Blue Sky(171話〜)

1 :エンタ2006/03/21(Tue) 15:24:55 ID:QCQts6D6
どうも、エンタです。
目障りとは思いますが、二つもスレを作らせていただきました。
なので、せっかくですから最後まで読んでくださると光栄です。
最初にここを見た人は、掲示板で1話〜170話を探してそっちを先に読んでみてください。
はい。ちゃっかり宣伝です。
では、171話から始まり始まり〜

2 :エンタ2006/03/21(Tue) 15:25:42 ID:QCQts6D6
第171話 仲間集め 芦田ミツル・其の一

スグル「ユゥ――キ――、疲れたよ――――」
ミドリ「…………」
無言で蹴りが放たれる。いつもどおり、スネに。
スグル「〇×△□☆Д★■▲+●!?!?」
これは果たして、声と呼んでいいものなのだろうか…
ユウキ「休憩してから17分34秒しか経ってないぞ!もうちょっと頑張れ!」
ミナヅキ「あと少しですから…」
スグル「おおお、ミナヅキちゃんがそういってくれるなら頑張っちゃおうかな――イデ――――!?!?」
ミドリ「…………」
ここは、おくりびやま登山道。一人目の仲間、ミツルに会いに行く道の途中だ。
まだ朝だが、霧が濃いので日の光はほとんど遮られ、足元も暗い。
ユウキがピタッと立ち止まり、大きく深呼吸を一回した。
ユウキ「標高1589m…あと、199mか…」
スグル「キミのその体内時計にはオドロキだなァ…いや、もはや時計と呼べるレベルじゃないのかも」
ユウキ「?お前ら、空気の感じで標高も分かんないのか?」
スグル「わかるのはキミだけです」
ユウキ「…?ずっと山村で暮らしてたからかな……、ッ!!隠れろ!!」
ミナヅキとスグルの手をとり、ユウキは岩壁に一瞬であけた穴に隠れた。
ミドリはスグルがガッチリ手を掴んで(掴まれて)いたので、全員隠れられた。
???「…や〜、…りまし……、……ダー!」
???「……ろで、………は……します?ほ……に…のま……いいん……か?」
???「…っておけ……ともとヤ………らぎる気だっ…」
スグル「何?何?誰の声?」
ユウキ『静かに!』
ユウキはプラがあけた穴から影の長さを計算し、ギリギリ相手に見えない場所から様子をうかがっている。
これらの声は何者が発しているのか、だいたい見当はついた。ユウキは最後の声にだけ聞き覚えがある。
…マグマ団リーダー、マツブサ。
ユウキ『あいいろのたまも…奪われたか…』
ミナヅキ『えぇッ、そんな!!じゃああの声は、マグマ団ですか…!?』
こんなときミナヅキの小声は便利だ。!マーク付きにもかかわらず、ユウキ以下の音量である。
声が、近づいてきた。
???「でも、…かっ………すか?……ルはフ……ヤ…ク……ゾンな……しょう?異国……力っ……わさ…」
マツブサ「どうだ…な、…じ難い話…が。そ……もヤツが……因子であることは…実…」
???「…も、だか……て、…の真ん………ててく…事はないで………」
肝心なところだけがうまく聞き取れない。そして、声が遠ざかっていく。
???「まあ、………は………者だし……の報………」
???「……なこ……り、つい…………ろ……まを、………れたん…!」
マツブサ「ク……ハ、あ…は大………女を手……………け!……マ…の…も、………ぐ叶…!」
どんどん声は遠ざかっていく。だが、最後に一言だけ…大声で叫ぶバカがいた。

???「裏切り者ホタルも始末したし!!もう邪魔者はいねぇ!グラードン復活まで、目前だ――!!」
ユウキ「!!!!」

3 :エンタ2006/03/21(Tue) 15:46:34 ID:QCQts6D6
こういうセリフの穴を埋めるのがお好きな方は、挑戦してみてください。
「…」一個で一文字ぶんです(漢字一文字もあり)。

4 :エンタ2006/03/22(Wed) 13:01:36 ID:PnWvmnco
第172話 仲間集め 芦田ミツル・其の二

ユウキ「…………!!」
スグル「行っちゃったみたいだな。…で、もう後が無いってことね」
ユウキは最後の言葉を反復していた。
「裏切り者ホタルも始末したし!!もう邪魔者はいねぇ!グラードン復活まで、目前だ――!!」
ホタル?ホタルというと、あのホタル?
ミナヅキ「ユウキさんのとっさの機転で、なんとか見つからずにすみましたね…」
ホタルが帰ってきたのか?いや、そんなことよりも…
スグル「ああ。人数的に、ちょっとヤバかったし。しかしこれ、どういう仕組みなの?」
……ホタルを…始末した!?
ミドリ「……きっと、ひみつのちからです……何も無い場所に空間を作るわざ……」
ミナヅキ「ユウキさんのおかげで、助かりました。耳がいいんですね……ユウキさん?」
ホタルが、裏切ったから、始末した!?
スグル「おーい。ユウキ?何ぼーっとしてるんだい?」
怒りが、こみ上げてくる。今ならまだ間に合う、ヤツらを追いかけ……
ユウキ「〇×△□☆Д★■▲+●!?!?」
ミドリ「…………」
スグル「第三者の立場で見ると、ものすごい威力…」
ユウキ「ッな――にやってんだよォッ!!」
スグル「それはコッチのセリフだよ。キミは耳がいいから何を聞いたか知らないけど…今はこっち優先」
スグルがセンリに預かった写真を取り出して、言った。いや、それにはミツルは写っていないのだが…
ユウキ「…あ…ご、ごめん……」
スグル「まったく、しっかりしてくれよ?今は一応キミがリーダーなんだからさ」
ミナヅキ「それじゃ、行きましょう。ここからじゃ、センリさんに連絡もできませんし…」
ユウキ「ああ…そうだな……よし!!行くか!!」
気を取り直して、ユウキは穴を出て歩き出した。
標高1788m地点までの道に、ホタルがいることを願いながら……

しかし、もちろんそんな登山道の真ん中にいるはずもなく……
ミナヅキ「着きましたね。それじゃ、ラフリン…つきのひかり!」
つきのひかりが岩壁を照らし出す。
スグル「おおー…ビューティフル。けどキミより美しいモノなんて存在しないのさミナ……ギャ――――!?!?」
ミドリ「…………」
ユウキ「…マグマ団のヤツらに、集落が荒らされてなければいいんだけど…」
この言葉に、3人は緊張した。考えもしなかったが、可能性は高い。
ユウキ「…開けるぞ」
扉が、開いた。

幸い、中は荒らされた様子はなかった。が、住人の姿が無い。
ミナヅキ「…!姉さん!サツキちゃん!!」
ハヅキ「ミナヅキ!!無事だったか!!」
サツキ「ユウキおにーちゃんとカケオチしたのかと思ったよ〜?ん〜?」
ユウキ「な……」
二人はやましい事などしていないはずなのに、なぜかそろって顔を赤らめた。
ユウキ「って!!そうじゃなくて!!」
ミナヅキ「ねね姉さん、あの緑色の男の子はまだいる?」
ハヅキ「…?いるけど…」
サツキ「あっちの家だよ〜」
ユウキ「どうも!!」
スグル「あ、ミナヅキさんのお姉さんでしたか。はじめまして。僕、天童寺スグルといいま……ギャ―――――!?!?」
ミドリ「…………」

5 :エンタ2006/03/22(Wed) 13:04:44 ID:PnWvmnco
第173話 仲間集め 芦田ミツル・其の三

ミドリ「……『共鳴(セルフ・シンクロニズム)』……」
スグル「いきなりなんだい…って、この子のスペックか」
ユウキ「やっぱり間違いない、ミツルだよ」
ハヅキ「サツキが山ん中で倒れてるの見つけてから、ずっと寝通しなんだよ」
サツキ「いや、一回起きたけどまた気を失うように寝ちゃったの…大丈夫かな…」
ハヅキ「おや、サツキが人の心配とは珍しい」
サツキ「余計なお世話!!」
ユウキ「歳が同じだから、親近感を覚えるんじゃないですか?」
サツキ「えぇぇ―――――ッ!?同い年!?うそだ!この人あたしより大きいもん!!同い年に背抜かれてるなんてありえない!」
ハヅキ「……。あのなぁ、アタシだって3つ下のダイゴちゃんにとっくに背ェ抜かれてんだよ?」
ユウキ「えぇ!?ハヅキさんと師匠って、ちゃん付けレベルの知り合いだったんですかッ!?」
ハヅキ「あれ、言ってなかったっけ…っていうか、何その微妙な表現…」
すると、ミツルがうめき声をだした。
ミツル「…う…ん……ん………?」
サツキ「!!オキタ―――(☆∀☆)―――ッ!!」
ミツル「…あ……キミは……アゲハントの……」
そして次の瞬間、一撃で目が覚めた。
ミツル「ユユユユユウキさんッッ!?」
ユウキ「よ、ミツル。また会ったな」
ミツル「ユウキさんがどうしてここに…ここに……って、ここは…?」
ハヅキ「おくりびやまの宝珠の守人の集落よ。キミ気ィ失ってたからサツキが連れてきたのよ」
わりとおだやかな口調。出た!魅惑のセールストーク(?)!!
ミツル「キミが…?」
サツキ「そ。感謝しなさいよねっ」
ミツル「どうも、ありがとう…」
ユウキ「いきなりだけどミツル、サミットに入ったって本当?」
ここにいるのは全員サミットのメンバー及びその関係者であることをユウキが確認する。
ミツル「あ、えと、はい。銀シンジさんの代わりにフウさんとランさんのパートナーになりました」
ユウキ「そうか。じゃ、さっそくだけど仕事だ。ここからミナモシティのトンネルまで行って、ハジツゲに急行してくれ」
ミツル「トンネル、と言うと、あのヒサヤさんの…」
ユウキ「そう。向こうに着いたら特訓なり休むなり何してても構わないけど、ハジツゲは離れないこと。いいか?」
ミツル「は…はい!」
ユウキ「そんじゃスグル、ミドリ、頼む」
ユウキが1歩後に下がり、ユウキにとっては見たくもないトラウマ本を持ったスグルが前に出た。
スグル「えーっと、今からキミのスペックの内容説明をしたいと思いまーす」
ミドリ「……『共鳴(セルフ・シンクロニズム)』……」
ミツル「…!それは、ラルトスが進化したときに聞こえた…言葉?」
スグル「えーっと、せ…せ……あ、あったあった」
スグルがバラバラとその本(トレーナースペックとその条件・著:朱鷺神コウメ)をめくり、あるページで止めた。
スグル「何だよこの本…字、読みにくッ…えーっと、『共鳴(セルフ・シンクロニズム)』でいいんだったね?」
ミドリが無言で頷く。
スグル「効果…『シンクロ』のとくせいを持つポケモンと共鳴し、そのわざをトレーナーが使用できる…凄いなそれ…
    弱点…リバースがかなり早い。過去に速水シズルという『共鳴』の持ち主が存在したが、
    その記録ではどうやらわざを使った回数ではなく、そのポケモンを出している時間がリバースゾーンらしい」
ミツル「りばーす…?」
ミドリ「……リバースとは……スペックを行使したときに起こる副作用のことです……
    通常のスペックでは無理に使わない限り発動しませんが……能力によってはリバースの多い傾向が見られることもあります……
    そして……リバースゾーンとは……スペックの素となる気力が消費される期間のことです……」
ミツル「へぇー。物知りですね。80へぇ」
ユウキ「!?オレのネタ!!」
ネタ!?
スグル「続きを読むよ?…備考:『シンクロ』のとくせいをもつ現在確認されているポケモンは以下の通りである。
    ケーシィ、ユンゲラー、フーディン、ネイティ、ネイティオ、ラルトス、キルリア、サーナイト。
    …ちょっと古いなコレ…エーフィ、ブラッキーもだよ」
ミツル「そのうち僕、二匹持ってます」
ミドリ「……いいスペックの使い方をしていますね」
不自然なセリフにスグルが振り返ると、なんと!!あのミドリがミツルに向かって微笑んでいるではないか!!
スグル「すごい!!奇跡だ!!決定的瞬間だー!?」
ユウキ「ミツル!写真、写真!!」
などと失礼なことを口走る男ふたり。そんなことを言っている間にもミドリはいつもの無表情に戻ってしまっていた。
ミドリ「……けれど……リバースで長い間寝込むのは感心できません……しかも丸2日だなんて」
ユウキはちょうど一週間前に、三日三晩寝続けたのを思い出し、あくまで自然に目を背けた。
ミツル「すいません…どうもキルリアが進化した嬉しさで気が抜けちゃったのか…いや、言い訳はよくないですね」
こんなセリフを聞かされ、ユウキはさらに気まずい思いをした。そこで、話題を変えることにした。
ユウキ「そ…それで終わり?終わりだなうん、終わり終わり!!というわけでミツル、さっそくミナモへいってこーい」
…本当に芝居が下手なヤツである。

6 :エンタ2006/03/22(Wed) 13:07:26 ID:PnWvmnco
第174話 時を超えて

ゲンキ「ぬぅおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?!?なんだこれ、ドラ○もんのタイムマシン空間かッ!?」
パクリなほどに見たことある風景だ。その中で流されるようにして4人が時を越えている。
シンジ「…これもジーエスボールの…プレッシャーの力か。普通ならここにいるだけで押し潰されてしまうはずなのに」
ゲンキ「グロいこと言うなよ!?」
シンジ「ここでもスペックは使えないから気をつけておけよ」
ゲンキ「はーいはい。わかってるってぅぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?!?」
視界が明るくなった。というより、真っ白になった――――。

ゲンキ「いでべっ!?」
そして次の瞬間には、じめんと思われる場所に放り出されていた。
ゲンキ「ぐぎゃっ、オイ乗るなょぐはっ!?」
見事に押しつぶされたゲンキをよそに、何故か無事に着地できたシンジが辺りを見る。
シンジ「…やはり、この辺一帯は時を超えて存在する空間…ここでもスペックは使えない、か」
ゲンキ「オイ助けろシンジ!!これカビゴン級だぞ…うごッ」
人の上に乗っておきながら平気でその人を殴るアオイと、また気絶しているヒスイ。これを見てシンジは…
シンジ「………。」
沈黙するしかなかった…

4人がほこらを離れると、景色が移り変わった。
石で舗装された道、そして振り返ると石のほこらが。
シンジ「なるほど…これが『アゲトビレッジのほこら』という名の…時のほこらの仮の姿…」
ゲンキ「アゲト…?」
シンジ「この時代、現代のジョウト地方は北と南に分かれていた」
シンジが解説を始めた。ゲンキがこの説明好きめ、と言おうとしているのがよくわかったが、とりあえず制止した。
シンジ「北には忍者の里・丁子村や、二つのとうがそびえる都・槐村などがあり…南には広大な砂漠が広がっている」
ゲンキ「さッ、砂漠ぅ!?ワカバタウンも南のほうにあるけど…そこも156年前は砂漠だったってのかよ!?」
シンジ「そうだ。まるで国境線のように生い茂る森とそびえ立つ山脈が気候をわかつ」
アオイ「それで、ダークポケモン戦争があったのは…」
シンジ「無論、南だ。土地が悪いわりに、科学技術だけは栄えていたしな」
ゲンキ「科学技術?」
シンジ「ああ。例えばトレーナーのポケモンは通常ゲットできないだろう?」
ゲンキ「アタリマエだろ」
シンジ「それを可能にしたのがスナッチマシンだ。普通のボールをスナッチボールに変える」
ゲンキ「スナッチって…奪うって意味じゃねーのかよ…もしかして泥棒マシン?」
シンジ「クク…ところが、そのマシンを持っていたのが…ダークポケモン戦争の英雄、レオなのだ」
アオイ「…?レオ?レオンハルト・ヴィンスレッドのことですか?」
シンジ「む?そうか、お前たちの時代ではそう呼ぶんだったか。この時代ではレオで通っているがな」
…自然な会話の中の、違和感。
アオイ「…待ってください。どうして私が船で貸した本にも載っていない情報を…シンジが知っているんですか?」
シンジ「…む…?」
そういえば、何故だろう。シンジの表情が変わる。
シンジ「言われてみれば…何故だ?自然と口をついて出てきたんだが…」
ゲンキ「ま、まぁ…この説明好きが知らねー情報なんてないって事じゃねーの?」
アオイ「むー。それでは諜報部の私が納得いかないの」
いっこうに終わりそうにないこの話題を、ヒスイの一言が終わらせた。
ヒスイ「…痛ッ!?」
一言?
アオイ「!ど、どうしたんですか!?」
ヒスイ「あ、頭が…」
シンジ「馬鹿な…この時代の空の巫女はお前ではないはずだ。何故頭痛が?」
ヒスイ「ち…違っ…これは、空の神じゃなくて…わたしの…記憶……!?」
アオイ「!!まさか…この時代に着いたことで失われた記憶が一気に蘇り始めて…その負荷が、頭痛を引き起こしてる!?」
ゲンキ「つまりは頭パンク状態ってワケだな」
シンジ「ちッ…寝ていてもらうしかないか…」
え?と言う間もなく、シンジの手刀がヒスイの首に叩き込まれ、気絶させた。
アオイ「シンジ!!あなた、女の子に何てことするんですか!!」
シンジ「この場合仕方あるまい。記憶が多いあまりその記憶自体が消えてもらっては困る。…槐村に連れて行くか」
ゲンキ「槐村?ああ、北の都か?」
アオイ「…?(ここからなら、アゲトビレッジのほうがはるかに近いはずじゃ…?)」
シンジ「いくぞ、二人とも」
ゲンキ「お…おう」
シンジの選択を不自然に思いながらも、一行は北へ向かった。

7 :エンタ2006/03/24(Fri) 21:52:08 ID:NXEOeFEQ
第175話 仲間集め 七瀬ツチオ・其の一

ミツルを無事送り出したユウキたちは、次なる目的地ヒワマキシティへと向かうことにした。
ハジツゲにいない残りのメンバーは、ツチオ、ハルカ、ワビスケの3人。このうち正確な居場所がわかるのはツチオだけだ。
ムドーを使って倒れでもしたらミドリに怒られるかもしれないので、スグルのピジョットで行くことにした。
スグル「ほら、しっかりつかまっててくれハニー」
ミナヅキ「あ、あのー…私は、ワタポンが…」
スグル「そんなつれないこと言わずにおいでベイビー。僕が抱きしめてあげぅぐあぁぁぁぁぁぁ!?!?」
ミドリ「…………」
ユウキ「いい加減気づけよ…ミドリはやきもち妬いてんだよ」
ミドリ「……やきもちでは……ありません」
スグル「だったらいちいちスネ蹴らないでくれるかな!?こんなに体鍛えてもらったんじゃ僕のスペックも用無しだよ!?」
ユウキ「あ、そういえば…お前のスペックって何なの、スグル?」
スグル「フッフッフ…よくぞ聞いてくれました!!ミドリ!!」
ミドリ「……ハァ……『完壁(パーフェクト・シールド)』……」
ユウキ(今ため息聞こえた…)
スグル「そう!その効果は、リフレクター及びひかりのかべの永続化!!リバースも少なめ!!」
ユウキ「永続化…?」
スグル「英語で言うと、パーマネンス!!」
ユウキ「いやそんなことはどうでもいいから」
スグル「…………。…つまりさ、永続化っていうのは…自然に消えたりもかわらわりで割れたりもしないってこと」
ユウキ「えぇ!?すげぇ!!」
スグル「すげぇだろう?それが僕のスペック、『完壁(パーフェクト・シールド)』なのさ!!」
ミドリ「……さらに強度も通常の数倍で……攻撃に転用することも可能です……にもかかわらず」
ミドリがスグルをにらみつけた。
ミドリ「……スグルお兄さんのポケモンの中でリフレクターやひかりのかべが使えるのは……プクリン一匹」
スグル「…う」
ミドリ「せっかく便利なスペックなのですから、もっと有効に活用してください」
スグル「はい…」
ユウキ「しっかしミドリはそういうことに詳しいなぁ」
ミドリ「……一応……おばあさまのもとでスペックカウンセラーというものをやっていましたので……」
ミナヅキ「スペックカウンセラー…?って、今みたいに有効な活用方法とかいろいろ、アドバイスする人ですか?」
ミドリ「……はい……私の両親には能力が受け継がれなかったものですから……幼い頃から教育を受け……」
ユウキ「って、すっげーなそりゃ。10歳とはとても…」
ミドリ「驚くようなことではありません……ヒワダタウンは達人の町……ジムリーダーは11歳ですから……」
ミナヅキ「あァ!!そ、その話知ってます!!」
と、何故か脅えるような口調でミナヅキが声をあげた。
ミナヅキ「史上最年少のジムリーダーですよね…その…む、むしタイプの」
ああ、だからか。
ミドリ「……よくご存知で……」
ミナヅキ「夜眠るときはいつも姉さんがその話をしていたので…まるで怪談を語るように…」
ああ、なるほど。
ユウキ「って、そんな話をしている間に着いたみたいだぞ」
スグル「おお、本当だ」
自然に囲まれた町、ヒワマキシティ。ツチオの居場所だ。

