ポケモン小説に切磋琢磨している者です

1 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:45:51 ID:Yo2..2F6
初めまして。ポケモン小説を書いている夜月光介と申します。
既に1年以上書き続けている小説があるのですが・・・
このサイトの存在を知り、掲載してもらおうかと思いました。
本当に長くて嫌になってしまうかもしれませんが、どうぞ
最後までお付き合いください。ちなみにまだ書き続けてます。
未完です・・・もし、感想とかあると非常に嬉しいです(苦笑)

2 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:49:12 ID:Yo2..2F6
オーロラの輝きと共に現れる北風を司る神・スイクン・・・
雷(いかずち)と共に現れる雷を司る神・ライコウ・・・
マグマと共に現れる火山を司る神・エンテイ・・・
ジョウトの歴史に刻まれている伝説のポケモン達・・・
しかし、まだ伝説に記されていないもう一匹の神がいた・・・
吹雪と共に現れ、雪の結晶を司る神、その名は

「おい、起きろユキナリ!フタバ博士が呼んでたぞ!」
「えー・・・まだ眠いよ兄さん・・・今何時なの?」
「8時だ。もう起きるには充分な時間だぞ!さあ早く!」
ここはシラカワタウン。ポケモンという不思議な動物達が
人間と共に暮らしているパラレルワールド。
ポケモンとは、野生の動物達のように普段は森の中や
海の中で暮らしているが、特殊な操り球である『モンスター
ボール』によって自由を奪われ、人間の奴隷として
生きなければならない生物である。その奴隷となったモンスター
を人は道具として使う。悪戯に戦わせたり、ペットにしたり、
生態を研究したり・・・

捕まえるまでポケモンは人間に対して敵意を感じたりするが、
一旦捕獲されると自我を失ってしまう。
その為、人間は彼等を『友達』だと思い込んでしまっているのだ。
野生のポケモンと親しく接す事が出来る人間は少ない。

シラカワタウンは、トーホクという大きな「エリア」である。
トーホクの南にはポケモンのメッカ「カントー」があり、
そのカントーの左側には伝説のポケモンのエリアである
「ジョウト」がある。ジョウト・カントー・トーホクには
それぞれエリアごとに「ポケモンジム」が8箇所ある。
ポケモンには様々な種類があり、種類を1つにしぼって
頂点を極めた者がそのジムの「ジムリーダー」となる。
性別、年齢、職業は問わない。
とにかく自分が捕獲したモンスターを上手く飼いならし、
他のトレーナーには負けない実力のある者がリーダーとなるのだ。
そしてエリアにはリーグが1箇所設置されている。
ここは1属性のポケモンを極めた者達が集う闘技場。
四天王とリーグ覇者が新参トレーナー達の挑戦を待っている。
そんなポケモンが生活の1部になっているこの世界で、
今新たな伝説が生まれようとしていた・・・

「いきなり博士から電話がかかってきたから、
大急ぎで朝御飯作ったんだけど・・・味はどうかしら?」
「大丈夫。おいしいよ母さん。
・・・だけど急になんだろう、こんな朝早くから僕を呼ぶなんて・・・」
「俺も呼ばれたんだよ。隣のユウスケもだ。また新しいポケモンの発見か?」
シラカワタウンは雪が1年中降っている街。
都会から離れ、人々はポケモンと共に気ままに暮らしている。
ここに住んでいるのは、ユキナリ。そしてホクオウと、
彼等のお母さん。隣の家にはユキナリの親友、ユウスケが暮らしていた。
ユキナリは今12歳。兄のホクオウとも丁度12年歳が離れている。
ポケモントレーナーに憧れながらも、まだ1匹もポケモンを持っていない。
正義感が強く、とても優しい心を持った少年である。
兄のホクオウは24歳。世界中の山を制覇した一流の登山家である。
家に帰るのはあまり好きではなく、この日も午後には出発する予定だった。
長い登山の旅を続けるもう1つの理由。それは母親に会いたくなかったからである。

3 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:49:56 ID:Yo2..2F6
ユキナリにとっては本当の母親だが、ホクオウにとっては赤の他人なのだから。
ホクオウの母親は、ホクオウが10歳の時に死んでしまっていたのである。
その後父親は若い妻と再婚。それから5年後に父親も
後を追って他界した。父親の事を考えると気が滅入った。
新しい母親も好きにはなれなかった。
2人の母親は今年で30歳。16歳の若さで結婚した頃とあまり変わっていない。
自分の子供ではないホクオウにも、優しく接している良き母親だ。
隣に住んでいるユウスケはユキナリと同い年。
ポケモンの科学者を目指して独学で知識を持った。現時点で学会に報告されている
 
ポケモンなら、生態系や覚える技をすべて把握しているという天才である。
だが生まれつき体が弱く、相棒の草ポケモンと一緒によく風邪をひいていた。
気も弱く、人見知りしがちで、今の所親友と呼べるのはユキナリだけだった。
「おはようございます。呼ばれて来ました・・・何の御用ですか?」
3人はこの街では一番大きな建物であるフタバ博士の研究所にいた。
ユウスケはユキナリと同じく、なかなか布団から起きれない
タイプの人間である為、まだ欠伸ばかりしていた。
「こんな朝早くにごめんなさいね。
私も連絡を受けたのよ。貴方達にその事を伝えなきゃと思ってね。」
フタバ博士は若くしてトーホク内では右に出る者が
いないと言われているポケモン研究者である。彼女の名が全国に広まったのは
彼女自身が発見したある『発表』がもとであった。
この「トーホク」は全ての街、野原、道路に雪が降り続けている不思議なエリアだ。

太古の昔からずっと降り続けているこの雪が
ポケモンの進化に多大な影響を及ぼしたのである。それは『変種』の誕生だった。
このエリアではなんと全てのポケモンがポケモンの
1つのタイプである「こおり」を持っているのだ。
カントーやジョウトではノーマル・ひこうが当たり前なポッポも常識が覆され、
「ひこう・こおり」になってしまっている。毛も白く、
口から吐く息は冷たい。そんな変種を詳しく研究したフタバ博士は、
さらなる『発表』で世のポケモン学者を驚嘆させる事となる。
『変種』となったポケモンの一部が、
普通の進化とは別の進化を遂げていたのだ。
現にユウスケが持っている「ボタッコ」は、
白い変種ワタッコからさらに進化したポケモンなのだ。
そして変種とは関係無いトーホクのみで発見された新種の研究
・・・謎はたくさんあった。そんなこんなでトーホクに生息している
ポケモンの数は変種を含めて400種以上と言われている。
フタバ博士は先程も書いたがトーホクポケモン研究者。
日夜変種の生態系や変種進化の原因について調べている。
だが彼女はもともとトーホク出身者では無い。数年前から
研究を行う為にここに永住する事を決意した学者の鑑である。
理知的で物事を解決するのも得意。
タウンの住民の悩みもヒマな時なら
相談に乗ってくれる。(最近は殆どヒマな時が無いが)
ジョウトのベイビィポケモン発見者であるウツギ博士とは
親しい。新しく開発された液晶テレビ電話付きポケギアで
よく意見の交換を行っている。カントーの四天王、カンナの双子の妹で、
顔が知られている為、都会に出ると勘違いされるのが悩みの種らしい。
「連絡って・・・何の事?」
「3人全員に報告よ。ウツギさんからの映像がここに残っているわ。」
ユウスケの質問に対して、フタバ博士は答えなかったが、
その代わり机の上に置いてあったパソコンを操作した。
『重要報告・ウツギ』と書かれている項目をクリックする。
画面が暗くなり、すぐに3人ともよく知っている人物が現れた。

4 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:51:40 ID:Yo2..2F6
「この人、前に博士と研究室で話してた・・・」
「そう。若手ポケモン研究者の中では私と同じ位の位置にいる、ウツギ博士ご本人
よ。」
『フタバ博士、急に連絡を入れてしまって申し訳ありません。
ウツギです。この度、連盟長の教授が新たなプロジェクトを立ち上げたので、
是非それを伝えておきたかったんです。
今フタバ博士がいるトーホクで、今一体何匹の変種と、
トーホクの新種、それに変種進化のポケモンが
いるのかという問題に直面しました。カントーでは151匹、
ジョウトでは251匹のポケモンが生息していますが、
トーホクはそれを遥かに上回ると思われます。
それを確認したのはレッド君と、うちのゴールド君。
とにかくポケモンが大好きな子供達が確認に協力してくれました。
ですが、今回ばかりはあまりにも数が多すぎて、1人では到底図鑑の完成は
望めません。そこで教授と相談した結果、
2人のシラカワタウン出身者に手分けして図鑑を
完成させてもらいたいと思ったんです。多分、
今君達はこの映像を見ているんじゃないかな・・・
そう、ユキナリ君と、ホクオウ君が選ばれたんです!』
ユキナリはあっけにとられて、しばらくは声も出ない状態が続いた。
ユウスケは(?じゃあ何故僕も呼ばれたんだ?)という様な表情をしている。
『明日には、インプット用ポケモン図鑑内蔵の新型ポケギアを2個、
そちらにお届け出来ると思います。そうそう、それからユウスケ君。
君は、ユキナリ君ともう一つの仕事をやってもらう事にしたよ。
君はポケモンを持っていたよね?確か・・・ボタッコだったかな?
ユキナリ君はまだポケモンを持っていないようだから、
フタバ君、君が持ってる奴を一匹プレゼントした方がいいかな・・・』
ユキナリはまさかと思った。出来すぎた夢かとも思った。
だが、それは現実に他ならなかった。
『そう。オーキド博士の提案で、ユキナリ君、
ホクオウ君、ユウスケ君の3人には、トーホクの
ウオマサ高原にあるポケモンリーグの
チャンピオンに挑戦してもらう事にしたんだ!
確かホクオウ君も、登山のお供にポケモンを携えていたよね。
今度はそれを頂点に立つ為に使ってみないか?』
夢にも思わなかった誘い。ユキナリは胸がいっぱいになった。
リーグを制覇した人達と、同じ旅が出来るなんて!
『話が長くなってしまったね。というワケで、3人共頑張ってくれ!
図鑑もリーグも大変だけど、君達ならどちらも成し遂げられるさ。
すぐポケギアを持って出発してくれ!
トーホクのポケモン研究発展に関わる大切な仕事だ!!』
フタバ博士は画面を閉じた。
「ポケギアと、ユキナリ君のポケモンはもう用意してあるわ。
ウツギさん、時々こっちに寄るって行ってたから、
会った時はよろしく言っておいてね。」
その言葉の通り、机の上には水色に光っている
最新型のポケギア2個と、3個のモンスターボールが置かれていた。
「1つ、選んで頂戴。皆トーホクで発見された新種ばかりよ。」
ほのお・こおりタイプ こぎつねポケモン  コエン
みず・こおりタイプ  こくじらポケモン  ホエルコ
くさ・こおりタイプ  こがらしポケモン  カレッキー
「あ、僕これ持ってる!」ユウスケはカレッキーを指差した。
そう。それはユキナリも知っている。兄のホクオウの相棒であるマッコは、
ホエルコの進化形態だ。ならば、彼の選ぶポケモンは1匹に絞られる。
コエンだ。ユキナリはためらう事無くコエンを受け取った。
「出発は・・・明日ね。誰かさんは他の準備でもう出発出来るみたいだけど。」
「そうだな。俺は今日行くよ。丁度家を出る他の口実を
探してた所だ。その任務に参加させてもらうよ。」
ホクオウはポケギアを腕にはめた。
彼の手持ちのポケモンもうずうずしている様だ。
「お前等は2人で協力しろよ。多分すぐ
また会えるさ。方向は同じなんだから・・・」
ホクオウは研究室を後にした。荷物はユキナリの
家に置かれたままだったので、それを取りにいったのだろう。
「もう少し詳しく説明させてもらうと、
この新型はトーホクのラジオ番組を聞く事が出来るの。」
フタバ博士は残された1個のポケギアを腕にはめた。
「このボタンでチューナーを操作出来るわ。
それと、これはテレビ電話も搭載済み。私のポケギアの機能も付いてるの。」
博士は自分の研究室の電話番号を登録した。
「この青いボタンでラジオとテレビ電話の切り替えをするの。
誰かから電話がかかってきたら、自動的に電話に切り替わるの。」
ユキナリは驚嘆した。まさに最新鋭のポケギアである。
「これがトーホク地図機能。セカイっていうDJが担当してる
ラジオ番組は聞いておいて。随分役に立つと思うわ。」
フタバ博士はポケギアをユキナリに手渡した。
ユウスケもポケギアをまじまじと見つめている。
「それと・・・勿論インプット機能付き最新ポケモン図鑑。
ざっと500匹はデータを入れられるようにしてあるみたい。
これの凄い所は・・・そうね。見た方が早いわ。ユキナリ君。
早速コエンをボールから出してみて頂戴。」
ユキナリはちょっと恥ずかしかった。まだポケモンを手にした事が無かったからだ。

5 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:52:04 ID:Yo2..2F6
モンスターボールには2つのボタンがある。
1つは中央に付いているボタン。これで操られたポケモンを外に開放する。
もう一つのボタンはそのすぐ近くにあるボタン。
穴状になっていて、エンピツなどの尖った物で刺さないと押せない。それは解除ボタ
ン。
モンスターを本当の意味で開放し、野生の本能を取り戻させる
ボタンである。滅多に押される事は無い。
とにかく、ユキナリは中央のボタンを押した。閃光と共に、コエンが出てきた。
その途端、ポケギアが反応した。図鑑画面に切り替わり、機械的な声で説明を始め
る。
『コエン。こぎつねポケモン。死の予兆と言われる
人魂らしき物を常に近くに浮かばせている。
人を化かすのが得意で、よく飼い主に化けて
トレーナーを驚かす。キタキツネと生態が似ており、
かまくらを自分で作って寒い冬を越す。ロコンとの関連性も否定できない。
進化するに従って尻尾が増えるのは一緒である。』
確かに、図鑑が言う通りコエンは青白い人魂を2つ浮かばせていた。
尻尾が2本あり、2足歩行のポケモンの様だ。
「ユキナリ君。ボタンで選んで、そこの『コミュニケーション』
と書いてある項目を押してみて。本当に面白いわよ!」
フタバ博士は笑いを隠しきれずにいる。とても嬉しそうだ。
ユキナリは少し躊躇った。
「ユキナリ。押してみてよ!」ユウスケも興味津々だ。
とにかくユキナリは押してみる事にした。
ピッ
『フタバ博士、このコが僕の新しい飼い主なんですか?』
「ええ。ユキナリ君って言うの。さっきから聞いていたと思うけど。」
『ああ、聞いてました。ちょっと久しぶりに外に出させて
もらったものだから、名前しか聞いてませんでしたけど。』
ポケギアから出てきた声は、キーキー声とでも言うのだろうか。
とにかく狐の様な甲高い声だった。
「・・・な・・・!?」

6 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:52:37 ID:Yo2..2F6
ユキナリは立ちすくんだ。嘘だろ!?そんな、まさか!
「驚いてくれたかしら。フフフ・・・これが科学の力よ。
これでポケモンの言葉が私達の言葉に直されたの。ポケモンの本音が
知りたい人達が沢山いたから、研究チームも必死に努力した結果、
このシステムもポケギアに搭載したわ。」
呆然とする他無かった。ユウスケもびっくりしている。
当たり前だろう。ポケモン自身が喋っているワケでは無いが、
気持ちがはっきり伝わったのだ。
確かに『コミュニケーション』だ。はっきりしすぎた意志の疎通が出来るだろう。
『よろしくお願いしますね、コエンです。ユキナリ君、これから、ずっと一緒です
よ!』
とにかくユキナリは言葉を返した。
「うん、これからよろしくね!」
「・・・これって、どんなポケモンとも会話が出来るの?」
「ええ。標準を切り替えれば、1匹1匹の声は聞きづらくなるけど、
何匹とでも会話が出来るわよ。勿論、ポケモン同士もね。」
ユウスケは緑色のモンスターボールを取り出した。開放ボタンを押す。
出てきたのは、彼の相棒であるボタッコだった。すぐさま図鑑が解説する。
『ボタッコ。ゆきわたポケモン。寒い所で何百年も子孫を生み出し続けた
結果生まれた変種進化ポケモン。ハネッコと言う
くさタイプのポケモンの最終進化と思われていた、
ワタッコの変種からさらにアワッコ、ボタッコと進化する。性格は極めて穏やかだ
が、
雪の胞子を飛ばし、相手を霜焼けにしてしまう技を持っている為、油断しない方が良
い。』
「ボタッコ・・・コミュニケーションっと・・・」
ユキナリはコエンとボタッコ同士の会話も聞ける様に設定した。
方法も簡単でユキナリにとっては非常にありがたかった。
『ユウスケ、このヒトだーれ?』
「僕の友達の新しい相棒さ。ユキナリ、初めてポケモンを仲間にしたんだ。
僕のボタッコと戦ってみないか?」
「えーっ!?む、無理だよ。仲間になったばかりでろくに
ポケモンバトルの事も知らないのに・・・
それにどう考えたってレベルが違いすぎるじゃないか!!」
『それは関係無いと思いますよ。ユキナリさん。』
「そうね。コエンの言う通りよ。最も、私がそれを貴方に使ってたから知ってるんで
しょうけど。」
『ハハハ、バレました?ユウスケさん。パワーベルト持ってるんでしょ。』
「うん。そうなんだ。うちのお母さんが買ってきてくれた
ゴウリキーお墨付きのパワーベルト。これでポケモンのレベルを自由に調節出来るん
だよ。
えーっと、コエンは多分レベルは5だよね。数字を決定して
・・・よし、これでボタッコも力はレベル5に抑えたよ!」
「で、でも・・・」
「大丈夫よ。最初は皆戸惑うわ。コエン。とにかく、命令の仕方をユキナリ君に教え
てあげて。」
『何か間違ってませんか?・・・まあいいか。ユキナリさん、まずは僕の技を覚えて
ください。』
「わざ?」
『僕達は技を習得します。ある一定のレベルに達するか、
技マシンと言う装置で覚えさせられるか。とにかく、僕の場合は
〔鬼火〕と〔化かす〕が生まれた時から備わっていた技です。』
「それで?」
『野生のモンスターや、ユウスケさんの様なトレーナーと戦う時、
何時その技を使うべきかを命令しなければならないんです。』
「なるほど・・・で、それはどんな技なの?」
『うーん。それはさすがに僕が説明するものでは無いですね。
僕、ポケモンですから。図鑑を見てください。』
ユキナリはポケギアのコエンのデータを開いた。
『コエンが覚える技』が載っている。ユキナリは自分で読んでみた。
『鬼火・人魂を敵にぶつけて攻撃する不気味な攻撃方法。
威力自体は火の粉程度。しかし恐怖により時々相手は凍ってしまう。
技の属性自体は炎なのだが、氷漬けの判定がある特殊な技。』
ユキナリはさらに続きの画面を開いてみた。
『化かす・相手のトレーナーの幻を見せて、
相手を必ず混乱させる技。混乱状態になるとかなりの確率で
自分にダメージを与えてしまう為、なかなか効果的。
技の属性はゴースト・・・だが特殊技である為意味は無い。』
「なるほど・・・」
ユキナリは一応理解したつもりだった。とにかくどう戦うかは承知した。
「リーグの覇者になる為には、まずトーホクに8つあるジムという
修練場のリーダー。つまりジムリーダーを倒さなければならないの。
ジムリーダーのポケモンや使ってくる技も見る事が出来るから、それで作戦をたてる
事ね。」
「じゃあ、戦い方が解った所で、僕のポケモンと訓練してみましょう。」
ユウスケに促され、ユキナリはコエンに指示を与える準備をする。
『貴方が命令する最初のバトルですからね!属性的に有利でも、油断してはいけませ
んよ!』
「属性的に有利・・・?」

