くす。
すぐさま、カモネギが正真正銘背中に背負ったネギを抜き、再び踊るように攻撃態勢になる。
両足をネギをはさむのに使っているため、地に足が着くタイミングがほとんどないのである。
セツナ「一閃流奥義・刹那の三剣!」
ユウキの実に3倍のスピードで繰り出される剣は、それでも全て知り尽くされているかのようにかわされた。
セツナ「っかー…ちぇっ、エスパーはねーだろエスパーは」
コウ「空を飛べる剣士というのも、なかなか卑怯だとは思うがな」
セツナ「って、飛んでねーだろ実際!翼の推進力ほとんどお前への攻撃に当ててるよ!」
コウ「2本対3本で勝てないヤツが、何言い訳してんだ?勝ってみろよ、この俺に」
セツナ「…言うじゃねーか…本気でやるぞ!いいんだな!?」
コウ「むしろ、本気でやってもらわねーと困る」
セツナ「よし!カモミール!一閃流奥義…刹那三百三十三連撃ッ!!」
刹那…つまり、時間の最小単位。その“一瞬”に、“三百三十三”の攻撃を繰り出す奥義。
しかし、その全てがマサムネにはかわされてしまった。
セツナ「…っな!?」
コウ「…くっくく…驚くのも無理はない。これが『逆式一閃流』の力なんだからな」
セツナ「逆式…一閃流?」
コウ「そうだ。一閃流を倒すためだけに編み出した、最強の奥義…それこそが、逆式一閃流だ」
セツナ「あたしらを倒す…って、いったいなんで…」
コウの表情が一変した。
コウ「…わからないか?わからないってのか!?この俺が破門にされた後、どこをどう彷徨ってここに逢着したのかが!!」
セツナ「なっ…お前まだ…!?…違う!あれはお前のせいでもおとーさんのせいでもねえ!!」
コウ「だが…お前たちの道着がそんな死装束になったのは、少なくとも俺のせいだろう?」
セツナ「違うって言ってんだろっ!!お前は死神なんかじゃねえ!!人間だ!!血が通ってて涙が流せる、人間なんだ!!」
コウ「…一閃流が死神の流派と呼ばれ…ホウエンから全ての道場が去ったのも、全部俺のせいだ」
セツナ「やめろ!!」
コウ「俺の刃は親父を傷つけ、そして殺した!!一閃流が恐れられたのは全て…この俺の…」
セツナ「違う!!」
コウ「違うものか!!ホウエンから剣道が消えてなくなったのは、俺の責任なんだよ!!」
セツナ「…!」
コウ「…だから俺は決めたんだ。もう一度強くなって…俺を破門にしやがったイッセンへの復讐を」
セツナ「な!?」
コウ「…そして、このホウエンに、再び剣を」
セツナ「え…どういうことだ…?お前、おとーさんを憎んでるんじゃ…」
コウ「ああ、憎んでるぜ。だからみちづれにしてやるんだ」
セツナ「お前、言ってることわけわかんねーぞ」
コウ「勝負に勝ってみろよ。お前のその固い頭でも理解できるように喋ってやるかもしれないぜ?」
セツナ「…上等だ。逆式一閃流なんて…ぶっ飛ばしてやる!!」
コウ「…そう、こなくちゃな」
セツナ「…一閃流、奥義…一閃の三剣!!」
3本のネギが束になってひとつの剣となり、疾く風が如き鋭い一撃をマサムネに見舞う。
が。
コウ「どうした。かすりもしていないぜ」
セツナ「…参ったな…実体がねーのか?」
コウ「まさか。…そうだな、例えるなら…日が沈むのと同じことだ」
セツナ「は?」
コウ「…光が闇に変わるように、刹那を劫に変えてんだよ。お前の感じる一瞬は、俺とマサムネにとっちゃ百瞬てとこだ」
セツナ「時間操作…か?」
コウ「苦労したぜー。マサムネの超能力を、時間操作だけに特化させるのにはな。軽く7年はかかったな」
セツナ「って、破門されてからずっとじゃねーかそれ」
コウ「だがな、その7年間。お前だって何もしてなかったわけじゃないんだろう?見せてみろよ、奥の手」
セツナ「…んっとに参ったなァ。何でもかんでもお見通しってわけか。お前、超能力でも使ってんのか?」
コウ「さあな。血が繋がっているからじゃないのか」
セツナ「んじゃ何であたしにゃ分からないんだよ」
コウ「馬鹿言うな、わかってるだろ。俺にはそいつを使われたら勝ち目がねーって事くらい」
セツナ「うっわ嘘クセー…絶対なんか企んでるだろ」
コウ「確かめてみたらどうだ?」
セツナ「…そーだな。カモミール、例のアレ、行くぜ」
カモネギが、ネギを背中に戻し、右手(?)に1本だけ残した。
セツナ「…『零刹(モーメント・ゼロ)』」
コウ「…!スペックか!!マサムネ!先手必勝だ!!」
セツナ「一閃流式正剣術“零刹”…必殺・白萼花!!」
一瞬が、零という名の永遠に変わった。
- 78 :エンタ :2006/07/11(Tue) 22:32:27 ID:NE/HOFIE
- 第241話 コウの真意
コウ「…負けたよ」
完全にこおり漬けになったマサムネを見て、コウが負けを認めた。
コウ「ったく、どーなってやがる。お前の自信満々な顔見て策あるだろーなとは思ったが、種も仕掛けもさっぱりわからんときた」
セツナ「ん〜、まあ簡単に言えば、ゼロだな」
コウ「ゼロ?」
セツナ「おう。お前にとっての一瞬が百瞬なら、あたしとカモミールにとっちゃ一瞬は零瞬だってこと」
コウ「あぁ!?時間とまってんじゃねーか!!それがお前の能力か!?」
セツナ「まーな。言ってみりゃ、おとーさんの進化版…『発動者を除く周囲の全て物質の動きを完全停止する』…だけどな」
コウ「マサムネが凍ってんのはそれのせいか…で、止まった相手をボコボコにする、と」
セツナ「いや、凍らせただけだ!人聞きの悪ぃこと言うんじゃねーよ」
コウ「人なんざ誰も聞いちゃいねーだろが。…で?わざ名の意味は?」
セツナ「無論、ネギだ」
その顔があまりに爽やかだったので、コウは「花じゃねーだろ」とツッコむ気が失せた。
コウ「ハァ…で?聞きたいことがあったんじゃねーのか?」
セツナ「つかむしろ、お前が話したいことだろ」
コウ「……ハァ。まあそうだな」
セツナ「何でおとーさんをみちづれにするとかわけわからんこと言ったんだ?」
コウ「ああ、俺を破門にした責任は取ってもらおうと思ってな」
セツナ「ざけんなよ!老けて見えるけどあれでもまだ45だぞ!まだまだ未来があんの!!」
コウ「怒りのツボそこかよ…あのなあ、みちづれにするっつったのは何も殺そうって意味じゃない」
セツナ「…は?違うの?じゃ何?」
コウ「ホウエンに再び剣を…って言ったろ?その手伝いをさせるんだよ、俺と共に」
セツナ「…つまり、死神の汚名を晴らす手伝いをしろと」
コウ「まあ、そうなるな」
セツナ「…………」
コウ「…………」
セツナ「何だよ!!変な言い方するから逆恨みでもされてんのかと思ったぜ!?」
コウ「誰が逆恨みなんかするか!俺を破門にするのは仕方ないことだったし、俺も納得しただろうが!」
セツナ「でも、少しはうらんでたんだろ?だから逆式一閃流とかを作り出して、自分の実力を認めてもらおうとしたりした」
コウ「まあ、少しもって言ったら嘘になるがな…」
セツナ「っはは、昔っから素直じゃねーヤツだったからな、お前は!…ところでよ」
コウはまだあるのかという表情でセツナを見た。
セツナ「お前なんでアクア団に入ったんだ?」
もっともな疑問だった。いまの話を聞く限り、特別な理由などありそうもない。
コウ「そりゃお前、ここならお前らと再戦しやすいと思ったからだよ。道場ももう無くなっちまったし」
セツナ「はぁぁああ〜!?お前は馬鹿か!?」
コウ「な、何だよ。イッセンさんは海好きだからよ、ヤツラの計画知ったら止めに来ると思ってよ」
セツナ「お前は馬鹿か!!」
コウ「二回言うな!」
セツナ「何だよ〜、アオギリと意気投合とかしてんなら更正させてやろうと思ったのによぉ…あー、モチベーション下がったよ〜」
コウ「お前、無茶苦茶だぞ…まあ、説教好きだったからな、お前は。親父に似たのか」
セツナ「親父さんのことなんて、ちっとも覚えちゃいねーよ…生まれてすぐポイだもんな」
コウ「まあ仕方ないといえば仕方ないが…伊達(いたち)流は、流儀のためなら子捨ても厭わない厳格な流派だからな」
セツナ「男女差別はーんたーい」