8 :エンタ2006/03/24(Fri) 21:52:39 ID:NXEOeFEQ
第176話 仲間集め 七瀬ツチオ・其の二

ユウキ「ジ…ジムから……」
スグル「圧倒的な…威圧感が…ッ!?」
そう。そこ、ヒワマキジムからは、ありえないほどの轟音と衝撃波が伝わってきている。
マグマ団とアクア団の抗争でもやってるのだろうか、と思わせるほどのプレッシャー。
しかし、その実態は…

ツチオ「うわ―――――!!また負けた―――――!!!!」

自分の将来を賭けた戦い、とでも言えば聞こえはいいが……
ナギ「す、すみません…また勝ってしまって…」
この戦いは、ツチオのプロポーズを受けたナギがツチオに出した条件なのだ。
ツチオが勝負に勝ったら、ナギは彼のお嫁さんになる。
ナギはナギで、祖父の遺言『自分より強い者と結婚する事』というものに従って、ツチオの挑戦に本気で応えている。
ツチオも、日々オリジナルのわざを磨いているのだが…
また、負けたらしい…。
ツチオ「…い、いえいえ。俺の力不足が原因です」
ナギ「そんな、ツチオさんは一般人では間違いなく最強クラスですよ。それは私が保証します」
それでも勝てないのは、ナギが『ジムリーダー』という非一般人だからなのだが…
ツチオ「でも!俺はいつかその高い壁を乗り越え、あなたを幸せにしてみせる!!待っていてください、ナギッ!!」
そういって、ユウキたちは眼中にないのか、ジムを駆け出してしまっていた。
ユウキ「…あいつ…言ってて恥ずかしくないのかよ…」
ミドリ「……真の愛の前では……羞恥心など塵にも等しいのです……」
ユウキ「って、10歳の女の子が何を悟ったようなことを…」
するとそこで、やっとナギが4人の存在に気づいた。
ナギ「あれ?どちら様でしょうか…」
ユウキ「って、アンタもオレら眼中になかったのかよ!!」
いつの間にかツッコミ担当になってしまっているユウキ。
ナギ「ああ、あなた方は…確か、サミットの」
幸い、まわりに一般人はいなかった。二人の戦いは既に神域と化しているのか…。
ナギ「こうして顔をあわせるのは初めてですね。私は日暮ナギです」
ユウキ「オレたちの名前は知ってると思うけど…オレは大空ユウキ」
ミナヅキ「あ…桃花、ミナヅキです」
スグル「僕は天童寺スグル。優良と書い」
ミドリ「朱鷺神ミドリ……です」
スグル「…………」
ユウキ「ナギさん、今日でツチオとは何回目のバトル?」
ナギは少し赤くなって答えた。
ナギ「ええと…確か32…あ、さっきので33回目ですねー」
ユウキ「多いなー…っていうか、本当にずっと勝てないの?」
スグル「甘いよユウキ。ジムリーダーが挑戦を受けるときの力と本気で戦うときの実力とじゃ天と地ほどの差があるのさ」
ユウキ「あ、そういや父さんがそんな話を…」
ナギ「フフ…ユウキさんは、センリさんの息子さんでしたね。同時にアカギ様のお孫さん」
ユウキ「そうそ…って、ちょっと待った!!ナギさんオレと大して歳かわらないのに、じィちゃんの名前を…!?」
ナギ「私の祖父の世代では英雄とまで謳われたホウエン最強のトレーナーですから」
ミナヅキ「あ、ユウキさん…私も、おじいちゃ…木の実名人から聞いたことが…」
ユウキ「そうか…いやー、名前まで知ってるような人は珍しいしなァ…そもそも存在すらあまり知れ渡ってないし」
スグル「…話題についていけないと、何となく悔しいな…ね、ミドリ?」
ミドリ「……私も……おばあさまに……」
スグル「えぇ!?何それ結局僕だけ仲間はずれ!?チクショー!!」

9 :エンタ2006/03/24(Fri) 21:53:00 ID:NXEOeFEQ
第177話 仲間集め 七瀬ツチオ・其の三

すっかり話し込んで本末転倒になっていたことにようやく気づいた一行は、ツチオを追うことにした。
ユウキ「ナギさんの話だと、東のほうにいったらしいよ」
スグル「東っていうと、120番道路だね」
4人は東に向かって歩き出した。

ミナヅキ「痛ッ!?」
スグル「え、どこに?」
ミナヅキ「…あ、いやあの…そうじゃなくて…」
ユウキ「痛い、って言ったんだろ?大丈夫?」
ミナヅキ「はい…何かが足にぶつかったような気が…」
???「それは、いろへんげポケモンだよ」
上から声がした。…上?
ユウキ「あっ、師匠!!」
ダイゴ「ヒサヤと話をつけたんでね、私用でここに来た」
ミナヅキ「あの…いろへんげポケモンって…?」
ダイゴ「ああ、それは…うーん、口で説明するよりも…」
と言って、ダイゴは懐からメガネのような物を取り出した。
ダイゴ「これをつけて、今つまづいた場所を見てごらん」
ミナヅキ「…?はい……あっ!!ポケモン!!」
スグル「ど、どこに!?」
ユウキ「って、オレにも見えるんだけど…ほら、この赤いギザギザ」
その『何者か』の後ろに回りこむようにして観察すると、ミナヅキの反対側から赤いギザギザが浮いているのが見えた。
ダイゴ「リリキチ、おどろかしてやれ」
ダイゴのリリーラがそのギザギザのあたりに立って、触手を引っ込めて…、
キシャアァァァァァァァアア!!!
すると、赤いギザギザの場所にポケモンの姿が浮かび上がってきた!
ダイゴ「これがいろへんげポケモン、カクレオンさ」
スグル「なるほど、自分の体をへんしょくさせて姿を隠してたのか」
すると、カクレオンが襲い掛かってきた!
ダイゴ「ああ、やせいのうちではカクレオンはかなり強い部類に入るからそのつもりで」
ユウキ「って師匠ォ〜!?」
カクレオンが、ミナヅキに飛び掛ってメガネを奪おうとした…その瞬間!!
ズドンッ!!
カクレオンが、目に見えない巨大な何かに押しつぶされるように、じめんにたたきつけられた。
???「まったく、ダイゴさんは…放っておけば襲ってこないのに」
ユウキ「ツチオ!?」
振り返るとそこには、フライゴンに乗ったツチオがいた。
ツチオ「やぁ、久しぶり。今日はどうしたんだ?」
スグル「…ミドリ、」
ミドリ「……『土行(アースバインド・スピリット)』……」
ツチオ「…!キミは…誰だい?」
『どうしてそれを』と問わないところが、彼の冷静さを物語っている。
ミドリ「……私は朱鷺神ミドリです……」
ツチオ「朱鷺神…ああ、ヒワダのスペック屋の。だから俺の能力の名を知っていたんだね」
ミドリ「……スペック屋……?……私たちの占い館はそのような名前で通っていたのですか……?」
ツチオ「あ、いや…通っていたというか、ヒコ姉ェが勝手に名づけたというか…」
ミドリ「……?……」
ツチオ「まあ、とにかく…今日は何でここに来たんだ?」
ユウキ「あ、実は…」
と、ユウキは会議決行のいきさつを話した。
ツチオ「なるほど…確かにあの光は不吉な予兆を感じさせたけど…」
スグル「ジムリーダーは、戦いのときは近い!って言ってたなぁ」
ツチオ「とにかく、俺はハジツゲタウンに向かえばいいんだね?」
ユウキ「ああ。なんかごめんな、その…大事なトコ、ジャマしちゃって」
ツチオ「いや、いいって。ナギもサミットの一員、分かってくれるはずさ」
そう言うや否や、ツチオはフライゴンを飛び立たせ…そのまま西へと去った。
スグル「…あ!スペックの説明…」
・・・・・・
ユウキ「…まあ、会議のときにでも聞くか」

10 :エンタ2006/03/28(Tue) 12:32:42 ID:.VI1uqGg
第178話 想い出

槐村。現在の、エンジュシティ。とうが二つそびえている。
シンジ「………」
ここに着いてから、いや着くまでの道でも、シンジは一言も喋らなかった。
ゲンキ「…なあ、シンジ…」
シンジ「………」
ゲンキ「…いや…何でもねーや」
アオイ「二人ともー!ヒスイさん、旅の宿に寝かせてきましたよー!」
ゲンキ「…ん?んぁあ、サンキュー、タマゴ」
アオイ「…ゲンキ、ちょっと」
ゲンキ「?」
アオイ「シンジ…大丈夫かな?」
ゲンキ「…何がだよ?」
アオイ「何がって、さっきからずっとだんまりで…」
ゲンキ「あいつはもともと無口だぜ」
アオイ「そうじゃなくて…いつもより重みのある沈黙っていうか…」
ゲンキ「わけわかんねー事言ってねーで、今後の予定でも立てといてくれよ」
アオイ「でも…!」
ゲンキ「おらおら、いいからバンダナんトコ行ってこい!」
アオイは追い立てられるようにして去った。
シンジ「………」
ゲンキ「…なぁ、シンジ…前、アサギでだっけ…お前が、時のひび割れの話をしたよな」
シンジ「……!」
初めてシンジの表情が変わる。
ゲンキ「あの時のお前と今のお前…似てるんだよなァ…あの時はどうしたっけ?」
シンジ「………」
ゲンキ「…あぁ、そうだ。気晴らしに、ポケモンバトルしたんだ」
シンジ「…結果は、引き分けだったがな」
重く閉ざされていた口が開かれる。
ゲンキ「あーそうだったそうだった。ジャマが入ってな…何だっけあの双子?」
シンジ「まったく、人の名前くらい覚えたらどうだ?あだ名ばかりつけているからそういうことになるんだろうが」
彼も人のことは言えないが。
ゲンキ「何だっけ…フンとライじゃなくて…」
シンジ「何だそのキタナイ名前は。フウとランだろう」
ゲンキ「そうそう、フンと、ラン!!」
シンジ「いい加減フンから離れろ」
ゲンキ「そいつらにホウエンに連れてかれたんだっけ…高速船アクア号で」
シンジ「まあ、あの時は俺もホウエン地方特有のボールに興味はあったが」
ゲンキ「あの後いったん離れ離れになったんだったよなぁ…んでもってオレが、テッちゃんと意気投合して」
シンジ「俺はちょうどその時くらいにこいつを捕まえたんだったな」
シンジがノクタスの入ったボールを取り出す。
ゲンキ「はぁ…懐かしいなぁ〜…」
シンジ「…そうだな」
ゲンキ「……お前、ほんとにヤミカラスみたいに気がころころ変わるヤツだな」
シンジ「な!!」
ゲンキ「時のひび割れ…そいつぁ『この時代に存在してはならない』存在だ」
シンジ「………」
ゲンキ「自分の存在を否定されたよーなモンだしな…落ち込むのも、わかる。けど」
シンジ「…けど?」

ゲンキ「ソレはソレ!!コレはコレ!!」
どーん。あまりのぶっ飛びっぷりにシンジが言葉を失った。
ゲンキ「今はもっと大事なことがあんだろが!!自分の事思い出すのなんて、その後でもいいだろ!!」
シンジ「…そ、そうか……なら、悪いが…」
ゲンキ「?」

シンジ「…すまん。もう、全部思い出した」

11 :エンタ2006/03/28(Tue) 12:35:40 ID:.VI1uqGg
第179話 仲間集め 苧環ハルカ・其の一

残りの二人の居場所の手がかりはまったく無い。とりあえず一行は、ホウエンにいるはずの椿木ワビスケを優先した。
ユウキ「ダイゴ師匠なら、何か知ってるかな?」
と思い、連絡をとることにした。
が。
電波が通じない。
ユウキ「どうくつの中とかにいるときは電話通じないんだっけ…弱ったな…」
スグル「…そうなの?機械ってのは、役に立たないなぁ。よし、僕に任せてくれ」
そういうとスグルはゴルダックを繰り出した。
スグル「ゴルダック、キミのねんりきでダイゴさんを探るんだ」
みょみょみょみょみょ………
スグル「…下?地下かい?」
ねんりきを発動するや否や下を指差したゴルダックが、スグルの問いになお首をふる。
スグル「下で、地下じゃない…?」
ユウキ「あ!あのどうくつだ!!」
確かに、今4人がいる橋の下に、ちいさなどうくつのようなものが見える。

案の定、そこにダイゴはいた。石でできた柱のようなものに、手を合わせて。
ダイゴ「…ん?キミたち…どうしたんだ?」
ゆっくり振り返ったダイゴに、ユウキが事情を話す。

ダイゴ「ふむ…ワビちゃんの居場所がね…」
ユウキ「何とかならないですか?」
ダイゴ「…彼女は今、たぶんホウエンにはいないよ」
ユウキ「えぇ!?な、何でですか?」
ダイゴ「いや、居場所のめどは立ってるから彼女のことは僕に任せてくれ」
ユウキ「…すると、残るはハルカ…」
ダイゴ「帰って来る場所で待つのもいいかもね。連絡は取れないし、どこにいったかもわからないし」
ユウキ「出発したのは…カナズミからトウカ方面だったから…104番道路の浜?」
ダイゴ「そこには、船乗りのハギ老人が住んでるよ」
ユウキ「親切な船乗りの人に船を出してもらうとも言ってたっけ…じゃあ、そこで待つか!」
ミナヅキ「…ところで…このお墓、どなたの…」
ミナヅキが石の柱に近寄って言った。
スグル「お墓?これ、お墓なの?」

六文銭日向 此処に眠る

ユウキ「六文銭…ヒナタ?聞いたことあるような無いような…」
ダイゴ(…まあ、キミならあるかもね)
スグル「ダイゴさんの知り合い?」
ダイゴ「知り合い…といえばそうかな。4人も手を合わせて行くといい」
4人は墓の前に並んで、手を合わせて目を閉じた。
ダイゴ「このどうくつは、ひでりのいわとと呼ばれていてね…」
4人は目を閉じながら話を聞く。
ダイゴ「雨が多いこの地域で唯一…この場所の上空だけが、常に晴れているんだ」
そういえば、少し南には雨雲があったのに。とユウキは思った。
ダイゴ「しかも、この方のお墓を造ってから、ね。不思議なこともあるものだろ?」
4人はゆっくり目を開けた。
ダイゴ「…さ、もうすぐ全員集まる。あと少しだ、頑張ってくれよ」
ユウキ「はい!」
一行はいわとを出た。しばらくダイゴはそこにいた。

やがて、1人の男が入ってきた。
ダイゴ「…ああ、遅かったですね」
???「すまんすまん。畑仕事は骨が折れての」
ダイゴ「10分くらい前に、ユウキくんたちがここに来たんですよ。入れ違いになって、ある意味よかったですね…
    …イッセンさん」

12 :エンタ2006/03/28(Tue) 12:36:01 ID:.VI1uqGg
第180話 仲間集め 苧環ハルカ・其の二

ユウキたち一行は、スグルのピジョットで1時間かけて104番道路にやってきた。
日は既に暮れ始めていた。
ユウキ「夜まで待って来なかったら…野宿だな」
スグル「えぇ!?やだよ!!野宿なんて…」
ミナヅキ「でも、ここで待っていないと…」
スグル「…ハニーがそういうんならぐはぁぁ!?!?」
ミドリ「…………」
ユウキ「どうしても野宿が嫌なら、あの小屋に泊まってくれててもいいけど」
スグル「えぇ!?やだよ!!おばけとか出そうじゃないか!!」
ユウキ「…もういい…好きにしろよ…」

日が完全に沈むまで、まだ時間があった。夏は太陽の出ている時間が長い。
ユウキ「…じゃあ、みんなでカイスのみでも食べる?」
珍しくこの言葉にミドリが反応した。
ミドリ「……!食べます」
ユウキ「んじゃ…よっ」
ユウキは砂浜の上でリュックを下ろし、カイスのみを二個取り出した。
ユウキ「チー!つるぎのまい!!」
ボールから出てきたチーが剣に変わるのを見て、ミドリが興味津々という風に声をあげた。
ユウキ「…音に聞こえし往時の剣技…」
スグル「さっさとやっちゃってよ。おなかすいたー」
ユウキ「……。チー、一閃流奥義!!一閃の剣舞!!」
空中に放り投げたカイスのみを、正式な一閃流の剣技で横一文字切りにする。
見事に半分にカットされたカイスのみを、今度は上から…
ユウキ「せいッ!!」
見事に4等分されたカイスのみを、4人が手際よくキャッチする。
スグル「いっただっきまーす!!」
ミドリ「……いただきます……」
ユウキ「ははっ、よっぽど腹減ってんのか?たくさんあるぜ、ハジツゲ産のおいしいカイス!!」
そこで、ユウキはミナヅキの異変に気づいた。
ユウキ「…ミナヅキ?どした、食わないのか?」
ミナヅキ「…え?あ、いえ…い、いただきます」
ユウキ「…?なあ、ミナヅ」
スグルの「おかわりー!!」に遮られて、それ以上は言葉にならなかった。

夜。森の枯れ枝とスグルのキュウコンで火をたき、その近くで一行は寝ることにした。
ミドリ「……それじゃ……火の番、よろしくおねがいします……」
ミナヅキ「はい…」
火の番。獣への警戒ではなく、いつ帰ってくるかわからないハルカを夜も待つための灯り。
ミナヅキ「………」
静寂。ときどき、薪がパチッ、とはじける音がするだけの。
ミナヅキ「………」
ユウキやスグルは、ポケモンたちを全員ボールから出して、寄り添うように眠っている。
クチート。コドラ。エアームド。色違いのプラスル。シャワーズ。
キュウコン。ゴルダック。ピジョット。プクリン。ハクリュー。
ミナヅキは、眠そうな眼とは少し違う細目でそれを見つめると、ふたたび火に視線を戻した。
するとそこで、沈黙を破る機械音がした。
ミナヅキ「…船…?」
音からして小型の船が、小屋の裏に入っていく。
それを追うように、ミナヅキも小屋に向かった。
小屋から、1人の人影が現れた。