7 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:52:57 ID:Yo2..2F6
「あら、属性の説明をしていなかったわね。属性というのは、
ポケモンに備わっている機能の様な物。それによってこの技を
覚えられるとか覚えられないとか、どの属性のポケモンに
大ダメージを与えられるかなどが大体解るの。」
『このトーホクに生息しているポケモンは全て氷の属性を持っています。
僕もほのお・こおりタイプのポケモンですし、
今戦うボタッコさんはくさ・こおりタイプなんです。』
「基本的な3種類の属性を見てみましょうか。ユキナリ君。
ポケギアのポケモン図鑑で〔属性影響〕という所を選んで頂戴。」
ユキナリが項目を選ぶと、矢印が沢山見える画面が出てきた。
「ほのおタイプのコエンは、ボタッコの様なくさタイプに大ダメージを与えられる
わ。
ホクオウ君が持っているマッコは、コエンに強いけど、ボタッコと戦うのは避けた方
がいい。
この基本属性の3つは、互いに牽制しあっているの。」
「基本属性の他にも、色んな属性があるみたいだね。」
『それは後でも説明出来ます。久しぶりに戦えるので、
僕もウズウズしてるんです。早く戦いましょう。』
ユキナリの新たな疑問は保留の形となった。ユウスケのボタッコ
(パワーベルトの作用でレベル5になっている)とコエン
(元フタバ博士のポケモン。たねポケモンなのでレベルは当然5)を戦わせるのが先
だ。
「ユキナリ君。ポケギアの機能はまだまだあるわ。〔バトル〕と書いてある項目を選
んでみて。」
出てきたのは数々のデータ画面。ユキナリは驚嘆した。
「その6つの丸は今貴方が何匹ポケモンを持っているかを表しているの。
今1匹しかいないから、当然1つしかランプが点いていないはずよ。」
なるほど。オレンジ色のランプは1つしか点いていない。他の5つのランプは灰色
だった。
「コエンのデータという項目を押すと、使える技の回数とHPが解るの。
HPが0になったポケモンは瀕死状態で戦えないわ。
その時、丸は瀕死のポケモンの数だけ青く光って、、
瀕死に近いポケモンがいる時、ランプは赤く光るの。」
『瀕死状態や、技のポイントが0になった時はポケモンセンターに
僕を連れて行ってください。こまめに回復させてもらえるとありがたいなあ。
無料施設なので、何回利用しても問題はありませんからね。』
「バトルの解説は済んだわね。それじゃあ、私が審判役になるから、思う存分戦って
みなさい!」
研究室は不意の事故に備えて恐ろしく丈夫に出来ている。
ポケモン、そして人間同士がスタートを待ち互いに睨みあう。
「開始!!」
フタバ博士のその言葉と共に、2匹は一斉に駆け出した。
「コエン、〔化かす〕を使うんだ!」
『解りました!』
コエンが呪文を唱えると、ユウスケの幻が現れた。
「うわ、僕そっくりの幻影だ!」
ユウスケもこの技を見るのは初めてらしい。

8 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:53:48 ID:Yo2..2F6
『ボタッコ、デンキショックダ!』
『え〜?そんな技覚えてないよー。』
『ボタッコ、ニゲルンダ!』
『バトルの最中はそのコマンド使えないよぉ。ああ、なんか頭がクラクラしてきた・
・・』
幻のユウスケの命令は無理な注文ばかりだった。
しかも本物の声が幻に邪魔されて頭に入らない。
「しまった。〔こんらん〕状態になっちゃった!」
焦っても仕方が無い。ユウスケは祈りながら命令を出した。もう幻は消えている。
「ボタッコ、冷たい風だ!」
「冷たい風?」
ユキナリは相手の技の項目からそれを選択した。
『冷たい風・名前の通り冷たい風を相手に吹き付ける技。
通常のダメージの他に、相手の命中率を下げる効果を持っている。』
「うーん。ちょっと嫌な予感が・・・」
混乱状態にはなっていたものの、ボタッコは自分に
ダメージを与える事なくその技を出す事が出来た。
『うわっ!』
コエンに刃の様な冷たい風が襲いかかってきた。その突風はコエン
の全身を麻痺させ、コエンの手はガチガチにかじかんでしまった。
『さ、寒い・・・』
コエンの動きも鈍くなってしまっている。
ユキナリにとって、これは非常に厄介な出来事であった。
「あ、そうそう。この戦いが終わればコエンの命中率も元に戻るから安心してね。」

ユキナリはホッとしたが、今は解説を聞いている場合じゃ無い。
「コエン、鬼火だ!」
コエンは体の近くを飛び回っている青い人魂をボタッコに飛ばした。だが、当たらな
かった。
「今度は僕の番だ。ボタッコ、冷たい風をもう一度だ!」
混乱状態は続いていたが、運が良かった為ボタッコは通常通り技を繰り出した。
こおりタイプの技はコエンにはあまり効かないが、その場のみの命中率下げは大きな
力となる。
寒さに震えるコエン。ユキナリは鬼火を繰り出させたが、またもや攻撃を避けられて
しまった。
『ユウスケさーん。頭がスッキリしてきましたー。』
「そ、そんな・・・」
そう、数ターンで混乱は解けてしまうのである。
しかも、今回の場合は混乱しても有利にはならなかった。
「よし、もっとダメージを与えられる技に変更だ!ボタッコ、体当たりしてやれ!」

ドカッ!
コエンの腹に突っ込んだボタッコは体全身をコエンにぶつけた。
『グッ!』
これはキツイ。コエンのHPはかなり減ってしまった。
HP表示を見ると、緑色だったバーは黄色に変わってしまっている。
「もう一度体当たりをくらったら・・・」
さっきのダメージからして敗北は確実だ。ターン制なので次はコエンの
攻撃となるが、ほぼ絶望的だ。命中率を半分下げられ、
もし当たったとしても一撃で倒せるダメージを与えられるかどうか。属性的には有利
なのだが・・・
「なかなかいい戦いね。ユキナリ君にも逆転のチャンスはあるわ。同じ
5レベルのボタッコ。属性的には通常のダメージよりも効果は大きい。
これでもし急所に当たる攻撃を出せれば・・・本当の逆転勝利よ!」
命中率を下げられ、次のターンで確実に瀕死・・・勝つ為には
なんとしても攻撃を当て、なおかつ急所に当てなければならない。
「・・・コエン、鬼火だ!」
『OK。何があっても絶対当てます!』
コエンは手の痛み、腹の痛みを堪え、人魂を放った。
2つの人魂がボタッコに向かって飛んでくる。
「ボタッコ、命中率は低い!当たったとしてもよほどの事が無い限り負ける事は無い
さ!」

9 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:54:24 ID:Yo2..2F6
『次のターンでボクの勝ち〜♪』
だが、ボタッコに人魂がまとわりついた。攻撃が当たったのだ。
『うわ〜!』
青い炎がボタッコを焦がす。不気味にグルグル回り続ける。熱いのか寒いのか
よく解らない攻撃だ。体は炎に巻かれ、心は恐怖に凍りつく。
顔の無い人魂がボタッコに噛み付いてくるようだった。
『こ、怖いよぉ〜。』
ユキナリは祈りながら相手に与えたダメージを確認した。
『通常ダメージ。効果は抜群・・・』
「ああ、ダメか・・・」
ユキナリは落胆した。効果は抜群だとしても、半分以上
HPを減らしただけだ。次のターンでこっちが瀕死になるのだから意味が無い。
人魂がコエンの元に帰ってきた。コエンは痛みをこらえ、相手を見た。
ユキナリはポケギアの情報にうちのめされ、うつむいていた。いきなり負けるなんて
・・・
「あめでとうユキナリ君。初戦としては危なっかしい戦い
だったけど、終わり良ければ全て良し、かな。」
「え?」
ユキナリは自分の耳を疑った。博士は、僕の勝ちだと言っている。
顔を上げると、そこには頭をかいているユウスケの姿があった。
「土壇場で大逆転だよユキナリ君。こんな白熱した戦いはなかなか
やれないよ。諦めちゃいけないって事だね。」
『ユキナリさん!ほら、ボタッコさん戦闘不能になっちゃったんです。』
コエンも、まだ自分が勝ったという気分では無い様だ。ユキナリはボタッコがいた所
に目を向けた。
そこには、恐怖の表情のまま氷の中に閉じ込められているボタッコの姿があった。

「氷漬けの状態=戦闘不能と考えてもいいわ。」
ユキナリとユウスケは互いのポケモンをボールに戻した後、
博士の研究室にある回復用ポッドにそのままの状態で入れた。
ポケモンは回復用ポッドにより数秒でその力を取り戻す。
人間より遥かに優れた治癒力を持っているのだ。いや、科学の力なのか?それはとも
かく、
2人はコエンとボタッコを休ませ、フタバ博士の説明を聞いていた。
「トーホクでは最も強い力を持っている氷漬けの状態。このエリアでは
それに適応した技を持っているポケモンしか氷から抜け出せない。
だから、ユウスケ君は戦闘不能。ジョウトやカントーでは試合続行らしいけど、
ここは極寒の地。自然に氷が溶ける事は無いから・・・」
「氷から抜け出す技って、何ですか?」
「このトーホクでは、『聖なる炎』や『熱湯シャワー』。あと『マグニチュード』位
かしら・・・
あ、そうそう。ゴーストタイプのポケモンには氷漬けそのものが成立しないから、
 
覚えておいて。簡単に言うと、効かないって事よ。」
「ユキナリ君!君のポケモン、その氷から抜け出せる技を覚えられるのかなあ?」
「うん。一寸調べてみる・・・」
ユキナリはポケギアを操作して、〔コエンが覚える技〕の続きを読んでみた。
『聖なる炎・コエンが覚えられる技としては最高クラスの技。
コエンの場合は光の炎を体から放出し、敵をその炎に巻き込んで
攻撃する。氷漬けの状態でもこの技を使え、氷を溶かす事が出来る為、
この技を覚えられるポケモンは恵まれている。』
「へえ、やっぱり覚えられるんだ。羨ましいな、ユキナリ君・・・」
ユウスケはすこし凹んでいた。現時点では彼の持ちポケモンは3匹。
ボタッコ・カレッキー・マッドだけだ。最高進化という形で成長している
(5進化)ボタッコに比べて、トーホクのポケモンであるカレッキーと
マッドは未だ種ポケモン。ユキナリよりも先にトレーナーに
なったのだから少し目上態度をとっても許されるはずなのだが、
彼は気が弱かったし、他人の成功の方が大きく見えてしまうタイプの人間だった為、
何時もこうなってしまうのだった。

10 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:54:56 ID:Yo2..2F6
「ポケモンを集めて、なおかつリーグの覇者を狙う。これは無理な相談では無いわ。
いえ、それどころか正論よ。リーグでは30体の優秀なポケモンが集っているわ。
色んなポケモンを捕まえ、好きなポケモンを見つけたらそのポケモンを仲間として扱
い、
100レベルまで育ててあげましょう。それがポケモンを捕まえる私達の義務なの・
・・」
「とにかく、いよいよ明日出発だね!でも、ポケモンを捕まえなきゃ話にならないね
・・・
ジム戦は何匹かを一定のレベルに上げないと挑戦権が与えられないらしいし・・・」

「この街にアルファショップがあるわ。手頃な価格で
スーパーボールが売ってるから、何個か買っておく事ね。」
ユキナリはすぐ自分の家に戻ったが、ホクオウはもう出発した後だった。
母さんにその旨を話すと、彼女は自分の家の電話番号を登録する様に言った。
「何か困った事があったら、電話してね。お兄さんにもそう伝えて。
何か言おうとしたけど、あの子すぐ出て行ったから・・・」
ユキナリはこれから先はぐれたら困ると思い、ユウスケの電話番号も登録しておい
た。
フタバ博士の方も電話番号を登録してくれたが、自分の研究室の電話番号の他に、
ウツギ博士の研究室の電話番号も入れておいてくれた様だった。
ユウスケがすぐ迎えに来てくれた。買い物をしなければならないのだ。
新雪が降り積もっている地面を踏みしめ、2人はアルファショップに
向かった。空を仰ぐと、一面灰色の世界。雪が、降っている。
アルファショップはシラカワタウンに建てられている商店で、
他の街にはその親店や姉妹店が数多く建てられているのだ。
適当にボールのみを買った。1個500円はお得価格らしい。
店の店主に聞いた所、他の街ではもっと面白いボールが売られているらしかった。
ユキナリは今まであてもなく溜め続けてきた貯金を今回の旅に使う事にした。2人で
5個ずつ買って、
家に戻った。にこやかに笑っていたユウスケの顔が印象に残った。
その夜・・・ユキナリはなかなか寝付けなかった。
初めてポケモンを仲間にして、会話をし、心を通じ合わせてユウスケのボタッコに逆
転勝利を決めた。
トーホクのポケモン達が、僕等を待っている・・・!
その頃、最初のジム戦を突破し、草原地帯でベースキャンプをはったホクオウは、
ちらちらと降り続ける雪をじっと見ていた。トーホクは、雪が止まない。
街から街への野宿には慣れっこになっていたが、それでも彼は注意していた。
「何せ、外で凍死するトレーナーが多いエリアなんて、トーホク位のものだから
な。」
『そうですか・・・無事に承諾してくれましたか。』
「彼等に回復したモンスターを渡したわ。明日には、大荷物を届けてもらわないと
ね。」
『ハハ、解ってますよ。ホクオウ君も無言のまま出発しましたけれど、
前、僕に打ち明けてくれた事があるんです。』
「え?」
『このまま登山家として生きていくだけで、
果たして自分は幸せなのかって・・・何時も考えていたようです。』
フタバ博士はコーヒーカップを机の上に置くと、
腕にはめたポケギアはそのままにして窓辺に向かった。
「雪・・・貴方のエリアで雪が確認されたのは、何回かしら?」
『数える程ですよ。ここ数年、雪が降った日なんて合計しても2日あたりしか・・
・』
「ウツギ君。それがトーホクの面白い所なの。雪が止んだ事などここは一回も無い。

外の気温は常に−○度。吹雪いた日には−20〜−30度が当たり前。
常に温暖な気候を保っているジョウトには存在出来ない、
こおりタイプのポケモンが今までに何十匹も確認されているわ。」
『私も、その素晴らしさには目を見張ります。
前にブリザードの生態系を研究させてもらった時は・・・』
ポケモンの話に入ってしまうと、2人の博識は止まらない。
新たな伝説の幕開けである。

ユキナリは朝早く目が覚めた。外は当然雪が降っていた。彼は
着替えを済ませると、階段を降り、母に気付かれない様に寝室を
通った。色々お小言を言われたくなかったのだ。心配されたく
なかった。もう12歳なのだ。旅に出たって、昔ならおかしくない年齢だろう。
そして今も。ユキナリは兄がもう昨日から出発している事は知っていた。
出来るだけ早く追いつきたかった。ユウスケもとっくに起きているだろう。
フタバ博士も。旅の用意は学会の連盟者である彼女がやってくれる事になっている。

11 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:55:16 ID:Yo2..2F6
外は朝靄の中、ちらちらと雪が舞っている状態だ。ユキナリは何時もの自分の
ジャンバーではなく、水色と紺の色をした兄の使っていた昔の
お古な防寒服を着ていた。何せトーホクリーグへ行くとなると、
毎日吹雪に見舞われている街もある程なので。ユウスケの家の
玄関口に彼はもう立っていた。
「じゃあ、行こうか。」
この粉雪とも、しばらくお別れするかもしれない。トーホクの
ウオマサ高原はリーグの駐屯地だが、その気候はエリアの最北端で
ある為、最悪。視界は殆ど遮られているという。
「とりあえず、出発したら、新しいモンスターを捕まえた
方がいいよ。ポケモンは1戦1交代制だからね。」
「1戦1交代?」
「ジムでは最低でも3匹はポケモンを持っていて、なおかつ全員のレベルを
一定に上げていないと勝負してくれないんだ。1回の戦いの後、
ポケモンを交代するかしないか選べるんだけど、選べるポケモンがいないと意味無い
でしょ?
この先のコヤマジムは3対3のポケモンバトルなんだ。
どちらかのポケモンが3匹敗れた時点で勝敗がつく。」
「そうか・・・じゃあ早い所ポケモンを捕まえて、育てないとね。」
「待ってたわよユキナリ君。これが、学会から支給された2人分の
荷物なんだけど・・・結構重いのよね。大丈夫かしら?」
研究所の玄関にフタバ博士が立っていた。他の助手達は全員
まだ宿舎の中で寝ているはずだ。
「本当にありがとうございます博士。では、行ってきます!」
ユキナリとユウスケはそれぞれリュックを背負った。・・・重い。肩に相当負担をか
けそうだ。
「何か解らない事があったら、ポケギアのラジオ機能で聞ける
『ジョバンニ先生&ヨーコのポケモン教室』を聞くといいわ。
あと、うちの派遣中の研究員とか、それを指導してるウツギ君とか見つけたら、
声をかけてあげて。喜ぶんじゃないかしら・・・」
2人共親に内緒で出発したのだが、少し罪悪感を感じてしまうのも確かだ。
しかしお小言を聞かされるのは周知の事実。ユキナリが
腕に付けているポケギアで電話すればいい。そう思っていた。