コウ「その点お前はイッセンさんに可愛がられてるじゃないか。羨ましいもんだ」
セツナ「ま、最近はあたしが可愛がってるけどね♪」
コウ「…お…お前いったい何を…?」
ちなみに、『真剣の峰で殴る』ことを『可愛がる』とは普通は言わない。
セツナ「そろそろ行くとするぜ。積もる話は決戦の後だ」
コウ「はっ、生きて帰れるか?もうカイオーガ復活の材料は揃ってんだぜ」
セツナ「嘘ッ!?聞いてねーよ、巫女が見つかってるなんて!!」
コウ「海の巫女は宝珠を手に入れる前からアクア団員だった」
セツナ「団員だったのか…」
コウ「ま、アイツもアイツで俺と同じく裏切りの手立てを進めてるらしいが…アオギリには計画はまだバレてねえ」
セツナ「計画って、何のことだ…?」
コウ「…このアジトにはそこかしこに監視カメラが設置されている。ここで喋るのはナンセンスだぜ」
セツナ「…そうか…ってかお前の無様な負け姿もバッチリ写って…」
コウ「ほっとけ」
セツナ「…なぁ…あたしに何か手伝えることは…」
コウ「要するに俺たちにはやる事があるから、お前ひとりで行けっつってんだよ。さっさとしろ」
セツナ「…わかった。『さっさとする』それがあたしにできることか」
コウ「そーゆーこった。イッセンさんによろしく言っといてくれな。昔の弟子から」
セツナ「そうそう、弟子といえば…つい最近、おとーさんに弟子がひとり増えたぜ」
コウ「そうか!そいつは楽しみだな。今度会わせろ」
セツナ「生きて帰れたらな!んじゃ、また後でな!!」
コウ「おう!アクア団をぶっ潰してから、また会おう」
二人は別れを告げ、セツナは父の向かった先へと走り出した。
- 79 :エンタ :2006/07/18(Tue) 22:02:54 ID:TnXsD1yY
- 第242話 永遠の檻
アオギリ「…よく聞こえなかったなぁ。もう一度言ってくれ」
同じ師を持つ二人が、周囲を天井まで塞いでいるこおりのかべに囲まれて対峙している。
ミクリ「…何故貴様が、レジアイスを手にしている…?」
直径20mほどの閉鎖空間に、ミクリの落ち着き払った、だが憤りのこもった声が反響した。
アオギリ「なぜってそりゃお前、捕まえてきたからに決まってんだろうが」
ミクリ「…あの時わたしより先に遺跡に入ったのは、貴様だったか」
アオギリ「まるで俺がよこどりしたみてぇじゃねーか、その言い草はよ」
ミクリ「別によこどりなどとは思っていない。先を越されたのなら、再び追い抜くまでという意味だ」
ボールからヒンバスが繰り出された。
アオギリ「ひゃっははは!!文字通りの雑魚で、永遠のポケモンの相手をしようってか!!」
レジアイスの両手からぜったいれいどの怪光線が発射された。
ミクリ「ヒンバス!!回避だッ!!」
この部屋の天井はかなり高いが、その天井にも届く勢いで、ヒンバスがはね回った。
アオギリ「…チッ、ちょこまかと…」
ミクリ「ヒンバス、みずのはどう!!」
ヒンバスが圧縮されたみずの塊を空中から発射した。塊はレジアイスに触れるや否や、音波を伴ってはじけた。
アオギリ「フン…わざまで師匠譲りとはな。ならば俺の攻略の範疇だ…レジアイス、撃て!!」
ひときわ高くはねて空中で孤立したヒンバスを、レジアイスのれいとうビームが襲った。
ミクリ「…かかったか」
アオギリが驚く間も無しに、れいとうビームが弾き返されてレジアイスの足元に命中した。
先ほど撃ったみずのはどうが凍りつき、レジアイスの動きを止めた。
アオギリ「ミラーコート…はじめから狙っていやがったとは…」
ミクリ「わたしが好むのは貴様のようなゴリ押しや、師匠のような圧倒的な高威力の戦術ではない。
あくまで上品に、スマートに…それがこの陸海ミクリのスタイルだ」
アオギリ「チャンピオンの肩書きは伊達じゃねえってことか…面白え!!レジアイス、お前に砕けぬこおりはない!」
こおりを極めたポケモンは、当然こおりの封じ方も知っている。たちまちレジアイスの足元のこおりが砕け散った。
アオギリ「あのチビを仕留めろ!!はかいこうせんッ!!」
ミクリ「ゴリ押しは通じない。ヒンバス、かげぶんしん」
アオギリ「…果たしてそうかな?」
ヒンバスの背後で、はかいこうせんが跳ね返った。
ミクリ「…ッな…氷の棺が!?」
はかいこうせんはヒンバスにヒット、当然ヒンバスはダウンした。
ミクリ「…どういうことだ…はかいこうせんに当たっても砕けないこおりなんて…」
アオギリの浮かべる気色の悪い笑みを見て、ミクリは溜息をつきながら続けた。
ミクリ「…それ故の、永遠…だというのか」
イッセン「はひー、はひー、この廊下いったい何mあるんじゃあ…」
注・この人は45歳です。
イッセン「ひぃ、ふぅ…いつまで走ってもアオギリの部屋など見えてこん…この距離は年寄りにはきつすぎるワイ」
注・この人は45歳です。ちなみにセンリは今年で40歳です。
イッセン「ちとここらで一息つくかの…ふぃー、どっこいしょっと」
注・この人は45歳です。ちなみにアオギリは42歳です。
???「おいじーさん、ここはアンタみたいな老人の来るところじゃないぞ」
イッセン「何じゃと!?これでも45歳じゃ!!」
ええそうです。45歳です。
???「ったく、リーダーがカワイイ女の子が奥の部屋に向かってきてるって言うから期待して来てみりゃ…ヨボヨボじーさんじゃん」
イッセン「ぬ…誰がヨボヨボか!!若いモンはこれだからいかん!!年寄りを、なめるでないわぁ!!」
あーあ、とうとう自分で言っちゃったよ。
???「やめとけって…そんなヨボヨボの体で、この蛤浦カイ様に勝てると思ってるのかー?」
イッセン「ゆくぞい、シップウ!!あの若造の根性を、叩きなおしてくれようぞ!!」
カイ「ははっ、来いよ、じーさん。見せてもらおーじゃん」
イッセンがストライクを、カイはあの巨大パールルを繰り出した。
カイ「…どうした?さっさと来いって」
イッセン「フッフッフ…かかったな!お主はすでに動けん!!」
カイ「…で?」
・・・・・・
イッセン「…は?いや、じゃから…シップウが動くまでお前は動けんと…」
カイ「だから何だよ?最初から動くつもりもねーっつの」
・・・・・・
イッセン「しまったあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
カイ「アホだな、このじーさん…」
このように、守りが主体のパールルのようなポケモンに対しては、先制攻撃も絶待防御も大して意味が無い…。
???「そこまでですの!!」
どこかから女の子の声が聞こえた。本物の女の声のようだ。その証拠に、カイが反応した。
カイ「おっ?本命のご登場か?」
イッセンの事はまるで眼中にないようである。
???「…悪者は…」
雷鳴と共に、ドッカーンと天井に穴が空いた。
リツコ「この天童寺リツコが、許しませんのよーっ!!!」
- 80 :エンタ :2006/07/18(Tue) 22:08:36 ID:TnXsD1yY
- 第243話 閃光のリツコ
ライボルトの背に乗ったリツコが、穴から落ち…、
…るのをカイが認識する前に、リツコがカイの背後に回りこんでいた。
カイ「んな!?パールルが気絶してやがる!?」
イッセン「…お主は、いったい…天童寺、というとあのスグルの…姉か?」
リツコ「あなたの相手はこの閃光のリツコが致しますのッ!!おじいさま、ここは私に任せて、先に行ってくださいですの!!」
イッセン「な…誰がおじいちゃんか!!…は置いといて、スマンな!あとは頼む、スグルの姉よ!!」
カイ「あっこら、待てジジイ…!!」
さっきまでのジジイ然としたフラフラ振りは何だったのかと思えるほどの速さで、イッセンは先に進んでいった。
カイ「けっ、どっちにしろあんなジジイじゃリーダーの足元にも及ばないぜ…さてと」
振り返ると、水色の長い髪が先ほど空いた穴からの風になびいていた。
カイ「おほ♪けっこーかわいいジャン!お嬢ちゃん、彼氏いる〜?」
リツコ「へ?い、今はいませんけど」
カイ「んじゃ俺と…」