ミナヅキ「ハルカ…さん…」

13 :エンタ2006/03/28(Tue) 12:39:24 ID:.VI1uqGg
第181話 仲間集め 苧環ハルカ・其の三

ハルカ「あれ?アンタ確か…サミットの…こんな遅くに、何してるの?」
ミナヅキ「…今度サミットの会議が決定しました。それで、ハルカさんを呼びに…」
火からも小屋からも少し距離を置いた、二人の位置。
ハルカ「アタシは一応、この後家に戻るつもりだったんだけど…夜も待つほど急ぎなの?」
ミナヅキ「…はい」
ハルカ「ふーん…それで、アンタひとり?」
ミナヅキ「…そ…それは…」
正直に話せばいいはずのことを、なぜかミナヅキは口ごもる。
ハルカ「…あの火は?どうやって起こしたの?」
少し遠くで燃える灯りを指差して、わりと厳しくない口調でハルカが聞いた。
ミナヅキ「あ、あれはスグルさんのキュウコンちゃん…あ」
ハルカ「…アンタ、嘘つくの下手ね…」
ミナヅキ「で、でもスグルさんしか…」
ハルカ「…どうかしら?」
そういってハルカは、火のほうを見据え…何かを呟いた。
ハルカ「………!」
この暗さでは焚き火の灯りが見えるくらいで、他には何も見えないはずなのだが…
ハルカ「…アンタ、また嘘ついたね。いるじゃない。ユウキが」
ミナヅキ「!!」
そういうとハルカは無言でミナヅキを通り越し、火の方へと歩き出した…
ミナヅキ「ま、待ってください!!」
ミナヅキが両手を広げてハルカの前に立ちはだかる。
ハルカ「…何?」
ミナヅキ「待ってください」
もう一度、今度は落ち着いた声で、同じ言葉を繰り返す。
ハルカ「…どういうつもり?アタシを呼びに来て、アタシを止めるって」
ミナヅキ「…もう少しだけ…待ってください…」
ハルカはその言葉が「ユウキのところに行くな」という意味ではないことを悟った。
ミナヅキ「………」
ハルカ「何なのよ?アタシ、ハッキリしないやつって嫌いなの」
今度は少し厳しめの口調で言う。
ミナヅキ「…探しているメンバーは、もうハルカさんで最後なんです…」
ハルカ「…?」
ミナヅキ「最後なんです。だから…ハルカさんが戻ったら…このたった一日の仲間探しの旅も、終わりなんです」
ハルカは、やっと話が飲み込めてきた。
ミナヅキ「…だから…ユウキさんと一緒にいられるのも…もう…」
ミナヅキはいつの間にか涙を流していた。
ちなみにこの時すでにミナヅキは、センリにユウキのことを任されたのをすっかり忘れていたのだが。
ハルカ「…アンタ…バカね」
ミナヅキ「ふぇ?」
ハルカ「ユウキのこと好きなら、好きって言えばいーのに」
ミナヅキ「な……っ!?」
ハルカ「それに、アイツはそんな事でアンタを見捨てたりしないと思う。ま、見捨てるってのも大げさだけど」
ミナヅキ「……ハルカさん…」
ハルカ「あーあ、急ぎの用事なら約束も後回しね。まあでも、勝負なんていつでもできるけどさ」
ミナヅキ「約束…?」
ハルカ「格闘家(オトコ)と男の約束よ。ま、今はそんな悠長な事やってる場合じゃないんでしょ」
ミナヅキ「?」
ハルカ「ほら、急ぎなんでしょ!さっさとあのバカ叩き起こして、すぐにでも出発するわよ!!」
ミナヅキは、この時ハッキリと思った。

この人は、強い。…と。

14 :エンタ2006/03/29(Wed) 20:16:56 ID:RoHtt5nw
第182話 南へ

シンジら一行は、ヒスイを連れ、森を抜けて南へと出た。
アオイ「ヒスイさん…あんまり、無理しないでくださいね」
ヒスイ「大丈夫です。センリさんも、土下座までして頼んでくれた…私がここで、負けるわけにはいきません」
シンジ「いい心がけだ。…着いたぞ。乗れ」
シンジが着いたといったのは、格納庫のような場所。そこに、ゴツいバイクのような乗り物が置いてある。
シンジ「この時代での砂漠移動はすべてこのバイクで行う」
アオイ「でも、いいんですか?こんな乗り物、勝手に盗ってっちゃって」
シンジ「心配するな。これは俺のものだ」
ジャ○アン的な意味で言ったのだろうと思って、アオイはさほど気にしなかったが…
ゲンキはその意味をわかっていた。
これは、俺の、ものだ。
つまり…もともとシンジの所持品だったということだ。
しかし156年前の時代に自分のものなんてあるはずも無く…
つまり、それは…
シンジ「サイドに乗れ…飛ばすぞ」
慣れた手つきでレバーやらスイッチやらを操作し、その乗り物のエンジンをふかす。
そして、砂漠へと走り出す…。

シンジ「…ゲンキ」
ゲンキ「………」
先ほどとはうって変わって、今度はゲンキが無口になってしまった。
シンジ「…お前にさっき話した事を…横取り女にも話そうと思う」
ゲンキ「………」
アオイ「…どうしたの、ゲンキ?無口が感染した?」
シンジ「横取り女、聞け。俺は、記憶を取り戻した」
その言葉にアオイが硬直する。
シンジ「話そう」
たったそれだけの言葉なのに、どんな言葉よりも重かった。

最初に思い出したのは、二つのとう。
銀の翼の継承者、銀シンジは、この槐村で生まれた。
1839年に。

アオイ「…それじゃ…」
シンジ「ああ。ここが俺のあるべき時代という事だ」
ゲンキ「…オレは…オレは認めねーぞ。相棒が、タイムスリップしてきたなんて」
『信じない』ではなく『認めない』。ゲンキはそう言った。
シンジ「だが、お前も気づいてはいたはずだ。俺に時のひび割れがあることを知って…」
ゲンキ「でもオレは、認めない。銀シンジ、お前は、オレたちの時代の住人だ!」
シンジ「………ありが、とう……だが、それでも俺は…」
そこまで言って、シンジは再び黙り、それからまた話し出した。

シンジは10歳のとき、父のおつかいで砂漠へ向かい、パイラタウンという少し危険な町に行った。
南にはやせいポケモンがほとんどいないから、モンスターボールが安く買える。
だから北で買うよりもいいのだ。
そこの広場で、なにやら儀式をしているのを見かけ、立ち止まった。
すると…
いつの間にかシンジは、知らない森の中にいた。
そして、目の前の男を見て、あたりを見渡して…

シンジ「その後は…恐らくお前たちも知ってる通りだ」
ゲンキ「…認めねーぞ…オレは…」
シンジ「まだ言ってるのか?まったく…俺はどこにも行かん」
ゲンキ「!!本当か!?」
シンジ「ああ。約束する。いまさらこの時代に戻ってきたって、何が変わるでも…」
そこで、シンジの言葉は止まった。…轟音と共に。
???「ひゃっは、やっぱ夜の獲物はいい感じだぜ!!」
シンジ「貴様ら、何者だ!?」
しばらく何が何だか分からなかったが、どうやら他のバイクに激突されたらしい。
しかも、向こうの口ぶりを見ると…わざと。
???「何者だ?と聞かれたら…答えるしかねえか?」
男は二人組らしい。片一方がもう一方に聞いた。そして相談の末…答えが出たようだ。

???「俺たちは…スナッチ団!!」

15 :エンタ2006/03/29(Wed) 20:17:17 ID:RoHtt5nw
第183話 スナッチ団

シンジ「スナッチ団…そうか、スナッチマシンを開発した盗っ人集団か」
スナッチ団「おいおい、人聞きが悪ィなァ。俺たちゃそんな半端モンじゃねぇぜ。なァ、ジェイク!!」
ジェイク「それよりこいつら…すげぇなぁ、こっちの二人はどっちも5匹。赤い髪の兄ちゃんが6匹。寝てる女が1匹だ」
シンジは最後の一言に、体をこわばらせる。セレビィは、ヒスイに持たせているのだ。
そして、予感は的中してしまった。
ジェイク「ツィール、見たかよ?分かりやすい表情だなァ、え?」
ツィール「言ったろ、俺たちゃその辺の泥棒とは違う。プロなんだよ」
シンジ「させん!!オーダイル!!」
ゲンキ「ヒノまる!!」
ジェイク「へぇー、強そうじゃねえか。じゃ、試してみるか〜?」
ツィール「新開発・ボールスナッチャーの威力を!!」
ツィールと呼ばれたその男が、バイクの中から何かの機械を取り出す。
ツィール「スイッチオ〜ン!!」
突然、機械が猛烈な音を立てて掃除機のように空気を吸い始めた。
ジェイク「ターゲットは…あの、寝てる女!!」
シンジが気づいたときには時既に遅し、瞬く間にそのボールが吸い込まれていった。
セレビィの入った、ジーエスボールが。
シンジ「貴様…!!」
ゲンキ「シンジ!!アレを使うぜ!!」
シンジは少し驚いて、
シンジ「な…お前、まさかほのおの奥義を…!?」
ゲンキ「うだうだ言ってる暇はねぇ!早く!!」
ツィール「お?やるか〜?ボスゴドラッ!!」
ジェイク「デンリュウ!!」

シンジ「オーダイル!!…ハイドロカノンッ!!」
ゲンキ「ヒノまる!何とか流何とか術!!ブラストバーンッ!!」
ジェイク「んな…ッ!?」

ゲンキ「『三寒四温(スチームブースト)』ォ!!」
撃ち出されたハイドロカノンがブラストバーンの熱気によって一瞬で蒸発する。
そして、その水蒸気が爆風によって流され、熱湯の微粒子となって相手を襲う。
その間になおもオーダイルの口から噴出し続けるみずが、今度は相手の体を冷やす。
急激な温度変化によって、ボスゴドラのヨロイが砕け、デンリュウの皮膚の表面が剥がれ落ちる。
これが、『三寒四温(スチームブースト)』…。
ツィール「うわぁッ!?や、やべぇ、ボールスナッチャーが!!」
ジェイク「落ち着け!中身のほうは本部に送った、あとは撤退あるのみ!!」
そういうと二人は風のように去っていった。夜の暗闇にバイクの姿が消えるまで、さほど時間はかからなかった。
シンジ「…ジーエスボール?」
爆発した機械から、ジーエスボールが飛んできた。シンジはそれをキャッチすると…

シンジ「やられた…セレビィを、奪われた…」

16 :エンタ2006/04/05(Wed) 16:45:21 ID:qPAS4fD6
第184話 二度目の会議

会議は、早朝に行われた。
そこには実行部以外のメンバーもいた。
ミクリ。セツナ。ミドリ。ハヅキ。サツキ。センリ。バンリ。そして、マナカ。
だが、ワビスケだけがいなかった。
ダイゴ「それではこれより、実行部ひみつ会議を行う」
ひみつって…
ヒサヤの家の奥、1人で掘り進んだ穴の中で…会議が開始された。

ダイゴ「さて。今日集まってもらったのはほかでもない、今後の対策についてだ。
    みんなも一昨日の光は見たと思うが、僕が思うにあれは予兆。アブソルが災いを感知するのと同じ、ね」
ハルカ「アタシは見てないけど…何?その光って」
ユウキ「おくりびやまの頂上で、オレがそらいろのたまを手に持ったときに出てきた光のことだよ」
ハヅキ「ユウキくんとミナヅキが、現場にいたんだけどね」
ダイゴ「ああ、そうだ。ユウキくん、そらいろのたまを見せてもらえるかな?」
ユウキ「あ…はい」
結局持ってきてしまったそらいろのたまを、リュックから取り出す。
ダイゴ「マナカちゃん、これに触れてみてくれるかな」
マナカ「う、うん…」
マナカが恐る恐る宝珠に触れたが、何一つ異変は無い。
ダイゴ「…マナカちゃんが触れても、変化なし…か」
どうやら、大地の巫女ではなくユウキだけに反応するらしい。一応センリやバンリにも触れてもらったが、特に変化なし。
ヒサヤ「なあ、このそらいろのたまって、具体的に何なの?」
センリ「それは私が母から預かっていたものだ。ほかの二つの宝珠とは性質が異なり、
    どうやら超古代ポケモンを操るものではなく、操られるものらしい」
ヒサヤ「な、何それ?」
センリ「よくはわからないが…それでも、ヒスイが力を取り戻して帰ってくれば役に立つはずだ」
ヒサヤ「ヒスイ?力?」
センリはそこでエメラルド計画の説明を始めた。隠していてもしょうがないと思ったのだ。

ダイゴ「そんな計画が…」
センリ「隠すのは仕方ない事だった。レックウザの力を借りる事は切り札でもあるからな」
ミクリ「そうですね…しかし、レックウザは我々の求めに応じてくれるでしょうか?」
イッセン「…と、いうと…」
ミクリ「やはり、神と呼ばれる存在ですし…万一空の巫女の助けがあったとしても…」
センリ「そうだな。だが、もはや切り札に頼るしかなくなった。マナカはここにいる限り平気だが…
    アクア団のほうは、すでに海の巫女を手中に収めているかも知れん」
バンリ「そうなったら、カイオーガ復活…か」
ダイゴ「そうでもありませんよ。そのために我々…最強の切り札・実行部がいるんですからね」
ハルカ「そうそう!なんだったら、今からでもアジトに乗り込んでやるわよ!」
イッセン「いや、油断は禁物じゃ。せめて全員の力が最大限に出せる日が来るのを待とうではないか」
ユウキ「つまり、決戦の日ッスね…」
ツチオ「あ、それならなるべく土曜日がいいんですが…」
ハルカ「ああ、アンタの能力土曜日限定だもんね…っていうか、だったら今日でいいじゃない!?」
ツチオ「え!?何で知ってるの!?」
ハルカの意見は、軽くスルーされた。
スグル「そういえばミドリ、スペックで思い出した…」
ミドリ「……ええ……実行部のスペックを……1人ずつ、公開しましょう」
二人が立ち上がった。

17 :エンタ2006/04/05(Wed) 16:45:41 ID:qPAS4fD6
第185話 スペック、大公開!其の一

ミドリ「まず最初に……『覚醒(アウェイキング・フォース)』……」
ユウキ「あ、オレか」
スグル「この力は前例があまりに少なく、十分なデータが無いんだけど…
    どうやら、1841年生まれのライラックとかいう名前の人が使えたらしいよ」
センリ(ライラック……?)
スグル「効果…特定のポケモンの潜在力を『めざめるパワー』で引き出す事により、真の能力を行使できる」
ユウキ「特定のポケモン…多分オレの場合、はがねポケモンだな」
確かに、プラやブイには超常の能力は無い。
スグル「弱点…リバースがかなり早い。もっとも、ライラック個人の記録によるデータだが。
    備考…『ねむる』で解除できる」
ミドリ「……あなたの手持ちのはがねポケモンは3匹……いい使い方をしているようです」
スグル「…次、行ってみよー」
はぐらかすようにスグルが進行する。

ミドリ「……『疾颯(ラピッド・リッパー)』……」
イッセン「お、ワシじゃな」
セツナ「何ィ!?おとーさんスペック使えたのォ!?いいなぁ〜」
スグル「効果…必ず先制攻撃ができる。
    弱点…1対1の勝負に限られる。
    備考…先制攻撃というのは、こちらが動くまで敵の動きを止めるというものである」
イッセン「その通り。だから相手の動きを封じるのにも使える」
ミドリ「……あなたはポケモンを一匹しかもっていないようですが……1対1の意味を取り違えているのでは……」
セツナ「あ〜、違う違う。一匹しかポケモンを持たないっていうのは、ろ…じゃなくて、一閃流の流儀なの」
ユウキ「そうなんですか!?」
イッセン「あ、いや、別にユウキが一匹しか使うなとかではないぞ」
ユウキ「あ、そうなんですか…よかった」
スグル「そろそろ次行くよー」

ミドリ「……『心眼(サード・アイ)』……」
ハルカ「は…はい」
妙に緊張しているハルカ。
スグル「効果…『こころのめ』により、相手の心の中を視ることができる。また、ポケモンの心にアイコンタクトを送る事もできる」
ユウキ(なるほど…だからハルカはポケモンに指示せずに戦えるのか)
スグル「弱点…『神眼(マスター・アイ)』は全てのポケモンにアイコンタクトを送る事が可能だが、
    『心眼』はかくとうタイプ限定である。そのかわりに、リバースが軽い。
    備考…人の心を覗くのはほどほどに」
ハルカ「あ…す、すいません」
ミドリ「……あなたのパーティはほとんど全匹がかくとうタイプですね……非常によい使い方をしています」
ユウキ(ほとんど?…全部じゃないのか?)
ハルカ(…ふう。視えてるってのユウキ。あ、人の心を覗くのはほどほどに、だっけ)

ミドリ「……『共鳴(セルフ・シンクロニズム)』……」
スグル「え〜、また読むの〜!?あっすいません読みます読みます」

18 :エンタ2006/04/05(Wed) 16:46:03 ID:qPAS4fD6
第186話 スペック、大公開!其の二

渋々ながらもスグルがミツルのスペックに関する頁を読み終えた頃、ワビスケが入ってきた。
ワビスケ「む…すまぬ。遅刻でござったか」
ダイゴ「いや、気にしなくていいよ。みんなワビちゃんを気遣って、それほど重要な話はしていないからね」
ワビスケ「かたじけない…」
スグル「続きいってもいいかな?」
ダイゴ「今は、ひとりひとりのスペックの説明をしてるんだ。いいよ、スグルくん」
スグル「OK。ミドリ」
ミドリ「……『呼笛(ハーモニック・アラーム)』……」
ヒサヤ「あ、僕だな」
ワビスケ「今ちょうど、兄者の番でござるか」
スグル「効果…『くさぶえ』でどんな深い眠りについたポケモンも起こすことができる。
    弱点…戦闘で使う場合は、敵味方関係なく全てのポケモンを起こしてしまう。
    備考…死んだポケモンも起こすことが可能だが、死後経過時間などに著しい条件がある」
ヒサヤ「化石はわりと簡単なんだけど…死んでしまったポケモンは、そうもいかない。肉体と魂が離れてしまってるからな」
化石とは、肉体と魂の欠片を『石』に封じ込めた大自然の遺物である、というのは考古学者であるヒサヤの祖父の言葉だ。
ユウキ「そっか。肉体と魂が離れ離れになる前にくさぶえを吹き終わらなきゃならないわけだな」
ヒサヤ「…まあ、ポケモンの気持ちも考えずに何度も生き返らせるのは、人間としてどうかと思うけどな…」
ユウキ「…だな。死は、全ての生物に平等に与えられるべきだしな」
スグル「何を大人ぶってんだか…次いくよ?」