12 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:55:53 ID:Yo2..2F6
街から離れると、そこは雪が積もった林の中。降り積もる雪が
枯れ木に付着して、まるで緑の葉の様になっている。ユキナリの
着ている古い水色の防寒服も、その下の青いジャケットと青紫色のセーターも
雪まみれになってしまっている。耳当てをしているユウスケの
薄緑の防寒着も雪がついている。時々トーホクでは 当たり前の北風が、2人の肩を
縮ませる。
「さ、寒いね。」
「まあ、雪が降ってれば当然なんだけど・・・タウンマップによると、
ここは47番道路・・・『始まりの森』だと思う。」
ユキナリはポケギアを見ていた。勿論このポケギア、
絶対零度まで壊れない優れ物である。当然防水加工もバッチリだ。
「始まりの森?」
「うん。ちょっとポケギア・ラジオ機能に入っている
『トーホクぶらり旅』の過去記録を聞いてみようか。」
このポケギア、実は5年前からラジオとしての活動を始めている。
その間の過去記録を音声ライブラリーとして全て記憶しているのだ。
ユキナリは『セカイ』の項目をクリックし、『始まりの森』の音声ライブラリーを開
いた。
『始まりの森って知ってるかな。そうそう、シラカワタウンを
出た所からすぐ入る大きな枯れ木の林なんだけど。47番道路って事は、
実はここ、ジョウトの道路の延長なんだよね。つまりトーホク最南端の道路ってワ
ケ。
凄いよね、ここ。シラカワタウンからリーグを目指す奴にとっちゃ、
ここはまさしく『始まりの森』。でも、この林の名前、そういう意味で付けられたん
じゃ
無いんだよなあ。実はこの林、昔から〔始祖〕という神がこの林に住んでいて、
そいつがエリアの創造主だったんだと。だから、トーホク誕生の・・・
トーホクの歴史の始まった場所。という事 なのよ。俺もよく知らないんだけど
ね。』
「始祖・・・エリアの歴史誕生の地・・・」
「それにしては、この林、あんまりポケモンの姿が見えないなあ。」
「物音を聞いて警戒してるのかもしれないね。一寸歩いてみようか。
音を立てないで歩けば、捕まえられるかも・・・」
2人はポケギアの説明を聞くと、コヤマタウンに向かって歩き始めた。
しかし、ゆっくりとした歩調だった。雪が降っている為、林の土にも
すっかり雪が降り積もってしまっている。当然、
ザッ、ザッ、ザッ・・・ザク、ザク、ザク・・・
これではポケモンがいやがおうにも警戒してしまうではないか。
ユキナリは歩きながら呆れていた。ユウスケも同じ思いをしていたに違い
あるまい。顔が哀しく引き攣っていた。でも彼の場合は体験済みだ。
「もう何時でも逃げれる状態にしてるんだよね。大抵のポケモンは
・・・でも僕の場合は3匹とも苦労しなかったから。
1匹目・枯れ木のフリをしていたカレッキーを急襲、ライターで弱らせてゲット。
2匹目・フワフワ降りてきた足の遅いワタッコ変種をカレッキーと戦わせてゲット。

3匹目・地面に埋まっていたマッドを自分の耳に耳栓した
後地面から引っこ抜いて、驚いた所をゲット。
全員、逃げない草タイプのポケモンだったから。」
「なんかイヤだなあそれは。やっぱり苦労しないと、面白く無いよ。
達成感とかが欠けるよね。」
「まず、ユキナリ君がポケモンを2匹捕まえないとコヤマジムリーダー
には挑戦出来ないよ。でも、まずポケモンが現れないと捕まえる
次元の話じゃ無いから・・・うーん。困ったなあ・・・」
ユウスケはしばし考え込んでいたが、突然
「そうだ!ポケモンを出す方法があったよ。ユキナリ君、
ラジオ機能に『ヒットナンバーチャート』があったよね!」
「え?ユタカさんの『ヒットナンバーチャート』?」
ユキナリは画面に出ている『ユタカのヒットナンバーチャート』を選んだ。
ユキナリの家のラジオから何時も流れていたので、この番組は知っていたのだ。
「ポケモンとの遭遇率を上げたり下げたり出来るラジオ番組だから、
運が良ければそっちから近づいてくるよ。」
「曲によっては遭遇率が逆に下がるの?」
「全然問題無いよ。音楽を聞いている間以外は元に戻るんだから・・・」
『さてと、今週中に最も人気の高かったベストソングを24時間
流し続けるこの番組も今年で10周年!俺も3代目ナンバーDJとして
皆さんに音楽を提供してるんだから、もっと頑張って曲を紹介しないとな。
今週のミリオンヒットは、ウタガ ヨシオの〔大いなる挑戦〕なんだよね。
そう。ついさっきまで流してたやつ。
流石に1週間この歌だけってのも淋しいけど、それがこの番組。
無料放送だから、金も無いし、他のチャンネルに変えるのもありだ。
ぶっ続けのループを楽しんでくれ!』
歌が流れ出すと、ポケギアが遭遇率の数値を叩きだした。
「えーと・・・この歌の音波による遭遇率は・・・86パーセント!上昇する
よ!!」
「やったねユキナリ君!流しっぱなしにしてしばらく
歩いてみよう!きっとすぐにポケモンが見つかるよ!」
ユキナリとユウスケは粉雪舞う中、ポケギアから音楽を流しっぱなしにして歩いた。

13 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:56:12 ID:Yo2..2F6
ユウスケは自分のリュックから方位磁石と始まりの森の地図を取り出しており、
それにそって歩いていたので、迷う心配は無かった。

ユウスケは自分のリュックから方位磁石と始まりの森の地図を取り出しており、
それにそって歩いていたので、迷う心配は無かった。

ユキナリとユウスケが歩いている間、ポケギアからは
音楽が流れ続けていた。女性が歌っている。

善と悪など無い 勝者も敗者も無い

心が全てを決める それが真の戦いだ

旅を続けて仲間を見つけ 答えを探す

まだ見つからない答え 旅をする意味

最強の2文字を携える者達がこの世界に限りなくいる

ならば戦え そして倒せ

くじけるな 見失うな

勝利は心の鍵を開ける 希望の扉

戦えポケモンマスター 勇気を持って立ち向かえ

勝てよポケモンマスター ずっとこの時を待っていた

頂点を望む者達がこの世に存在する限り

戦いは永久に続く事だろう

見果てぬ上を目指せ ポケモンマスター

止まるな そして前を向いて走り続けろ

ポケモンマスター ポケモントレーナー

「ポケモン、見えないね・・・」
歩いて数分、今だポケモンは現れる気配を見せない。
粉雪の舞う中、ユキナリとユウスケは途方に暮れていた。
コヤマタウンジムリーダーのゲンタに挑戦する為には
最低でも3匹のポケモンを持っていないと挑戦する事が
出来ない。とにかくポケモンを見つけないと・・・
「?ユウスケ、あれ!」
ユキナリは向こうの林を指差した。雪の積もった斜面から
滑り降りてくる影が見える。その姿を2人が確認
した時、その影は近くに移動していた。

ジグザグマ

「ユキナリ君、ポケモンだよ、ポケモン!」
「わ、解ってる・・・」
近付いてきたのは白いジグザグマだった。トーホクでは
ジグザグマは『ノーマル』と『こおり』を兼ね備えている。
白と灰色の縞模様で、動きが極端に素早かった。
それでもジグザグマは2人がトレーナーである事を
知っているのか、小馬鹿にした様に彼等の周りを
回り始めた。戦いを望んでいるらしい。
「コエンが入っているモンスターボールを投げて!」
ユウスケに言われ、ユキナリは慌てながらも紅蓮に燃える
色をしたモンスターボールの出現スイッチを押した。
閃光と共にコエンが出てくる。
『野生のポケモンを見つけたんですか?・・・うわっ!!』
コエン出現と同時に変種ジグザグマは問答無用で
襲い掛かってきた。ジャンプしてそのまま噛み付こうとする。
コエンは身を翻してそれを避けた。
「なんか、凄く好戦的なポケモンみたいだね・・・」
「コエン。野生のポケモンと初めて戦うね。とにかく
僕がしっかり命令するよ!」
『OKです。お願いしますね!』

14 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:57:08 ID:Yo2..2F6
互いに睨み合うコエンと変種ジグザグマ。
水色に光るポケギアの『バトル』画面を見つめていた
ユキナリが発した言葉からバトルが開始された。
「コエン、鬼火を使ってジグザグマの体力を削るんだ!」
『ハイ!』
コエンは体から不気味に青く光る鬼火を浮かせ、
それをジグザグマにぶつけようとした。しかし
ジグザグマは動きが予想以上に素早く、あっけなく
攻撃をかわされてしまった。
「ユキナリ君、このジグザグマレベル高そうだね・・・」
「最初の野生バトルくらい、勝っておきたいなあ。」
ユキナリは帽子のつばを手で構えると、状況を分析した。
今の所、鬼火を当てる為に出来る事はただ1つ。
それを、やるしか無い。
「コエン、化かすを使うんだ!」
『解りました・・・ガハッ!』
コエンが構えようとした次の瞬間、ダッシュしてきた
変種ジグザグマの強烈な頭突きがコエンのアゴに
クリティカルヒットした。コエンはのけぞって倒れてしまう。
「うわ、コエン!大丈夫か?」
『う・・・うう・・・なかなかやりますね・・・』
「ユキナリ君、僕もカレッキーで参加しようか?」
「ううん。これはコエンとジグザグマ・・・いや、僕と
コエンの挑戦なんだ。まだ勝負はついてない!」

なんとか立ち上がるコエン。しかしジグザグマは
全くダメージを受けていない。状況は極めて不利だった。
しかしユキナリはこの逆境を跳ね返す術を
思いついたのだ。・・・相手を利用するんだ!



始まりの森・・・47番道路

粉雪は地面に落ちて消えていく。土には霜が出来ていた。
生活環境は極めて悪いこの土地だからこそ、寒さに
対応してポケモン達は進化を遂げてきたのだ。
変種ジグザグマはまさにそれの典型だった。

「ユキナリ君、一体どうすれば?」
「全力で体当たりをしてくるジグザグマと並行に
走る。そして奴が方向転換しようとした瞬間に鬼火を
放つんだ。方向を変えるのが難しいジグザグマなら
命取りになる攻撃しか方法は無い!」
『ええ?あんなスピードについていくんですか?』
「それしか無いんだコエン。出来るだけでいい。
なんとか走ってくれ!」
『わ、解りました。出来るだけ全力で走ります!』
「大丈夫かな・・・」
ユウスケは緑色のモンスターボールを取り出していた。
「コエンがピンチになったら、僕すぐにカレッキーを
出すからね!」
「ユウスケ・・・」
ユキナリは前を見据えた。ここで引いたらきっと僕は
ポケモンと仲間になれないだろう。何故か、
そう感じたのだ。

15 :夜月光介2005/11/22(Tue) 20:57:33 ID:Yo2..2F6
『それ!』
再度頭突きをくらわそうと猛スピードで走ってきた
ジグザグマをギリギリのラインで避けると、その瞬間
コエンはジグザグマとキッチリ並行に並んでダッシュしていた。
ジグザグマは驚いたが、走っている間に攻撃を仕掛ける
事など不可能。そのまますぐに諦めるだろうと思い、
走り続けた。コエンも止まるまで技を出せるワケが無い。
「精一杯走るんだ、頑張ってくれ!」
ユキナリはコエンを応援した。ポケギアを見ると
コエンの体力は先程の頭突きで半分減ってしまっている。
このまま走らせても無傷のジグザグマとは違う・・・
倒れてしまうかも知れないと言う危惧はあった。
「ユキナリ君、無謀過ぎるよ!コエン、かなり体力を
消費してるじゃないか!」
「これしか方法が無いんだ。これしか・・・」
ユキナリは目を背ける事無く、真剣に前を見ていた。

コエンの走行も限界だった。もともと先程の頭突きで
体力を大幅に削られており、体が痛んだ。
(『でも、ここで走るのを止めたらジグザグマの
格好の餌食だ。食い下がるんだ・・・なんとしても!』)
ジグザグマは内心恐れを感じていた。全く速度を
落とさずに自分の速さについてきている。しかも
さっき自分が頭突きをくらわせたのにも関わらずだ。
もっとスピードを、追いつかれるな・・・
ジグザグマは視界が悪くなっていた。前だけを
見つめていたのだ。
「!危ないコエン、前に大木があるぞ!」
コエンは頭の中が真っ白になっていた。それでも
その言葉は耳の中に入ってくる。
『クッ!』
コエンは走るのをやめ、大木の手前でダウンした。
あと数秒走っていたら、激突し、ひんしは免れなかった
所だろう。一方ジグザグマはコエンが走るのを
止めたのを機会に、ここで一気に勝負をつけてしまおうと
直角に方向転換した。その方向に枯れ木があるのにも
気付かずに。
ゴン!
鈍い音がして、変種ジグザグマは無様に枯れ木の洗礼を
受けていた。スピードの相殺でダメージは大きすぎた。
枯れ木が根元から折れ、ジグザグマはそのまま
倒れてしまった。
「ユキナリ君、スーパーボールを投げて!」
ユキナリは頷くとすぐに気絶したジグザグマに向けて
買ってきたスーパーボールを投げつけた。軽く
ジグザグマに当たると、ジグザグマを吸い込み、振動する。
「頼むぞ、逃げないでくれ・・・」
ユキナリが願う中、青いスーパーボールの中央に位置している
赤ランプが光り・・・そして唐突に消えた。
ユキナリはこの日、生まれて初めてモンスターを
捕まえる事に成功したのだ。
「やった・・・」
ユキナリは地面にへたりこんだ。
ユウスケはその間にコエンの方に向かうと、コエンに
リュックの中に入っていた『傷薬』を使用する。
傷に塗りつけると、すぐにその傷が消えていった。
「結構傷が浅かったから、簡単に治ったよ。」
ユウスケはスーパーボールを拾い上げるユキナリに
呼びかけた。
「良かった・・・初めて捕まえたんだ。僕達の手で・・・」
ユキナリは何故か凄く疲れた。緊張が解けたせいだろうか。
コエンも無事で、ジグザグマを捕獲した。大成功だった・・・
ユキナリの1歩は大きかった。

数分後、ユキナリとユウスケは枯れ木の林の中を
何事も無かったかの様に歩いていた。
ユキナリの腰についているボール。紅蓮のボールの中では
コエンが休息していた。ジグザグマは青いボールの中で
気絶したままだ。
「ユキナリ君。コエンは凄いよ・・・君のアイディアも。
僕、感動した・・・ジムリーダーのゲンタに挑めるかも
しれないよ!」
「うん・・・僕だって勝ちたい。でも、まだ
3匹じゃ無いんだよね。ポケモン・・・」
ユキナリにとって、それは悩みの種だった。
ユウスケもジムに挑む。その為のポケモン3匹は
カレッキー、マッド、ボタッコとすでに揃っている。
しかしユキナリは違った。この森であと1匹ポケモンを
捕まえさえすれば、状況も変わって来るのだが・・・

現在のユキナリの実績
野生の変種ジグザグマ(白に灰色の縞模様)を捕獲!
ジムバッチは1個目に挑戦したいらしい。
コヤマタウンまではあと数キロの地点だ・・・

16 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:15:35 ID:8.vfxiPc
ユキナリとユウスケは枯れ木の林の中を進んでいた。
先程からずっと『ヒットチャート』の音楽が流れており、
出現率86%を保っているのだが・・・ポケモンが
現れない。ユキナリは現在2匹しかポケモンを持っておらず、
ジムリーダーに挑めない状態だった。

「ねえ、ユキナリ君。47番道路に出現するポケモンを
チェックしておいた方がいいんじゃないかな・・・」
「え、ポケギアで解る?」
「うん。セカイさんの『トーホクぶらり旅』の過去記録の
中には、47番道路のポケモンデータがあるハズだよ。」
「やってみようか。」
ユキナリは音楽を一旦止め、ポケギアを操作し
ポケギアが記録している過去のデータを探っていった。
「あった。『始まりの森・出現データ』だね・・・」

『始祖がいた所にしちゃ、随分ポケモンが少ないね。
あと、ホウエンやカントーで発見されているポケモン
が変種になっただけって所も面白いな・・・まあ
カントーやジョウト、ホウエンはトーホクと陸続き
だし、おかしくもなんとも無いんだけどね。
紹介行こう、まずは変種ジグザグマ、変種スバメ、
変種ポッポ、変種ハネッコ、変種・・・』
「ユキナリ君、あれ!」
「ユウスケ、聞いてるんだから静かにしてくれない?」
「そうじゃ無くて、いるよ。いるんだよポケモン!」
「!?何処、何処?」
「ホラ、あそこの枯れ木によっかかって寝てる・・・」

変種ハスボー

「うわ、随分気持ち良さそうに寝てるなあ・・・」
「うん。なんか眠たくなってくる位・・・」
ハスボーはジグザグマと同じくホウエン地方で確認
されているポケモンだ。しかし変種ハスボーは頭が
茶色い、枯れたハスの花の様になっていて、体色が
やはり真っ白だった。
「変種ハスボーは・・・『くさ・こおり』だよ!
みず系の技も一応使えるみたいだけど、威力は強くないね。」
「そっか、さっきのジグザグマも『ノーマル・こおり』
だったんだよね・・・トーホクはこおりが多いからかな。」
「で、ユキナリ君・・・ボール、投げる?」
「起こしてからにしようよ。僕、正々堂々の戦いが好きだ。」
「えー?チャンスなのに!傷薬で一応コエンの体力は
回復してるけど、精神力が・・・」
「ううん。僕はポケモンを自分のパートナーにする為には
戦いで勝たなきゃ資格を得れないと思う。コエンだって
きっと解ってくれるハズだよ。」
ユキナリは紅蓮に輝くモンスターボールを握った。
(ゴメン、もう少し頑張ってくれ。コエン!)
解放ボタンを押すと、コエンが出てきた。
『また僕の仲間を見つけたんですか?ユキナリさん。』
「あそこで寝てる奴なんだけど・・・ハスボー。」
『ううん・・・あのポケモン、みずタイプの技も
使えるんですよ。戦いに移るとこっちが不利になる
可能性が・・・』
「頼む、僕は君と一緒に正々堂々の戦いを経て、
仲間を増やしたいんだ!」
『・・・解りました。僕にもユキナリさんの気持ち、
よく解ります。起こしましょう。ただし・・・
逃げ出してしまったらどうしようもありませんよ?』
「それでも構わない。卑怯な事をするのは好きじゃないから。」
「ユキナリ君・・・」
ユウスケは確固たる意志を持って話しているユキナリが
一段と眩しく見えた。