???「な、に、を、してるんですかカイくん〜…?」
カイ「どぅわ!!その声はイルカ!!」
小さな女の子を背中に担いだアクア団員の女性が、カイの後ろに立っていた。
カイ「な、なんだよ〜。俺が誰をナンパしようと俺の勝手だろ」
イサナ「そうですよイルカさま!こんな女たらしは放っておいて、あたしと…」
イルカ「二人とも、うるさいですよ!…ハァ、何で私がこんな役を…」
リツコ「…あのー、えっと?」
ないがしろにされかかっていたリツコが心配になって声をかけると、イルカが今気づいたかのようにリツコのほうを向き直った。
イルカ「ああ、貴女でしたか。弟さんの強さ、拝見させていただきました。私はもう戦うつもりもないので、ご心配なく♪」
イサナ「不本意だけど、イサナもなの…」
カイ「おい!助太刀してくれねーのかよ!?」
イルカ「女をオトすのは楽勝じゃありませんでしたっけ?女たらしのカイくん?」
カイ「う!き、きたねーぞ!!」
イルカ「往生際が悪いですよ。いずれにせよリーダーの計画はもうじき成就します。遊びだと思って時間を潰してなさいね」
カイ「!…ってこたぁ…あいつが帰ってきたのか?」
イルカ「いえ、まだ…ただ、作戦は成功との連絡が入りました。決闘に惨敗した団員たちに少し遅れて、アジトに帰還するって」
カイ「っておい、惨敗!?っか〜、んなことなら俺も行っときゃよかったぜ!リベンジによ」
イルカ「行っても前のように惨敗でしたでしょうけど♪」
カイ「……。ま、まあ俺たちアクア団は、勝負の勝ち負けにはあまりこだわらないほうだしな?」
イルカ「そうですか?リーダーがまさにこだわってますけど」
カイ「あー言えばこー言う…っ」
イルカ「まあ、計画さえ成功すれば勝ち負けなんて以下に意味の無いものかが分かりますよ。ねえ、お姉さん?」
リツコ「…いったい、なんの話を…?」
イルカ「全てが終わった後で、きっと分かります。では、ごきげんよう」
そういうとイルカは、もと来た道を歩いていってしまった。
カイ「何しに来たんだあいつは…ナンパの邪魔か?…まーいい。さて、今度こそ」
2度目の正直?とばかりに、カイはリツコのほうを向き直った。
カイ「お相手をしてくれるんだよな、お嬢ちゃん?」
リツコ「………っ、私が勝ったら教えてください。あなたがたが何をしようとしているのかを」
カイ「…構わないぜ。ハンテール、サクラビス!!」
2匹。対して、リツコの手持ちは…ライボルト1匹。
リツコ「…感謝します。では…いざ」
カイ「…ッ!?は!?」
リツコ「…認識もままならないのですね。もう勝負はつきましてよ」
カイは一瞬たりともリツコから目を逸らしてはいない。そして、リツコの駆るライボルトは1歩たりとも動いていないはずだった。
だが、自分の目の前には、戦闘不能となったハンテールとサクラビスが横たわっている。
カイ「こりゃ…どういうことだよ…!?」
リツコ「確かに申し上げましたのよ。閃光のリツコ、と」
カイ「……!!」
まさか、光のように速く動けるということなのだろうか。
カイ「…そいつは…なんか、スペックかなんかか?」
リツコ「いーえ。長年の相棒との修練の日々のなせるわざですのよ」
カイ「をいをい…無茶言うなよ。いくらライボルトがすばやいからって、能力には限界ってモンがあるんだぞ?」
リツコ「限界を見ていてはエリートトレーナーは名乗れませんわ。きっと私たちは、限界を超えたんですの」
カイ「…負けたよ、お嬢ちゃん。行きな。あんたの閃光なら、まだ間に合うかも知れねえな」
リツコ「…いえ。私はさっきのおじいさまやミクリさんを信じますの。私の役目はここで終わりですのよ」
アオギリと戦うのはミクリとイッセンのみ。他のメンバーに与えられた役は、あくまで他の団員の戦力を逸らすことだった。
カイ「じゃ俺とデート…」
リツコ「お断りしますの」
カイ「そんな!!じゃあ俺は何のためにここに来たんだよ!?」
リツコ「私に言われても困りますの…」
カイ「くそっ!いつか必ずデートしてやる!!覚えてろよ〜!!」
謎の捨て台詞を残して、カイは走り去っていってしまった。
リツコ「…なんだったんですの…?」
そして、リツコは立ち尽くすしかなかった…。
- 81 :エンタ :2006/07/18(Tue) 22:10:41 ID:TnXsD1yY
- 第244話 級友
センリは、ひときわ広い部屋にいた。
火口に最も近い、イサリビがいる部屋の真下の巨大な空洞だ。
その部屋で、彼を待ち構えていたのは…。
マツブサ「…久方ぶりだな、我が旧友…いや級友、大空よ」
センリ「ざっと、26年ぶりか。少し会わないうちに変わったな、マツブサ」
マツブサ「変わったのはお前のほうだろう?バトルの腕は万年ビリだったお前が、今じゃご立派なジムリーダーだ」
センリ「…答えろ、マツブサ。お前は何故、ホウエンを滅ぼそうとする?」
マツブサ「…クハハッ、勘の良さだけは昔と変わらんか。誰に聞いたわけでもあるまい?」
センリ「ああ。理由も大方分かっているが…あえて聞こう。何故だ、マツブサ」
マツブサ「愚問だな。海が憎いからに、決まっているだろう」
センリ「本当にそうなのか?」
マツブサ「くどいな…憎むべきモノを消す。それ以外にどんな理由が必要だ?」
センリ「なら、海とこのオレの、どちらが憎いか答えてみろ」
マツブサ「…!なるほど、言葉遣いまでもとに戻して、あの頃のことを思い出させようとするのか?」
センリ「…思い出させようとはしていない。お前は忘れてない。忘れようと足掻いているだけだ」
マツブサ「ならば、それも愚問だ。…海以上に、お前が憎い。だから滅ぼす。海ともども」
センリ「…そうか」
マツブサ「意外な答えだったか?家族を奪ったモノよりも、恋慕を寄せた女を奪った者が憎いというのは」
センリ「…ナツコを嫁に貰ったのがオレの罪なら、もはや拭えまい。だが、後悔は無い。オレはナツコを、愛しているからな」
マツブサ「惚気るためにここへ来たのか?どこまでも憎いヤツだ」
センリ「…オレがここへ来たのは、お前を止めるためだ。お前を知る者としてな」
マツブサ「面白い。グラードンの復活は、もう目前だ。止められようものなら、止めてみるがいい!」
途端に、マツブサの背後のマグマが噴水のように急激に湧き上がり、二人を包み込んだ。
マツブサ「…灼熱の闘技場“デス・アリーナ”へようこそ。ここがお前の墓場だ」
センリ「…あいにくと、オレの墓標は生まれたときから定められているんでな。死ぬのは遠慮しておく」
マツブサ「余裕ぶれるのも今のうちだ。お前の『愛する』妻のもとに息子を遺して死ぬがいい!」
センリ「それもゴメンだ。仲裁役がいないとオレの愛する妻に息子が絞め殺されてしまう」
しばらく無言でのにらみ合いの後、二人がモンスターボールに手をかけた。
マツブサ「バクーダ!!」
センリ「ヤルキモノ!!」
因縁の決闘が、今、幕をあけた。
バンリ「…博士…いや、オダマキ先輩」
オダマキ「言わなくても分かってる。…戦いたいんだろう?そのために、研究所に来た、と」
バンリ「…はい」
オダマキ「助かるよ。キミはセンリと同じくらい強い。ヤツと数十年に渡り勝負を繰り広げてきた私が言うんだ、間違いない」
ナツコ「センリに勝つための研究が高じて博士にまでなったんだから、筋金入りね」
オダマキ「それはそうとバンリ、娘さんは今どこに?聞いた話では、彼女は…」
バンリ「先輩、わざとらしい物言いは無しですよ。先輩は諜報部のマスターなんだから、知ってるんでしょ」
オダマキ「…あ」
ナツコ「は!?じゃあ何、あの子がここ来た時の反応も、全部嘘!?」
オダマキ「あ、いや。あれは嘘じゃない。実際に情報を集めてるのは僕じゃないからね、知らないことのほうが多い」
ナツコ「何寝ぼけたこと言ってんのかしら?本当は全部お見通しなんでしょ?」
オダマキ「…驚いたな。君らはサミットの会議の場にいなかったのに。本当にお見通しなのは、君らのほうじゃないか?」
ナツコ「じゃあ何、あたしのツッコミが欲しくて芝居を打ってたと…そういうわけ?」