ミドリ「……『緑煌(グローリー・グロウ)』……」
ミナヅキ「あっ、はい。私です」
スグル「効果…手に触れた植物を、『せいちょう』させることができる。そして使用者の意思で操れる。
    弱点…全てのスペックの中でも1,2を争うほどリバースが早い。昔のデータだが、二度と目覚めなかったケースがある。
    備考…枯れた植物を復活させることも可能」
ミドリが赤くなりながらスグルを見上げていたが、その理由は多分ユウキにしかわからなかった。
ハヅキ「二度と目覚めないって…マジで?」
スグル「ここに詳細が書いてある…このケースは1836年生まれの壽チヒロという女性のデータである。
    ダークポケモン戦争の戦時中に、破壊された自然を復旧すべく『世界樹計画』なる計画がたてられた。
    その根本となる森そのもののせいちょうにスペックを使用し、そのまま帰らぬ人となった…」
ミナヅキ「戦争……」
ユウキはその惨状を想像して冷や汗をたらした。思えば、エメラルド計画に行った諜報部のメンバーは、戦争のさなかに赴いたのだ。

ミドリ「……『土行(アースバインド・スピリット)』……」
ツチオ「あ、はい、俺です」
スグル「効果…『のろいのおふだ』を貼り付けた壁または床に触れている者すべてを動けなくする。
    弱点…土曜日しか使えず、じめんタイプとゴーストタイプが場に出ていないと使えない」
ハルカ「ほんっとに、使えない…」
ツチオ「う…うるさいなァ!ほっといてくれよ!!」
ハルカはさっき話をスルーされたことを、まだ根に持っているようだ。
スグル「備考…七曜能力の中でももっとも使い勝手が悪く、もっとも強力な能力である」
ユウキ「七曜能力…?」
ツチオ「俺たち兄弟のように、七人に与えられるスペックの通称さ」
ハルカ「でも、本当に単純な名前よねー。兄弟全員曜日の名前?」
ツチオ「だから何で知…って、単純とはなん」
セツナ「誰だ!?」
突然セツナが叫んだ。そして、懐から得物を取り出し…その間に、イッセンは出口のほうに刀を向けていた。
???「あ…ッ」
侵入者の小さく叫ぶような声。次の瞬間、二人の剣士が駆け出した。
…イッセンの刀が、侵入者の喉元に突きつけられた…。

ヒサヤ「…あ…アキッ!?」

19 :エンタ2006/04/05(Wed) 16:46:23 ID:qPAS4fD6
第187話 謎の侵略者

おくりびやまの奥深く。集落の裏に位置する暗がりの岩場。
そこに、ホタルがいた。
ホタル「…ったく、あのヤロー…やっと俺の危険性に気づいたってかよ…」
バルビートとイルミーゼに手伝ってもらって足場の安定したところについてから、ホタルは1人ため息をついた。
ホタル「…チッ、まずったな…せめてあの3バカくらいには伝えられたらと思ったんだが…」
3バカというのは、言うまでもなくあの3バカのことである。
ホタル「くそ、どこだよここ…つーか、これからどうするかな…」
ブツブツいいながら、ほたるびで照らし出した道を歩く。
ホタル「…誰になら…伝えられる…?俺の…裏切りの、理由を…ヤツの、真の目的を…」
そして、登りきったところで、広場のような場所が見えた。
今ホタルが立っている場所から高さ1mくらいの切り立った部分の上に、広場が見える。
ホタル「…人がいる…?」
ホタルはとっさに身を隠し、耳を澄ました。

???「神聖なる集落に…何用か?」
年老いた、それでも迫力に満ちた声。
???「…いや〜、この場所自体に用はないんですけどね〜」
もう一つの声。今度はチャラチャラしたオッサンの様な声だ。
???「…では、ほかに何の用があると…」
すると、オッサンの声に殺気が顕れた。
???「あなたに用があるんですよ、ウコンさん…」
ウコン「…!では…皆の者は下がらせてよいな?」
すると、少し遠くのほうから若者の声がした。
???「ダメです、長老!!そやつらは…何かよくないことを企んでおります!!」
ウコン「…ならぬ、カシンよ。こやつらの用とやらはワシにあるのだ」
カシン「しかし…!!」
ウコン「黙れ!!」
山あいにこだまする、老人の怒鳴り声。言うまでもなくカシンは黙った。
ウコン「皆の者…集落へ戻っておれ。ここはワシが何とかする」
喋り声はまったく聞こえなかったが、足音で大人数がこの場を去っていくのがホタルにもわかった。
ウコン「…用、とは?」
???「あ〜、実はですねェ〜…っと、その前に自己紹介…申し遅れました、わたくしエニシダと申します〜」
ウコン「…それで?そっちの少年は…」
ホタル(…!?)
エニシダ「あぁ、この子はリラっていいます」
それまで、3人目の人間の存在すらホタルにはわからなかった。その少年は、完全に気配を消していたのだ。
ウコン「ふむ。それで?用とは何だ…」
エニシダ「急かさなくても、今から教えてあげますよ〜…」
そして、再びあの殺気。
エニシダ「…リラ。やれ」
リラ「…はっ」
ホタルには、その後何がなんだかわからなかった。
リラと名乗る少年が出したモンスターボールの中から現れたのは…

ホタル「…エン……テイ?」

20 :エンタ2006/04/09(Sun) 14:28:25 ID:3GcyXMks
第188話 薬漬けの友情

ヒサヤ「アキ!?お前、何でここに…何でここがわかった!?」
そういって、ヒサヤがアキのほうへ駆け寄る。
イッセン「…知り合いか?」
言いつつも、依然刀を突きつけたまま、警戒を解かない。
ダイゴ「…イッセンさん、刀を下ろしてくれ。彼女に話がある」
イッセン「…わかった」
鋭いきんぞくおんと共に刀が鞘にしまわれると、半泣きだったアキがその場にへなへなと座り込んだ。
アキ「…あ……ぁ…」
ダイゴ「……いつからそこに?」
というダイゴの問いに、かわりにハルカが答えた。
ハルカ「最初っからずーっといたよ。気づかなかったの?」
ダイゴ「な…気づいてたのか!?」
ハルカ「ハァ。なっさけないわねー。そこの達人お二人も、気づかなかったってわけ?」
イッセン「む…いや、まったく…」
セツナ「気づいたのは、砂を踏む音がしてからだけど…」
ハルカ以外の人たちも、全然気づかなかったというそぶりを見せている。
ダイゴ「…と、とにかく…森アキ…キミは、警告を無視して僕らをつけてきたね?」
アキ「……」
ダイゴ「どうなんだッ!?」
怒鳴り声が、穴の中に響く。ここまで激怒するダイゴを見るのは初めてだ。
アキ「……だって……」
ヒサヤ「何?」
アキ「だって!!ヒサヤくんが隠し事するからじゃない!!わたしだって…ヒサヤ…くんの、力に…なりた…」
ヒサヤ「わ―――ッ、だから泣くなってば!!」
アキ「…う……ぐすっ、ひっぐ……」
ダイゴ「で?どこまで聞いたんだ?」
ユウキ「師匠ッ!」
いつの間にか近くに来たユウキが、ダイゴをなだめる。が、ダイゴはそれを手で制止した。
アキ「…わたし達の…ホウエンが…悪い奴らに狙われてるってこと…そして…みんながそれと戦ってるってことです…」
ヒサヤ「………!」
アキ「わたしだって、ホウエンを守りたい。大切な人のために、できることをしたい」
ヒサヤ「…アキ……」
すすり泣きが穴の中に響く。切れぎれに、アキが話す。
アキ「…さっき…トレーナースペックの話…して、ましたよね…」
ダイゴ「…?あ、ああ…」
すると、アキがウエストポーチから怪しい色の粉が入ったビンを取り出した。

アキ「…完成、したんです。ヒサヤくんの協力で…リバースの、特効薬が」

ユウキ「!!!!」
スグル「なんだってェ!?」
ミドリ「……それは……本当ですか……?」
アキ「はい。といっても、実験は、まだですが…」
今の一言で、ほぼ全員がうっ、とうめき声を漏らした。
アキ「あ…その、えーっと…」
ヒサヤ「僕がやろう」
またもほぼ全員が「えぇっ!?」と言い、センリだけはフッ、と笑った。
ヒサヤ「アキを巻き込んでしまったのも、僕の責任だ」
アキ「ちょっ…ヒサヤくん…」
ヒサヤはアキからビンをひったくり、『その粉』を一気に口に流し込んだ。
アキ「ああ!そっ、それ10人分…」
ヒサヤ「!?!?……」
ゴクリ。…パタッ。ス――――ッ………
ユウキ「ギャ――――!!!抜けてる抜けてる!!タマシイ抜けてるって!?」
ヒサヤ「ウフ……ウフフ……ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
ユウキ「あぁ!?久々に禁断症状モードに!?」
アキ「ヒッ…ヒサヤく――――ん!?」
なんていう騒動を遠巻きにしながら、ダイゴはあきれていた。
センリ「…一般人にサミットの存在を隠すというのは…間違った選択だったのかもしれないな…」
ダイゴ「センリさん……。…そう、かも…しれませんね…」
だが、この時にもダイゴは気づいていなかった。
サミットの存在を隠すことを決めたのは、他でもなく…彼の父、ツワブキ社長その人だったということに。

21 :エンタ2006/04/09(Sun) 14:28:53 ID:3GcyXMks
第189話 伝説を駆る少年

ホタル「んな、バカな……」
ホタルは既に隠れることを忘れ、身を乗り出し、声まで立てていた。
だが、それにも気づかれないほどに…リラとウコンの戦いは壮絶なものだった。
リラ「エンテイ…めいそう」
ウコン「く…ッ」
ウコンは、何故かポケモンに指示を出していない。ボールから出したり戻したり、その作業しか行っていないのだ。
エニシダ「ククッ、ポケモンとの絆を信じて戦うその戦法…ますます欲しい人材だ」
ウコン「ラプラス、戻れ!クロバット、頼むぞ!!」
ほのおタイプのエンテイに有利なはずのラプラスを戻し、クロバットに交替する…これだけでエンテイの強さがうかがえる。
エニシダ「リラ〜、全匹焼き尽くしてくれちゃっても構わないんだけどサ〜、つまんないよね、やっぱ?」
ウコン「この男…ッ」
エニシダ「そろそろエンテイはお預けにしてさ、普通のポケモンで実力の差を思い知らせちゃうほうが面白くない?」
リラ「はっ…エンテイ、戻れ。…フーディン」
ウコン「何が実力の差じゃ。クロバットに有利なエスパータイプではないか」
エニシダ「ところが残念〜!彼のフーディンは、エスパータイプの攻撃わざなんて使わないんだよね〜」
いい終わらないうちに、フーディンが攻撃を開始した。
テレポートで一気にクロバットに詰め寄る。
右手にれいとうパンチ、左手にかみなりパンチでクロバットの翼を殴る。
そして、両手を組みクロバットを上から叩き落す…。
フーディンはこれらの動きを、一瞬でやってのけた。
ウコン「く…ケッキング!!」
エニシダ「無駄無駄〜♪」
リラ「フーディン…れいとうパンチ、ほのおのパンチ、かみなりパンチ…ほのおのパンチ」
一息にこれだけのわざを連ねて言うと、フーディンが自分より50cmほど上回る体長のケッキングの前に立ち…
れいとうパンチ。
ほのおのパンチ。
かみなりパンチ。
順番に繰り出した。ただし、ケッキングの体に直接、ではない。体に当たる直前に、消えてしまうのだ。
そして、ほのおのパンチが繰り出された…また、ほのおだけが消えた。瞬間、
ドカ――――――――ンッ!!!
ケッキングの口から煙が大量に出てきて、そのままじめんに倒れ伏す。
ウコン「なッ!?何を…」
エニシダ「あはははは!!リラ!!見た?あの顔!!面白ぇ〜!!」
ホタルには、何が起きたのかわかった。ダブルバトルの特訓で鍛え上げた情報分析能力の賜物だ。
ホタル「…テレポートで…3つの気だけを、体内に転移させた…?そして、水蒸気爆発を起こした…」
使ったわざは4種類。それだけで、勝ってしまったのだ。
ウコン「…ま、まだラプラスが…」
エニシダ「諦めが悪いなぁ〜。それとも、そのラプラスを殺されたいのかな〜?」
たしかに、今の破壊力ならひんしを通り越してポケモンを殺してしまえるかもしれない。
ウコン「…ワシの…負けだ……」
エニシダ「わ〜い、勝っちゃった〜♪」
ウコン「何を要求する気だね…?」
エニシダ「ウフフ〜。それはねェ…ウコンさん」
リラ「…………!」
その瞬間、ホタルはリラと目が合った。
リラ「カビゴン…潰せ」
山が、揺れた。

22 :エンタ2006/04/09(Sun) 14:29:19 ID:3GcyXMks
第190話 紅炎の羽根

穴の外のカビゴンがいなくなり、立ち込める殺気が消えるまで…ホタルはその場を動かなかった。
ホタル「…ふぃ〜…助かったぜ、イルミーゼ。ひみつのちからがなきゃマジで殺られるトコだった…」
隠れていた壁の部分に穴を開け、ひみつきちを作ったのだ。
ホタル「…さすがは『ひみつ』きち、穴の場所はバレなかったみたいだな」
穴から出ると、先ほどの騒動が嘘のように掻き消えていた。
ただし、別の騒動が待っていた。
カシン「…お前か!?長老を連れ去ったのはッ!!」
さっきの声の若者である。
どうやら、あの3人はもういないようで…長老を探していたところに、いかにも怪しい男が出てきた、といった感じか。
ホタル「……あぁ!?」
そして、この男の好戦的な性格が、悲劇を呼ぶ…
ホタル「って、ンなことやってる場合じゃねェんだった」
と思ったら、今日は冷静。
カシン「わけのわからないことを言って言い逃れしようったって、そうはいくか!!」
ホタル「わけわかんねーのはお前らだっての!」
カシン「問答無用!!みんな!!かかれ――ッ!!」
この若者、統率力はあるが少し頭が固いようだ。
ホタル「ったく…これでも見てろ」
ホタルが懐から輝く何かを取り出した。羽根のようなものだ。
ホタル「輝け!!こうえんのはねッ!!」
瞬間、あたりが見えなくなるほどの爆発的な光が、カシンたちの目を眩ました。
カシン「う…ッ!?な…なんだこれは…」
眼が見えるようになった頃には…ホタルの姿は跡形もなく消えていた。

ホタル「ったく…文句ならあのアロハオヤジに言えっての。俺は見てたけど関係ないし」
???「…待ちなよ」
ホタルの背後から女の声がした。本当にこの集落では背後からがメジャーなのだろうか。
ホタル「………」
無言でバルビートとイルミーゼを繰り出す。
???「ふーん…そのすばやさ…かなりの使い手みたいね」
ホタル「誰だ、テメェは」
振り返らずにホタルが問う。しかし答えは返ってこず、かわりに、
???「ジュペル!!シャドーボール!!」
攻撃の合図が返ってきた。
ホタル「バルビート、かわしてものまね、シャドーボール」
まだ振り返らずにその指示だけ行う。
そして、次の瞬間…ホタルがじめんに倒れた。
ホタル「テメェ…最初っから俺を狙ってやがったな…」
???「もっちろん。これは公式ルールの戦いじゃないし、背を向けて戦うあなたが悪いんじゃん」
ホタル「…へっ、嫌なやつだぜ…」
???「どっちが。早くおじい…長老の居場所を言わないと、ゴーストの世界に引きずり込んじゃうよ」
ホタル「…素直に殺すって言えや。つーか、あの無言ジジィを拉致ったのは俺じゃねぇよ」
???「まだしらばっくれる気なの?ジュペル…」
すると、また別の女の声がした。
???「シードラ!!えんまくッ!!」
ジュペッタ使いの女が気がついた頃には、その乱入者と共に、ホタルの姿は消えていた。
???「…へぇー。やるじゃん。この四天王フヨウちゃんを出し抜くなんてさ」

集落から離れた木陰に横たわったホタルが目を覚ましたのは、それからほんの5分後だった。
ホタル「テメェは…誰だ…?」
???「命の恩人に向かってテメェとは失礼極まりないです」
ホタル「…アナタサマハ、ドチラサマデショウカ」
???「…やっぱ普通でいいです」
ホタル「何だテメェ…その青装束は…」
???「アクア団、ですよ。赤装束のマグマ団さん」
ホタル「…そうか。で、テメェの名前は…」

???「覚えなくてもいいですけど…西瀬ミズホっていうです。よろしくです」

23 :エンタ2006/04/09(Sun) 14:30:20 ID:3GcyXMks
※注意

西瀬ミズホ⇒さいぜみずほ です。読みづらくてすみません

24 :エンタ2006/04/11(Tue) 18:15:23 ID:LpijdGGM
第191話 二匹のイーブイ

ホタル「…なッ……ミズホ…!?」
ミズホ「?…どうかしたですか?まさか、私を知っているとか…」
ホタル「…い…いや、違う。お前のことじゃない」
ミズホ「……?」
ホタル(ミズホは…いなくなったんだ。俺の、目の前で)
ホタルの脳裏に、13年前の災厄が思い出される。
ミズホ「…あ、そういえばアナタの名前は…」
ホタル「ん?あぁ、俺は桂ホタル…」
ミズホ「カツラ!?じゃあやっぱり、さっきの羽根はファイヤーの…」
ホタル「な…お前、ジーチャンのこと…ッつつ」
ミズホ「あー、ダメですよ。傷が塞がってないんだから」
先ほどの女のジュペッタが放ったシャドーボールは相当な威力だった。
それもそのはず、二人は知らなかったが、彼女はジムリーダーをも超えるホウエンでも正真正銘5本の指に数えられる実力者…
四天王、だったのだから。
ホタル「…なぁ、ミズホ…だっけ」
ホタルは木陰に座ったまま、目の前で救急箱をいじっている少し年下くらいの少女に話しかけた。
ホタル「何でお前、俺を助けたんだ?」
ミズホ「何でって、あのまま放っておけばホントに殺されていたかもしれないし…それに」
少女は無垢な笑顔を浮かべて語る。
ミズホ「アナタが…私と同じ『裏切り者』だったから…」
ホタル「何?あの3バカの話でも聞いたのか?いや、それより…お前も同じ?」
ミズホ「ええ。私も、アクア団の裏切り者です。そして、アナタもそれを分かってくれると思った」
ホタル「…は?」
ミズホ「その証拠に、敵であるはずの私たちが…マグマ団とアクア団が…争っていません」
確かに、と思った。マグマ団とアクア団の目的は正反対…故に、彼らは犬猿の仲のはずだった。
ホタル「…なるほどな…って、いてててッ!!しみるしみるッ!!」
背中に消毒薬を塗られ、少年なら誰もが経験したことのある、しみるような痛みにホタルが呻く。
ミズホ「男の子なら、がまんがまんです」
そういって優しく(ホタルにとっては激痛なのだが)消毒をする少女が、つい3日前この山で激闘を繰り広げていたとは信じられない。
ホタル「そういやお前はどうしてここに?」
ミズホ「フフ…ちょっと、仕掛けを」
ホタル「あん?仕掛け?」
ミズホ「いえ、アクア団の仕事ではなく、私個人の目的ですから…来るべき日が来るまで、口外無用なのです」
ホタル「ふーん…ま、どーせたいしたことじゃないんだろうが…うぎゃぁッ!?しみるってッ!?」
ミズホがガーゼをホタルの背中に押し付ける。
ミズホ「まったく…それは私の浅知恵ではたいした仕掛けは思いつかないだろうなーという…」
ホタル「そこまで言ってねーだろ!おーいて…」
ミズホ「ふふっ、冗談ですよ…きゃあッ!?」
ホタル「ッ!?どうした!!」
ホタルが振り返ると、そこには焼け焦げた雑草ととっさに身をかわしたミズホ、そして、カシンが立っていた。
カシン「見つけたぞ…長老をかえせ!!」
ホタル「まだそんなヴァカな事いってんのかよ?俺じゃねえって何度言ったら…うわっち!!」
問答無用でカシンのロコンが火を噴く。あわててホタルがマグマ団の制服(耐火服)を着た。
ミズホ「く…同じ手は…通用しないです、か…?」
シードラのボールに手を伸ばしてからそのことに気づき、手を下ろす。
カシン「炙ってやれ、ロコン!そうすればこいつも観念して長老の居場所を…」
もう一度大きく息を吸い込んだロコンに『何か』が激突した。
そして、二人を守るかのようにもう一つの『何か』が立ちはだかる。
その『何か』は…