「コエン、ハスボーを起こしてくれ!」
『大声でも出しましょうか・・・オーーーーイ!』
ポケギアとは別に、コエンの口から甲高い鳴き声が
響き渡った。林全体に広がっていく程のデカイ声だ。
「うわ、耳がキーンとするよ・・・」
ユウスケは慌てて耳を塞いだ。ハスボーはイヤでも
目が覚めるだろう。当然、ハスボーは飛び起きる。
いきなり大声が聞こえて目を覚ますと近くに
ポケモンがいる。人間2人がいる。変種ハスボーは
パニック状態に陥った。

17 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:16:03 ID:8.vfxiPc
逃げる事も考えられず、近付くなとでも言わんばかりに
ハスボーはみずを放射した。
「『みずげい』だね・・・通常の攻撃判定とは別に、
『つまり』も時々起こるみたい。」
「みずげい?つまり?」
ユキナリはポケギアで技を確認した。
『みずげい(水芸)、水を四方八方に噴射して敵を
攻撃する技、命中率は100%。『つまり』状態に
なると水がポケモンの体の中に入り、むせてダメージを
受ける。効果はしばらく続く。』
コエンは『こおり・ほのお』。ほのおの特性が特に
出てきているので、この攻撃は効いた。
『うわああっ!』
コエンは体力の半分以上を失った。
「どうしよう、このままじゃ・・・」
「化かすで相手を混乱させるしか無いよ!相手の攻撃を
封じるんだ!」
今だ変種ハスボーはムキになって『みずげい』を
連発している。コエンが『ひんし』になってしまう前に、
なんとしても『化かす』を使わなければならなかった。
「コエン、化かすを使うんだ!」
『わ、解りました・・・』
コエンはヨロヨロと立ち上がり、煙を出した。
ハスボーを包み込み、幻覚を見せる。

煙の中でハスボーは父と母の顔を見ていた。
林の中ではぐれてしまった両親に会いたくて、
必死に探していたのに・・・疲れて寝ていたのだ。
そこをユキナリ達に発見され、ハスボーは捕獲されようと
していたのだった。

「コエン、鬼火を使うんだ!」
『ハイ、ユキナリさん!』
コエンの周りに炎が出現し、煙の中で混乱状態に
なっているハスボーに命中する。『くさ・こおり』の
ハスボーにとっては、致命的な打撃だった。
炎の熱さと恐怖の寒さに苦しむ変種ハスボー。
その瞬間に今日2回目のスーパーボールが投げられた。
ハスボーを捕まえ、ボールは振動する。
(頼む、出ないで・・・!)
ユキナリは懇願していた。ボールから出てしまったら
みずげいをされ、コエンが瀕死状態になってしまう。
それだけは御免だった。大切な仲間だから・・・
「ユキナリ君、ボールが止まったよ!」
ユウスケはランプが青く光った事を確認した。
「2匹目、捕獲成功・・・」
ユキナリは腰が抜けた。まさかこんなに早くポケモンを
3匹にする事が出来るとは思っていなかったのだ・・・

ユキナリとユウスケは林を抜けた。
「あれが、コヤマタウンか・・・」
気がつけばもう夕方。街の灯りが遠くに見える。
「今日はジム挑戦は無理だね。何処かで休んで、
明日ジムリーダーに会って勝負を挑むんだ。」
ユキナリはコエンに感謝していた。
(無理させて、すまなかったな・・・コエン。)
しかしユキナリはまだ気付いていなかった・・・自分が
大変な事をしてしまったと言う真実に・・・

今回のユキナリの功績
両親を探していた変種ハスボーをゲット!
コヤマタウンに到着!ジムリーダーのゲンタに会おうと
している・・・

18 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:16:30 ID:8.vfxiPc
「コヤマタウン・・・」
夕暮れの街・・・すでに街灯がついており、降る雪も
暖かく照らされていた。2人はとりあえず、ポケモン
センターでコエンと捕まえたポケモンを回復しようと中に入る。
「あの、ポケモン回復を頼みたいんですけど・・・」
(大丈夫だよユキナリ君、すぐ終わるから!)
ユキナリはまだ自分の手でポケモン回復を頼んだ事は無かった。
「解りました、すぐに回復用ポッドにボールを
入れますからね。」
受付の男性はにこやかに微笑むと回復用ポッドにボールを入れた。
「10分位で回復しますから、待っていてください。」
「ユキナリ君、ちょっと休もうよ・・・朝から何も
食べずに夕方まで歩きっぱなしなんて・・・」
2人はロビーの椅子に座って、回復が完了するまで待つ事にした。

「お、アンタ達ポケモントレーナー?」
椅子に座ってボーっとしているユキナリとユウスケに
話し掛けてきたのは帽子を被った少年だった。
短パン姿で、腰には白いボールを携えている。
「そのボール、何?」
「サークルボール。ノーマルポケモンが捕まりやすく
なるコヤマタウンの名物だよ。後でベータショップに
寄ってみるといいよ。オイラも買い足さなきゃならない
かもしれないなあ・・・」
「ノーマルポケモン・・・」
「タイプとしてはレベルは低いかもね。効果が抜群になる
事も無いし、かくとうにはボロ負けしちゃうし・・・」
「!聞き捨てならないな!!ちょっと待った。
オイラを馬鹿にしてるのと一緒だよ!トレーナーだろ、
勝負しろよ!!」
急にその少年は怒り出した。ユキナリ達より歳は下
だと思うのだが、性格がキツイ。
「ちょ、ちょっと待って、穏便に話し合おうよ・・・」
「僕はタイプなら全部知ってる。ノーマルタイプが
他のタイプに比べてマイナーなのは事実なんだ!」
「・・・まあ、そうだけど・・・」
少年は言葉に詰まった。
「だけどさ、オイラは好きなんだ。ノーマルポケモンがさ・・・
今までずっと戦ってきて、ここまで評価されてるのも
結局はジムリーダーのオイラじゃ無くて、仲間である
ポケモンのおかげなんだし・・・」
「ジムリーダー!?」
2人は一斉に聞き返した。
「え?・・・あ、そうか。まだオイラ自分の事もアンタ達の
事も聞いてないや。オイラはゲンタ。コヤマタウンで
ジムリーダーをやってるんだ!」
「ゲンタって、君の事だったの?・・・もっと
僕より歳が上の人かなって、思っていたんだけど・・・」
「フフン、才能は年齢を選ばないよ。オイラとポケモンの
コンビネーションは、その辺りにいるオトナ達なんて
目じゃ無い位なんだぜ!」
ゲンタはそう笑うと、ボールを指でクルクル回した。
「で、アンタ達は?」
「僕はユキナリ、こっちは友達のユウスケ・・・僕達、
ゲンタ君に挑戦しようとこの街に来たんだ。」
「へえ、駆け出しのトレーナーか・・・オイラにも
そんな時があったっけ。いや、オイラはアンタ達より
長く生きちゃいないか。ハハハ・・・」
ゲンタはケラケラと笑い、ユキナリの腕を引っ張った。
「ちょ、何処へ行くの?」
「旅の途中は宿が必要だろ?リーグからの支給金で
ジム挑戦トレーナーの為の施設が用意されてるんだ。」
「寝泊りする所・・・ですか?」
「ぶっちゃけ言うとそうだね。寝泊り以外にもオプションが
あったりするけど・・・とにかくオイラについてきなって!」
ユキナリはゲンタに引っ張られて引き摺られた。
後ろではユウスケが回復したコエンと他のポケモンが
入っているボールをセンターの男性から受け取り、
走り出している所だった。
「待ってよ、ユキナリ君、これ!」
「わ、忘れてた!」
1個ずつボールをキャッチすると、ユキナリは3個全てを
腰につけた。
「お、ポケモンは3匹揃えたんだね。もしかして、突貫?」
「う・・・」
「それならある程度鍛えてもらわないとオイラには
挑戦出来ないね。施設は寝泊りと訓練も兼ねてるから、
しばらく鍛えた方が良いと思うよ。」
3人はジムに向かって走っていた。

ゲンタと会い、施設に向かう。

19 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:17:07 ID:8.vfxiPc
「ここが、コヤマジム・・・」
夕闇はもう夜の暗闇に変わろうとしていた。夜になると
一層降ってくる雪が冷たく感じられる。
「オイラもまさかここのジムリーダーになれるとは
思って無かったけど・・・今はジムリーダーとしての
強さと、誇りを持ちたいと思ってる。肩書きに恥じない
戦いをしなくちゃね!」
街灯に照らされた白いコンクリートの建物は、街の
中では一番大きな建物らしかった。
「ここの裏手に宿舎があるんだ。旅をしてるトレーナー
ご用達のね。」
ついていくと、木造の小屋が何軒も立ち並んでいる。
「中にはベットと練習用具、あとヒーター。何か食べたい
なと思ったら、向こうにある調理場で。シャワー室も
こっちの方に1台だけ備え付けてあるよ!」
「ありがとう、ゲンタ君・・・」
「へへ、リーグの命令なんだから当たり前だよ。
オイラの金なんて使ってないしね!」
短パン姿のゲンタは寒さなど微塵も感じないのか、
元気に笑っている。風邪などひかないのだろうか。
「ユキナリ君、とりあえず中に入ろうよ・・・
結構寒くなってきたしさ。」
「そうだね。じゃあ、僕達はここで寝泊りするから・・・」
「うん。オイラ、ジムにいるから何かあったら連絡してよ。
確か小屋の中には内線電話もあったハズだから。」
ゲンタはジムに向かって走っていき、見えなくなってしまった。
「僕等も行こう、ユキナリ君。」
「そうだね・・・」
ユキナリは何時もは気が弱く言い出せないユウスケが
ゲンタに刃向かう所を見た。きっとポケモンを
知っていると言う自信からきた言動だろう。いや、
ゲンタが言っていた様に、あれは『誇り』なのかもしれない。
(誇りを持って、戦いたい・・・)
ユキナリはその意味がよく解った。勝つ為には、
努力を惜しまない・・・兄さんみたいに。

宿舎の1つに2人は入った。中にはダブルベットと
小さいヒーター。ベットの近くに内線電話と部屋の
照明用のライトが置かれている。
「ふあああっ・・・!」
ユキナリは疲れからかベットに倒れこんだ。
「食事でも作ろうか、調理場があるって言ってたよね。
ユウスケは背負ってきたリュックを開け、中身を
確認していく。ユキナリの分も見た。
「キャンプ食ばっかりだ・・・これなら2人で
3ヶ月位もつかも。」
「そんなに入ってたの?」
「レトルトカレーの袋と洗ってない米がいっぱい。
レトルトシチューの袋、カップラーメンも・・・」
「道理で・・・」
ユキナリは肩に感じていた痛みの原因を知った。
いくらなんでも重過ぎるだろうと思っていたのだ。
そりゃ、旅をするんだから必要なのは当然だけど・・・
「ま、旅を続けるうちに中身が軽くなるって事かな。
今日はカレーにしようか・・・僕は先に調理場に
行ってるよ!」
ユウスケは2人分の量を双方のリュックから取り、
調理場へと向かった。ユキナリは相当疲れが出てきたのか、
ベットからなかなか起き上がる事が出来ない。
「今日は、色んな事があったな・・・」
初めてポケモンを捕まえ、いきなり3匹に増えた。
ポケモンセンターではジムリーダーと偶然会い、
ここで寝泊りしようとしている・・・
(まずはゲンタ君に挑戦しなきゃ・・・)
目蓋が重くなる・・・疲れすぎたしか、起き上がるより
このまま眠ってしまいたい・・・

ピーピーピーピーピーピー

「?」
いきなりユキナリの腰に付いているスーパーボールの
1個から、信号音が鳴り響いた。慌ててそのボールの
解放スイッチを押し、ポケモンを出す。
ポケギアのスイッチを押し、『コミニケーション』を
選択した。
『うう・・・父さん、母さん・・・』
「ハスボー・・・」
今日捕まえたばかりだった変種ハスボーが、いきなり
現れた途端涙を流している。
「どうしたの?具合でも・・・」
『帰りたい、林に帰りたいよお!』
「ちょっと待って、急に言われても・・・」
『うわああああああん!』
泣いてばかりいるハスボー。話が通じない。
「連絡しよう、僕にはどうすればいいのか解らない・・・」
ユキナリは必死に泣きじゃくるハスボーをなだめながら、
フタバ博士に電話をかけた。

ポケモンのホームシック・・・

20 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:17:49 ID:8.vfxiPc
「フタバ博士!」
『ユキナリ君、どうしたの?何かあったのかしら。」
「あ、はい・・・実は・・・」
ユウスケが小屋にいない為、ユキナリはポケギアで
フタバ博士と話していた。ポケギアの向こうの声が
いぶかしんでいる。
『貴方の捕まえたポケモンが・・・自分のいた場所に
帰りたいと言っているのね?』
「はい、そうなんです。泣いてばかりいます・・・」
『不思議ね。捕まったポケモンが自我を持つなんて・・・』
「え?」
『ポケモンはね、ボールで捕獲されると自我を失って
しまうの。野生の頃の記憶を断ち切り、知能が与えられるわ。
命令に服従する能力。トレーナーと信頼を築く為の
友情とかがそうなの・・・稀なケースだけど、記憶を
失わせる時のミスで野生の頃の記憶が残っている事が
あるのよね。私が聞くのは初めてだけれど・・・』
「記憶の削除、ですか・・・?」
ユキナリは言葉を失った。
『そうでないと、トレーナーとポケモンとの関係が
作れないでしょう?私も良い事だとは思わない。でも
この世界では、それがごく当たり前の事なのよ・・・』
「そんな、そんな仕掛けがあったなんて!」
『私達はポケモンを捕獲する事によって、初めて
ポケギアで意志の疎通を図る事が出来るわ。野生の
ポケモンとは、コミニケーションが取れないのよ。』
「・・・ハスボー、どうしたらいいんでしょうか・・・」
『貴方が決めなさい。センターに持っていって記憶を
改めて削除してもらうか。それとも野生に返すか・・・
私は、後者を薦めるわ・・・じゃあね、ユキナリ君。』
「ありがとうございました・・・」

僕は、どうしてポケモントレーナーになったんだろう・・・
今まで気にもしていなかった当たり前の事が大きな疑問と
なって目の前に立ちふさがった。
「ポケモンは、自我を奪われて、知能を与えられる・・・
今までの記憶と引き換えに人間との生活を営む・・・
正しい事なんだろうか?僕には解らない・・・」
世界ではポケモンの無い暮らしなど考えられない。
寝たきりの老人の安らぎとなっているポケモン。
建設現場で頑張っているポケモン。友達として
遊んでいるポケモン・・・全てが悪だとは思わない。
「でも、僕が今すべき事・・・この選択で、
僕がトレーナーになれるかが解ると思うんだ・・・」
ハスボーを自然に帰してあげる。それが、ポケモンを
愛している者がとるべき行動なのでは無いだろうか。
ポケモンは物なんかじゃ無い。僕の・・・
仲間、友達・・・パートナーなんだから!

『おうちに帰りたいよお・・・』
「大丈夫だよ、君がいた林に明日、帰してあげるから。」
『父さんと母さんに会えるの・・・?』
「勿論・・・君が探すんだ。きっと見つかるよ。
僕は君を苦しめたりなんかしない。約束する。」
『あ・・・アナタの名前は?』
「ユキナリ。ポケモントレーナーなんだ。」
『ポケモン・・・トレーナー・・・』
ユキナリはハスボーをボールの中に入れると、再び
ベットの上に倒れこんだ。
「僕は、本当に正しい事をしているのだろうか・・・
この旅は本当に僕を正しい道へ導いてくれるのか?」
悩みは終わる事無く、ユキナリが目を閉じて
眠りに落ちる時まで続いていた。

あくる日・・・ユキナリは目を覚ました。
昨日から何も食べてないせいだろうか、力が出ない。
無理やり身体を起こすと、辺りを見回した。
ユウスケの姿が見えない。しかし、ベットの跡から
ユキナリの隣で寝ていた事が解った。もう起きたのだろうか。
「はあ・・・」
ジムへ行こう。とにかく何か食べなくちゃ・・・
重い足を引き摺って、ユキナリはジムに向かった。
ゲンタとユウスケはジムにいるだろう。何か食べたら、
話をしなきゃ・・・大切な話を。

繋がれた鎖を断ち切る事は難しい。

ジムの玄関口に回ると、扉は開いていた。
開けると、眩い程に輝く白い大理石の床と壁が
ユキナリを出迎える。
「白・・・ノーマルの象徴なんだ・・・」
外は勿論雪が降っている。その白ともあいまって、とても
美麗な光景を形作っていた。ユキナリは肩や帽子についた
粉雪を払うと、2人がいるであろうジムの奥に進む。
白い床をしばらく歩くと、回廊が見えてきた。
一本道をさらに進むと真っ白なドアが。金色に輝く
ノブを開けると、そこはジムリーダーがトレーナーと
戦う為のバトル場だった。

21 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:18:26 ID:8.vfxiPc
「あ、ユキナリ君!」
カップラーメンをすすっているゲンタの隣で同じく
カップラーメンを食べていたユウスケが声をかけてきた。
隅に座ってずっとゲンタと話していたらしい。
「アンタの分も用意しておいたよ。オイラは自分の分だから、
気にしないでよ。喧嘩になっても困るしさ。」
「うん・・・」
湯気が立ち上っているカップラーメン。中に半分入っていた
フォークでもそもそと食べ始める。
「それで、しばらくここにいるんだろ?ポケモンを
育てないとオイラとの挑戦は難しいしね。」
こことは勿論コヤマタウンの事だろう。しかし・・・
ユキナリにはやらなければならない事があった。
「ユキナリ君、どうしたの?顔色悪いよ?」
心配そうにユウスケが聞いてくる。
「大丈夫だよ・・・後で君とゲンタに話があるんだ。
もう一度、始まりの森に戻らないとダメだと思う。」
「え?だって一応ポケモンは3匹揃ったんじゃ・・・」
「ゴメン、今は食べさせて。」
ユキナリは重い口調でそう喋ると、スープをすすった。

「ん?オイラに話?どうしたのさ。別に何かあったワケじゃ
無いんだろ?」
しかし深刻な表情をしているユキナリの顔を見ると
流石に何かあったのだろうと思い、口篭もる。
「僕が捕まえたハスボーが、林に帰りたいって
言ってるんだ・・・帰してこようと思う。」
「ユキナリ君、それポケモンがそう言ったの?」
「うん・・・たまに記憶消去が失敗する事があって、
それでこうやって訴えてくる事もあるんだって・・・
博士は、林に帰してきた方が良いって言うんだ。
僕も・・・同じ気持ちだよ。」
「そっか・・・オイラもついていきたいけど、ジムの
留守番を頼む奴なんて誰もいないからさ。ユウスケと
2人で帰しに行けばいい。オイラは何時でも待ってるから・・・
もう1度、捕まえればいいさ。」
「ユウスケ君、ついてきてくれる?」
「勿論だよ!ポケモンがそう言ってるのなら、僕だって
そうする。でも・・・」
ユウスケは言葉を濁した。
「僕の捕まえたポケモン達も、そう思ってるかもしれないと
思うと、哀しいな・・・友達になりたいだけなのに・・・」
ユキナリの頭の片隅にもその思いがあった。
コエン・・・ホントに君は僕を信じてくれるの?
僕と一緒にいる事が本当にいいと思っているの・・・?