オダマキ「僕が諜報部に関わっていることを、彼女に気取られたくなかったんだよ。彼女は『オダマキ博士』に会いに来たんだから」
ナツコ「結局ゴタゴタしててろくに教えられてなかったけどね」
オダマキ「う…そ、それはともかく、せっかくこんな朝早くに集まったんだ。さっさと出発しよう」
バンリ「オダマキ先輩…マツブサ先輩は、いったいどうして…」
オダマキ「変わってしまったのか…かい?それを確かめに、今から行くんだろう?」
ナツコ「…てなわけで、ほれ、あんた達!アジトまで案内しな!!」
リョウ「やっぱり〜!?」
ススケ「ちくしょ〜、ヤイトのヤツ…帰ったらシメてやる〜…」
ナツコ「ゴチャゴチャ言うな!さあ、行くよッ!!」
午前6時12分、苧環コブシ、大空ナツコ、大空バンリ、マグマ団アジトに向けて出発。
- 82 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:17:40 ID:EOkeDois
- 第245話 入り口にて
ハルカ「…まったく。どれだけ待たせたと思ってんの、アンタたち?」
アクア団アジト前の浅瀬に、一人の少女と数十人の青装束が立ち尽くしている。
アクア団員H「そ、そんな…こんなの聞いてないぜ…?」
ハルカ「アンタたちは戦えるポケモン持ってないんでしょ?回復施設もこの中でしょーけど…入らせてあげないよ」
アクア団員I「くそっ、どーすんだよ!行く場所ねえぞ、オレ達!!」
ハルカ「アタシの役目は『アジトに誰も入らせない』こと。その為なら人を攻撃するのも憚らない…覚悟は、いい?」
アクア団員J「だ、誰かポケモン持ってねーのかよ!!」
アクア団員I「バカッ、あんなバケモン相手に手ェ抜いたやつなんていねーって!!みんな全戦力使い果たしたはずだ!」
アクア団員J「じゃあ本当にどうしようもねーじゃん!!」
ハルカ「…アタシ、戦えなくてイライラしてんのよねー。誰でもいいからぶん殴られたいヤツはいないの?」
アクア団員K「いるわきゃねーだろ!!」
ハルカ「つまんないの。今考えてみれば、アタシどうしてこんな役自分からやるって言い出したんだろ?」
アクア団員J「くっそぉ…こうしてにらみ合ってる間にも、幹部の皆さんは戦ってるというのに…!」
実際には、いま戦っている幹部はひとりもいない。そう、ツチオと戦っていたウシオは…。
ツチオ「…能力を使うまでもなかったな。随分と粘ったようだが」
部屋の中でフライゴンに乗って飛び回りながらツチオが呟いた。
床には3時間かけて倒された数多の団員が横たわっている。
ふわふわと浮かぶ金属片に囲まれながら、ペリッパーに乗ったウシオが叫んだ。
ウシオ「なんなんだ、それは!?この俺様が手も足も出ねぇとは…!!」
ツチオ「…音波、さ」
ウシオ「音波だぁ!?」
ツチオ「固有振動数の同じ金属を、フライゴンの羽根で起こす音波と共鳴させ、自在に操る。音波の究極わざともいえるな」
ウシオ「んなバカな話があってたまるか!てかワケ分からんぞ!!」
ツチオ「あんたの筋肉脳じゃわかんないさ。実際、細かいことは俺にもわからないし」
ウシオ「こンの野郎!筋肉脳だと!?これでもIQ120のサ○リ解いたことあんだぞ!!ちくしょー、ペリッパーッ!!」
こうそくで動きながら、多方向からのハイドロポンプ。だがツチオの乗ったフライゴンはビクとも動かない。
ただ、その羽根だけが動いていた…。
バシッ バシッ バシッ!!
ウシオ「バカな!?金属を盾にしてッ!?」
ツチオ「…そんな飛び方、ナギの足元のゴミにも及ばないな。俺にでも撃ち墜すことは容易い」
ウシオ「待っ…おい!本気か!?7mはあるぞ!!」
この天井の高い部屋で天井ギリギリで戦っていたので、落ちると相当痛い。というか下手をすれば死ぬ。
ツチオ「…飛べない鳥は…」
金属片がペリッパーに命中し…同時にフライゴンが床に向かってはかいこうせんを放った。
ツチオ「…泳いでろ」
ウシオ「うぎゃああああぁぁぁぁぁぁ……あ!?おぁぁああブクブクブクブク……」
派手な水飛沫を上げて、ウシオが床下の海に転落した。
ツチオ「ちょっと朝は早いが、せいぜい真夏の海水浴と洒落込んでくれよ」
午前5時07分、七瀬ツチオ、午尾ウシオに勝利。
ハルカ「…は〜。ちょっとアンタたち、いつまでにらみ合ってるつもりなの?さっさと血で血を洗おーよ」
アクア団員K「怖いよあんた!!くっそ〜、幹部の一人でも駆けつけてくれれば…!」
みんなヒマなのだが、誰も入り口のことには気づかない。
???「…助けて欲しいですか?」
ハルカ「…!っ!!」
アクア団員J「え…?っぐぅあ!?」
浅瀬のみずにでんきが流れ、団員達が気絶した。
間一髪で跳躍したハルカが、影にたずねた。
ハルカ「アンタ誰!?敵ッ、味方ッ!?」
???「…落ち着いてくださいです。私は敵でも味方でもないですよ」
ハルカ「じゃあ何者!」
ミズホ「何者でもありませんです。…アクア団員の、西瀬ミズホと申しますです」
ハルカ「やっぱ敵じゃない!覚悟はできてんでしょうね!?」
ミズホ「…あなた、苧環ハルカさんですか?」
ハルカ「え…そ、そうだけ、ど!?」
言ってしまってから、ハルカは後悔した。自分の情報を、むやみに相手に与えるものでないと。
ミズホ「…そうでしたか。では、あなたが…」
ミズホ「あなたが、私の日誌を読んだ人ですね」
- 83 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:18:54 ID:EOkeDois
- 第246話 ミズホの真意
ハルカ「い…今、なんて…」
ミズホ「私の日誌です。ミシロの図書館に放置しておいた、あの日誌」
ハルカ「…!!あれは…わざと置いてあったの!?」
ミズホ「そうです。あなたたちホウエンサミットに、私の計画を手伝ってもらうために」
ハルカ「…何でもお見通しってワケ…!?」
ミズホ「感謝していますよ。閲覧禁止の棚で二年間眠っていたにも関わらず、幸運にも日誌はあなたの手に渡った」
ハルカ「…何のためにそんなことを?」
ミズホ「さっきも言いましたですが、私の計画を成功させるためには、あなたたちのような存在が不可欠でした。
そう…アクア団の計画を阻止しようと奮闘する、戦闘可能な集団の存在が、ね」
ハルカ「…アンタは、何が目的なの?」
ミズホ「アオギリの計画の阻止…そして、超古代ポケモンの封印、とでも言いましょうか」
ハルカ「結局アンタは、敵なの?味方なの?」
ミズホ「それもさっき言いましたです。敵対するつもりも、味方するつもりもありませんよ」
ハルカ「じゃあアンタは、何者なの?」
ミズホ「…私は…海の巫女、西瀬ミズホです。それ以外の何者でもありません」
ハルカ「な…ッ、アンタが海の巫女!?」
ミズホ「…貴方達が私の思ったとおりにアクア団に敵対してくれたおかげで、事がうまく運びました。感謝しています」
ハルカ「じゃあアタシたちは、アンタにいいように踊らされてたってわけね…あったまきた」
ミズホ「そうですか。戦力の矛先がアオギリでなく私に向けられることは、想定の範囲内でしたが…」
ボンッ。驚くべき早さでシードラがボールから出た。が、それよりも速くハルカのキノピーがミズホに突撃した。
ミズホ「…すみません。私も、邪魔されるわけにはいかないのです」
バチ…ッ
ハルカ「…っく!!」
ミズホ「スタンガン程度の電流です。私が最初の電流の後にサンダースを戻していなかったことを、お忘れなく」
ドサッ。ハルカが浅瀬に倒れ伏した。
ハルカ「…待…て…」
意識が遠のく。ミズホがアジト内へと去っていく。止めなければ。
『アジトに誰も入らせない』のがアタシの役目…。
だ…めだ。
意識が…。
薄れて…。
アタシだけじゃ、どうにもできない…。
どうしたら…。
???「…そんな時は、いつでも呼んでって言ったでしょ」
頭の上から聞こえるこの声は…。
アオイ「おーい。ハルカさーん。生きてる?アオイちゃんが駆けつけてあげたよん♪」