二匹の、イーブイだった。

25 :エンタ2006/04/11(Tue) 18:15:45 ID:LpijdGGM
第192話 ふたりのイーブイ

カシン「…!?やせい…か?だが、何故トレーナーを守るかのような行為を…」
ホタルの脳裏に初めてユウキと戦ったときのことが思い出された。
あの時は、やせいのジュプトルが邪魔に入って…
そして、センリに変装したあの女が現れたのだ。
ホタル「まさか…な」
状況があまりにも酷似していたため、彼女が現れるのではないかと思ったが、さすがにそれはないと首を振る。
だが、そこには確かにいた。
あの女ではない。
赤と黒の印象的な服を着て、ホタルにとってはそれよりも更に印象的な帽子をかぶった少年が、立っていたのだ。
ホタル「ユウ…キ?」
いや、違う。服の色も、佇まいも。何よりユウキがこんな所にいるはずはない。
なら、この少年は…
カシン「おい!どこの誰だか知らないが、邪魔をするのなら貴様も…」
少年「…少し、黙っていてくれないか。オレは騒がしいやつは嫌いなんでね」
ホタル「テメェは…ユウキの、兄貴か何かか…?」
そう問うと、少年は振り返って笑った。
少年「…ここにいるのはオレじゃない。けど、オレは確かにユウキの兄…大空コウキだ」
ホタル「ハァ?何をワケわかんねーことを…」
コウキ?「ん?お前たち、彼が気に入ったのか?」
と、ホタルの話をシカトしてイーブイに語りかける。二匹のイーブイが頷く。
コウキ?「…だそうだ。こいつらはオレのサンの子供の、双子のイーブイなんだけど…」
ホタル「サン?」
コウキ?「あ、オレのサンダースの名前。悪いんだけどさ、こいつらを預かってくれないかな。そっちの人と二人で。
     オレがホウエンに送った友達が逃がしたみたいなんだけど、目を離すとすぐ無茶するから、コイツら」
ホタル「っておい、勝手に話を…」
コウキ?「あ…やべ、そろそろ時間切れだ。悪いね、そんじゃ頼んだぜ」
ホタル「おいッ、お前は結局誰なんだよッ!?」
コウキ?「…オレはオレだよ」
そういって、少年は消えた。
霧のように掻き消えてしまったのだ。
ホタル「……幻像(ファントム)……?」
ミズホ「な…なんだったですか今のは…」
ホタル「…ダチの兄貴だそうだ。さて、今聞いたとおりだぜ、ミズホ」
ミズホ「はい?」
ホタル「イーブイ、預かれ」
ミズホ「はいぃ!?」
ホタル「ゴチャゴチャゆーな!ほれ!」
ホタルがロコンにたいあたりをかましたほうのイーブイを抱き上げてミズホに手渡した。
ミズホ「って…」
ホタル「よっし、ギャロップ!ずらかるぜッ!!こうそくいどう!!」
『ずらかる』という言い方では本当に犯人みたいである。
ミズホ「わっ、わわ…ら、ランターン!!フラッシュ!!」
カシン「ぐぉ!?しまっ…き、今日二回目の目くらまし…」
結局、濡れ衣を晴らせないままふたりはイーブイをつれてとんずらこいたのであった…

26 :エンタ2006/04/14(Fri) 17:22:04 ID:sZbkhHnM
第193話 ときわたり・其の一

ゲンキ「お、おいシンジ!!あのクソヤローどもを追っかけなくていいのかよ!?」
シンジは再びバイクを走らせていた。東の空が薄く明るみ始めていた。
シンジ「そうもいかん。ときわたりは歴史では明日の正午に行われる。それまでにパイラに着かなければならない」
ゲンキ「って…セレビィがいねーと156年後に戻れないんだろ!?」
シンジ「その点は問題ない。空の巫女が能力を取り戻してくれれば時の扉を開くことができる」
ゲンキ「な…ひかりとやみの対立衝動ってのは…」
アオイ「シンジがブラッキーを、私がエーフィを持ってるから、多分平気」
イヴはかわらずのいしを外した途端にエーフィに進化していた。
シンジ「そういうことだ。それに、ジーエスボールもこちらにある…不測の事態に対応できるだけの手立てはいくらでもある」
ゲンキ「そ…そうかぁ?」
シンジ「そういうわけだ。飛ばすぞ」
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン………

ゲンキ「おぅぇぇぇぇぇぇぇええええええええ」
ヒスイ「ううぅぅぅぅぅぅぅぅ」
シンジ「この程度で乗り物酔いとは情けない…」
ゲンキ「ヴるせぇ、このスピード狂が!!」
シンジ「ともあれ、何とかパイラにつくことができたな」
太陽は既に高く昇り始めていた。
アオイ「あ!あれ…」
アオイが指差した先、パイラタウンの広場に、二人の男女が現れた。
シンジ「ここからでは遠すぎて聞こえないな…かといって、『この時代にいる』俺が近寄るわけにも…」
そう、シンジはこの時代に『二人』存在しているのだ。
アオイ「そんな時こそ、アオイちゃんひみつアイテム『きえるくん』〜♪パパラパ〜♪」
ゲンキ「…………。」
アオイ「なっ!なによぅ!その沈黙は!」
ゲンキ「…………。」
アオイ「…ご、ゴホン!こ、この装置を頭にのせて、スイッチを押してください」
シンジ「……なんだこのアヤシイ装置は…俺はお前らの時代の機械は苦手…」
アオイ「押すだけですから!ポチッって!ほらスイッチ押してください!早く!早ーく!!」
ポチッとな。…スゥッ。
ゲンキ「おぉ!?消えた!!」

顔に白いラインを走らせた少年と、オレンジ色の髪を持つ蒼い瞳の少女が話している。
少女「レオ、本当にやるの?あのおばあさんの言うこと信用できないよォ〜」
レオ「ミレイはアゲトに住んでない老人全員を信用してないだけだろ…大丈夫、ビーディさんは信用できるさ」
ミレイ「そう?なんか凄いうさんくさいじゃん…」
レオ「うさんくささならミレイの爺さんも負けず劣らずだと思うが…何だよあのガタイでピカチュウって」
ミレイ「そ!そんなことないでしょっ!!」
レオ「いや…そんなことあるって…お、エマ。こっちこっち」
二人の目線の先には…

ヒスイ「…私……?」

『エマ』と呼ばれた少女。それは、紛れもなく『ヒスイと同じ存在』だった。

ミレイ「もう!人の名前すぐ略しようとするクセやめなよね!!『エメラルド』でいいじゃん」
レオ「そういうミレイだって、俺のこと『レオ』って呼んでるだろ」
ミレイ「う…いーでしょ別に!!それよりエメラルド…お別れはすませてきた?」
エメラルド「はい」
レオ「過酷な道だけど、今俺たちの希望はキミだけなんだ。世界を救うと思って、どうか頼む」
エメラルド「はい。任せてください」
いつの間にか広場には人が集まっていた。
少年「レオさん、いよいよだね」
レオ「トオンか」
トオン「この町の改心したゴロツキ達も、みんなレオさんを応援しに来てくれたんだぜ!なッ、チェレス、ラプソ姐(ねえ)!」
チェレス「そゆこと〜☆」
ラプソ「ちょッ…あたしゃ別に…」
レオ「みんな、ありがとな。ポケモン強いお前らが応援してくれると、心強い」
トオン「オイラはもっと強くなるぞ!…これ以上、犠牲を増やさないために…!」
レオ「ああ。いまやこの町の住人も半分以下まで減ってしまった…」
トオン「…ギンザルさんもいなくなって、この町は死んじまった。けど、そんな時こそ」
チェレス「残った私たちが団結しなくっちゃね☆」
ラプソ「ああ。何としてもダークポケモン戦争を…ニューシャドーの陰謀を阻止してみせるぜ」
レオ「…ありがとう、みんな。そして俺たちが世界を救い…」
レオはエメラルドのほうを振り返った。
レオ「エマが世界を守るために、未来へと飛ぶ」

紫色の髪に紫色の瞳の少年が、町の人に抑えられながらもエメラルドに向かって必死で叫んでいる。
少年「お姉ちゃん、行っちゃやだァ!!」
エメラルド「…男の子でしょ、ライラック。泣いちゃダメ」
ライラック「でもッ、でもォ!!ひっく、えぐっ…うわぁぁぁん!!」
エメラルド「ライラック…あなたはもう8つになるのよね。自分のことは自分でできるって、お姉ちゃん信じてるよ」
ライラック「無理だよォ!!僕、お姉ちゃんがいないと生きていけない!!」
エメラルド「そんなことを言ってはダメよ、ライラック!!このオーレには、生きたくても生きられない人たちがたくさんいるの!!
      そんな人たちの為に、あなたは生きて!そして、みんなで戦争を終わらせるのよ!!」
すると、レオがエメラルドの前に立って…
レオ「強くなったな、エマ」

そして、エメラルドはふえを吹いた。
ふえの音が、廃れた町の広場に、荒涼とした砂漠に、はるか北の森に響き渡る。

キィィィィィィィィィィィィィィィィン…!

あの音が聞こえる。
ミレイ「いよいよね…」

広場が緑色の光に包まれた。
セレビィが、現れたのだ。

レオ「しろ、くろ!!」
レオはエーフィとブラッキーをボールから出した。そして…

レオ「『光闇燼(プリミティブカオス)』ッ!!」

27 :エンタ2006/04/14(Fri) 17:22:41 ID:sZbkhHnM
第194話 ときわたり・其の二

ゲンキ「な…アルケミック・スキル…!?」
シンジ「そう。レオはホウオウの祝福を最も濃く授かった、翼の守護者でもあった」
ゲンキ「…そ、そういえば、アイツの眼…金色…!?」
そう。レオンハルト・ヴィンスレッドの瞳は、ゲンキと同じ金色をたたえていた。
シンジ「翼の守護者の能力は、瞳の色によって決まる。紅、碧、紺、藍、蒼、朱、そして黄金。
    7つある能力の中でもっとも色濃く祝福を受けた、金色の瞳の能力…それが、『錬成(アルケミック・スキル)』だ」
ゲンキ「お…オレもその1人?」
シンジ「おそらくな」
アオイ「二人とも、静かに…始まるようですよ」

エマ「『時空(ヴァニシング・タイムライン)』…ッ!!」
エーフィの超能力とブラッキーの異能力がぶつかり合い、『錬成』で混ざり合う。
光と闇が一つになり、誕生の混沌が形成される…
ヒスイ「…『ヴァニシング・タイムライン』…」
記憶が混ざり合う。ちょうど、目の前で渦を巻く色の無い存在のように。
徐々に、扉が開いていく。時の扉と、記憶の扉が。
レオ「さあ、行くんだ!エマ!!」

ふたつの扉が、完全に開かれた。

ヒスイ「……私……私は……」
ふたつの声が、重なった。

ヒスイ/エメラルド『私は、世界を守る…………。』

広場に、ライラックの泣きじゃくる声だけが残り…
そして、時の扉は閉じた。しかし、記憶の扉は閉じなかった。
シンジ「どうやら…やったようだな」
シンジが歓喜に満ちた広場ではなく、ヒスイを見て言った。
アオイ「…でも、おかしいですよ?」
ゲンキ「何がだよ?」
アオイ「私、ずっと目を凝らしてましたけど…子供時代のシンジらしき人は見かけませんでした」
ゲンキ「そういや…オレの黄金の観察眼でも、見なかったぜ」
シンジ「ちょうど死角にいたか何かだろう…とにかく俺はときわたりに巻き込まれたんだ。そして時のはざまで気を失った」
ゲンキ「気ィ失った!?って、それじゃ1999年に着かねーんじゃ…」
シンジ「時のはざまに関しては詳しいことは分からない…手を放して別の場所に落ちたら着く時代が違うのかさえも…どうした?」
ヒスイの様子がおかしいことに気づき、シンジは声をかけた。
ヒスイ「…わ…たしは、世界を……守…る…」
シンジ「…!まさか、恐れていたことが起きたかッ!?」
記憶の負荷による暴走。それは、シンジが最も危惧していたことである。
ヒスイ「私は、世界を…っぁあああああッ!!」
シンジとアオイの腰にあるボールが、それぞれ光った。
あまりに強いスペックの顕現のために、二匹の力が無理やり行使されているのだ。
シンジ「まずいッ、扉がまた…」
その瞬間、4人が陰に隠れていた建物の中から…1人の少年が出てきた。
シンジはその銀色の瞳を持つ、赤い髪に美しい羽根飾りをつけた少年の姿を、一瞬だけ見た…

稲妻が弾けるかのような轟音と共に、ヒスイとその少年が、かき消えた。
しかし広場には、この事故に気づいた者は1人もいなかった。

28 :エンタ2006/04/14(Fri) 17:23:11 ID:sZbkhHnM
第195話 ときわたり・其の三

真上に位置していた太陽が少しずつ、少しずつ傾いている。
そして、その太陽が照りつける砂漠を、超高速で走る一台のバイクがあった。
ゲンキ「おいっ、バンダナもいなくなっちまって、どうやって帰るんだよ!!」
シンジ「ジーエスボールは俺が持っている!が…まずいことに気がついた」
ゲンキ「何だよ!」
シンジ「俺の能力や空の巫女の能力では、時間軸の設定ができない、ということだ」
ゲンキ「それが、どうかしたのかよ?」
シンジ「つまり、俺たちが通ってきたものとまったく同じ長さのトンネルを通ることになる!」
ゲンキ「ああもう、じらさねーで早く言えよ!!」
シンジ「つまり、こちらの時代で時間が経てば、現代でも同じように時が進むということだ!!」
ゲンキ「アタリマエだろッ!!」
シンジ「いや、セレビィの力が借りられれば、俺は現代でときわたりをした直後の時間に戻るつもりでいたんだが…
    今はそれができない。現代のあの時間の翌日に戻ることになる」
ゲンキ「それって、つまり…」
シンジ「俺たちがここでこうしている間にも、ホウエンは滅亡の一途をたどっていると、そういうことだ!」
ゲンキ「やべーじゃん!急いで戻らないと…」
シンジ「ああ。それに、消えてしまった空の巫女を捜さなければならない…だから一刻も早くほこらにたどり着きたいんだ」
ゲンキ「そっか、あいつの能力でも時間軸の設定はできない…つまりちょうど156年後の今に、バンダナがいるって事か!!」
シンジ「そういうことだ。飛ばすぞッ」
ゲンキ「またかよッォォォオオオオオオオオオ!?!?」

森にたどり着いたのは3時ごろ、まだ明るかった。
ゲンキ「うぉおおおおおおおおおええええええぇぇぇぇぇぇ」
シンジ「行くぞ、二人とも。そんなことをしている間にもホウエンは…」
ゲンキ「ちくしょう、鬼…」
シンジ「…む、あれは…」
シンジが見上げると、橋の上にアブソルが立っている。
シンジ「アブソルか…ちょうどいい」
ゲンキがシンジのところに行くまでに、アブソルは彼のボールの中に入っていた。
ゲンキ「おいッ、なに余裕ぶっこいてんだよ!!時間が無いって言ったのお前だろ!」
シンジ「あ、ああ…つい、な…(だが…こいつがきっと役に立つ)」

アゲトビレッジのほこらにたどり着くと、シンジはジーエスボールをかざした。
シンジ「『魔球(ボングリック・リベレイト)』!!」
目の前に、あの空間が広がる。
シンジ「今度は入り口を経ずに時のはざまと直結した。セレビィを待つ時間は無いからな」
ゲンキ「おう!んじゃ、行くか!!」
アオイ「…シンジ?どうしたんですか、早く行きましょうよ」
立ち止まっているシンジを振り返り、アオイが心配そうに言った…その時。

シンジ「俺は…行けない」

ドンッ。
二人の体が彼の右手に押され、時のはざまへと入ってしまった。

29 :エンタ2006/04/18(Tue) 15:52:38 ID:wOz7O4g6
第196話 前を見つめて

ゲンキが時の扉のふちを掴み、アオイがその腕に掴まって、なんとか持ちこたえていた。
アオイ「シ…シンジ!?いったい…」
ゲンキ「おいッ、どういうつもりだよ!?俺は行けないって、どういうこった!?」
シンジ「言ったとおりだ。俺は行けない。それは、お前にも分かるだろう」
ゲンキ「わっかんねーから聞いてんだろが!!さっさと来いよ、……ッ!まさか!?」
シンジ「…気づいたようだな。時のはざまは…スペックを、拒絶する」
ゲンキが渾身の力で扉のふちに掴まりながら、絶望したような顔でその話を理解していった。
シンジ「そして、この扉を開く俺の力こそ…トレーナースペックだ。…つまり…俺は、そっちに行くことができない」
ゲンキ「そ…んな」
シンジ「だから、お前たちだけで行け。俺が必ず、現代へと帰してやる」
アオイ「や、やっぱりセレビィを取り戻しに行きましょう!!セレビィの能力なら、ヒスイさんが戻った直後の時間に移動もできます!」
シンジ「無茶を言うな。お前たちでは分からないかもしれないが、ここは戦場。
    今からヤツらを探したところで、全員生きて帰れるなどという保証はありはしない」
アオイ「なら、他の方法を…!!」
シンジ「他に安全な方法があるか?ここでお前たちを帰せば、誰も死なずにすむ」
ゲンキ「ふざけんな!かわりにお前を失えってのかよ!!お前言ったよな!?「俺はどこにも行かん」って!!」
シンジ「………。すまん…約束は、守れそうに…ない」
ゲンキ「そんな…そんなのって、アリかよ!」
シンジ「…ゲンキ…お前はもう13だろ。もう俺がいなくても平気だ。お前なら、ホウエンを守れる」
ゲンキ「守れねーよ!!目の前の相棒1人守れねーで、何がホウエンだ!何が世界だ…何が……ッ」
シンジ「…守れるさ。お前ひとりではできなくとも…お前には、お前を信じてその腕を掴んでくれる仲間がいる」
アオイを見て、彼はそう言った。
ゲンキ「けど、お前もオレの大事な仲間だ!!お前がいないとオレ…オレ……」
シンジ「生きていけない、とでも言うつもりか?それではさっきのライラックとかいうガキと一緒だな」
ゲンキ「あ……」
シンジ「泣くなとは言わん。だが、涙は拭え。瞳に灯したせいなるほのおが滲まぬように。その金色の瞳で、しっかり前を見れるように」
ゲンキ「シン…ジ……」
シンジ「悲しみはこの時代に捨てていけ。お前には使命がある」
ゲンキ「オレだって、ホウオウの祝福なんていらなかったんだ。使命なんて、いらなかったんだ」
シンジ「…ゲンキ。お前と同じ瞳を持つ少年は、16歳で世界を救った。…お前には、何ができる?」
ゲンキ「な……?」
シンジ「それは、お前が決めるんだ。道なら俺がつくってやる。現代へ…そして未来へと続く道を」
一瞬、うつむいて…シンジは続けた。
シンジ「だからお前は…前を見つめろ。その道をまっすぐ歩いて、ホウエンを…世界を守れ」
ゲンキ「…シンジ……、…わかったよ。オレ、前を見つめる」
シンジ「それでこそ、俺の相棒だ…そして、お前が道の案内人だ、アブソルッ!!」
すべての準備が整った。あとは、ゲンキがその手を放すだけ…
アオイ「待って!!シンジ、おねがい!!一緒に…一緒に行きましょう!!」
ゲンキ「タマゴ…」
アオイ「私っ、シンジのことが好きです!!大好きです!!だから一緒に…ホウエンに……!」