2人はカップの片づけをした後、始まりの森へ
出発した。とは言っても、まずは入り口でハスボーを
解放してからの話だ。地面を歩くと沢山の霜が割れる。
ユキナリは曇り空を見上げた。
(ハスボー・・・僕は、出来る限りの事をするよ・・・
ポケモントレーナーになったからには、ポケモンを
思いやって、ポケモンと一緒に成長していきたいと
思ってる。ポケモンの願いも、かなえなくちゃ・・・)
「ユキナリ君。何時か、きっとポケモンの記憶削除
システムは廃止されるよ。僕達は本心でポケモンと
話し合わなくちゃいけないんだ!」
ユキナリは頷いた。目をつぶったまま、しばらく
考えていた。自分が今どうすべきかをもう1度、
頭の中で反芻していた・・・

ハスボーを父親と母親のもとへ。

22 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:19:21 ID:8.vfxiPc
粉雪の降る中、ユキナリとユウスケは『始まりの森』
出口に辿り着いていた。ユキナリはボールを手に持つ。
(こんなに早くポケモンを逃がす機会があるとは
思わなかったよ・・・)
「ユキナリ君。僕達はポケモンと共に生きている。
人間の勝手でポケモンは生きる動物じゃ無いんだ。
応えてあげなきゃ・・・その気持ちに。」
ユキナリはユウスケの言葉に胸を打たれた。
そのままボールの『解除』ボタンに細い棒を入れる。

鈍い音がして、ボールから変種ハスボーが飛び出してきた。
ハスボーはしばらくボンヤリしていたが、すぐに
枯れ木の林の中に駆け込んで見えなくなってしまった。
(これで良かったんだ・・・これで・・・)
ユキナリは暗い表情で林の中を見つめていた。
「行こうか、ユウスケ。」
「勿論だよ、もう1度やりなおさなくちゃ」
再び、2人は林の中に入っていった。

意志の疎通は『ポケモンが捕まった』時にしか出来ない・・・
それは大きな問題だった。ポケモンの本心を今まで
誰も聞いた事が無い。だからこそ皆、安心して
ポケモンを自分のペットや仲間にしていられたのかも
しれない・・・しかし、ユキナリには納得出来なかった。
納得出来ないにも関わらず、トレーナーとしてまたもや
野生のポケモンを探している自分が情けなかった。
「元気出そうよ、ハスボーはちゃんと親を探して、今頃
感動的な再会を果たして・・・」
「?ちょっと待って、ユウスケ・・・あれ!」
「!!・・・」
林の中で死んでいる2匹のポケモンの姿があった。
どちらも変種ハスボー。メスとオスが両方雪の中に倒れて
動かなくなっていた。
「もしかして、あの2匹は・・・」
(そんな事は、そんな事は絶対・・・!)
ユキナリは必死にそれを否定しようとした。
どうやら風によって雪の中から顔を出したらしい。
昨日ユキナリ達はこの2匹がいる事に気付いていなかった。

変種ハスボーが走ってきた。
ユキナリ達の目の前で2匹の死体を見つける。
変種ハスボーは愕然とした表情をしていたが、そのまま
すぐに泣き崩れてしまっていた。
「そ、そんな・・・」
2人はなすすべもなく、雪の降る中立ち尽くしていた。
何も出来ない自分達が心底情けなかった。言葉も
出ない哀しみ。親は・・・死んでしまっていた。
「ユキナリ君、あのハスボー・・・これからどうするん
だろう・・・親が死んでしまったなんて・・・」
「僕にも・・・どうすればいいのか解らないよ・・・」
ハスボーは2人の存在に気付き、逃げようとした。
しかし、ユキナリの顔を見るとそのまま近付いてきたのだ。
「・・・」
ハスボーはユキナリの足にすりよってきた。涙を浮かべながら
哀しい表情でユキナリとユウスケの顔を見つめている。
「僕と・・・一緒に行こうか?」
ユキナリはそう、呟いた。自分でも驚く程、擦れた声だった。
「ユキナリ君。ハスボー・・・それを望んでるみたいだよ。」
ハスボーは頷いていた。ハッキリと・・・確実に・・・
「僕達は、選択を迫られてる・・・でも、僕が
今しなきゃならない事は間違いなく、こういう事なんだと
信じてる。僕はハスボーの面倒を親に代わって見るよ・・・」
ユキナリは先程解除ボタンを押したばかりのボールを
投げ、それはハスボーに当たった。ボールは少しも
反応せず、すぐにボールの色が青色に変わった。
それは、ポケモンが全く抵抗せずに捕まったと言う事に
間違い無かった。

もう1度、出発しよう。

23 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:19:51 ID:8.vfxiPc
ユキナリは疲れていた。精神的にかなりまいっていた。
頭の中がグルグル回る様な、不思議な感覚に支配されていた。
「ユキナリ君・・・」
「ジムに、戻ろう。とにかく今はそれ以外にする事は無いよ。」

始まりの森を抜け、2人はコヤマタウンのジムに
向かって歩いていた。
「ユキナリ君、あれは何だろう。」
「ん?」
昨日は辺りが暗かったのでポケモンセンターと
ジム、それにベータショップしか確認出来なかったのだが、
もう1つ大きな建物があった。
『マウンテンショップ・オイカゼ』
「自転車を扱ってるお店なのかな?」
「マウンテンバイクかな・・・ホラ、デコボコとかを
走る為に使われる競技用とかの。」
「ユキナリ君、行ってみようよ!」
「今はジムに・・・って、うわっ!」
ユウスケは面白そうにユキナリの手を引いて店の方に走る。
(寄り道するの?・・・)
そんな元気は無かったが、ユウスケの笑っている顔を
見ると断るワケにはいかないだだろうと思った。

「破産だ、破産!」
店長は悩んでいた。明日でこの店を畳まなくてはならない。
誇りにしていた素晴らしいマウンテンバイク達も、
商品としてでは無く、借金のカタに取られてしまうのだ。
「イヤだ。この自転車は、走る為にあるんだ!
この沢山の自転車をどうして闇金融なんかに手放さなくては
ならない!取られてしまう位なら、いっそ・・・」
経営悪化の時、悪魔の囁きに乗ってしまったのが
破滅への始まりだった。なんとか不況を乗り切り、金を
返そうとしたがそのまま利子は雪だるま式に
大きくなっていった。そして、もうどうにもならない
所まで追い詰められてしまったのだった。

「こんにちわー。」
オイカゼは振り返った。店長以外の店員は全員夜逃げ
してしまい、コヤマタウンの住民からも破産の事が
ばれて近寄ってもくれなくなってしまった。
客か・・・客なのか・・・?
「うわー、色んな自転車があるなあ・・・」
2人の子供が自転車に見に来てくれた。オイカゼは
決心した。今しかチャンスは無い!
「やあ、坊や達。自転車は好きかい?」
「大好きだよ!走るととっても風が気持ちいいしね!
でも・・・僕の自転車はずっと前壊れて捨てられちゃったんだ。」
エメラルドグリーンの髪色をしているメガネをかけた
男の子。オイカゼは運命の出会いを感じた。
(この子達なら、きっと自転車を大切に使ってくれるに
違いない!そうだ、もう2度と無いチャンスだぞ!!)
「実は・・・おじさんの店、破産寸前なんだ。」
「ええ、そうなんですか!?」
帽子を被った男の子が驚いた。
「うん・・・おじさん、自転車は色んな所で走らせてこそ
真価が出ると思ってる。私は大事に扱ってきた・・・
そんな自転車達をホコリまみれにはしたくない!」
オイカゼは2人にマウンテンバイクを見せた。
「ごらん、私が最も大切に保管してきた最高級の
マウンテンバイク、『青空』だ。こっちは『緑芝』。
この2台を、君達2人にあげたいんだよ!」
マウンテンバイクは輝く様な水色と、透き通る様な
草の色の2台だった。どちらもピカピカに光っている。
「貰ってほしいんだ。おじさんはもうこの自転車の
持ち主になれない。怖い人達が来る前に、この
2台だけには逃げてもらいたいんだ。解るね?」
「凄い、2台合わせて100万円・・・!?」
帽子の男の子は息を呑んでいた。
「頼む、貰ってくれ!マウンテンショップの店長と
しての最後の頼みだ、どうかこの自転車を好きなだけ、
色んな場所で走らせてやってくれ!」
土下座までして店長は彼等にお願いした。
「どうする、ユウスケ・・・」
「ユキナリ君、ここは貰っておいた方がいいんじゃないかな。
僕達も得になるし、何より店長さんが頼んでいるんだから・・・」

数分後・・・ユキナリとユウスケは2台のマウンテンバイクを
持って店を後にしていた。成り行きで手に入れてしまった
この自転車、綺麗でかっこよくて、普通には絶対
手に入らない品だろうと言う事は2人とも承知していた。
とにかく、貰ったからには使わなければならない。
それがユキナリとユウスケの結論だった。

ジムに戻ると、何やら奥から声が聞こえてくる。
2人は貰った自転車をジムの壁に立てかけると、
とにかく中に入ってみる事にした。
「誰か挑戦者が来てるのかな。」
「ハッキリとは断定出来ないけどね・・・」
玄関を通ってバトル場の間の廊下を通る時、
声は一層大きく聞こえてきた。どうやら
ゲンタの他にもう1人男がいるらしい。
(やるねアンタ、でももう後が無いんじゃない?)
(こんな所で・・・私は負けるワケにはいかないんだ!)
ユキナリは扉を開けた。

ジムバトル、それはトレーナーとしての道標。

24 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:20:33 ID:8.vfxiPc
「うわ、ジムバトルしてるんだ・・・」
ユウスケは思わず立ちすくんでしまった。
バトル場には2匹のポケモンが互いに睨みあっていた。
1匹は巨大なネコの様なポケモン。もう1匹は
星の様に光り輝いているポケモンだった。
「ユウスケ、あのポケモンは何て言うの?」
「こういう時の為にポケギアがあるんでしょ。」
「あ、そっか。」
ユキナリはポケギアの図鑑説明を聞いてみる。
『カビゴン・1日の殆どを睡眠にまわし、時々起きては
食べ物を貪り食うと言う不規則な生活を営んでいる。
太ってばかりでロクに動けないが、寝起きの悪さは
天下一品。無理やり起こすと暴れまくる。』
『ストーム・流星の様な光を放っている見た目にも
大変美しく、珍しいポケモン。全身が発光体になっており、
その日の気分で体の色を自由に変える事が出来る。』
「ひかりタイプ?」
ポケギアに表示されている『ひかり・いわタイプ』の文字に
ユキナリは首をかしげた。
「フタバ博士が最近発見した、新しいポケモンのタイプ
なんだ。あくとゴーストに強いんだって。」
「へえ、あくとゴースト・・・」

「私は、勝たなければならない!あの方の為に力を
尽くすと誓った。ここはあくまでも通過点にしか
過ぎないのだ!」
「ここで負けてちゃ、他のジムリーダー全員に
勝負したって負けるよ。オイラにだって誇りがあるんだ。
軽々と勝たせてあげるワケにはいかないね!」
ゲンタと戦っているのは、ボサボサの茶髪、閉じていると
しか思えない程の細目をした男性だった。随分
やつれている様だったが、その顔には光が宿っている。
ユキナリはこの男に底知れぬ何かの力を感じた。
「この人、凄いオーラを出してる・・・!」
「ストーム、こうはだんだ!」
『OK、派手に決めるよ!』
ポケギアからどうやらストームの声を翻訳したものと
思われる声が聞こえてくる。ユキナリは『コミニケーション』
に設定を切り替えていたのだ。
ストームはいきなり七色に光ると、大量の小さな光の粒を
カビゴンに向けてばら撒いてきた。カビゴンは巨体なので
動けず、そのままダメージを受けてしまう。
「カビゴン、そのまま眠るんだ!」
『ふわぁ・・・ああ・・・ZZZ・・・』
カビゴンは面倒くさそうに巨体を寝かせるとグーグー
眠り始めた。
「対戦中なのに、寝てていいの?」
「ねむるには、体力を全回復する効果があるんだよ。
カビゴンの恐ろしい所は、これだけじゃ無い・・・」
いきなりカビゴンは凄まじい鼾をかき始めた。思わず
耳を塞ぐ2人。ゲンタは何時の間に用意していたのか
ヘッドホンを耳に装着している。
「し、しまった。鼾を使ってきたか!」
男性は歯をくいしばった。ストームは軽くではあるが、
ダメージを受けている。このままではロクに攻撃も
出来ないまま敗北してしまうだろう。ただでさえ
弱っていたストームにとってこれは命取りだった。
「くそ、もうあの技を使うしか無いのか・・・」
『そんな、僕も倒れちゃいますよ!』
「ストーム、引き分けは敗北にはならない。
てんからのむかえを使うんだ!」
『は、ハイ・・・』
ストームはいきなり天高く舞い上がると、上空から
カビゴンに向けて光を発射してきた。
「うわ、引き分けだ・・・てんからのむかえはひかりの
技。相手のポケモンを戦闘不能にするんだけど、それを
使ったポケモンも90%の確立で戦闘不能になる攻撃だよ。」
「残りの10%は?」
「HPが1残る可能性があるって事。」
『グウウウ・・・フガ・・・』
カビゴンは喉を押さえてうめいていたが、倒れこんだ。
「か、カビゴン!ボールに戻れ!」
「これで引き分けか・・・敗北よりは悪くない結果だ・・・」
男性は戦闘不能になり、そのまま落下してくるはずの
ストームを回復させようと、ボールを構えた。

しかし、ヨロヨロとストームは上から自力で降りてきた
ではないか!紙一重の勝利を獲得したのだ。ゲンタは
唖然として口を開けたままの状態になってしまっている。
「紙一重の勝利か・・・むしろありがたい。」
『マスター・・・勝ったんですよね?』
「ああ、勿論だ。ゆっくり休んでくれ。あのお方の為に、
私とお前はさらなる勝利を掴まなければならないんだ。」
ストームをボールに戻すと、彼は自嘲気味に微笑んだ。
ユキナリとユウスケが彼に初めて出会った時であった・・・

オチが忠誠を誓っている者とは誰なのか?

25 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:21:57 ID:8.vfxiPc
「驚かされたな・・・アンタ、やるじゃん!」
ゲンタはニッと笑った。真剣な表情は消え、久しぶりに
良い勝負をした満足感に包まれている。
「私は自分でやれるだけの事をしたまでだ。その結果
私が勝った・・・当然の結果だとも。」
「危なかったクセに。ユキナリ、ユウスケ!いや、オイラの
カビゴン、良い戦いが出来たって喜んでるよ!」
「カビゴンが3匹目だったの?」
「オイラの自慢の切り札さ。物心ついた時からのパートナー
なんだ。『食べ残し』を常時装備してるんだよ!」
「食べ残し?」
「ユキナリ君、ポケモンは道具を持つ事が出来るんだ。
それによって、ポケモンが自分の判断で道具を使い、
体力を回復したり・・・またある時はその道具を使って
自分の力を上げたり、戦いを有利に運べたりする。
いい道具を手に入れたら、装備させてみるといいよ。」
「へえ・・・」
ユキナリはさっきゲンタに勝利した男性をもう一度見つめた。
細目の上に太い稲妻型の眉毛、茶髪、顎鬚。薄い灰色の
衣服に濃い灰色の長ズボン、純白のマントを羽織っていた。
思慮深そうで、常に悩んでいる様な表情を見せていたが
その反面、強い何らかの意志を感じ取る事が出来た。
「あの、貴方は?」
「君は・・・ポケモントレーナーかい?私もそうだ・・・
私はオチ。ひかり属性のポケモンを集めている。
今日は目的達成の為の祈りの代わりにここへ来た。
ここで負けていては、私は到底あの組織を壊滅させる事など
出来ないだろう。」
「組織・・・?」
「このエリアにいる悪の組織だ・・・私は彼等に
深い憎しみを抱いている。何としても奴等を叩き潰さなければ
ならない・・・私が忠誠を誓ったマスターの為に。」
「オチさん。じゃあ、ジムバッチはいらないんですか?」
「私はリーグを目指しているのでは無い。いらぬ物だ・・・
ジムリーダー、私はもう行く。戦ってくれた事、感謝
しているぞ。では・・・」
オチは身を翻してジムを後にしていった。
その後姿を見ていてユキナリは、
(何故だろう・・・凄く哀しい背中を見せてる・・・)
と思った。

「オチさんか・・・僕、トーホクにいる闇組織の名前なら
聞いた事があるよ。」
「闇組織?」
「・・・カオス・・・だね。」
「え?」
ゲンタが少し曇った表情をしながら話し始めた。
「今トーホクでは、カオスって言う犯罪組織が蠢いてる。
奴等はポケモンを本当の意味での道具としか考えていない。
だからポケモンを酷使しても平気なんだ。でも
それは・・・」
「ユキナリ君。カオスはゴシップ記事が作った偽りの
組織だよ。誰1人として実際にカオスのメンバーを
見たって人も、逮捕されたメンバーなんかもいないんだ。
空想なんだよ、きっと・・・」
ユキナリは腑に落ちなかった。本当にそうなんだろうか。
さっきのオチさんの真剣な眼差しを見ると、どうしても
嘘だとは思えなかった。それに、ユキナリは彼に
強い憧れを抱いていた。
(あんなトレーナーになれたらいいな・・・)
冷静の中にも鋭く光る熱き闘志。危うい程の脆い
人間らしさ。弱みを見せない強さ。・・・それは
ユキナリが憧れるタイプの人間に等しかった。