浅瀬につかったハルカを、見下ろすようにして立っているのは…間違いない。
かつて共闘の約束を交わした友…、アオイだった。
ハルカ「あ…アオイ!?どうしてここに…」
アオイ「あ、よくなったみたいだね。ショックにはショックが効くみたい」
確かにハルカは元気に立ち上がっていた。所詮は一時しのぎの電流ということか、怪我もないのでアオイは安心した。
ハルカ「…本当に駆けつけてくれたんだね…。ありがとう」
アオイ「お礼なんかあとあと!さっきの人追いかけないとね」
ハルカ「って、見てたんならもっと早く出てきなさいよ!」
アオイ「どんまいどんまい。…じゃ、行きますか」
ハルカ「まったくもう…」
午前5時18分、空木ユウキ(アオイ)、苧環ハルカに合流。
- 84 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:19:24 ID:EOkeDois
- 第246話 ミズホの真意
ハルカ「い…今、なんて…」
ミズホ「私の日誌です。ミシロの図書館に放置しておいた、あの日誌」
ハルカ「…!!あれは…わざと置いてあったの!?」
ミズホ「そうです。あなたたちホウエンサミットに、私の計画を手伝ってもらうために」
ハルカ「…何でもお見通しってワケ…!?」
ミズホ「感謝していますよ。閲覧禁止の棚で二年間眠っていたにも関わらず、幸運にも日誌はあなたの手に渡った」
ハルカ「…何のためにそんなことを?」
ミズホ「さっきも言いましたですが、私の計画を成功させるためには、あなたたちのような存在が不可欠でした。
そう…アクア団の計画を阻止しようと奮闘する、戦闘可能な集団の存在が、ね」
ハルカ「…アンタは、何が目的なの?」
ミズホ「アオギリの計画の阻止…そして、超古代ポケモンの封印、とでも言いましょうか」
ハルカ「結局アンタは、敵なの?味方なの?」
ミズホ「それもさっき言いましたです。敵対するつもりも、味方するつもりもありませんよ」
ハルカ「じゃあアンタは、何者なの?」
ミズホ「…私は…海の巫女、西瀬ミズホです。それ以外の何者でもありません」
ハルカ「な…ッ、アンタが海の巫女!?」
ミズホ「…貴方達が私の思ったとおりにアクア団に敵対してくれたおかげで、事がうまく運びました。感謝しています」
ハルカ「じゃあアタシたちは、アンタにいいように踊らされてたってわけね…あったまきた」
ミズホ「そうですか。戦力の矛先がアオギリでなく私に向けられることは、想定の範囲内でしたが…」
ボンッ。驚くべき早さでシードラがボールから出た。が、それよりも速くハルカのキノピーがミズホに突撃した。
ミズホ「…すみません。私も、邪魔されるわけにはいかないのです」
バチ…ッ
ハルカ「…っく!!」
ミズホ「スタンガン程度の電流です。私が最初の電流の後にサンダースを戻していなかったことを、お忘れなく」
ドサッ。ハルカが浅瀬に倒れ伏した。
ハルカ「…待…て…」
意識が遠のく。ミズホがアジト内へと去っていく。止めなければ。
『アジトに誰も入らせない』のがアタシの役目…。
だ…めだ。
意識が…。
薄れて…。
アタシだけじゃ、どうにもできない…。
どうしたら…。
???「…そんな時は、いつでも呼んでって言ったでしょ」
頭の上から聞こえるこの声は…。
アオイ「おーい。ハルカさーん。生きてる?アオイちゃんが駆けつけてあげたよん♪」
浅瀬につかったハルカを、見下ろすようにして立っているのは…間違いない。
かつて共闘の約束を交わした友…、アオイだった。
ハルカ「あ…アオイ!?どうしてここに…」
アオイ「あ、よくなったみたいだね。ショックにはショックが効くみたい」
確かにハルカは元気に立ち上がっていた。所詮は一時しのぎの電流ということか、怪我もないのでアオイは安心した。
ハルカ「…本当に駆けつけてくれたんだね…。ありがとう」
アオイ「お礼なんかあとあと!さっきの人追いかけないとね」
ハルカ「って、見てたんならもっと早く出てきなさいよ!」
アオイ「どんまいどんまい。…じゃ、行きますか」
ハルカ「まったくもう…」
午前5時18分、空木ユウキ(アオイ)、苧環ハルカに合流。
- 85 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:19:56 ID:EOkeDois
- 第247話 ヒサヤの切り札
落盤で、リザードンが最初に開けた穴がふさがれた。
ヒダネ「…どうした。足が竦んでいるようだが?」
ヒサヤ「こいつは、今あんたが起こしたじしんで揺れてんだよ」
ヒダネ「つまり、リザードンのじしんに恐怖したということか。滑稽だな」
ヒサヤ「だーもー!違うっつの!!」
だが、ヒダネの言っていることは的を得ていた。
そもそも穴暮らし(?)のヒサヤが、じしん如きで足が竦むはずもない。つまり…。
ヒダネ「…ならば、リザードン。そいつの足を動かないように焦がしてやれ」
ヒサヤ「やめーい!!」
だが、殺す覚悟を持った“裏”には、同情は愚か躊躇すらない。ヒダネのリザードンはヒサヤの足を狙ってほのおを放った。
ヒサヤ「っく!トプス、ハイドロポンプ!!」
じしんを喰らうため戻したディグズのかわりに戦っているトプスが、発射されたほのおを打ち消そうとみずを噴射した。
ヒダネ「…無駄だ。いくら火を消そうとも、そこに火種が残る限り何度でも蘇る。それが俺の炎だ」
ヒサヤ「結構じゃんか。じゃあその火種ごと、残らず消してやるよ!!トプス、アー丸と交代だ!!」
ヒダネ「ほう。ここに来てみずタイプを戻す…か。面白い。見せてもらおう」
ヒサヤ「アー丸!!ロックブラスト連発ッ!!」
瞬く間に、部屋中に数十個の岩塊が現れた。
ヤイト「っひいぃぃぃぃぃ!!なんかヤバイ雰囲気!!絶対死ぬうううううぅぅぅぅぅ」
戦車隊の団員は、みんなハッチを堅く閉めきり、狭い操縦室の中でいつ来るとも知れぬだいばくはつに身をこわばらせている。
ヒダネ「…どうするというのだ?まさかその程度、リザードンがどうにかできないとでも?」
ヒサヤ「ああ、思ってる!こんだけありゃ、避けられるはずもないだろ!!喰らえ!!」
岩塊が、いっせいにリザードンに襲い掛かった。
ヒダネ「…避けるなどと、誰が言った。リザードンッ」
リザードンは合図に応じて体を縮こまらせ翼で身を固めた。
ヒサヤ「避けすらしないのかよ!?まさか耐え抜くってのか!?」
ヒダネ「避けも耐えも必要ない。…リザードン、…ブラストバーンだ」
力強く、勢いよく広げられた翼の風で、リザードンのシッポのほのおが爆風を引き起こした。
ヒサヤ「っな…!?」
辛うじて身を守ったアー丸と、不適に笑うリザードンが…滅茶苦茶になった部屋の中でにらみあっていた。
ヒサヤ「…おいおい…アリかよ」
ヒダネ「言っただろう。火種がある限り何度でも蘇ると」
ヒサヤ「いやはや〜、参ったなぁおい。翼を使って、シッポのほのおに酸素を送り込むなんてよ。バックドラフトもいいとこだ」
ヒダネ「っくく、一回でそれほど理解できようとはな。やはりアジトに忍び込んだだけあって、只者ではない」
ヒサヤ「や〜…忍び込めたのはセンリさんと入り口の間抜けのおかげだし…っていうか忍んですらいないもんなぁ…」
ヒダネ「つくづく面白いヤツだ。気に入った。ここで殺すのは惜しい…が、命令は命令だ。悪く思うな」
ヒサヤ「…誰の命令だ?」
ヒダネ「我らがリーダー…と言いたいところだが違う。“裏”に命令を送るのは、レッカだ」
ヒサヤ「レッカ…?誰だ、そいつ?」
ヒダネ「マグマ団の参謀にして、“裏”の指揮官…といったところか。…さて、おしゃべりは終了だ」
リザードンが大きく息を吸った。
ヒサヤ「くっ、もう一度だアー丸!!全開ロックブラスト連射ァ!!」
ヒダネ「ふん、この期に及んでわるあがきか。何度来ても同じことだ。リザードン」
リザードンがブラストバーンの構えを取った。…が、いっこうに発射する気配がない。
ヒサヤ「どーした?早く来いよ」
ヒダネ「…やはり…只者ではないな…ッ!」