シンジ「………すまん。俺は…お前の想いにも、応えることはできそうにない」
アオイ「そんな…嫌です!!シンジと離れたく…」

シンジ「…ホウエンを、頼んだぞ。…アオイ」
彼がアオイの名前を呼んだのは、これが最初で…最後だった。

扉が、閉じた。

30 :エンタ2006/04/29(Sat) 17:15:50 ID:xWYAhD4U
第197話 それぞれの休日・其の一

会議の日がちょうど土曜日だったので、メンバーたちに、決戦までに一週間の時間が与えられた。
この期間を使って決戦に向けての特訓をするものもいれば、新たな仲間を捕獲しに行くものもいる。
そしてユウキは、特訓派だった。
ユウキ「うーん…ハルカもどこか行っちゃったし…結局、約束のバトルは決戦が終わるまでお預けか」
ハジツゲの郊外、りゅうせいのたき付近(114番道路)で、彼は思考をめぐらせていた。
ユウキ「一週間…一週間か…それまでに、何ができるだろう…」
とりあえずユウキは、手持ち5匹を全員ボールから出してみた。
ユウキ「チー、ココ、ムドーはそれぞれ『覚醒(アウェイキング・フォース)』があるからよしとして…
    能力の条件外、ブイとプラの特訓も必要だなー。うーん…一週間…」
当の2匹はドンと来いといった感じでそれぞれが思い描く『特訓』のジェスチャーをしていた。
ユウキ「いやいやプラ、木人なんて一週間で用意できないだろ」
ハルカのような能力が無くてもポケモンと心が通じ合う少年が、そんな漫才をしていると…
ミナヅキ「ユウキさ――――ん!」
ユウキ「ん?ミナヅキ?」
ハジツゲタウンの方角から、ミナヅキが走ってきた。
ミナヅキ「センリさんから、ユウキさんの特訓にお付き合いしろって…」
そして、自分で言った言葉に顔を赤らめる始末。
ミナヅキ「すすすすみません、お付き合いだなんて…私そんなつもりで言ったわけではわわわ」
ユウキ「わ、わかってるって」
そういうユウキも、少し顔が赤いのだが。
ユウキ「あれ?ハヅキさんと、サツキちゃんは?」
ミナヅキ「姉さんはセンリさんのところで、サツキちゃんはミツルさんのところです」
ユウキ(ふーん…二人ともオトコのところか)
声に出すとミナヅキがパニックになりそうなので、とりあえず想像までにとどめておいた。
ユウキ(みんな今頃…何してんだろ…)

ヒサヤ「…ん?ココハドコワタシハダレ…」
アキ「あ!目が覚め…て、ないみたい。ヒサヤくん、正気に戻って〜!」
スパーン!アキの平手打ち炸裂!ヒサヤに10のダメージ!!
ヒサヤ「って、殴るなよ!!」
アキ「ヒサヤくん!元に戻ったんだね!よかった〜…よがっだよ〜」
ヒサヤ「だから、なんで泣く!?」
アキ「だって、死んじゃったらどうしようって思って…わたし、心配で…」
もし死んだらアキは殺人犯になるわけだが。しかも毒殺。
ヒサヤ「心配したのはこっちだって同じだ!下手をしたらあの時ザックリやられてたかもしれないのに…」
セツナ「あたしたちゃそんなヘマはしないよ」
ヒサヤ「ってッ、いつの間にィ!?」
セツナ「ん?最初っからいたけど」
アキ「セツナさんがヒサヤくんの看病してくれたのよ。ネギ鼻に詰めたりして…」
ヒサヤ「何してくれちゃってんの、お嬢!?」
セツナ「誰がお嬢だっつの!!」
アキ「あははは。お二人は、仲がいいんですねー」
ヒサヤ・セツナ「よくねーよ!!」
アキ「ひゃ!?す、すいません…」
そこに、ミクリを連れてダイゴが入ってきた。
ダイゴ「ヒサヤ…ちょっと話があるんだが」

31 :エンタ2006/04/29(Sat) 17:16:15 ID:xWYAhD4U
第198話 それぞれの休日・其の二

ミツル「あの…僕に何か用?」
サツキが何もいわずにミツルをじろじろ見ている。
ミツル「えーと…」
サツキ「ふむふむ…手持ちポケモンは、そんなにコンテスト向けじゃないのね」
ミツル「え?コンテスト?」
サツキ「キルリア、チルタリス、エーフィ、チリーン、ザングース…色を統一するのはいい考えだけど」
ミツル「あ、そういえば…僕のパーティ、ほとんど白っぽいのばかり…」
サツキ「かっこよさとたくましさはザングース一匹で突破するつもり?ちょっと無茶だよ」
ミツル「ちょっとちょっと、何なのさっきから!僕はコンテストに参加するつもりなんてこれっぽっちも…」
サツキ「嘘よ!虚構よ!!フィクションよ!!!寝言でコンテストコンテストうめいてたの、あたし聞いたんだから!」
するとミツルは、少し赤くなって…
ミツル「ね、寝言…ちょっと恥ずかしいなぁ」
サツキ「はぐらかしても無駄よ!さぁ、キッチリ吐いてもらうかんね!!ランクは!?優勝経験は!?」
ミツル「落ち着いてよ、僕が寝言で呟いてたのは多分、今秋に行われるミナモフォトコンテストのことだよ…」
サツキ「へ?そうなの?」
ミツル「そう。だから僕はポケモンコンテストに参加するつもりは無いよ」
サツキ「なーんだ…それならそうと、早く言ってよ〜」
ミツルが徐々に、この少女の危なさに気づき始めている。
と、そこへ…
ハルカ「ん?アンタたち…確かあの子の妹と、ミツル君…だっけ?」
サツキ「あたしはサツキちゃんだよ」
ミツル「………。ま、そっちはおいといて…あなたは、ユウキさんの知り合いのハルカさんでしたね」
ハルカ「別に、知り合いってわけでもないけど…」
サツキ「じゃ、カノジョかな?だめだよ〜ユウキおにーちゃんにはミナヅキおねーちゃんが…」
無言で鋼拳(ツッコミ)が炸裂。
サツキ「………!!」
ハルカ「アンタねぇ…そーゆー話題は、もっと大人になってからしなさい」
ミツル「…………」
ハルカ「そーいえばキミ、ユウキと知り合いみたいだけど…どこで出会ったの?」
サツキ「あたしはトウカの森で」
ハルカ「アンタには聞いてない!!」
ツッコミ、本日2回目。本来なら禁止。
ミツル「僕はコトキタウンのポケモンセンターで…」
ハルカ「あ―――――――!!!どこかで見たことあるなーと思ってたら…アンタ、コトキの病院抜け出し少年じゃない!!」
ミツル「うぇっ…あ、あれ見てたんですか!?」
ハルカ「ダメよアンタ、病気なんでしょ!?今すぐサミット辞退して、病院に帰りなさい!!」
ミツル「な…い、イヤですッ!!僕は、自分の意志で生きる!!」
ハルカ「!!」
ハルカの脳裏に、いつかの父の言葉がフラッシュバックした…

「マサトにも、自分の意思がきっとある。そう永くない命…彼の自由にさせてやろう」

ミツル「…ハルカさん?」
ハルカ「…ご…ごめん…そうだよね、アンタの自由よね…ごめん…アタシ過保護になりすぎてた」
ミツル「す…すみません。責めるように、強く言ってしまって…」
ハルカ「…アンタ、フォトコンテストとか言ってたよね、さっき」
ミツル「え?あ…はい」
いきなりの意味不明な発言に、動揺しつつも答えるミツル。
ハルカ「…見せたい景色があるの。ついてきて」

32 :エンタ2006/04/29(Sat) 17:16:41 ID:xWYAhD4U
第199話 それぞれの休日・其の三

スグル「あ――――――――ヒマ――――――――――――――――――――――」
よくこんなに息が続くものだという驚異的な長さで、彼は誰にとも無く愚痴を吐いた。
ミドリ「……そんなにヒマなら、少しはスペックの特訓でもしてはどうですか。まったく、スグルお兄さんの宝の持ち腐れといったら」
普段は無口なはずのミドリは、彼に説教するときだけ驚くほど饒舌になる。
スグル「わかってるって…っていうか、ついこの間新たな戦術を発明したところだろ?『箱庭』をさ」
ミドリ「あれは実用的ではありません。戦闘中常時スペックを発動させ続けているというのは、明らかな自殺行為ですが」
スグル「そのために、このクスリをもらってきたんだよ。これがあればずっと持続できる」
ミドリ「ですが、それは副作用で10分間ほど視界が霞むそうですよ?安全とはいえません」
スグル「その間は、かべを作っていれば隙にはならないだろ?」
ミドリ「…今日は妙に用意がいいですね。でしたら、今度は攻撃への転用でも考えてみたらどうですか」
スグル「ああ、それもある程度考えてあるんだよ。まず、プクリンが両手にリフレクターを展開して…」
そのとき、彼のポケギアが勢いよく鳴った。
ミドリ「電鼠戦隊ですか……アレな趣味ですね」
スグル「そんなことないだろ?ピカレーッド!アハハハハ、ピカチュウなのにレッドって!しかもイエローいないし!!」
ミドリ「……出ないんですか?電話……」
スグル「おっといけない。もしもーし、優良と書いて…」
電話の相手「今いいから、そういうギャグは」
スグル「おー、りょーへーせんぱーい」
リョウヘイ「何だよ、そのやる気の無さは…それより聞け!ついにつかめたぜ!!彼女の消息が…」
途端に、スグルが椅子から落ちた。
スグル「なん、だ、って…?」

場所は変わって、ここはハジツゲタウンの西側出口。
バンリ「マナカ…本当に大丈夫なのか?」
マナカ「平気、あたしにはマモル様という目標があるもん。自分の身も自分で守れないで、自然は守れないよ」
バンリ「だからといって、今から勉強をするんでは…」
マナカ「早すぎないよ。ポケモンレンジャーの資格試験は、13歳からだし」
バンリ「そうか?」
マナカ「そ。だからまずホウエン地方のポケモンの権威である、センリおじさんの知り合いの博士の家に行くの」
マナカはユウキのいとこなので、センリは叔父にあたる。
バンリ「オダマキさんのことか」
マナカ「じゃ、そういうことでいってきまーす」
バンリ「なあマナカ…最近お父さんに対して、冷たくないか…?反抗期…?」
・・・・・・
マナカ「ソ、ソンナコトナイヨ〜」
声が裏返っている。
バンリ「そ、そう?じゃ、危なくなったらすぐにテレポートでもどって来るんだぞ」
彼は一応父親なので、マナカのスペックの正体を知っている。『陸指(ジェネシック・フィンガー)』というらしい。
マナカ「それじゃ!テレポート!!」
マナカの姿が消えた。おそらく、目的地に着いたことだろう。

センリ「…ハヅキ、これでよかったのか?」
ハヅキ「OKOK、バッチリっす。ご協力どーもです、センリ大佐」
センリ「誰が大佐だ」
ハヅキ「まーまー。アンタも父親とはいえ、あの子のオクテさには正直ウンザリしてたんじゃないの〜ん?」
センリ「…何のことだ」
ハヅキ「ま〜たまた、しらヴぁっくれちゃってぇ〜」
センリ「酔っているのか?」
ちなみに、ハヅキは21歳だが…下戸なため、酒は一度も飲んだことが無い。だから普段からすでにこんな感じなのだ。
センリ「まったく、酒癖の悪さはナツコと五分か…おっと、こんな話を本人に聞かれてはことだ…」
何故センリが、絶対にナツコがいないと言い切れるはずのこの場所で、そんな心配をするのかというと…
ナツコは『地獄耳(ゼロ・ディスタンス・ウィスパー)』の持ち主であり、どこまで離れていても望んだ場所の音が聞こえるのだ。
まあ、センリ同様、継続時間に限度があるのだが…それでも危険なことに変わりは無い。
何故ならナツコは夫と息子を綱で縛った女…
ハヅキ「ちょっとォ〜、聞いてんすか大佐ァ〜?」
センリ「なんなんだ、お前は。誰が大佐だ?」
ハヅキ「も〜う、大佐も人付き合い悪いねェ〜」
センリ「まったく…そこまでしてあの二人をくっつけたいなら私は構わないが…ナツコが黙っていないぞ」
ハヅキ「は?ナツコって、大佐の奥さんの?」
センリ「ヤツは激しい親バカだからな。実の息子は縄で縛っても、やはり将来が心配なんだろう」
ハヅキ「そっかぁ…ま、本当は全部あの子たち次第なんだけどね」
センリ「なんだ、やけに素直だな。珍しい」
ハヅキ「なんだよ、素直じゃいけないの?それより、今の二人の様子を教えてよ」
センリ「…一日15秒が限度だ。それに、あの怪しげなクスリに頼るほどのことでもない」
ハヅキ「わーってるよ。だから、そのカラーコンタクトをはずしてもらうんでしょーが」
センリ「!!な…いつから気づいていた?」
ハヅキ「あたしをナメんなよ。これでも木の実名人の孫だからね、各所の伝説には詳しいつもりさ」
センリ「…そ、そうか…なら外すが…」
彼が目から黒いコンタクトを取り外すと、その下の眼は…
彼の髪の毛の色と同じ、吸い込まれるような深い深い藍色の瞳だった。

33 :エンタ2006/04/29(Sat) 17:17:25 ID:xWYAhD4U
第200話 昨日の敵は今日の宿敵(とも)

ワビスケ「…着いたか。カントー、ナナシマへ」
ここは、6のしま、はずれのしまに位置するどうくつ。
このどうくつも、ホウエンのものと同様、『へんげのどうくつ』と名づけられている。
誰が決めたわけでもなく、遠いふたつの地方で同じ名を持つこのどうくつは…特殊な術によってのみ、その存在を重ねる。
応用すれば、ホウエンからカントーへと一瞬で行き来できるのだ。
そして、彼女はここから自分の故郷へと赴くのだった。『仕事仲間』とともに…
ワビスケ「ニノマル、待たせたでござるな」
ニノマル「遅ぇって。まったく、こんな辺境の地で何時間も待たせんなよな〜」
ニノマル(二の丸)と呼ばれたその少年は、わりと短気なようだ。忍者には、向いていない。
ニノマル「これからチョウジ行くんだろ?一週間しか時間ねぇんだったら、さっさと行こうぜ」
ワビスケ「う、うむ。悪いでござるな、いつも…記憶を失った抜け殻忍者…ヌケニン風情に、こうまで尽くしてくれるとは…」
ニノマル「なぁに言ってんだ、ワビスケ?そのことは気にしねぇ約束だろーが」
ワビスケ「す、すまぬ…向こうには、もう皆いるのでござるか?」
ニノマル「おう。キヨカ(清香)もヒトマロ(人麿)も、今回はオウリ(桜里)もきてるらしいぜ」
ワビスケ「ほほう…あの仲間の前でも隠れるような過剰忍が…よほど今回の任務が重大と見える」
ニノマル「まぁ、実際重大だしなぁ。150年前に続いて、今回はもうひとつの方も狙われてるってなら」
ワビスケ「シッ、果ての小島とはいえ、誰が聞いているか分かったものではないでござる」
やはりニノマルは忍には向いていないようだ…
ニノマル「おっと、悪ぃ悪ぃ。そんじゃま、時間もねぇことだし、行きますか」
ワビスケ「承知」

ユウキ「はぁ〜…みんな、どんな休日を送ってるんだろうな〜…オレも頑張って特訓するか!!」
ミナヅキ「は、はい!頑張りましょう!!」
ユウキ「よっしゃー!プラ!ブイ!アイアンテールの練習だ!!」
プラがシッポを取り外してブーメランのように投げ、それをブイが打ち返す。プラがそれをキャッチし、また投げる…
ミナヅキ「当たったら痛そう…」
ユウキ「ミナヅキも特訓するか?」
ミナヅキ「え…でも、何をすればいいのか…」
ユウキ「実戦だ実戦!!お互いスペック全開勝負な!!ムドー!!」
ミナヅキ「えっ、わわ、ガ、ガルリン!!」
ユウキ「おー。大型だー。そのポケモン、ホウエンには生息してないよな。どこの、なんてポケモン?」
ミナヅキ「えっと、このポケモン、ガルーラは…草原などの開発によって、徐々に住み処が失われてるんです…」
ユウキ「!そ、そうなのか……、やっぱり、自然を人間の手で造りかえるのは、よくないことなのかな…」
するとミナヅキはにっこり笑って、
ミナヅキ「私のおばあちゃんは、こう言いました。
     『良いほうに悪いほうに、どちらに造りかえるかは、人間の勝手。そしてその中に生きるも死ぬも、人間の勝手』って。
     だから私のこの能力は…おばあちゃんと同じように使いたいんです」
ユウキ「そうか…ホウオウの力が行き届かなかった『自然』は、ミナヅキのおばあさんの能力で…」
ミナヅキ「?なんのお話ですか?」
ユウキ「あ、いや昔話……、…ッ!?」
二人のいる場所から少し離れた草陰で、物音がした。
ユウキ「ミナヅキ、俺の後ろへ。…誰か、いるのか?」
いつの間にかユウキはチーを剣化させて、その斜め前両サイドにブイとプラが立ちはだかる。
草陰から出てきたのは…
ユウキ「あ……」

ついこの間まで敵だった男が、誰よりも頼れる宿敵(とも)になって、そこに立っていた。

ホタル「よ。久しぶりだな」

34 :エンタ2006/05/03(Wed) 15:17:39 ID:d/U/TF7Y
第201話 希望のタマゴ

二人は、現代へとたどり着いた。
正確には、現代における時のはざまの入り口…ゲンキが危うく押し潰されそうになった場所だった。
アオイ「………シンジ……」
アオイは、悲しみにくれていた。無理もない。
しかし、彼女よりも幼いゲンキは、その眼に涙を浮かべてはいなかった。彼女に背を向けたまま…前を見たまま、彼が言う。
ゲンキ「タマゴ…前、見ろよ…オレは決めたんだ…前を見るって…」
アオイ「でも…、でも……っ」
ゲンキ「行こうぜ。オレたちが歩き出さないと…シンジのつくってくれた道が、無駄になっちまう」
アオイ「セレビィさえいれば…みんな一緒に現代に帰れたのに……!」
ゲンキ「後悔したって……ッ」
ここでゲンキは振り返り、そして驚くべきものを目にした。

ほこらを守るように座っている、人間の…骨。

アオイも顔を上げ…それを目にした。
アオイ「………!!」
ゲンキ「シ……!!」
そして、慟哭がウバメのもり中に響いた。

ゲンキ「…ッ、……タマ、ゴ…それでも前に……前を……見………」
自分でも何を言っているのか分からないほどに、ゲンキは悲しくなった。だが、いつまでも後ろを見続けているわけには…
ふと、ゲンキが何かを見つけた。その、黄金の観察眼で。
ゲンキ「…ほこら……ほこらを、守ってる…?シンジが…」
ゲンキはほこらに近づき、強引にこじ開けた。
すると、中には…