26 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:22:30 ID:8.vfxiPc
「さてと・・・客人もいなくなった事だし、アンタ達に
特訓でもさせようか。教えるよー。強くなるにはどうしたら
いいのか!とにかく、ポケモンを鍛えるしか無いよ!!」
「ポケモンを鍛える・・・」
「野生のポケモンは戦いの中に生きてる。生きるか死ぬかって
言う状況の中でね。でもそれはオイラ達トレーナーの
戦いじゃない。まずはその戦い方を叩き込ませる。
そして、相手を倒す為に身体を鍛えて技を覚えるんだ。
その為には『トレーナーと戦って経験値を得る』しか
方法は無い!」
「と、トレーナーって、誰と?」
「僕がいるじゃないか!やっぱりついてきて正解かも・・・
ユキナリ君。互いに経験値を集めるチャンスだよ!」
ユウスケは目を輝かせた。
「オイラが住んでる街、コヤマタウンはノーマルポケモンを
使ってるトレーナーが多くて、しょっちゅうオイラの
ジムに来るんだ。連絡すれば相手をしてくれる奴等は
沢山いると思うから、後で会わせてやるよ!」
ゲンタは笑った。
「ま、オイラは手伝えないから先に謝っておくよ。
ジムリーダーが直接トレーナーに力を貸すのは
リーグの方から禁止されてるから。」
「ウオマサ高原のリーグ本部か・・・」

ウオマサ高原・・・トーホクの最北端に位置している
トーホクリーグの本部。最強の称号を持つトレーナーの
憧れ、四天王とチャンピオンが若き挑戦者達の
挑戦を待っている。ユキナリとユウスケはまさに
その第一歩を踏み出したばかりだった。

ユキナリとユウスケはジムを離れ、ジムの後ろにある
小屋へと戻っていた。ゲンタによると、ここに
ゲンタを慕っているトレーナーが手合わせしに
来てくれるらしい。
「ま、その人達が来る間に僕と勝負しようよ!」
ユウスケは顔を輝かせてボールを取り出した。
「3vs3のジム戦と同じルールの勝負。ポケモンが
3匹戦闘不能になったトレーナーの負け。単純なルールだよ。
それでいいよね?」
「勿論!」
ユキナリはハスボーが入っているボールを握った。
(僕は、君と一緒に強くなるよ・・・心がもっと
大きく、豊かになる為にも!)
「じゃあ、同時にポケモンをフィールドに出すんだ。
ここは公式の場所じゃ無いから、随分狭くなっちゃうけどね。」
ユキナリとユウスケが練習をする場所は小屋の外。
粉雪が相変わらず降り続けている中での戦いだった。
土は冷たく、水溜りが凍っている程だったので、
この日は昨日より寒かったのだろう。

27 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:25:32 ID:8.vfxiPc
お互いの衣服が雪をくっつけ、北風が容赦無く
2人を苦しめる。ジャンパーを着てはいるものの、
その寒さは部屋の中とは違いすぎていた。
「戦闘開始!」
一斉に2人はボールを投げる。閃光と共に
ポケモン2体が姿を現した。
コエンとカレッキーだ。
「ユウスケの本命が登場か・・・」
ユキナリはポケギアの図鑑をチェックした。
『カレッキー・トーホク地方の寒さによってウソッキーから
突然変異した新種のポケモン。完全に樹木に変わり、
手や頭がまるで枯れ木の枝の様に分かれている。
吐く息は相手を凍らせ、巻き起こす風は全てを切り裂く。』
「僕が手塩にかけて育てたポケモンなんだ。勿論
パワーベルトを付けてるから対等な戦いが出来るよ!」
強さを制御し、コエンとカレッキーは同じレベルに
なっていた。互いに間合いを計り、睨み合う。
『ユキナリさん、相手のカレッキー・・・かなり
強いですよ。ひしひしと自信に満ちたオーラを感じます。』
「とにかく攻撃あるのみだ。相手の懐に飛び込んで
叩くしか無い!コエン、まずは化かすで相手を惑わすんだ!!」
『解りました!』
ユウスケがクスッと笑った事にユキナリはまだ
気付いていなかった。コエンはそのまま相手にぶつかり
相手をよろめかせると、『化かす』を使う。
しかし、幻影はカレッキーの前で跡形も無く消えてしまった。
『俺っち、そんなに甘く無いッスよ。』
カレッキーはニヤリと笑い、『冷たい風』を挨拶代わりに
吹いてきた。
「コエン、避けるんだ!」
コエンは慌てて飛び退いたが、自分から懐に飛び込んだのが
裏目に出た。逃げられるワケも無く自分から当たりに
いったかの様にくらってしまう。
『うわあっ!』
「こ、コエン!」
「ユキナリ君。カレッキーには特殊能力があるんだ。
チェックしてみて。ちょっとズルイかもしれないけど。」
ユキナリはポケギアの『バトル』から『相手の情報』を
チョイスしてみた。
『なまくらボディー・こんらん状態にならない
その代わり技をかけられると防御力が少し下がる』
「防御力が下がる?」
「うん。でもこんらんするよりはマシだと思うんだ。
その証拠に・・・」
ユウスケは拳を振り上げてガッツポーズをした。
「連続で技を繰り出せるしねっ!」
ユキナリはユウスケがまた『冷たい風』を命令しようと
している事が解った。2度続けて当たるのはシャレに
ならない。
「コエン!早く距離を取るんだ!」
しかしコエンはその場から動く事が出来ない。
「ど、どうした?」
『ダメです。冷たい風で素早さを下げられちゃったみたいで・・・
これじゃ、飛び退こうにも飛び退けません!』
「そ、そんな!」
「カレッキー、冷たい風をもう1度当てるんだ!」
『解ったッス、マスター!』
カレッキーは口を尖らせた。

「コエン、鬼火だ!」
反射的にコエンは鬼火を出していた。
そして鬼火を投げた瞬間、それが冷たい風とぶつかり、
バチバチと激しく火花を散らす。
『クッ・・・技の点では俺っちの方が負けてるッスけど、
威力に関してはひけを取らないッスよ!』
「コエン、そのままふんばるんだ!」
「カレッキー、そのまま押して攻撃を当ててくれ!」
2人は自分のポケモンを応援し、励ましてなんとか
勝たせようとした。勿論それが関係するハズも無く、
あくまで2匹の精神力で勝負は決まる。
こんらんにはならなかったものの、カレッキーは
特殊能力の代償で防御力が下がっている。そして
鬼火には滅法属性的に弱い。対するコエンは
属性的には有利なものの、冷たい風を2度もくらって
しまっては大きな痛手になる。最悪の場合、動けずに
そのままやられてしまう可能性もあった。
2匹のポケモンは技を出したまま膠着状態になっていた。
2人も何時の間にか応援を止め、固唾を飲んで
行方を見守っている。果たしてどちらが攻撃を
当てるのだろうか・・・

心の強さが勝負を決める。

28 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:26:30 ID:8.vfxiPc
膠着状態になったまま、2匹は身動き1つしなかった。
互いにふんばって力を出し切っているものの、力は
勿論互角。ゆるゆると体力が寒さによって奪われていく。
「負けるな、コエン!」
「もうちょっとだけ頑張って、カレッキー!!」
ポケモンはこの瞬間、完全にトレーナーの手を離れて
互いの勝負に持ち込んでいた。もう周りなど見えない。
ただ目の前にいる相手を倒したい。その執念で
どちらも一歩も引かなかった。
鬼火と風がグルグル回ってぶつかり合う。2匹の
精神力は同等に減っていき・・・
ドサッ!
両方とも同時に地面に倒れこんでしまった。
フルに精神力を使い果たしたのだ。しかし、コエンの方は
若干、体力が残っていたらしい。
ゼーゼー荒い息を吐いているカレッキーに向かって
コエンは再び鬼火を出す。
『これで、この戦いを終わりにしましょう!』
『まだ、勝負が決まったワケじゃ無いッス!』
カレッキーもなんとか体勢を立て直して息を吐こうとしたが
もう立っていられなかった。グラッと崩してしまう。

完全に無防備な状態となったカレッキーに容赦無く
鬼火が襲い掛かった。
『やっぱり、アンタ強いッスね・・・』
そのまま燃えて、カレッキーのHPはゼロになってしまった。
ユウスケは急いでカレッキーをボールに戻す。
「僕が適切な命令を出していれば・・・」
ユウスケはほぞを噛んだ。
「ユウスケ、かなりポケモンを鍛えてるんだね・・・」
「僕の自宅でね・・・やっぱり外に出て野生のポケモンと
戦わないと成果は出ないよ。仲間同士で戦ってても、
経験値は殆ど入らないしね。」
ユウスケは次のポケモンを出そうとしていた。
「ボールに入っていれば少しは回復出来るよ。どうする?
ポケモンを交代させるのなら僕に言ってね。」
(どうしよう・・・)
先程冷たい風のダメージを受けたうえ、かなりの精神力を
消費したコエン・・・続けて戦わせても負けるのは
解りきっていた。ここはジグザグマを出すべきだ!
「ジグザグマに交代させてもらう。」
「OK。じゃ、次のポケモンも同時に出そう。」
『ユキナリさん、まだ僕戦えますよ!』
「無理しないでいいよ。僕はポケモンを酷使したくなんか
無い。僕の友達なんだから。」
そう言うとユキナリはコエンをボールに戻した。
次のボールを腰から外して手に持つ。
「せーのっ!」
また同時にボールが地面に落ち、ポケモンが姿を
現した。ユキナリの方は昨日捕まえたジグザグマで、
ユウスケの方は相棒の1人、マッドだった。
マッドは空中をフワフワ浮いている、カブみたいな
モンスターだった。顔が怖い。
「えーと、図鑑は・・・」
『マッド・普段は地中で眠っており、掘り出されると
五月蝿い声で喚きだす。あまりに五月蝿い声なので
相手にダメージを与えてしまう程だ。タイプは
くさ・こおり。』
「特殊能力はあるのかな?」
先程カレッキーの特殊能力のせいで痛手を受けた
せいか、ユキナリは慎重になっていた。
『特殊能力・騒ぐ・・・相手のモンスターに
少しずつダメージを与えていく。マッドが瀕死状態に
なると相手のモンスターに死の叫び声を聞かせて
道連れにする。ただし、倒れた時のマッドの残りHPより
相手モンスターのHPが少ない時にはこの効果は
通用しない。少量のダメージはマッドが瀕死状態に
なるまで続くので注意。』
「長ったらしい説明だなあ・・・」
『要するに、俺のHPが奴のHPを下回ってる時に
奴を攻撃すれば勝てるってんだろ?任せときな!
俺はアンタに惚れたんだよ。凄え相棒を持ってるじゃねえか。
俺の素早さについていける奴を始めて見たぜ!』
ジグザグマは吠えて相手を睨みつけた。
マッドはただ薄笑いを浮かべながらこちらを見ている。
「戦闘開始!」
ユキナリの命令でジグザグマは昨日披露した素早い
動きを展開する。マッドはとりあえず喚きだした。
「ユキナリ君。マッドはそんなに簡単には倒せないよ!
有利に立てば引き分けになってしまうから、ワザと
自分を不利にして勝たないといけないんだよ!」
そう言いながらユウスケは何かをユキナリに投げた。
「何これ・・・」
「耳栓。五月蝿いし、死の叫び声は強烈なんだ。下手すると
僕達が気絶しちゃう位鋭い叫び声だからね。」
ユキナリは背筋が寒くなった。すぐに耳栓を付ける。
しかし、これだとジグザグマの受け応えも聞けなくなる。
ユキナリは命令するだけの立場になってしまっていた。

29 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:27:06 ID:8.vfxiPc
ユキナリとユウスケはこの戦いにおいて耳栓を付けて
いたので、自分のポケモンに命令が伝わったかどうか
互いに解らない状態だった。
しかし命令しなければ戦えないのでユキナリは叫ぶ。
「ジグザグマ、たいあたりだ!」
ポケギアの『バトル』・『コンディション』によると
どうやら変種ジグザグマの使える技は『体当たり』と
『アイスアタック』の2種類らしい。『体当たり』は
ノーマルの常套手段で、『アイスアタック』は
こおりの技だ。しかしダメージの通常設定はどちらも同じ。
ならば『こおり・くさ』のマッドに効果的なダメージを
与える為には『体当たり』を使うしか無いのだ。

しかしユウスケは命令を出していなかった。
何故か口が全く動いていないのが確認出来る。
(ど、どうして命令しないんだ?)
ジグザグマは思い切りダッシュして浮いているマッドに
体当たりをくらわした。マッドは先程からずっと
騒いでいる。ジグザグマは攻撃をしただけなのに
耳を押さえてうめいていた。
(そ、そうか。引き分けを狙ってるんだ!)
ジグザグマが受けるダメージは微々たるもの。このまま
何の考えも無しに体当たりをし続ければ、特殊能力の
餌食になってしまう。ユウスケの残り手持ちはボタッコ。
コエンと戦い、互角の勝負を披露した兵だった。
ユキナリの手持ちはまだ戦いに慣れていないハスボーと
深手を負っているコエンの2匹。ここでジグザグマが
倒れてしまうと数的には有利でも実際には断崖に
追い詰められる事になる。
「ジグザグマ、待つんだ!」
しかしジグザグマは騒ぐマッドのせいか全く聞こえていない
らしい。ユウスケは何も言わず、ただ戦いを不安げに
見つめているだけだった。
(参ったな・・・)
ユキナリはやっと解った。このユウスケの戦法が
どれだけスタンダードで手厳しいものかを。
ジグザグマは痛みをこらえる事で精一杯。ユキナリの
命令が聞こえていない。対するユウスケは何も言わず、
ただ勝手にジグザグマが攻撃してくれるのを待つだけだ。
(ま、負けるかもしれない・・・)
ジグザグマは雄々しく立ち上がると、またマッドに
向かって体当たりした。ユキナリの命令は全く届いていない。
「やめるんだ、相手の思うつぼなんだぞ!」
ジグザグマは引く事を知らぬ真っ向勝負のポケモンだった。
今回はそれが完全に裏目に出たと言える。
ジグザグマが3度目の体当たりを当てた瞬間、ユキナリは
地面が少し揺れているのを感じた。空気がビリビリ震えている。
マッドが『死の叫び声』を発しているのだ。耳栓を
付けていても、その叫び声の凄まじい事がよく解った。
ジグザグマは当然マッドよりHPが多かったのでその
叫び声の犠牲になる。倒れて、ピクピク痙攣していた。

ユウスケは倒れて気絶しているマッドをボールに戻すと、
耳栓を外してもいい事を手振りで伝えた。
ユキナリは痙攣したままのジグザグマを戻すと、
耳栓を外し、溜息をつく。
「ユウスケ、マッドって強いんだね・・・」
「そんな事は無いよ。だってもしマッドが3匹目として
残っちゃったら、戦闘不能にしたトレーナーが負けに
なるルールなんだから。相手のポケモンの中には、
別のポケモンを引きずり出す『吠える』って技が
あったりするしね・・・」
「へえ、残っているポケモンを場に無理やり出す事も
出来るんだ・・・」
ユキナリは苦渋の表情でハスボーの入ったボールを
見つめていた。今信じられるのは、君しかいない。
君と相手をするのはポケモンバトルを知り尽くしている
ボタッコだ・・・勝負は見えてる、でも!
「可能性が1%でも残っているならば、僕は抗う!
オチさんの様に・・・最後まで諦めはしない!!」
ユキナリはハスボーの入っているスーパーボールを
手に持った。
「僕も知ってるよ・・・そのハスボー、バトルには
慣れてないんだよね。でも、僕はあくまでこれが
対等のバトルだと思ってる。同じ『こおり・くさ』
タイプのポケモンで最後の戦いをしよう!」
ユウスケもボタッコが入ったボールを握り締めた。
同時にボールを地面に投げつける。閃光と共に
またポケモンが2体姿を現した。

30 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:27:46 ID:8.vfxiPc
『ユウスケ、このヒトは?』
「ユキナリ君が捕まえたハスボーだよ。バトル慣れしてないけど、
君は全力で戦ってほしい、いいね!」
『えー?そ、そんな事していいの?』
「僕からもお願いするよ。これは僕が最初に体験する
試練だと思ってるんだ。ハスボーと一緒に、この
バトルに勝つ。絶対に!」
ユキナリの決意は固かった。ユウスケは頷くと、
命令を出す。
事実上ほぼ最後のバトルになる戦いだった。

現在の状況
変種ハスボーvsボタッコ(くさ・こおり同士の戦い)
ユキナリの手持ち・コエン(重傷)
ユウスケの手持ち・無し

『な・・・これは、何?僕は、どうしなきゃならないの?』
狼狽した変種ハスボーはユキナリに尋ねた。
「ハスボー、よく聞いて。僕は、君と一緒にリーグを
目指したいんだ。他のポケモンと戦って勝つ・・・
負けたって構わない。とにかく、今はボタッコと
戦ってほしいんだ。命令は僕が出すから・・・」
『た、戦う!?僕が他のポケモンと戦うの!?』
ハスボーは明らかに怯えている。
「頑張って!僕は君と一緒にリーグを目指したいと思った。
親を失った君と共に、成長していきたいと思ったんだ・・・
だから、僕と一緒に、ユウスケのポケモンに
立ち向かってほしい、お願いだ。頼む!」
ユキナリはハスボーに土下座までして自分の意志を伝えた。
雪が土下座をしているユキナリの背中に当たり、
消えていく。ハスボーは、ブルブルと震えていたが、
ユキナリのあの一緒に悲しんでくれた憂いの顔を
思い出し、決意を固めた。
(僕を育ててくれる人・・・僕と一緒に人生を生きると
誓った人・・・その恩に報いなきゃいけない!例え
怖くても、それが僕に出来る『お返し』なんじゃないのか?)
『・・・ルールを、教えてください。』
悲痛な顔を浮かべて、ハスボーはユキナリにバトルをする
事を述べた。ユキナリは顔を少し上げると、とても
すまなそうな表情をした。心を痛めながらも、ユウスケに
勝ちたい。そんな矛盾の中で、芽生えたのは『勝利したい』
という本能だった。

「君が覚えている技は僕が全部知っている。僕の命令に
合わせて、攻撃をしてほしい。」
『わ、解りました!』
「ねえ、ホントに大丈夫なの?」
ユウスケも止めた方がいいんじゃないかと言う表情を
している。
「傷薬ならまだあるから、今回だけ特別にコエンに
与えてボタッコと勝負させても・・・」
「ここでハスボーに逃げる事を教えちゃいけない。
戦わなきゃいけないんだ。僕とハスボーは。」
ユキナリはじっとボタッコを見つめた。
『ユウスケが言ったんだ。全力を出して頑張るよ!』
『あの人と、戦うんですね。』
「うん、同じタイプだから、泥沼になるかもしれない。
やばいと思ったら、負けたとしても君をボールに戻す。
すぐに手当てしてあげるからね。」
『・・・出来るだけ、やってみます。』