リザードンのシッポの火が燻っていた。
ロックブラストは、空気をいわに変えて放つわざ。
戦車部隊の策略とじしんによる落盤で密室と化していた部屋の酸素は、ロックブラストとブラストバーンにより使い果たされていたのだ。
ヒダネ「ならば、これが最後の酸素。先にくたばるのはお前か俺か。面白い…実に面白いぞ」
ヒサヤ「どっちが死んでも恨みっこ無しだぜ」
ヒダネ「くっくっく…よかろう、受けて立つ!!リザードン!!最後のブラストバーンだ!!」
爆風が、部屋を覆った。
ヒダネ「…残念だったな」
かすれた声で、ヒダネが呟いた。
そこには、ボロボロになったアー丸と、力尽きたヒサヤが倒れ伏していた。呼吸を…していない。
ヒダネ「実に惜しい…死合だったぞ」
そういうと、崩れ落ちる寸前のリザードンにいわを溶かすよう命じた。
岩石を焼き、全ての物を溶かすという高温のほのおが、ヒダネの脱出口を作りだす。
ヒダネ「…さらばだ。雄雄しき眼鏡の戦士、我が永遠の好敵手よ」
ヒサヤの指がピクッと動いたことに、気づかないヒダネではない。
だが、流石の“裏”も、その手が腰のヘビーボールに伸びるのを阻止することはできなかった…。
- 86 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:20:50 ID:EOkeDois
- なんか246話が二つに…(汗)
すいません。読み飛ばしてください。
- 87 :エンタ :2006/08/04(Fri) 21:21:45 ID:EOkeDois
- 第248話 助っ人、助っ人、また助っ人
ミナヅキ「みんな!ユウキさんのもとへ!!」
ユウキから預かっていたボールがいっせいに開き、彼の仲間たちが躍り出た。
ユウキ「サンキュー、ミナヅキ!!来てくれるって信じてたぜ!!」
ミナヅキの顔が紅潮した。
レッカ「…ちっ。小賢しい」
ココ、ムドー、プラ、ブイが、ユウキのもとへたどり着き、戦闘体勢に入った。
ユウキ「レッカ!オレたちの実力、思い知れ!!」
レッカ「…面白い。我が『九恨(エイシェント・フォックス)』の真髄、見せてくれよう!!」
途端、ツタが一瞬にして焼き尽され、レッカが地上に降り立った。
レッカ「…我が衣の内に潜む九つの怨恨よ。今こそ狐狸を依代に、ここに顕現せよ」
広げたマントの中から、7つのボールがボトボトとこぼれ落ちた。
7つのボールから次々にキュウコンが出てくる。7匹目のシッポが青白く光る。
レッカ「白の炎は癒し為す炎」
先ほど倒れたキュウコンが回復し、9匹のキュウコンが並んだ。途端に、この世のものとは思えない違和感が一瞬にして戦場を覆った。
ミナヅキ「ど、どうするんですかユウキさん…」
ユウキ「下がってな、ミナヅキ」
言葉に従いミナヅキが数歩退くと、ユウキは剣を高らかに掲げた。
ユウキ「『剣』、『鎧』、『翼』。そして嵐となれ、豪雨と雷撃」
ユウキのリュックにムドーが放った翼が突き立ち、ココの兜のボールホルダーがみずとでんきを纏った。
ユウキ「…薙ぎッ」
キュウコンたちがいっせいに火を噴いた。正確には、シッポから色とりどりの炎を飛ばした。
ユウキ「払うッ!!」
放たれた炎を背中の翼で飛んで越え、ユウキが上空からキュウコンの間合いに入る。
ユウキ「一閃流オレ式奥義、統括・大嵐空の剣舞ッ!!」
稲妻がほとばしり、水流が襲い掛かる。真空の刃が、全ての怨恨を断ち切った…。
ミナヅキ「…す……」
す、の後に言葉は続かなかった。それほどまでに、凄すぎたのだ。
ユウキ「…ど…うだ!!」
ユウキの顔には尋常でない疲れの色が浮かんでいた。それもそのはず、ユウキはたった一度の攻撃で3匹分のスペックを発揮したのだ。
だが、その一撃が、キュウコンたちを破ったのだ。
レッカ「くっくっ…素晴らしい一撃だったぞ。…これが最後なら、とても良いとどめだったと言えよう」
???「レッカ!来て やった よ!」
???「…全く、1人では何も出来ぬくせに…何を粋がっている」
???「ケケケケ、残念ダナ。モウ少し待ってリャ血が見レタかもシレねェッてのニヨ!」
甲高い女の声、低い男の声、カタコトな男の声が続けざまに聞こえた。
レッカ「…イロリ、一言余計だ。タキ、ヒネズミ、二言三言余計だ」
ミナヅキ「あ…っ、新手…!!」
レッカ「忘れたか?私は“裏”を束ねる者…そして“裏”に任務の失敗は許されない」
ユウキ「任務って、何だよ」
イロリの持ってきた回復どうぐをキュウコンたちに使いながら、レッカが言い放った。
レッカ「なに、実に簡単だ。これだけ全うすればいい。…侵入者の、排除」
イロリ「見たところあんたたちは侵入者ね」
マユミと同年代くらいの見た目の女が、瓶底メガネの奥から二人をまじまじ見ながら言う。
タキ「見なくとも分かる」
右目に傷のある浅黒い肌の長髪・長身の男は、目を瞑ったままで二人の方向を向いている。
ヒネズミ「ケーッケケケケ!!久シブりに、人を殺セルって事ダナ!?」
カタコトのような言語で狂ったように笑う男は、手足だけが異様に長く、とても人間とは思えない姿だ。
ユウキ「…くそ…何とか…ならないかこりゃ」
両手を広げてミナヅキをまもるように立ちはだかりながら、ユウキが呟いた。
ミナヅキ「…ごめんなさい…私…役立たずで…」
ユウキ「そういう意味じゃないって。実力うんぬん関係なく、2対4じゃ絶望的ってだけだよ…」
???「…んじゃ、4対4ならどーだ?」
ミナヅキ「…あっ…。この、声……」
地鳴りが聞こえる。“裏”たちとレッカが、そしてユウキとミナヅキが、山の方角を見た。
『何か』が、土煙を上げながら走って…ころがっている…。
レッカ「…ッ!!しまった!!上だ!!」
無数の泡と、その中に内包された岩石が、音も立てずに彼らの頭上を漂っていた。
???「…ユウキィ―――――!!助けに来たよぉ――――!!」
腰のロープをゴローニャの両手に結び、まるで馬車のように、ころがるゴローニャの後ろをローラースケートで滑走しているのは…。
ユウキ「マナカァ!?そ、その格好は!?」
レッカ「ッ!!止めろ!!」
イロリ「…っでも…上にッ」
上には無数の泡を模した凶器。そして今にもユウキたちを連れ去らんとする乱入者。
???「…止める方法なんて、ねーよ」
泡が一気に破裂し、落石がマグマ団たちを襲った。
落ちてくる岩石の間を潜り抜け、ユウキはミナヅキの手を引いてマナカの進路へと近づいた。
マナカ「つかまって!!」
ユウキの伸ばした左手が、マナカの右手をつかんだ。彼の右手は、しっかりとミナヅキを抱きかかえていた。
ヒネズミ「クソっ!!逃ゲルのかっ!!」
マナカ「…ちょっと。いつまでその格好でいるつもりなの?」
ミナヅキ「へ?…はわっ!?」
ユウキ「え?…うわっとっ!?」
ピッタリ過ぎるタイミングで、二人ははじけるように離れた。
???「ったく、戦場で何いちゃついてんだ。年上が、聞いてあきれるぜ」
ミナヅキ「あ…。…やっぱり、あなただったんですね……」
ゲンキ「おーよ。黄金の観察眼を持つ天才、金田一ゲンキさまが助けに来てやったぜ!感謝しな!!」
午前5時42分、金田一ゲンキ・大空マナカ、大空ユウキ・桃花ミナヅキに合流。
- 88 :エンタ :2006/08/13(Sun) 18:41:41 ID:eJLOW1EM
- 第249話 慌しい再会
ユウキ「ゲンキ!お前、今までどうしてたんだよ?」
アキに貰った最後の薬を飲みながら、ユウキが急いてたずねた。
ゲンキ「決まってんだろ。あん時の言葉どおり、誰よりも強くなる修行の旅だぜ」
ミナヅキ「それで、なぜマナカさんと…?」
マナカ「ミシロからここに来る途中で呼び止められたの。『おい!そこの女!えんとつやまはどっちだ!?』って」
ゲンキ「わーっ、言うなよバカ!」
マナカ「バカはキミでしょー。おくりびやまとえんとつやまの区別がつかないなんてサ」
ゲンキ「う、うるせぇ!どっちだっていいだろが」
ユウキ「よかねーよ」
突然、ひときわ大きな衝撃が大地を揺るがした。