一個の、タマゴがあった。

ゲンキ「…こいつは…」
アオイ「……まさか……」
アオイはいつかハルカにもらったポケモン図鑑を開き、ぜんこくのデータを見た。

セレビィ ときわたりポケモン たかさ 0.6m おもさ 5.0kg
 セレビィが すがたをけした
 もりのおくに のこされた タマゴは
 みらいから もってきたもの らしい。

アオイ「もしかして…セレビィのタマゴ…?」
ゲンキ「…なァタマゴ…こうは考えられねーか?セレビィがすがたをけしたもり…156年前のあの日…、
    セレビィが、あの時代のもりにやってきた。そして、すがたをけした…つまり、オレたちがもりの外へ連れ出した。
    そして、そのときセレビィは…オレたちの今いる時代…つまり未来からやってきた…」
アオイ「そのときに…156年前のもりにタマゴをのこした…と?」
ゲンキ「どうやったかは知らねーが…でも、これがセレビィのタマゴだとするなら…」
ゲンキはタマゴを取り出して、アオイに手渡した。
ゲンキ「…156年間ずっと孵化しなかったこいつを孵せるのはお前だけだぜ、タマゴ。お前がセレビィを孵すんだ」
セレビィがすがたをけした今、このタマゴを孵すことができる者はいない…。
だが、それを可能にするのが…不可能を可能にするのが、彼女ら諜報部。
そしてアオイのスペック『誕生(ワンダー・エッグ)』が、それを可能に導くのだ。
彼女はタマゴを受け取り、涙を拭った。希望が、見えてきた。
セレビィが孵れば、シンジにまた会えるかもしれない。
使命を終えたアブソルは、この時代には既になき主に深々と一礼をし、そのまま西へ…ホウエンの方角へ向かっていった。
二人も、骨になっても未来へ希望をつないだその男に礼をし…時のはざまから出た。
そこにいたのは…
ゲンキ「お!?ツクシ…それにヘラジローの背中…」
アオイ「ヒスイさん!!」
ツクシ「ね?やっぱり僕って、タイミングいいでしょ?」

35 :エンタ2006/05/06(Sat) 19:55:49 ID:e8.ClB56
第202話 美しき世界、醜き殺戮

ミツル「あのぉ…一体どこへ…」
ハルカとミツルの二人(サツキは振り払った)は、えんとつやまの外壁を登っていた。
ハルカ「頂上よ。あとちょっとだから」
ミツル「あとちょっとって…噴煙で、ちっとも上なんか見えないんですが…」
ハルカ「ん?そう?アタシには見えるけど…」
それは彼女の能力の延長による、視力の向上にあった。暗闇でユウキの姿が見えたのも、この視力のおかげなのだ。
まあ、フィールドワークで培われたというのもあるが…
ミツル「あの、ハルカさん。ちょっといいですか…」
ハルカには、心を覗かずとも彼が何を言おうとしているのか分かった。
ハルカ「さっきのこと、でしょ?」
ミツル「はい…何か、ワケありだったんでしょうか…」
ハルカ「うん、まあね…そいじゃ頂上着くまであとちょっとあるし、昔話でも聞いてもらおうかしら…」
この間フユキに話したのと同じように、ハルカは話し始めた。

ミツル「そんなことが…でも、ユウキさんの言ってたのと、少し違うかなぁ…」
ハルカ「ん?少し違うって?」
ミツル「いえ…ユウキさんから聞いた幻陸大災禍の日にちは、霜月朔日…僕の誕生日だったんですけど…
    今ハルカさんが言ってたのは、大晦日ですよね?」
ハルカ「ああ、それは旧暦よ。そっか、今は大晦日を霜月朔日と考えるのね」
ミツル「旧暦…ハルカさんの家では、旧暦を使うんですか?」
ハルカ「パパが昔のカレンダーはがさないのよ。困ったもんね」
ミツル「そ…そんな理由で!?」
そうこう話しているうちに、頂上にたどり着いた。
ハルカ「ほら、ちょうどいい時間帯!あっちを見て」
ミツルが言われるまま西に目をやれば…
ミツル「うわぁ……!」

絶景だった。
夕日が海を朱色に染め、波に反射してキラキラ輝いている。
上を見れば雲ひとつ無い空が、陽の紅から空の蒼、そして夜の藍へとグラデーションしていて…
そして、金色に光る山肌と、その裏側に濃紺の影。眼下に広がる一面碧色の森林…
これはまさに…
ミツル「ホウオウ…」
ハルカ「よく気づいたわね。そう、この時間帯、この位置からは、ホウオウの虹色が拝めるの」
ハルカが得意げに話す。
ミツル「…………」
ハルカ「感動して声も出ない?じゃあ、カメラに収めてみる?」
ミツル「……いえ、この風景を一枚の薄っぺらな紙に収めてしまうのは…もったいない気がします」
ハルカ「そういうもん?」
ミツル「そういうもんですよ。だからこそ、誰も知らない景色も存在する。ホウエンは…こんなにも、美しいんです」
ハルカ「うん。だからこのホウエンを…アタシたちで守らなきゃね!」

突如。視界が闇に染まり、虹が暗闇一色になった。
ミツル「っな!?まさか、マグマ団…!?」
ハルカ「…このわざは…?」
???「くろいまなざし…だ」
ハルカ「!!どこッ!?アンタ…マグマ団ね!?」
???「マグマ団…?あんな連中と俺を一緒にするんじゃねぇ。俺はつるむのは苦手だしな」
ミツル「なら、何者ですか!?」
???「おぉっと、人の名前を聞くときはまず自分から名乗れって、ママに教わらなかったか?」
この一言で、ハルカがブチ切れる。
ハルカ「それが襲ってきたやつの言うセリフッ!?」
叫び声と同時に、ハルカは声のする方向へボールをかざし…
出てきたキノピーが、わずか0.1秒間で超高速の一撃を繰り出す。
???「マッハパンチ…か。だが…」
手応えが、無い。敵の姿が見えないので当然と言えば当然ではあるが…ハルカとキノピーの「こころのめ」が、目標を見誤るはずは無い。
となると、相手は…
ハルカ「…ゴーストタイプ…?」
ミツル「もしそうだとしたら、かなり分が悪いですね…かといって、くろいまなざし発動中はテレポートで離脱もできない」
ここにきて冷静なミツルを見て、ハルカが内心感心する。
???「俺の名前を、教えといてやるか…どうせお前らすぐ死ぬ」
ハルカ「そんなもの聞きたくないわ…アンタの目的は何?」
???「へッ。そいつぁ、マグマ団のわけわかんねぇのみたいなモンのことか?うーむ。強いて言うならまあ…」
そしてこの男は、とんでもないことを口にした。

???「目的の無い殺戮…それが目的だ」

36 :エンタ2006/05/06(Sat) 19:56:04 ID:e8.ClB56
第203話 森を守るもの

マナカ「ここがミシロタウン…」
同じハジツゲからミシロでも、彼女はユウキたちよりも果てしなく短い時間でたどり着いた。
マナカ「…なんか…何もないっぽい…おっとと、これじゃユウキに失礼かな。えーっと、オダマキ博士、オダマキ博士…」
マナカが、表札を見て回る。その背後の視線に気づかぬまま…

ピーンポーン。
オダマキ「はい?どちら様?」
マナカ「こんにちはっ!!」
オダマキ「あ、こんにちはー」
流されるな、博士。
オダマキ「えっと…ここに何か用でも?」
マナカ「はい!!今日はポケモンの勉強を教えてもらいに来ましたぁ!!」
「今日は」と言っている目の前の少女は、初対面…。博士の頭がこんらんしてきた。
オダマキ「えっと…お名前は?」
マナカ「マナカ!大空マナカです!!」
オダマキ「えぇ!?大空…ってことは、センリの隠しごふぉォッ!?」
ナツコ「んなわけあるか」
さすがはセンリに勝利した女、ナツコ。音速のツッコミである。
マナカ「ナツコおばさん!」
オダマキ「こらこら、お姉さんと呼びなさい。でないと殺されらるろァがッ!?!?」
ナツコ「だぁから、おばさんでいーのよ。この子はあたしの姪…にあたるのかな」
オダマキ「え、てことはバンリ子供いたんだ!?いつの間に…まさか隠しゴフッ…」
博士、撃沈…この二人、この2週間よほどヒマだったのだろうか…漫才(?)が板についている。
マナカ「おばさん、殺りすぎ…」
ナツコ「やりすぎかなぁ?あははは」
オダマキ「アハハハジャアリマセンヨ〜」
誰だ、お前。
マナカ「博士、壊れちゃったねー」
ナツコ「もっかい叩けば直るんじゃないの?」
直後、ミシロタウンに何かが折れる音が響いた…。

いや、オダマキ博士の骨がではない。それは、木の折れる音だった。
マナカ「………!」
ナツコ「マナカちゃん!?どこ行くのッ!?」
マナカは玄関から全速力で101番道路へと向かった。

マナカ「また……あなた達ですかッ!?性懲りも無く…!」
リョウ「げッ…またお前!?」
ススケ「やべぇ!今日ヤイト来てねーんだよ、勘弁して!!…この木1本で」
マナカ「しません!!ミロロちゃん……ッ!?」
マナカがボールを取り出すより早く、リョウとススケの背後から巨大な影が現れ…
二人を踏み潰した。
マナカ「な…な……?」
すると、町の方角からオダマキ、ナツコの二人が駆けてきて…
オダマキ「キモリ…じゃない、ジュプトル…でもなかった、ジュカイン!!よくやったぞ!!」

37 :エンタ2006/05/06(Sat) 19:56:19 ID:e8.ClB56
第204話 ふたつの手紙

ユウキ「ホタル!!無事だったのか!?」
差しのべた手を、ホタルは軽く手で払った。
ユウキ「……?な、何すんだよ?」
ホタル「最初に言っておくぞ。俺は元マグマ団。お前はマグマ団討伐隊。この時点で俺たちは……敵、だろうが」
ユウキ「な…そんなわけ無いだろ!オレはお前と戦うつもりはないッ!!」
ホタル「そ…そうは言っても、俺とお前の立場の違いと言うものがだな…」
ユウキ「関係ないよ、そんなもん。立場を超えるのが、絆だからな」
ホタル「…何?」
ミナヅキ「えーっと、よくわかりませんが…敵の敵は味方!…でしたよね、ユウキさん」
ユウキ「お!よく覚えてたな」
ミナヅキ「教訓其の九ですよね」
ホタル「…どうでもいいがユウキ…お前って、会うたびに違う女と一緒にいるよなァ」
ユウキ「ごッ、誤解を招く言い方すんなよ!!」
ホタル「ほほう、その口ぶりでは、その女とは何もない、とでも言いたげだな…?」
ユウキ「その情報分析能力を、ヘンなトコロで発揮するなよ…」
ホタル「うん、まあどうでもいいんだが…その女は結局誰だ?俺がこれから話す内容を、聞かれても困らない女か?」
ユウキ「それはつまり、遠まわしに深い関係があるのかって聞い…」
ガツン。ゲンコツ一発。
ユウキ「…ってェ―――……!」
ホタル「まじめな話だ、ボケ」
とてもそうは見えないが。
ユウキ「…ミナヅキは仲間だよ。何を聞かされても困るような相手じゃない」
ホタル「ほほう…ナニを聞かされても…?」
ユウキ「まじめな話じゃないのかよ!」
ホタル「冗談だ、ボケ。そいつは信用していいってことなんだな?」
ユウキ「というより、そこまで慎重になる理由でもあるのか…?」
ホタル「あー。うむ。百聞はナンチャラとも言うしな。コイツを見な」
彼が手紙のような物を取り出した。
そこには、こう書かれていた。

  挑戦状

 次の土曜日、お前たちマグマ団に決闘を申し込む。
 アジトの位置を知られ、その上オレたちを取り逃がし、あまつさえ大地の巫女も奪い返された屈辱を晴らしたくば、
 次の土曜日の明け方、団員70人をえんとつやま北の台地によこすがいい。
 2週間前、お前たちが起こした噴火によってできた、あの場所だ。
 そこでアクア団も交えて、オレと決闘しようじゃないか。
 次の土曜日を楽しみにしているぜ。
                     大空ユウキ

ユウキ「なんだこりゃぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
ホタル「俺がマグマ団に送った手紙だ。どうだ。特徴つかんでるだろ?」
ユウキ「そういう問題じゃないッ!!!!つーか、つかんですらないッ!!!!!」
ミナヅキ「ここに、『アクア団も交えて』…って書いてありますけど…これは…?」
ホタル「ああ。似たモンをアクア団にも送った」

  挑戦状

 次の土曜日、お前たちアクア団に決闘を申し込む。
 ニューキンセツ占領を妨害し、幹部3人がかりでも勝てなかったオレと戦ってみないか?
 やる気のある団員30人は、次の土曜日の明け方にえんとつやま北の台地に来るがいい。
 そこでマグマ団と協力でもして、オレを倒してみるがいい。ははははは…

そこまで読んだ時点で、ユウキが勢いよく手紙を引き裂いた。
ユウキ「だからなんだこりゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
ホタル「落ち着け」
ユウキ「何だよコレ!オレが悪者みたいになってないか!?」
ホタル「まあ、そうだろうな。奴らにとってはお前は敵なわけだし」
ユウキ「そうじゃなくて!!セリフ回しから明らかに別人だろコレ!!ってか100人ってすでに決闘じゃないだろ!!」
ホタル「細けェこと気にすんなよ」
ユウキ「するわ!!!」
ミナヅキ「あの…この挑発状は何の役に…」
さりげなく発したボケか突っ込みか分からない単語。
ホタル「…俺の作戦だ」
ユウキ「作戦?」

38 :エンタ2006/05/10(Wed) 19:37:04 ID:4VWlLya.
第205話 ホタルの作戦

ホタル「こいつは、マグマ団の裏切り者の俺が、アクア団の裏切り者と二人で考えた、素晴らしき作戦だ」
ユウキ「アクア団にも、お前みたいな愚か者のバカがいたのか?」
その言葉は何故か裏切ったことに対してではなく、別の何かに対して放たれていた。
ホタル「ユウキ、お前が100人を相手に戦っている間、お前の仲間の他の連中…あのアチャモ女や、そこのお前は、何をすると思う?」
指を指されたミナヅキが少し考え…答えが出る。
ミナヅキ「手薄になったアジトに攻撃を…?」
ユウキ「つまり、囮作戦ってことか」
ホタル「そういうこった。お前は両団の恨みを都合よく買ってくれた。奴らに、挑戦を受けるに値する理由を与えたのさ」
ユウキ「意図したわけじゃないけど…まさか、お前最初からそれを計算して…?」
ホタル「んなことができたら俺はマグマ団なんか入ってねーよ。囮作戦が最良だと考えたとき、ちょうどお前が適任だったわけだ」
ユウキ「待てよ…そもそもマグマ団て70人もいるのか?」
ホタル「いる。それどころか、ゆうに100人は超えてる。“裏”も含めると、もちっと多いだろうがな」
ユウキ「裏…?」
ホタル「何だ、知らねェのか?“裏”ってのはマグマ団の特殊部隊のことだ。殺すための…な」
ユウキ「な……ッ!?」
ミナヅキ「ころ……!?」
ホタル「ああ。表に立つ連中にはその存在はあまり知られてねェが…」
ユウキ「じゃあ、何でお前が知ってるんだ?」
少し、ホタルの表情が曇った。
ホタル「理由はあるんだが…そいつを先に教えるべきは、お前らじゃねぇんだ」
ユウキ「…そ、そっか。それならまあ…誰にでも秘密はあるし」
ホタル「ときにお前ら、マグマ団の目的は何なのか知っているか?」
ユウキ「え?」
ユウキは、ふとサミットで聞いた内容を思い出した。
ユウキ「マグマ団の目的は、大地を増やすこと…ポケモンと人間、両方のさらなる発展の為に…」
ホタル「そこだけ聞けば…『素晴らしい目的』に聞こえなくもねェ。どういうことか、わかるな?」
ミナヅキ「……?」
ホタル「さらに…コレを聞いたのが、グラードンとカイオーガの伝説を知らない者だったら?」
ユウキ「…あ……ッ!?」
ホタル「…下ッ端の連中には、悪いコトをしている自覚なんかねェんだ」
ユウキ「グラードンを復活させたら、何が起こってしまうのか知らない……!?」
ホタル「おまけに、グラードンを復活させたら、夢の島誕生だなんてふわふわしたこと考えてやがんだ」
ミナヅキ「……ッ、じゃあまさか“裏”は……!!」
ホタル「そうだ。夢に騙されてる連中に悪夢を隠すため…あえて血に手を染める連中…それが“裏”だ」
ユウキ「そんな…やっぱり、マグマ団は…」
「悪い人ばかりの集まりじゃなかった」と言うはずの口が、驚愕に震えていた。
ホタル「…だが、マツブサには他の目的…本当の目的が存在する。そして俺は、そいつを掴んだ…だから、邪魔になったってわけだ」
ユウキ「その『目的』は…オレたちには、教えてくれないんだろ?」
ホタル「ああ。マツブサの野望を潰すのはこの俺だからな」
ユウキ「だから、オレたちを囮にまわすってのかよ…」
ホタル「ったりめーだ。というわけで、お前にはこれから100人抜き達成の為に特訓をしてもらうぜ」
ユウキ「えぇ!?」
ホタル「いいか、よく聞け。お前の主力ははがねタイプ…ほのお使いだらけのマグマ団には滅法不利だ」
ユウキ「あぁ…なるほど」
ホタル「だから俺がこれから1週間…ほのおへの耐性をつけてやる」
ユウキ「おぉ!いいなそれ!!」
ふと、思い出したようにミナヅキが聞いた。
ミナヅキ「でも、なぜ…次の土曜日が決戦の日だと知っていたんですか…?」
ユウキ「あ、そういえば…」
ホタル「へッ、アクア団の裏切り者が言うには、『諜報が得意なのは、あなた方だけではないのです』だそうだぜ?」
この言葉を聞いた途端に、二人の顔が青くなった。
ユウキ「…じゃ、じゃあ…オレたちの存在も目的も、全部向こうに筒抜けだったってのか…?」
ミナヅキ「一応、サミットって秘密組織なのに…」
ホタル「だからやるしかねぇんじゃねーか。ユウキ!剣を取りな!!」
言われるがままにユウキがチーを剣化させる。
ホタル「お前のはがねの刃…この俺のほのおで鍛え直してやるぜ!!!」

39 :エンタ2006/05/10(Wed) 19:37:41 ID:4VWlLya.
第206話 四天王

傷だらけのハルカとミツルが山から下りてきたのは、その日の夜遅くだった。
バンリ「ど、どうしたんだ!?大丈夫か!?」
ハルカ「う…この子たちを…」
ハルカはモンスターボールをバンリに預けた。
バンリ「あいにくこの村のセンターの設備は完全に復旧していないが…ヒサヤに頼んでどこかの町のセンターに行ってもらおう」
セツナ「どうかしたの…って、あんた、その傷…ッ!!大変だ!!」
ハルカ「アタシは平気よ…それよりも、ミツルを……」
言おうとして、ハルカはそのままじめんに倒れた。