31 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:28:28 ID:8.vfxiPc
数分後、ようやくユキナリとユウスケのラストバトルが
始まろうとしていた。2人は、いや2匹のポケモンは
互いに睨みあっている。いや、ハスボーは完全に
気合負けしていた。顔が引き攣っている。
(だ、大丈夫かな・・・)
ユキナリはそう思いながら、ボタッコの特殊能力を
確認した。
『特殊能力・しめったからだ・・・やけど状態には
なりにくいが、こおり状態にはなりやすい。』
(そうか、前コエンが勝てたのはこの能力のおかげだったんだ
・・・で、ハスボーの特殊能力は?)
『みずけのかれは・じめんタイプの攻撃技が
効かないかわりに、いわタイプの攻撃技をくらうと
その技の通常ポイント×3倍のダメージを受ける。』
(今回の勝負には関係無いかな・・・こおりタイプも
持ってるハスボーにとっては、相手の特殊能力は意外と
いいかもしれない・・・って、あれ?)
ハスボーが持っている技は、確認してみると
『みずげい』と『はっぱカッター』、『体当たり』の
3種類だけだ。みずは相手には効かない、同じ草タイプも
効かないだろう、頼れるのは『体当たり』だけだ。
(苦しい戦いになりそうだな・・・)
「戦闘開始!」
ユウスケの声と共に、ボタッコが動き出した。
『面白いんじゃない?こういう戦いも。』
ボタッコは笑うといきなり上からボタッコに体当たり
しようとしてきた。『のしかかり』だ。
「ボタッコ、避けて落ちた所を『体当たり』するんだ!」
ハスボーは素早さが早い方なので、ボタッコののしかかりを
避ける事が出来た。ハスボーは歯をくいしばって
体当たりをする。ボタッコに当たり、ダメージを
与えた。しかし体当たりでは満足なダメージにはならない。
パワーベルトを付けているボタッコは、HPの
1/4程が失われた様だった。
「ボタッコ、気にせずもう1回のしかかりだ!」
しかし動きが緩慢だったのか、またしてものしかかりは
外れた。地面がボタッコの形にへこむ。
『うわああ・・・』
強い衝撃。ダメージの恐怖。死の恐怖。ハスボーは
その恐怖に完全に負けてしまっていた。いきなり
逃げ出そうとする。
「ハスボー、逃げないでくれ!ここで逃げれば、
攻撃も出来ないでただ相手の技をくらってしまうだけだぞ!」
しかし恐怖にかられたハスボーにはユキナリの声が
届いていない。後ろ向きになったハスボーに、
ボタッコが追い討ちをかけてきたのは当たり前の事だった。
『全力で勝負するよ!禍根が残らない様にしようね!!』
「いいぞボタッコ、そのまま『冷たい風』を使うんだ!」
ハスボーの周りを氷の風が襲う。逃げだそうにも逃げ出せず、
ハスボーはただ痛みと苦しみに泣いていた。
『嫌だよ、助けて父さん・・・母さん!!』
(もう、ダメか・・・)
ユキナリはガックリと肩を落とした。

逃げたら、負ける。勝負も、人生も基本は同じだ・・・

ハスボーは凍える様な寒さの中にいた。風が周りを
覆っていく・・・後ろを見るとボタッコがいた。
冷たい風を口から出している。・・・そうだ、
僕はこの人と、戦っているんだ!ふいに自分の道が
見えた。自分が今しなければならない事、それだけが
ハッキリと自分の頭を刺激した。ハスボーは気力を
振り絞ってその風から逃げ出す。
(父さんと母さんが僕を見ててくれてる・・・そんな気が
するんだ。僕が勝つ事を望んでる気が・・・!!)
「ボタッコ、一旦飛び退くんだ・・・ああっ!」
「は、ハスボー・・・」
命令も何もしていないのに、ハスボーは自らの意志で
ボタッコに体当たりした。それはボタッコの急所に
命中し、ボタッコはそのまま地面に倒れた。
『ゆ、ユウスケ・・・まだ、戦えるよ・・・』
ヨロヨロと立ち上がるボタッコ。思わぬ攻撃に何も出来なかった
自分が悔しかった。もう油断なんかしない。絶対に
勝つ・・・それが目の前の敵であるならば!
「ぼ、ボタッコ!体勢を立て直して・・・」
『イヤです!』
「ユウスケ、もう僕達の戦いじゃ無いんだ、これは。
ボタッコとハスボーの戦いなんだよ!」
「うん・・・そうなっちゃったみたいだね。もう、
見ているだけでいいのかも・・・」
ユウスケはボタッコを見つめた。
(こんなに熱くなったボタッコを見るの、初めてだな・・・)

『体当たりで、勝負しましょう・・・』
ハスボーはそう言うと、走る構えをとった。
『別にいいけど。ボクが勝つから!』
ボタッコは息を吸い込んだ。叫びはポケモンの戦闘力にも
大きく影響する。人間が最大限の力を一瞬発揮出来る
様に、ポケモンにもその能力が秘められていた。
唐突に、しかも一斉に2匹は走り出した。勿論相手しか
見つめていない。相手の腹にぶつかる事しか頭の中には
無い。勝つか負けるか、相手を倒すか自分が倒れるか、
究極の二者択一があった。しかもそれは自分では選べない。

32 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:29:02 ID:8.vfxiPc
ユキナリとユウスケの目の前で、2匹のポケモンは
激しくぶつかりあった。そしてその反動で2匹とも
地面に倒れこむ。どちらが体当たりしたのか、2人には
全く解らなかった。
「ど、どっちが勝ったんだろう・・・」
「ポケギアでHP残量を確認してみれば?」
ユキナリは慌てて『バトル』の『互いのHP』を見る。
『ハスボー(ひんし)ボタッコ(ひんし)・・・』
壮絶な引き分けであった。正直、ユキナリはこの戦いが
引き分けにもつれこむなど予想もしていなかった。
ハスボーが勇気を出し、ボタッコに真っ向から
立ち向かったのは彼にとって大きな喜び以外の何者でも
無かった・・・
「ユキナリ君。また・・・僕達負けちゃったね。」
「コエンがひんしにならなかったのは奇跡だよ・・・
ユウスケとマッド・カレッキー、そしてボタッコとの
戦いは引き分けに近かった。それでいいじゃないか。」
ユキナリは空を見上げた。相変わらず曇り空から
粉雪が無い落ちていたが、何故か今のユキナリにとっては
とても暖かい天気の様に思えた。

ポケモンセンターで一旦互いのポケモンを回復し、
2人が施設の前に戻ると、そこには彼がいた。
「すまんな、先程の君達の戦い、物陰から鑑賞させて
もらっていた・・・見応えのある戦いだったよ。」
「お、オチさん!」
「ユキナリと言うのか・・・君の名前は。ギリギリの
勝利。身を切られる様な勝負の果てに掴む高揚・・・
私も君もそれを望んでいるのかもしれない。私と君は、
同じ『ポケモントレーナー』なのだからな・・・」
オチは先程と同じ服装でユキナリ達を待っていたらしい。
「回復は済んだのだろうな。・・・ユキナリ、
私は君と勝負がしたい。受けてくれないか。」
「ええ、そんな・・・僕はまだ貴方に挑める程の腕は
ありませんよ!」
「君は立派に友人に勝利した・・・あの戦いで私は
確信している。ここのジムリーダーより、君はもっと
輝ける才能があると言う事を。それならば・・・」
オチは自分のマントをなぎ払った。
「私は君と戦いたい、私はあの方の為、もっと
強くならなければならないからだ!!」

オチとユキナリのポケモンバトル・・・

粉雪は相変わらず降り続いていた。ユキナリは突然
申し込まれたポケモンバトルにまだ戸惑っている。
(そ、そんな・・・今僕がオチさんと戦っても、
負けるのは目に見えてる・・・)
「君は私の願いを聞いてくれないのか?トレーナー
たるもの、他人からの挑戦は受けるが運命!
私と戦ってくれ、君の可能性を信じているのだ・・・」
オチは真剣な表情でユキナリを見据えていた。
その言葉に、嘘偽りは微塵も感じられない。
「ユキナリ君、どうするの?」
「・・・精一杯戦わせてもらいます。」
ユキナリは敗北を覚悟した。敗北する事を予感しながら
申し出を受ける事は辛かった。しかし、オチを
落胆させたくは無かった・・・男なら、前を向いて
正々堂々勝負するべきだ!そう、思ったのだ。

ユウスケは手袋を自分の頬に当て、寒がった。
「ねえ、ジムに戻って勝負した方がいいんじゃない?」
「その必要は無い。我々はここでバトルを行う。」
オチは蛍光色に光るモンスターボールを取り出していた。
「ユウスケ、見守ってて。僕・・・出来るだけの事はするよ。」
「ユキナリ君・・・」
ユウスケも解った。ユキナリは負けるのを承知でこの
バトルに挑戦しようとしているのを。
「私のポケモンもパワーベルトを装着してある・・・
レベルの高さ低さは、何ら遜色は無いハズだ。」
オチはクスリと笑うと、そのまま構えた。
「さあ、存分に君の強さ・・・確かめさせてもらうぞ!」

33 :夜月光介2005/11/26(Sat) 21:29:44 ID:8.vfxiPc
地面に2個のモンスターボールが落ち、そして閃光と共に
再びポケモンが2体向かい合っていた。
ユキナリが先鋒に起用したのはハスボーだった。
先程の勇気を買い、出来るだけねばってもらえるだろうと
敢えて先鋒にしたのだった。
「ハスボー、また戦った事の無いポケモンだ。気合を
入れて挑んでくれ!」
『解りました!』
ハスボーはまだ少し迷い、怯えがある様だが、逃げる気は
全く無かった。自分の『弱さ』を克服したい。親から
離れて、ハスボーは自分の道を見つけた。もう後には
戻れない・・・とにかく、負けたくない。とことん
抗って、勝ってみせる!
『マスター、この者は誰です?』
ハスボーと対時しているのは、光の輪を頭に付けた
天使の様なポケモンだった。純白の羽がオチのマントの
色に酷似している。
「勿論、トレーナーだ。私は彼に輝きを見た・・・
彼と戦う必要が出てきたのでね。」
『解りました。仰せの通りに従います。』
「ひかりタイプのポケモンなのか・・・?」
ユキナリはまたポケギアの図鑑をチェックした。
『ホーリー・神聖ポケモン。その昔、大群で現れて
暗黒に閉ざされていた世界を光で照らしたと言う伝説が
残っている。頭の輪から強力な光を放っており、
その光は時として人間を襲う程の魔力を誇っている。』
「特殊能力は?」
『せいなるまもり・どく・まひ・やけど・ねむり・こおり
状態にならない。その他の邪魔攻撃も一切効かない。』
「やけどにならない・・・」
しかしハスボーならただ攻撃するだけで充分だ。
ユキナリは属性と技もチェックした。
『ひかり・ひこう・・・『プラズマ』、『エレキテル』
、『さばきのひかり』を覚えている』
(そう言えば、さっき見た『ストーム』も
こおり属性が入っていなかったな・・・もしかしてオチさん、
このエリアの人間じゃ無いのかもしれない・・・)
「それでは、始めるとするか・・・」
「戦闘開始!」
ユウスケの声と共に、一斉にポケモン2匹は動きを見せた。
ホーリーは浮き上がり、ハスボーは地面を走る。
「ハスボー、浮いているホーリーに体当たりを当てるのは
難しい。さっきのボタッコ戦だって奇跡みたいなものだったんだ。
みずげいで相手を攻撃した方がいい!」
『はい、やってみます!」
ハスボーは『みずげい』を始めた。周囲に水が飛び、
ホーリーに水が思いっきりかかった。しかし、
体勢を少し崩しただけで、また何事も無かったかの様に
浮いたまま相手を睨みつける。
『マスター、先手を取られるとは・・・相手を甘く
見ていた様です。何なりとご命令を!』
「ホーリー、まずは『プラズマ』で相手をマヒさせるんだ!」
『承知致しました。』
ホーリーは青い光を羽から出し、ハスボーを照らす。
ハスボーは全身がビリビリと痺れるのを感じていた。
『体が・・・痺れてます・・・』
ユキナリはハスボーの状態をチェックした。どうやら
『プラズマ』は相手をまひさせる為だけに使う技らしい。
「次は『エレキテル』で追い討ちをかけろ!」
ホーリーはまた羽から黄色い光を出した。ハスボーは
懸命に飛び退こうとするが体が言う事を聞いてくれない。
あっけなく当たってしまい、HPの1/3が減ってしまう。
「ハスボー、ホーリーと距離を取るんだ!」
『で、でも全然動けないんです・・・』
ハスボーは涙声で答えた。全身の自由が効かない。
体が火の様に熱くなったり、氷の様に冷たくなったりした。
「とどめだ。『さばきのひかり』で終わりにしろ!」
『はあああ・・・』
ホーリーの頭の輪が突然激しく輝きだした。どうやら
力を溜めているらしい。普通ならこの時スキが生じて
攻撃をする事が出来るのだが、ハスボーはマヒしていた
為、光を溜めているホーリーを見ている事しか出来なかった。
「ハスボー、なんとか動くんだ!前でもいい、
横でもいい。とにかく少しでも動けたら・・・」
しかしユキナリの思いは木っ端微塵に打ち砕かれた。
ホーリーは輪をハスボーの方に向け、クリーム色に光る
美麗な光線を放ったのだ。ハスボーはなす術も無く
その場に倒れこんでしまう。勿論、瀕死状態に
なってしまっていた・・・

圧倒的な力に抗う事は出来ないのか?

34 :夜月光介2006/10/22(Sun) 11:57:35 ID:rysSWmDQ
「そ、そんな・・・1回も攻撃出来なかったなんて・・・」
ユキナリは開いた口が塞がらなかった。
オチはホーリーをフィールドに出したまま、静かな瞳で
次のポケモンが出てくるのをじっと待っている。
「ユキナリ君、とにかく次のポケモンを出さなきゃ!」
「わ、解ってるよ・・・」
ユキナリは紅蓮のモンスターボールを取り出した。
中にはユキナリの1番の相棒・・・コエンが入っている。
(ここで挽回を望むとしたら、コエンしか
戦況を逆転出来るポケモンは持っていない!)
ユキナリは迷う事なくモンスターボールを投げた。
地面に落ちたモンスターボールからコエンが出てくる。
『この人は・・・誰ですか?』
「ポケモントレーナーのオチさんだよ。今戦ってるんだけど、
今相当不利な状況に立たされてる。ピンチなんだ・・・」
『どうやら・・・最近フタバ博士が発見したひかりタイプの
ポケモンみたいですね・・・とにかく、やるしか
無いでしょう。命令を出してください!』
「戦闘開始!」
再び先に動いたのはオチの手持ちポケモン、ホーリーだった。
「ホーリー、先程と同じプラズマで相手を麻痺させろ!」
『承知致しました・・・』
羽を広げ、青い光を放つホーリー。しかしコエンは
反射的にその光を飛び退いて避けていた。ハスボーと違い、
まだ近付いていなかったので光を避ける事が出来たのだ。
「コエン、相手の羽から出る光の射程から離れるんだ!」
ホーリーが羽から出す光線には射程距離がある。
そこから離れて戦えば全ての光線を避ける事が可能だ。
コエンはバトルフィールドのギリギリラインまで
距離を取り、相手の動向を伺った。ホーリーは
ひたすらオチの指示を待っている。
「・・・そう、確かにホーリーには攻撃の射程距離が
ある・・・しかし、近付けば何ら問題は無い。
ホーリー、射程距離まで一気に迫るんだ!」
『了解致しました。』
ホーリーは羽を広げてさらに上に浮かぶと、そのまま
身体を傾け、滑空してコエンに迫ろうとした。
「今だコエン、射程距離まで近付いたホーリーに
鬼火を使え!」
『そ、そうか!』
コエンはハッと気付き、滑空してきたホーリーに
鬼火を放った。鬼火は油断していたホーリーの
急所に当たり、羽を焦がしていく。
『ま、マスター・・・』
「そのままふんばれ、お前はその程度で倒れるワケが無い!」
全身を包む青白い炎。そのままホーリーは悲鳴をあげ
逃げる事も出来ずに悶え苦しんだ。オチは唐突に
炎に包まれているホーリーをボールに戻した。
「・・・これ以上はホーリーの体が持たない。今
意固地をはっていたら、間違いなくホーリーは
瀕死を越えていただろう。・・・戦闘不能だ。」
オチは下を向いて悔しがった。しかし、ポケモンを
思いやっていた。ユキナリはやはりオチは尊敬に
値する人物だと本気で思った。
「け、形勢が元に戻った・・・」
ユウスケは不利な状況を跳ね返したユキナリに
驚きを隠せないでいた。僕でも、こんな戦いが出来る
かどうか・・・全く、自信が無かった。
「では、今度は私が次のポケモンを出すとしよう・・・」
オチはボールを投げ、次のポケモンをフィールドに出した。

姿を現したポケモンは、・・・見えなかった。
「えっと・・・オチさん、何処にいるんです?」
「君のポケギアを見たまえ。図鑑が反応するハズだ・・・」
オチに言われるまま、ユキナリは図鑑を見てみる。
『ウミホタ・人間の目には見えない小さな発光体。
1つ1つでは見えないが、集団で浜辺に集まる事があり、
それを見ると青い光を放っている事が解る』
ポケモンの映像を確認すると、どうやらウミホタは
プランクトンの様な姿をしており、暗闇では青く
光るらしかった。雪が降っているこの曇り空ではそれは
全く確認出来ない。
『ユキナリさん、僕・・・どうやって見えないポケモンと
戦えばいいんですか?』
「心配は無用だ。バトルの項目には『レーダー』も
ある。トレーナーがそれを見てポケモンに指示を出す。
それで解決出来ると思うが・・・大丈夫か?」
「レーダー・・・?あ、ありました!」
ポケギアの画面が緑一色になり、裏側の一部分が
スライドしてカメラのレンズが姿を現した。
レンズをフィールドの方に向けると、確かにコエンと
ウミホタがハッキリ見える。小さいのは同じなのだが、
青く光って見えるので位置がよく解った。
「大丈夫だと思います。特殊能力は・・・」
『ミニシールド・相手の直接攻撃を受け付けない』
(そ、そりゃそうだよね・・・)
ユキナリはタイプも確認した。
『ひかり・みず』
(・・・やっぱりそうだ・・・オチさんはここの
エリアの人間じゃ無い。何かの理由で、トーホクに
やって来たんだ・・・でも、何の為に?)
「早く始めてくれ。私とウミホタもさっさと勝負を
付けたがっている・・・」
(表情も解らないんですけど・・・)
ユキナリは汗をかいた。こんなバトル初めてだ。
相手の顔、どう動くかの予想が全く出来ない・・・
キツいバトルになりそうだった。
「戦闘開始!」