ゲンキ「…ま、今は楽しく談話してる場合じゃねーな」
ユウキ「どう切り抜ける?泡の奇襲はもう効かないだろ」
ゲンキのわざが増えていることに関しては、なんら疑問は持たないユウキであった。
マナカ「やっぱり1対1に持ち込むのがよくないかな?」
ユウキ「お前、戦えるのか?マナカが戦ってるとこなんて見たことないぞ?」
マナカ「ご安心を!これでもホウエンのポケモン研究の権威、オダマキ博士のお墨付きですから!」
ユウキ「そーいえばさっきミシロがどーとか言ってたな。何だってそんなとこに…」
マナカ「それはズバリ!このバッジをもらうためよ!!」
キラリと彼女の胸に光るは、輝かしいポケモンレンジャーの公認バッジ(ハート型)だった。
ユウキ「その格好も含めて、ポケモンレンジャー参上!ってか?」
ミナヅキ「マナカさん、ポケモンレンジャーになるのが夢ってこの間言ってましたけど…まさか…」
マナカ「そのまさか!」
ミナヅキ「こ、この短期間で試験に合格したんですかぁーっ!?」
さすがのミナヅキも大声で驚く。
マナカ「まーねん♪試験は1年中やってるし、公認バッジと制服の送付も合格翌日だし!」
ユウキ「お前、実は頭いいんじゃ…」
マナカ「いまさら気づいたわけー!?13年間一緒にいといて!!」
ユウキ「うん。いまさら気づいた」
ゲンキ「どーでもいいが、話が脱線してんぞー。どう戦うか、だったろ?」
ミナヅキ「そ、そうでしたね」
ゲンキ「ところでバンダナ、その女は誰だ?」
ユウキ「は?誰って…ミナヅキだろ?桃花ミナヅキ。サミットで隣の席だったの、覚えてないのか?」
ゲンキ「…………」
・・・・・・
ゲンキ「ん何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?あのビンタ女ァ!?こいつが!?信じらんねー!顔違うじゃん!!」
ミナヅキ「…………」
ユウキ「あんまりだろ…しかしまあ、本当にわかんないもんだなー。オレもだったけど」
ミナヅキ「……うぅ…いいですよ……もう……」
ユウキ「ん?何が?」
ミナヅキ「何でもありませんー」
ゲンキ「オレそいつのバトル見てねーんだけど。強いのか?」
ユウキ「そりゃもう。なんたって2分ジャストだからな」
ミナヅキ「ユウキさんは1分台でしたけどね…」
先ほどのショックで、いまだミナヅキは卑屈モードだ。
ゲンキ「ちっ…じゃああん時のオレより強いってことか…そっちのお前はどうだ?ポケレッド」
マナカ「ポ…ポケレッド!?」
ゲンキの『変なあだ名をつける』クセは、旅から帰ってきても直っていなかった。
ゲンキ「ポケモンレンジャー!ポケレーッド!!だろ?」
マナカ「だろ?って…まあ、あたしはこの中では強くないほうかもしれないけど…足は引っ張らないようにするつもりだよ」
ゲンキ「ふむ。じゃあリュック、お前があの狐ヤローと勝負だ」
ユウキ「…え?オレのリュックってそんな特徴的か?」
ゲンキ「んでもってビンタ。お前は眼鏡女と。ポケレッド、基地外野郎と戦え。オレは向こう傷とやる」
ユウキ「…まさか、今の会話から適性を…いや、それ以前に敵の性質だってよく…」
ゲンキ「狐は追い詰め型、向こう傷は正攻法、眼鏡は状況利用、基地外はゴリ押しだな。ざっと見たトコじゃ」
ミナヅキ「な……!?」
ゲンキ「…言ったろ?黄金の観察眼ってな」
ユウキ「…たはは…。まさかあの一瞬に近い時間のうちに、それだけの特徴を見つけるとはなぁ」
ゲンキ「何のんきに言ってやがる。どう1対1に持ち込むかが鍵なんだぜ」
マナカ「地形を利用すれば、あるいは…でも平地だし…あーん、どうして勉強はこういうとこで役に立たないのよー!?」
ユウキ「…地形…か。よし。分断はオレに任せてくれ」
ゲンキ「頼もしいじゃねーか。しっかり頼むぜ」
ユウキ「おうっ。任せとけ!」
マナカ「息あってんねー、二人とも…」
ミナヅキ「一人称が同じだからじゃないですか?」
って、おい。
ユウキ「よし、それじゃ…目も回復したことだし」
ゲンキ「作戦開始だッ!!」
午前5時56分、マグマ団討伐隊(仮)+α、赤井レッカ率いる“裏”と、戦闘開始。
- 89 :エンタ :2006/08/13(Sun) 18:42:06 ID:eJLOW1EM
- 第250話 4VS4
ユウキがムドーの脚に掴まってそらをとび、上空から剣を振り下ろした。
ユウキ「一閃流オレ式奥義・崩獄の剣舞ッ!!」
刃に沿って放たれた衝撃波がじめんをきりさき、割れた大地の下からマグマが噴き出した。
ヒネズミ「あッチち!?」
タキ「…ほう…考えたな。ヒネズミよりは頭が回るようだ」
ヒネズミ「んダト、このキザ男ガッ!!」
タキ「…頭が少しでも回るというのなら、今ヤツらがやろうとしていることは何だか当ててみろ」
ヒネズミ「決まッテる、攻撃だろウガ!」
タキ「やはり野蛮な考えしか浮かばぬか。レッカたちが分断されたのにも気づいていぬとはな…。
…まあ敵の茶番に付き合ってやるのもまた良しとしよう。ヒネズミ、そこから3歩退け」
ヒネズミ「どウイう意味だ!オレ様に指図すルナ!!」
タキ「…この線か。ならば俺が離れれば…」
眼を閉じたまま、タン、と軽やかに後ろ跳びしたタキの数歩前の位置に、ユウキが放った衝撃波が命中し、マグマが噴き出した。
ヒネズミ「ナッ!?何ダコりゃ!?」
マナカ「キチガイさん、あたしが相手よ!!」
相手がカドに立っていれば、当然逃げ場を塞ぐのは簡単。追い詰めたままで戦えばいい。
ヒネズミ「…いツノ間に…まアイい、殺スダけダナ!ヒャーッハハハハハハハッ!!」
マナカ「…やっぱキチガイだ…」
午前6時00分、大空マナカVS猪狩ヒネズミ、戦闘開始。
タキ「…クク…小僧。分断はうまく出来たのか?」
ゲンキ「リュックヤローに聞けや。今のオレは機嫌が悪ぃ。なんたって大将戦をリュックに譲ってやったんだからな」
タキ「そのわりには、嬉しそうにしているが?」
やはり目を閉じたままで、タキがゲンキを『見据える』。
ゲンキ「おーよ。今からお前をぶっ倒せると思うと、嬉しくてしょーがねーのよ!!」
午前6時00分、金田一ゲンキVS大神タキ、戦闘開始。
イロリ「ちょっ、何これ!?ムカつく!!こんなんであたし等をどーにかできるとでも思ってるわけェ!?」
ミナヅキ「…思っています。だから、勝たせてもらいます!」
イロリ「…チッ。ガキが、何イキがってんのよ。ムカつく…ぶっ殺してやるわ!」
午前6時00分、桃花ミナヅキVS賽河原イロリ、戦闘開始。
レッカ「…もう何も言わずとも、わかっているだろうな」
ユウキ「貴様を殺す…だろ?」
レッカ「物分かりが早いのは好ましい。が、それ以上に物分かりが悪いのが腹立たしいッ!!」
ユウキ「生まれつきだぜ?勘弁してくれよ」
レッカ「ならば、死ぬがいい」
ユウキ「話早すぎ。そう簡単に、殺されてたまるかよ!オレの戦いには、みんなとの誓いがこもってるんだ!!」
午前6時00分、大空ユウキVS赤井レッカ、戦闘再開。
- 90 :エンタ :2006/09/22(Fri) 16:57:20 ID:GTMHRWEc
- 第251話 諜報部の戦い
ツツジ「…ダイゴ。そちらの状況を送信して」
ダイゴ『OK。数分かかるが…』
ツツジ「30秒でやりなさい」
ダイゴ『…イエッサー…』
マユミ「うふふっ、ダイゴさんたら、妻のお尻に敷かれるタイプですね〜♪」
ツツジ「な…っ、誰がですか!!」
マユミ「ええ申しましたとおり、ダイゴさんの話ですよ?でもどーしてツツジさんがムキになってるのかしら〜?」
ツツジ「…うぐ…」
ダイゴ『準備完了だ。いつでも受信できるはずだよ』
マユミ「あらあら!本当に30秒で出来ちゃうあたり、なかなかいい亭主になれそうですね〜♪」
ツツジ「ですから誰が…もう、いいです」
ピコッ。
諜報部が受信したのは、ダイゴとヒスイが現在いるそらのはしらの様子だ。
ダイゴ『えーっと…写ってるかな?ほら、こんな風に、部屋の中央に突き抜けるように…』
ダイゴのポケギアが映している画像を、そのまま諜報部に生中継しているというわけだ。