次の日…日曜日の、朝。

ハルカ「……ぅ…ん……?」
セツナ「お、気がついたか?」
ポケモンセンターの病室で、彼女は目が覚めた。
ハルカ「…ッ!!アイツは……あの男は……」
セツナ「な、何言ってんだ急に…?」
ハルカ「……そうだ…ミツルは!?ミツルは無事なの!?」
セツナ「心配すんな。アキちゃんがあたしのネギ使って、クスリを作ってくれたからさ」
ハルカ「余計心配だわ」
アキ「そ、そんな殺生な…」
ハルカ「…『あたしのネギ』?どういう意味?」
セツナ「ありゃ、知らないんだったか?あたしのネギって言やァ、あたしのネギなんだけどな」
アキ「つまり、セツナ『お嬢』さんの武器ですよ」
スパコーン。さっそくそのネギがアキの頭に炸裂。
ハルカ「ネギが武器?」
セツナ「ああ。いあいぎりは極めれば、武器なんてモンは木刀だろうが手刀だろうがなんでもいいのさ」
ハルカ「だからって、ネギって…」

ハルカがお茶に溶かした薬を飲み終えた頃、アキが立ち上がった。
アキ「それじゃわたし、ミツルさんの様子を見てきますね」
ハルカ「あッ、アタシも…!!」
セツナ「あんたは寝てな、傷がひどすぎる。山を降りられたのが不思議なくらいだ」
ハルカ「でも…だったら、ミツルはもっと…」
セツナ「…相手は誰だ?マグマ団か?それとも…」
ハルカ「違う……違うの。マグマでもアクアでもない…目的の無い殺戮を目的とする、恐ろしく強い男…」
セツナ「…なんだそりゃ。名前は名乗っていたか?」
ハルカ「…………ツ……」
セツナ「何?」

ハルカ「赤井カゲツ…四天王の、『黒死帝』…カゲツ」

セツナ「…何だ、と…!?」
ハルカ「……ヤミラミを使って…アタシらの弱点をついてきた…」
セツナ「なんで四天王が…?あのカゲツとかいう男、確かにあくタイプ使いだが…そんな無茶するような男には…」
ハルカ「…アイツだけじゃない。ほかの四天王もまた、動き出してるって言ってた…」
セツナ「…どういうこと…?今、このホウエンに何が起きてるんだ…!?」
ミツル「ハルカさん!!」
勢いよく部屋の扉が開いた。
アキ「ダメですよぉ!動いちゃぁ…」
アキがミツルの服にしがみつきながら、引きずられている…
ハルカ「ミツル!!無事だったのね!」
ミツル「ハルカさんこそ…」
セツナ「感動の再開中悪いが…ミツル、一体どうなってるんだ?どういうことなんだ?」
ミツル「…僕にも、わかりません…ただ一つだけ、言えることは…」
ミツルのまっすぐな目に、情熱の火が灯る…

ミツル「僕らはもう、誰にも負けるわけにいかないということです!」

40 :エンタ2006/05/10(Wed) 19:38:08 ID:4VWlLya.
第207話 海底にて

海の上の岩場に、3つの人影が降り立った。
ダイゴ「着いたぞ。134番水道だ」
ヒサヤ「本当にここであってるのか?不安になってきたぞ」
ミクリ「わたしが深い場所を探してみよう」
そういって彼がペリッパーを繰り出し、海の上を飛び回りながら眼下をするどいめで見渡す。
数分後…
ミクリ「あったぞ、このあたりだ」
ヒサヤ「おっどろいた…本当にあるとは」
ダイゴ「ヒサヤの家にあった遺跡の秘密を記した巻物は、正しかったようだね」
ヒサヤ「僕の家は先祖代々あなほり屋だったって証明されたかも」
ミクリ「2人とも、ダイビングの準備をしてくれ」
ダイビングは、深い海に潜るためのわざだ。
ヒサヤ「ダイビング!?僕、ダイビング、NO〜!!」
ダイゴ「意味わかんないよ…ジンキチ、ダイビング!!ヒサヤをつれてくぞ!!」
ジーランスが繰り出される。
ミクリ「ホエルオー!」
そして3人は、海底へと潜った。
海上に、優雅なる追跡者がいたことを知らずに…

深く深く潜ると、やがて通路のような岩に囲まれた場所に出た。
そしてその道に沿ってまっすぐ進むと、岩場の中に奥へと続く穴があるのを発見。
そして、岩に彫られている文字をダイゴが解読し…
ヒサヤ「ぷはッ!!」
ダイゴ「おいおいヒサヤ、別に息を止めてる必要は無いんだよ?」
ヒサヤ「え!?先に言ってくれよ!?」
そこは空気がある空間だった。水圧の関係で海水が入ってくることは無い、いわば石室のような場所だった。
ミクリ「さっきの岩に彫られていた文字のような物は、何なんだ?」
ダイゴ「古代文字…『テンジ』さ」
ヒサヤ「テンジ?」
ダイゴ「遺跡を散策しているとまれに見つかる、まだ完全に解読されてはいない文字なんだ」
ヒサヤ「ふーん…」
ダイゴ「大昔は明かりなんてものは無かったから、目を使わずとも指先で読み取れる文字として開発されたなんて説もある」
ミクリ「指で、文字を?信じられないな」
ダイゴ「ま、歴史の神秘とでもいうヤツかな」
ヒサヤ「あ!奥のほうにもあるぞ!」
3人が石室の奥に進むと、そこにもテンジが記されていた。
ミクリ「だいぶ風化してるな…読めるか、ダイゴ?」
ダイゴ「…ここで、あなをほる…」
言った途端に、ダイゴがしまったという顔で振り返ると…時すでに遅し。
ヒサヤ「…フ……ウフ………ウフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
ミクリ「なッ、何事!?」
ダイゴ「逃げろミクリ〜ッ!?」

数分後…
やっと彼の発作もおさまって…
ミクリ「道ができた…?奥に空洞があるぞ!」
ダイゴ「…やっぱりヒサヤをつれてきたのは間違いだったか…?」
言いつつも、気絶したヒサヤをクロキチに担がせて奥に進んだ。
ミクリ「…テンジの掘られた石碑のようなものがたくさんあるな…」
ダイゴ「…私たちは、この穴で暮らし、生活し、そして生きてきた…」
ダイゴが徐にテンジの内容を読み上げる。
ダイゴ「すべては、ポケモンのおかげだ」
石室を回りながら、順に石碑の文字を読む。
ダイゴ「だが、わたしたちは、あのポケモンを…閉じ込めた」
ミクリ「…!?」
ダイゴ「…怖かったのだ」
一瞬の沈黙が、うす寒い石室に流れる。
ダイゴ「…勇気ある者よ、希望に満ちた者よ…」
最後の石碑の前でダイゴは立ち止まり、それを読み上げる。
ダイゴ「扉を開けよ。そこに、永遠のポケモンがいる」
ミクリ「永遠のポケモン…?」
ダイゴ「…僕はこう考えたいね。はるか大昔に閉じ込められたポケモンが、扉の奥で待っている…永遠に死なないポケモンが」
ミクリ「…彼らが言うには、そのポケモンは…」
ダイゴ「…ああ。『怖かった』……。恐らく、強大な力を持つポケモンだろうね」
ミクリ「戦力にできるといいが…」
ダイゴ「できるさ、きっと。でなきゃ、ここに来た意味が無い」
そういうダイゴの声も、少し震えていた。
ミクリ「奥の文字を、読んでみてくれないか」
ダイゴ「ああ」
ミクリが最後に残っていた部屋の一番奥のテンジを指差し、ダイゴがそれに歩み寄る。
ダイゴ「不自然な穴が6つ空いているな…コレは文字じゃない」
子供の握りこぶしくらいの並んだ穴の下にはっきりと彫られていた文字を、ダイゴが読み上げる。
ダイゴ「最初にホエルオー、最後にジーランス。そして…全てが、開かれる」
ミクリ「ホエルオーと、ジーランス…?」
ヒサヤ「…何てこった。まるで僕たちが来ることが予想されてたかのようだな」
ダイゴ「起きてたのか?」
ヒサヤ「あたかも全てが計算され、僕たちのためにお膳立てされてたかのようだ…海に潜ることも、あなをほることも」
ミクリ「で、結局答えはどうなんだ?」
ヒサヤ「二人とも…さっき潜るときに使ったホエルオーとジーランスを貸してくれ」
言われるまま、二人はボールを差し出す。
ヒサヤ「で、僕の手持ちも合わせて…こうするのさ」
ヒサヤはホエルオーのボールをかべに空いた穴に取り付けた。そして順番に穴にボールをつけていき…最後に、ジーランス。
そして、その瞬間…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

遠くのほうで、何かが開いたような音がした。

41 :エンタ2006/05/10(Wed) 19:38:51 ID:4VWlLya.
第208話 氷の女王

つい先ほど3人のトレーナーがもぐった、海底通路へつながる潮の流れが弱い箇所を、氷づけにしている女がいた。
エリートトレーナーの制服を着た1人のトレーナーがそれに気づき、不審に思って近づいた。
トレーナー「そこで何をしていますの?」
女は振り向きもせず、黙って作業を続けている。
トレーナー「そこには先ほど、3人のトレーナーがダイビングをして、まだ戻ってはいないのですのよ?」
女は知らんふりでトドゼルガに海を凍りつかさせている。
トレーナー「そんなことをしては、出られないじゃない!ちょっと!!聞いてますの!?」
女「そうよ。出られなくしているの」
トレーナー「何ですって?」
女「あの3人が永遠のポケモンを復活させれば、あの3人が邪魔になる。だから今ここで生き埋めにするのよ」
そのトレーナーには、女が言っていることが分からなかったが、考えていることは分かったらしい。
トレーナー「今すぐおやめなさい!!さもなくば、このエリートトレーナー協会会員、閃光のリツコがお相手しますの!!」
そこでやっと、女は彼女のほうを向き直った。
女「ふふ…エリートトレーナー…少しは熱くさせてくれるかしら…?」
そして、両者のポケモンが激突した。

場所は変わって、ここは海底の石室。
ダイゴ「全てが開かれる…どういうことなんだろう…」
壁に刻まれたテンジとにらめっこしながら、ダイゴが首をかしげる。
ヒサヤ「つまり、永遠のポケモンに出会えるってことだろ?全ての扉が開いて」
ミクリ「しかし、どこにそんなものが?」
ダイゴ「ふむ…心当たりが無いわけではないけど…」
ミクリ「何だ?」
ダイゴ「ここのほかに、テンジが残されている遺跡のようなものがあるという」
ヒサヤ「本当か?」
ダイゴ「ああ。でもこの間文献に記されてた場所に行ってみたらただの岩だったよ。特長的な形状をしていたけどね」
ミクリ「どんな形状だ?」
ダイゴ「大きな岩があって、その周りに魔方陣のように6つの小さな岩が並んでいた」
ヒサヤ「な…その形なら、僕も見たことがあるぞ。昔掘ってた穴の上の砂漠に、ポツリと佇んでた…」
ミクリ「わたしも聞いた覚えがある。105番水道に、そんな形状の遺跡があると」
ダイゴ「…単に偶然とは、思えないな…」
ヒサヤ「じゃあ、3人で手分けして、そこに行ってみるか?」
といった具合に、永遠の遺跡の探索が決定された。
海上の陰謀も露知らず…

リツコ「ハァ、ハァ……ッあなた、何者ですの……!?」
女「…ぬるい。ぬる過ぎる…やはり温暖なホウエンでは、トレーナーの情熱も『温暖』に過ぎぬ温度ということかしら」
リツコ「何ですって…!?っく!!」
女「あなたも邪魔ね。海に沈めて差し上げようかしら、氷に閉ざして差し上げようかしら」
リツコ「ひっ……!い、いや……!!」
リツコの脳裏に、先ほど喰らったぜったいれいどの恐怖が思い出される。
女「ご安心なさい。暑さ寒さも彼岸まで…死んでしまえば寒さなど感じない」
リツコ「だ…誰か……!!」
女「冥土の土産に、わたくしの名前を教えておこうかしら…」
今のリツコにはそんなことを聞いている余裕は無い。
女「四天王がひとり、プリムローズ・エスメラルダ。人はわたくしを、氷の女王プリムと呼ぶ」
リツコ「し…四天王……!!」
プリム「無駄話が過ぎたわ。そろそろ終わりにしましょう。死ねば恐怖も忘れてしまう」
トドゼルガのキバが、その口に収まる程度の大きさのリツコに襲い掛かる。
刹那。

『かべのような何か』が、リツコを守り、キバを砕いた。
リツコが涙に潤んだ目でその姿を見上げる。

スグル「エリートトレーナー協会会員(新人)、鉄壁のスグル。姉の危機を救いに参上!」

42 :エンタ2006/05/15(Mon) 19:13:37 ID:R5HpWglc
第209話 畏怖の竜王

リツコ「…スグル?スグルなの?どうしてここに…いえ、それよりその格好…」
プリム「邪魔ね…トドゼルガ、やっておしまい!!」
スグル「プクリンッ!!」
スグルのプクリンが、残ったもう片方のキバで襲い掛かってくるトドゼルガの前に立ちふさがった。
プリム「ずいぶんと堅いかべね…」
スグル「お褒めの言葉をどーも。けど、今はこんな事してるヨユーないんだよ!!」
プクリンの前に発生したリフレクターが、プクリンのサイコキネシスによって操られ、不壊の刃となる。
プリム「…!?な…」
リフレクターの刃は、あっさりトドゼルガのキバを砕いた。
スグル「よっし……!!」
リツコ「よして!スグル!!あれが誰だかわかっているの!?」
スグル「わかってるさ…姉さんを危険な目に合わせた女だろ」
リツコ「…スグル……」
プリム「く…ッ、おのれ…!!」

???「やめんか。我々四天王が、そのような試合をすべきではないことくらい、わかっておろうが」

次のボールを繰り出さんとするプリムを止めたのは、威厳のある老人の声だった。
プリム「ゲンジ……」
ゲンジ「熱くなりすぎるのがお主の悪いところだ。通り名に似つかわしい振る舞いをせぬか」
スグル「かといって、女王らしく振る舞われても困るケド」
リツコ「し、四天王が…2人……!?」
ゲンジ「まったく、このようなクズに構っている時間は1秒たりとも無いというのに…」
スグル「く、クズだと!?ふざけるな!!」
ゲンジはスグルを本当にクズのように扱っている。いや、まるでそこに存在していないとでも言うような態度だ。
プリム「本部に戻るのね…?」
ゲンジ「ああ。最近、カゲツもフヨウもターゲットに逃げられているらしい」
プリム「何!?なら、なおさらこいつらを逃がすわけには…」
ゲンジ「案ずるな。マスターの目的が達成されれば、人間など時空の塵と消える。今殺す必要性はあるまい」
プリム「だが、邪魔者は少ないほうが…」
ゲンジ「わからんのか?このようなクズどもには何もできまい。今は放っておけ。計画の準備をいち早く進めるのだ」
スグル「さっきから黙って聞いてれば…ッ!!」
途端に、スグルの体が動かなくなった。
その場にいるだけで敵を圧倒する、最強種の威圧感…まぎれもなくこの男はドラゴン使いである、と二人は確信した。
スグル「…く……」
ゲンジ「ほう。押し潰されぬだけたいしたものだ。クズだということに、変わりは無いが」
スグル「待て……!!」
ゲンジ「行くぞ、プリム。時間の無駄だ」

そして、巨大な翼が空の彼方へ消えた頃…海面の氷が、はねるように砕け散った。
ダイゴ「誰だ?こんな迷惑な物置いたのは。キミか?スグルくん」
ホエルオーの背中に乗った3人のトレーナーが海上に現れた。
ヒサヤ「って、え?何でお前がここにいるんだ、スグル?しかも、その格好…エリートユニフォームじゃん!」
リツコ「…四天王が……」
ヒサヤ「は?」
スグル「姉さん、落ち着いてて。僕が話そう」
ヒサヤ「姉?え?え?」
スグル「みんなも、落ち着いて聞いてくれ…そこの氷は、多分四天王プリムが張ったものだ」
ミクリ「何…?詳しく聞かせてくれないか」
スグル「はい。…よくわかりませんが、たぶん何らかの目的を持って…」
リツコ「…あなたたちが、邪魔だからと、言っていました…」
ダイゴ「邪魔…?」
リツコ「よくわからないけど…永遠のポケモンがどうとか、言っていましたわ」
ダイゴ「な…まさか、僕らの狙いがバレたっていうのか?」
ヒサヤ「そもそも、僕たちが遺跡を起動させてからものの数十分と経っていないってのに…相手がそれをかぎつけたのか?」
リツコ「わからない…わかりません!私には…何がなんだか、もう…」
スグル「落ち着いてよ、姉さん…」
ダイゴ「その人は、キミの姉なのか?スグルくん」
スグル「ああ。たった一人の肉親さ」
ダイゴ「まず、状況から説明してくれませんか」
リツコ「はい…」
リツコは震える口を精一杯開き、先ほどの出来事を語り始めた…

43 :エンタ2006/05/15(Mon) 19:14:08 ID:R5HpWglc
しまった色間違えた(泣)

44 :エンタ2006/05/15(Mon) 19:14:35 ID:R5HpWglc
第210話 四天王の目的

一行はとりあえずキナギタウンに移り、そこでリツコの話をまとめることにした。
ダイゴ「…まとめると、貴方は僕らが海底に入るのを見た後、そこを塞ごうとしていた女性を見かけて、それを止めたところ…」
ヒサヤ「それが四天王だった、と」
リツコ「ええ」
スグルのキュウコンに暖めてもらって、いささか元気を取り戻したようだ。
ダイゴ「そして得意の速攻戦術も、不意打ちの凍結によって封じられ…敗北を余儀なくされた…と」
リツコ「私の実力が足りないせいですわ…すみませんでした」
スグル「姉さんのせいじゃないよ…あのまま続けてたら僕も敵わなかった」
ミクリ「過ぎたことはいい。今は、どうやってこの状況を理解するか、そして打破するかだろう」
ヒサヤ「ひゅー、チャンピオン、クール…」
ダイゴ「そのあとスグルが救援に駆けつけるも、相手も増援、畏怖の竜王・緋田ゲンジ現る…」
ヒサヤ「聞いたことある名前だな」
ダイゴ「そして、謎の多い言動を残して去った、と…」
ヒサヤ「そこに僕たちが来たってとこか」
リツコ「本当に、謎の多い言葉でしたわ…」
ミクリ「『本部』『ターゲット』『マスター』そして『時空の塵』か…」
ヒサヤ「でもさ、永遠のポケモンとは、関連性なさそうだよなぁ…何で僕たちが邪魔なんだ?」
ミクリ「いかなる存在にとっても、強大な力を持つ敵性因子は邪魔と言えるだろう。そしてそれは、こちらも同じ」
ヒサヤ「確かに、四天王は強大だよな…でも、チャンピオンのほうが強いんじゃないのか?ホウエンじゃ」
ミクリ「それは建前上の話だ。それにチャンピオンは負ければ交代するが、四天王は違う。ずっと四天王だ」
ダイゴ「今ミクリ、『負ければ』にアクセント置いただろ…」
ヒサヤ「でも、その謎のキーワードを並べてみると、どーやら四天王の後ろにも誰かいるみたいだな」
スグル「きっと、もっと強いやつなんだ…でなきゃ、相当な金持ちか」
ダイゴ「!!まさか……」
ミクリ「…きみの父、か?ダイ