微小なポケモンと小さなポケモンの対決。

35 :夜月光介2006/10/22(Sun) 11:59:34 ID:rysSWmDQ
バトルが始まった・・・が肝心のコエンは自分から
攻撃をしかける事が出来ない。
「コエン、鬼火で先制攻撃をしかけるんだ!」
『ど、何処にいるんです?』
「左の方だ、攻撃される前に出来るだけダメージを
与えてくれ!」
『とにかく、ダメージを与えればいいんですね!
辛いバトルですが・・・なんとかやってみます!』
コエンは左方向に鬼火を繰り出し、攻撃した。
ポケギアで示されているウミホタの位置が移動し、
鬼火を避けてしまった事が解った。
「右だ、コエン!」
『逃げられましたか・・・ユキナリさん、このバトル
キツイですね・・・見当が付かないんですから・・・』
コエンは歯をくいしばって再び鬼火を繰り出した。
しかしウミホタは体が見えない程小さい為か
難なくそれを避けてしまう。
「コエン、また左に、いや右に・・・クソ、速すぎて見えない!」
『ど、どうすれば攻撃が当たるんですか?』
「ユキナリ君、これじゃウミホタと遊んでるみたいじゃないか!」
「わ、解ってるよ!・・・けど、これじゃあ・・・」
ユキナリは自分のふがいなさに気持ちが暗くなった。
命令も満足に出せない・・・ポケモンが見えないだけで、
機械に頼ってコエンを困らせてる・・・
(機械に・・・頼って・・・?)
ユキナリは勝てる可能性を見つけた。このままでは
確実に負ける。もうコエンの心眼を信じるしか無い!
レーダー機能をOFFにし、コエンに命令する。
「コエン、いると思った所に鬼火を当ててくれ!」
『カン、ですか・・・』
コエンは目をつぶった。
「こんな事で梃子摺っていては、私に勝つ事は出来ない・・・
見つけたまえ、可能性を!1つでもあるならば迷わずに
使うのだ!・・・私を落胆させないでくれ・・・」
オチはじっとコエンを見守っているユキナリを見つめた。
彼の目に、諦めの色は出ていなかった。最後まで、
戦う気力を失ってはいない。
(私が他のトレーナーに目を向けるとは、一体どうした事
だろう・・・ユキナリは私に不思議な感情をもたらす・・・
それは、期待だ。私と互角の勝負を繰り広げている彼に
期待しているのだ。・・・そう、私を超えるのでは無いか、
そう、思うから・・・)
コエンは暗闇の中、ウミホタの存在を認知していた。
激しく動き回るその素早い移動が、解る・・・
神経を極限まで尖らせて、攻撃を当てなければ!
『見えた!』
コエンは目を見開き、空中に向かって鬼火を発射した。
その青白い炎はウミホタに直撃し、ダメージを与える。
しかしウミホタの属性は『ひかり・みず』・・・
ダメージ属性が『ほのお』の鬼火では、ダメージが
少ないのだ。
「ウミホタ、みずでっぽうでコエンを倒せ!」
オチの命令通り、技を出してスキが生まれたコエンの
頭上から水が降ってきた。全身に付着し、大打撃を与える。
『クッ・・・!』
コエンは全身の震えと痛みで、反撃が出来なかった。
「コ、コエン!」
「とどめだ。もう1度みずでっぽう!」
また見えないウミホタからみずでっぽうが発射されたが、
少し位置がずれたのかその攻撃は外れてしまった。
「コエン、もう1回鬼火を出すんだ!」
『ユキナリさん・・・最後の攻撃です!』
コエンは痛みに耐え、先程みずでっぽうが発射された位置に
向かって鬼火を出した。そのまま炎は一直線に相手に
向かって飛んでいく。そして・・・当たった。
(頼む、凍ってくれ・・・!)
ここで負ければジグザグマと交代。直接攻撃しか出来ない
ジグザグマでは、そもそも勝負にならない事は目に見えていた。
コエン、僕は・・・最後までオチさんと戦いたいんだ!
そして、オチは再度命令を出した。もしウミホタが凍ったの
なら、みずでっぽうは出せない。
「ど、どっちだろう・・・」
ユウスケも不安な表情でこの場を見守っている。
「・・・ウミホタ、みずでっぽうでトドメをさせ!」
沈黙の後、・・・みずでっぽうは・・・
ウミホタがみずでっぽうを出す事は・・・無かった。
ユキナリが急いで『バトル』の『相手のコンディション』を
チェックすると、すでに『こおり』状態になってしまっている
事が確認出来た。トーホクでは、勝利確定である。
「ミスか・・・痛かったな。」
オチはウミホタをボールの中に戻した。
「ユキナリ君・・・勝ったよ。」
「うん・・・僕も勝てるとは思ってなかった。」
『ユキナリさん・・・奇跡が、起きましたね・・・』
ユキナリはボロボロのコエンをボールに戻した。
「うぬ・・・ついに私の切り札を出さなくてはならないのか
・・・いや、ユキナリ。君との戦いにこそ、相応しい。
私は君に私以上の輝く光を見た。その光が本当に
輝くかどうかは、君次第だ。私を倒す気で、最後の勝負を
してくれたまえ。・・・さあ、ポケモンを出すんだ」
ユキナリは最後のポケモン、ジグザグマを出す。
オチが出すポケモンは解っていた。ゲンタに勝った、
あのストームだ。勝てるかどうか・・・正直自信は全く無い。
しかし、ここまで来たからには、オチさんに勝ちたいと
言う思いは格段に強かった。自分との戦いなのかもしれない
・・・オチさんに勝つと言う事は。
「じゃあ、ユキナリ君・・・オチさんと一緒に、
最後のポケモンをフィールドに出そう。」

指標を、越えられるのか?

36 :夜月光介2006/10/22(Sun) 12:02:42 ID:rysSWmDQ
ボールが粉雪の降る地面に落ちると、また閃光と共に
ジグザグマと先程カビゴンと戦っていたストームが
出てきた。
『おい、アイツ宙に浮いてんのか?』
「うん。オチさんの切り札だよ・・・」
ユキナリはストームの特殊能力を確認した。
『ひかりのいちげき・相手があくかゴーストタイプの属性の
ポケモン、もしくは2属性のうち片方がそのタイプだった
場合、ストームがバトルに出た瞬間相手が負ける。』
「へえ、でもジグザグマはノーマルだから問題無いかな・・・」
「ユキナリ君、さっきの戦いではジグザグマの特殊能力を
確認してなかったよね。ちゃんと確認しておいた方が
いいよ。」
「OK。」
『ささくれのからだ・直接攻撃をした際、相手が受ける
ダメージが通常のダメージより少し上がる。』
「さてと・・・もう互いの手の内は解ったのか?
始めるとしよう・・・私にはそれ程時間の余裕は無いのだ。」
オチはジグザグマに向かって指をさした。
「戦闘開始!」
「ストーム、バリアーで相手の通常攻撃のダメージを
抑えるんだ!」
始まってから数秒、ストームは金色の光に包まれた。
『チッ、あがきやがって!』
「バリアー?」
「ユキナリ君、相手が出してくる通常攻撃のダメージを
少なくする攻撃だよ、でもスキが出来ちゃって・・・」
「そうか、ジグザグマ。アイスアタックだ!」
アイスアタックはこおりの属性判定を持っているが、
通常攻撃扱いとされている変種ジグザグマお得意の攻撃だ。
宙に浮いたまま、バリアーを張るのに精一杯のストームは
逃げる事が出来ない。そのままアイスアタックを
くらってしまう。
「バリアーが終わるまで、何回でもアタックするんだ!」
ジグザグマは動きが素早いのでオチの予想を遥かに超える
動きを見せた。何度も連続でアイスアタックを繰り出す。
『マスター、バリアーを張っていますが・・・
このままではHPが減るばかりです!』
「バリアーを張ったのが裏目に出たか・・・」
オチは『バリアーを解け』とは言わなかった。
その後、ストームは完全にバリアーを張り、
ジグザグマを突き飛ばした。
「HPはどれ位減ったんだ?」
ユキナリは相手のHP残量を確認するが、バリアーの為、
全体の1/4程しか減っていない。
(これじゃ、満足にダメージを与えたとはとても・・・)
「ストーム、こうはだんでダメージを与えるんだ!」
『解りました、マスター!』
カビゴンとの戦いで見せたあの無数の光の粒が、
ストームから放出され、突き飛ばされたジグザグマに
クリティカルヒットする。
『クソッ、まだ負けちゃいねえぞ!』
ジグザグマはユキナリが命令もしていないのに駆け出す。
「待て、ジグザグマ!相手の準備が整っている時に
飛び出すのは倒してくださいと言っている様なものだ!」
『五月蝿えな、俺は俺のやり方でケリをつけてやる!』
「ストーム、こうはだんを連続で放て!」
ジグザグマが射程距離に入る前に、ストームは再び
光の粒を撒き散らしていた。攻撃しようとする事に集中
していたジグザグマは、簡単にその攻撃を受けてしまう。
『ゲフッ・・・』
「じ、ジグザグマ!」
「ユキナリ君、HPがもうちょっとしか無いよ!」
ジグザグマはヨロヨロと立ち上がると、駆け出した。
その表情には鬼気迫るものがあり、ストームはひるんだ。
「相手の体力はもはや風前の灯・・・ストーム、
それ以上苦しませてはならん、決着をつけてやるんだ。」
しかし、あまりの形相にストームは怖くなり、攻撃を
する事が出来ない。
「何をしている!」
『す、すみませんマスター・・・どうしても攻撃
出来ないんです!』
「ジグザグマの執念が、相手のストームを怯えさせているんだ
・・・ひるんで当然だよ。」
「ユウスケ、ここで立ち上がらなきゃジグザグマと僕は
負ける・・・チャンスを、活かすしか無い!」
ユキナリはその瞬間を、見据えた。ジグザグマが
射程距離に入った時、迷わずに命令する。
「もう1度、アイスアタックだ!」
『このおおおおお!!』
氷の様に固く冷たい頭が、ストームに直撃する。
その破壊力はバリアーを粉砕し、ストームをねじ伏せる
程強力なものだった。ジグザグマの真価はここにある・・・
ユキナリはそれを実感した。
『マスター・・・』
血を吐き、悶えるストーム。オチが勝つ為には
・・・方法は2つあった。ジグザグマを倒し、重傷の
コエンと勝負する。そしてもう1つは・・・
「ストーム、てんからのむかえを使うんだ。」
『マスター、そんな事をしなくても・・・』
ストームは見た。マスターであるオチの穏やかでいて、
哀しいその顔を。微笑んでいる・・・悟った。
負ける覚悟での命令なのだ。ジグザグマを倒し、ほぼ瀕死に
近いコエンと戦えば、ひかり・いわタイプであるストームは
勝つだろう。しかし、オチはそれを投げていた。
何故だ・・・それも解った。この闘志だ。
ジグザグマは動きを見せればすぐアタックしてくるだろう・・・
自分とほぼ同じダメージを受けているにも関わらずだ。
オチは自分に『こうはだん』を出せと命じる事が出来ないのだ。

37 :夜月光介2006/10/22(Sun) 12:04:06 ID:rysSWmDQ
まともな攻撃をしようとすれば気力を振り絞ったジグザグマの
アタックが襲い掛かる。ならば、勝つには・・・
てんからのむかえで無理やり相手を下すしか無い!
オチは信じているのだ・・・またストームがHPを1残す
であろうと。それが、最後の望みなのだと。
(マスター・・・HPが1残るか倒れるかは、私にも
解りません。でも、勝つ可能性を掴むには、これしか
無いのは解っているんです・・・やらせてもらいます!)
いきなり、ストームはジグザグマの攻撃が絶対に
届かない空中に上がった。ジグザグマはなす術も無く
立ちつくす。ユキナリはストームのHPが残らない事を
期待した。
(ジグザグマの執念が、ストームを怯えさせた・・・もう
ストームにはジグザグマに向かって攻撃する程の
闘志は残っていない。もう、オチさんが出来る命令は
これしか無かったんじゃ・・・)
「ストーム・・・」
オチは光を放っているストームを見つめた。
ジグザグマは瀕死状態になり、ストームがHPを
残すのか、それとも負けるのか・・・その2つしか
無かった。
3人は空を見上げたまま、しばらく何も喋らず、
ストームの動向を確認しようとしていた・・・

望みを掴むのか、それとも敗北するのか。

「ユキナリ君、降りてくるよ!」
3人が見守る中、なんとまたストームはHPを1残して
降りてきたのだ。奇跡の生還だった・・・
「まだ勝負はついていないだろう・・・ユキナリ、
君のコエンをフィールドに出したまえ。最後の
決着をつけよう。」
ユキナリはコエンが入っているボールを見つめた。
(どちらかのポケモンが全員戦闘不能になった時点で
戦いは終わる・・・コエンだってあと1発でも攻撃を
受けたら瀕死だ・・・もう、どれだけ速く攻撃出来るか
しか無いんだ!)
粉雪はほぼ瀕死状態でヨロヨロとなんとか浮いている
ストームを苦しめていた。HPが1しか残っていないのに
戦いを強いられる事は滅多に無い事だろう。
『ま、マスター・・・早く、命令を・・・』
「ユキナリ君、ストームのHPが残っている以上、
コエンと戦わせなきゃならないんだ!」
「わ、解ってる・・・」
(コエン、本当にゴメン・・・でも、戦うしか・・・!)
ユキナリは紅蓮の色をしたボールを地面に投げた。

『ユキナリさん・・・どうやら、まだ勝負がついていない
みたいですね・・・』
荒い息で立つのもやっとだと思われるコエンが姿を
現した。ストームも条件は全く同じ。
「ストーム、もう相手のポケモンが出たぞ。
・・・ユウスケ君。早く戦闘開始の合図を!」
(コエン・・・ここが、最後のふんばり所だ!)
「戦闘開始!」
その瞬間、ストームもコエンもトレーナーの命令が
始まる前に勝手に動き出していた。もう命令を聞いて
いるヒマなど無い。相手よりいかに早く攻撃するか、
それしかもう考えられなかった。
「コエン、無茶はするな!」
『ダメです、ここで負けたくはありません!』
走りながら鬼火を携えるコエン。一方ストームは
こうはだんを行う為、光を吸収していた。
「ストーム、そのまま一気に行け!」
『はい・・・マスター!!』
最後の気力を振り絞って、ストームはこうはだんを発射した。
しかしコエンはもう鬼火を出していたのだ。
凄まじい瞬間だった。光の粒がコエンに命中した時、
全く同時に鬼火がストームを包んでいたのだから・・・
ストームのHPは1しか無かったので、当然
属性の有利不利は関係無い。コエンもほぼ同じ条件だった。
2匹はそれぞれの攻撃をまともに受け、その場に
倒れた。全く同時に意識を失い、戦闘不能に陥った・・・

38 :夜月光介2006/10/22(Sun) 12:04:57 ID:rysSWmDQ
壮絶な、引き分けだった。
オチもユキナリも、それが当然の様な顔をしている。
お互いに実力を認めあい、そしてまだ勝負をつけるべき
時では無いと思っていたからだろう。
「見事だ、ユキナリ君・・・運に頼る私には考えられない
強さを持っているよ。しかし、結果は相打ち。
それならば、私と君との間の決着は、まだついていない。
何時か、また戦う機会がめぐってきた時・・・それは、
私がもっと強くなって君の目の前に立ち塞がる時にしか
他ならない事を、覚えておきたまえ・・・」
オチは焦げているストームをボールに戻すと、
その場からすぐに立ち去っていった。ユウスケは呆然と
して、今の状況がまだあまり把握出来ずにいる。
(オチさんに勝ちたかった・・・だけど、負けなかった
だけ良かったんだと思う・・・それに、今はまだ
オチさんに勝てる実力を持ってるワケじゃ無い!)
それはハッキリ解っていた。ジムリーダーを全て倒し、
四天王も撃破し、チャンピオンを下すその日まで、
ユキナリはオチに挑戦する権利は無いだろうと
信じていた・・・

その後、ゲンタを崇拝しているトレーナーが数人
手合わせにやってきたが、ユキナリはことごとく彼等に
勝っていった。オチとの戦いで何かが目覚めたのだろうか。
ユウスケもユキナリの強さに目を見張る程だったのだから・・・
「ユキナリ君、随分バトルに慣れてきたんじゃない?
ちょっと寂しいな、僕はユキナリ君より長くポケモンと
付き合ってきたのに負けちゃったりして・・・」
「そんな事無いよ・・・たまたま運が良かっただけだって。
明日、僕はゲンタに挑戦する・・・ノーマルポケモンは
どんなポケモンとも対等に戦える実力派。オチさんの
戦いが活かせるかどうか・・・」
ユキナリは自信が無かった。オチとほぼ互角の
勝負を繰り広げていたゲンタ。オチが運を掴まなければ
勝てなかった相手であったゲンタ・・・そんな少年に
勝てるのだろうか?ジムバッチを手にする事が
出来るのであろうか・・・不安は心の中でどんどん
大きくなっていった。

その夜、ユキナリはすぐに寝た。ユウスケも
ゲンタに明日、挑戦する決意を固めたらしい。
それは、ユキナリにとっても嬉しい報告だった・・・

勝て。

39 :夜月光介2006/10/22(Sun) 12:05:57 ID:rysSWmDQ
翌日、ユキナリとユウスケはジムの前に置いてあった
自分達の自転車を邪魔にならない様どかすと、
白い廊下を通り、ジムのバトルフィールドへと赴いた。

バトル場では、ゲンタが2人を待っていた。
「昨日は結構はりきってたみたいだね。オイラの
戦い方を真似てるトレーナー仲間を全員倒したって
聞いてるよ。・・・どうやら、もうアンタはオイラに
立ち向かえる実力を手に入れてるみたいだ。」
「精一杯、やらせてもらいます!」
ユキナリはゲンタに頭を下げた。
「いよいよだねユキナリ君。僕、昨日は緊張して
寝るのが遅くなっちゃったよ・・・でも、ユキナ