ツツジ「内部の様子はよくわかりましたわ。それで、目的はどのあたりに…」
ダイゴ『どうやら、地上6階というなんとも低い位置にいるらしい。いや、それでも最上階なんだが…』
ツツジ「確かな情報かしら?」
ダイゴ『ああ。何よりヒスイちゃんが全て思い出したって言ってる。もっとも正確な情報だよ』
ツツジ「巫女の記憶…ですか。以前にも似たようなことがありましたわよね?大空マナカの件で」
ダイゴ『行ったことのないはずの場所にテレポートできた…あれか』
ツツジは何も言わずに話を聞くことにした。
ダイゴ『当然の摂理だが、大地を司る巫女の中には全ての大地の記憶、つまり情報が眠っている。
ただ子供の記憶容量には負担がかかりすぎるため、脳が一時的に記憶を封印するんだ』
マユミ「子供の頃はそんなにたくさん覚えられないですしねぇ」
ダイゴ『まあ、簡単に言えばそうなるかな。同様に空の巫女にも、全ての空の記憶と、もうひとつの記憶が眠っている。
巫女と記憶を共有する神レックウザの、住処であるこの地…そらのはしらの記憶が』
マユミ「…記憶の共有、ですか。そらいろのたまに触れたときに起こる、あれですね」
ダイゴ『以前はね。そらいろのたまを通じて記憶の不足を確認した神が、自らの記憶を注ぎ込もうとしたせいでああなったんだ。
今はヒスイちゃんに記憶が戻ってるから、あんな現象は起こらなくなった』
マユミ「いいことです。何度も無理に記憶を注ぎ込まれていたら、いつか頭がパンクしてしまうもの」
ダイゴ『そして、もうひとついいことがある。そらいろのたまを通じて、今度はこちらからレックウザの意思にアクセスできるんだ』
マユミ「なるほど。いくら神様でも、人の言葉は喋れませんものね」
ダイゴ『…果たして本当にそうでしょうかと、ヒスイちゃんが言ってるよ』
ツツジ「…じゃあ、喋れるって言うの?」
ダイゴ『どうだろう。そもそも声帯を持っているのか、人間と同じ波長なのかって時点で、僕は疑わしいと思うけどな』
ツツジ「人の言葉を喋るポケモンなんて、聞いたことがありませんわ。漫画やアニメじゃあるまいし」
ダイゴ『ポケモンと心が通じるトレーナーなら、見たことあるけどね』
ツツジ「あなたの可愛いお弟子さん?それとも、あの小粋なバトルガールかしら?」
ダイゴ『どちらもさ。そして、彼らだけじゃなくみんながそうだ。僕も、キミもね』
マユミ「フフッ。大切にしたいですね。私たちの関係性を…人と、ポケモンとの未ら…」
ドッガアアアアァァァァァァァァァアアアンッッッ!!!!
諜報部の小屋の機器ではなく、通信先…ダイゴのほうで、何かあったようだ。
ツツジ「…ッ!?映像が…!ダイゴ!!ダイゴッ、応答して!!」
マユミ「…行きましょう、ツツジさん!!」
ツツジ「えっ!?で、でも…」
マユミ「リュート!行きますよ!!」
かつての部下が捕獲したアブソルの背に乗り、マユミは小屋のドアを開いた。
ツツジ「ま、待ってくださーいッ!?」
あわててマユミの後ろに乗るツツジ。…が、肝心のアブソルはいっこうに動こうとしない。
マユミ「リュート…?重いだなんて、言わせませんよ…?」
あくタイプのポケモンをも凌駕するおぞましい殺気にギョッとして、アブソルはキリキリ走り始めた。
- 91 :エンタ :2006/09/22(Fri) 16:57:40 ID:GTMHRWEc
- 第252話 むかしばなし
ダイゴ「…今のは…?」
ヒスイ「ダイゴさん、ポケギアが!!」
ダイゴ「げ…」
天井から轟音と共にバラバラと落ちてきた石が、プテラの翼で守りきれなかったポケギアに見事に命中していた。
ダイゴ「あーあー…ツツジたち、映像が途切れたから心配してるだろうな」
実際は何ともなかった、とも言いたげだが…今の振動で怪我をしなかったわけではない。
ヒスイ「…!!ダイゴさん!!脚…血ッ!!」
ダイゴ「ん?ああ、こんなの平気だよ。ツバつけとけば直るって」
ヒスイ「男の子は平気でも、女の子は見ているだけで痛いんです!今治療しますから…」
妙に説得力のある言葉だった。いわれるがままにダイゴは脚を出した。
ダイゴ「でも、治療って言ったって、そんな道具は…」
ヒスイ「神様が力を貸してくれます…きっと」
呟きながらヒスイがそらいろのたまをダイゴのバッグから取り出す。
ダイゴ「…レックウザにアクセスするつもりなのか?」
ヒスイ「あちらに拒絶の意思さえなければ…力を借りることは出来ると思います」
今は晴れた翠色の宝珠は、ヒスイが念じると同時に…
…翳った。
ダイゴ「…どうやら拒絶の意思があったみたいだねー…だとするとさっきの振動はさしずめ…警告、かな?」
ヒスイ「…空の神が…怒ってる…」
ダイゴ「本格的にやばくなってきたかな。怪我はもういいから、先を急ごう…って!?」
今の今まで全く気がつかなかったが、床がヒビだらけになっている。おそらく先ほどの振動で生じたものだろう。
ダイゴ「歩いたら崩れそうだな…かといって、プテラが飛びまわれるほど広いわけでも無し…と」
ヒスイ「…か…」
ダイゴ「か?」
ヒスイ「風になりましょう!!」
マユミ「リュート、場所はわかりますね!?」
アブソルが高く鳴いた。おそらく肯定の意思表示だろう。
ツツジ「アブソルはわざわいを感知する能力があるといいますわ…」
マユミ「ええ。私が初めてアブソルというポケモンを見たのも、大噴火の起きた日でした」
ツツジ「え!?」
マユミ「アブソルはわざわいを呼ぶ不吉なポケモンと言われているけれど…本当は違うんです」
ツツジ「最近の研究で明らかになってますわ。彼らの五感は非常に鋭く、自然環境の変動の予兆ととれる変化は特に敏感に察知すると」
マユミ「…言ってみれば、唯一自然に逆らって人間に警告を与えてくれるポケモンなわけです」
ツツジ「…どういう意味ですか?」
マユミ「…アブソルは現在では、ホウエンにしか生息しない貴重なポケモンです。この意味はわかりますね?」
ツツジ「…まさか、超古代の伝説と関係があるとでも言うつもりですか…」
マユミ「ピンポンピンポン大当たり。そして、アブソルは自らの能力を必要としない場所で生きることを選ばなかったのです」
ツツジ「逆に言えば、ここホウエンではその予知能力が必要とされている、と?」
マユミ「ええ。今まさに、私たちにね♪」
ツツジ「はぐらかすのはやめてください。彼らの能力が必要とされる理由とは、何ですか?」
マユミ「…ハジツゲ。それにルネ、キナギ。神話の眠る地で生きていれば、いろいろなことを聞けます」
ツツジ「何ですって…?」
マユミ「何も知らないのでしたら、知ることをお勧めします。…今こそ話しましょう。私の知る、全ての災いを」
数秒間をおいて、ツツジが口を開いた。
ツツジ「…お願いしますわ」
- 92 :エンタ :2006/09/22(Fri) 16:58:01 ID:GTMHRWEc
- 第253話 幻星大災禍
マユミ「10年前の、1995年霜月朔日。幻陸大災禍。死者約二十名、行方不明者一名。
13年前の、1992年文月朔日。幻海大災禍。死者約七十名、行方不明者一名」
ツツジ「そのくらいは私の知るところです…行方不明者が一名というのは、…贄のことですね」
マユミ「…そして、20年前。1985年霜月朔日。…幻陸大災禍。死者約百名、行方不明者一名」
ツツジ「…え?」
マユミ「さらに、26年前、1979年弥生朔日。幻海大災禍。死者約百三十名。行方不明者…二名」
ツツジ「二名!?贄と…あと1人は!?」
マユミ「…我々サミットが、独自にその消息をつかみました。…行方不明者の名前は松房炎次郎。失踪当時の年齢、14歳」
ツツジ「マツブサ…ですって!?それに失踪って…!」
マユミ「松房炎次郎は、幻海大災禍以後、『公の場で誰にも会っていない』ため、失踪扱いになったのです」
ツツジ「影では…マグマ団発足の準備を進めていたのですわね…」
マユミ「調べた結果、マグマ団のメンバーは皆、個人的に招集された者たちのようです。手紙や、直接会って…など」