異聞・三國志

1 :司馬の八達 ◆rjKgSIBAOU2005/03/27(Sun) 21:42:41 ID:gCuqBQN.
跳梁跋扈も終わっていないどころか進展も無いのに放っちゃいますよ、戦記物。
三國志って言ったって、元を知らない人でも楽しめるように努力します。
まぁ、人物とか、何もかも違うけどね。
んじゃ、始まり始まり。

2 :司馬の八達 ◆rjKgSIBAOU2005/03/30(Wed) 19:28:43 ID:kuFZpWl2
おっと、始める前に言っちゃうと、登場人物は皆漢字だらけなのに
ポケモンはカタカナというどうしようもない設定。
まぁ、何とかお願いします。
次から本文の始まりで

3 :司馬の八達 ◆rjKgSIBAOU2005/03/31(Thu) 22:15:34 ID:6pSGsu3w
「父上、これは……なんですか?」
木造の倉庫から埃とともにそんな声が飛び出してきた。
父上と呼ばれた人は玄関から出てきた。
白髪混じりの頭をボサボサと掻いたその人の動作は、
あくびも足すと、面倒くささを体現している。
「何だ?それは」
父は息子の手から、厚い紙の束を受け取り、一人で頷く。
「こりゃあな、俺の親父さんの時代だか……それよりも昔だかの、戦乱の時代に書かれた本だ」
「なぜ父上の倉庫からこんなものが出てきたのですか?」
息子は訝って父親に訊ねてみる。
「おそらく、親父さんのやつだな。ちょうどいい、全巻揃っているみたいだから読んでみろ」
父親はそういうと、館の中に再度戻っていってしまった。

 そう、これは、今より百年近く前の話。
まだこの国が群雄割拠の時代だったときの話。
 物語の初めは、漸盛(ゼンジョウ)の反乱から始まる。

4 :司馬の八達 ◆rjKgSIBAOU2005/04/11(Mon) 17:13:49 ID:QP.QmxiA
 時は西暦一八〇年。
遼国の王朝は腐敗しきっていた。
理由は、名君・温帝の死去により、宮中の幼帝派が皇太子派を粛清。
権力を幼帝派に集中させ、幼帝に政治をやらせずに、
権力を牛耳る。
 この事態に、各地の豪族は、いっせいに反乱を起こした。
また、その反乱を鎮めたりという仕事が多かったのも、地方の豪族である。
 そして、その反乱の中でも、最大規模の反乱が起きようとしていた。
 もとは宮中に勤めていたが皇太子を推し、幼帝派粛清未遂の刑により、最初に幼帝派に付けねらわれていた執金吾、漸盛(ゼンジョウ)。
漸盛は、密かに首都より南方の遼水を越え、揚武平原近くにて兵を集め調練し、『必殺擢減(テキゲン)』
といった旗を作っているという話である。
 ちなみに、ここに出ている擢減とは、多大な影響力を持つ宦官である。
彼は幼帝派で、皇太子派粛清を画策したために、皇太子派の恨みを一手に受けている。

 話は、この反乱が起きて二年後、西暦一八二年
都の騎都尉、洪楠(コウナン)が兵団を率いた。
討伐軍の先手として、漸盛を討伐するためである。
洪楠率いる五〇〇〇の軍団は、揚武平原まであとほんの少しの遼水まで到達した。

5 :司馬の八達 ◆rjKgSIBAOU2005/04/11(Mon) 21:34:37 ID:QP.QmxiA
 遼水の近くは静寂に包まれており、赤々とかがり火が陣地を照らしている。
その静寂を破るように、複数の馬蹄が硬い地面を叩く音が響く。
 数頭の、炎で道を照らす赤い馬が、具足をつけ、剣を佩いている人間を乗せて、陣地に向かっていた。
陣地の中、唯一光の漏れている幕舎の前で先頭の赤い馬は止まり、馬上の青年は炎馬から降り、幕舎の中に入る。
他の馬に乗っていた兵士たちは、他の幕舎へ散り散りに向かっていった。
「やあ洪楠殿、やっと来られましたか」
幕舎のなかでは、地図を広げ、何やら軍議の様な事をしていた。
全て赤の甲冑に身を包んでいる、何やら参謀っぽい人が、入ってきた将軍風青年に声をかける。
「多少遅れたが、物資の輸送の手はずは整えた。後は、戦略を練り、向こうへ突撃するだけだ」
青年将軍は、椅子に腰掛けながらそう呟いた。

 ドスッ。いきなり幕舎の屋根に巨大な矢が突き刺さる。弩砲独特の風切り音と共に、陣地の中の陣太鼓が鳴らされる。
「……何なんだこれは?程何(テイカ)」
洪楠は、程何と、目の前の参謀に訊く。
「敵襲ですね。洪楠殿も臨戦態勢を!! 敵を撃破します」
そう言うと、程何は幕舎を出て、起きだした兵士に指示を与える。

 恐らく、夜襲であろう。まだ戦闘準備も出来ていないと思っているのか知らないが、こちらにとっても好都合。
程何は内心ほくそえみ、声を張り上げた。
「全員槍構え。密集方陣を敷きます。騎馬隊は、陣地内での戦闘は行わず、先の広場にて遊撃戦を展開しなさい。
弓兵部隊は槍、騎馬たいの援護をすること。」
物々しく甲冑を着た兵士が集結するが、それよりも早く、敵の歩兵部隊が陣地に切り込んできた。

「……出撃だ。全員、敵の増援を阻止するために、広場で遊撃戦を展開する。全員、これ以上の敵を陣地に入れさせるな」
先頭の洪楠以下、全員が赤い甲冑を身にまとい、赤い炎を持つ炎の馬、ギャロップに乗っている。
 騎都尉洪楠の赤備え、炎騎馬隊である。都でもその勇名は高く、数々の反乱軍鎮圧に一役買っている。
ギャロップ達は嘶いているが、剣戟の音が鳴ると、自然と静かになり、臨戦の態勢になった。
「全隊、連続突撃の戦法を取る。第一隊、俺に続け」
後方の軍楽隊が太鼓を一度打つと、洪楠以下一〇〇騎がまず突撃を開始する。
 洪楠の騎馬隊が他の騎馬隊と違い、かなりの勇名がとどろいている理由は、多彩な戦法にある。
この連続突撃は、その中でも代表的なもので、一〇〇騎ごとに部隊を分けて、一気に時間差で突撃することである。
その速度と、馬上から放たれる長槍の一撃で敵に打撃を与え、加速するために敵から離れ、
また次の一部隊が突撃、その部隊も突撃準備、次の部隊が突撃、といったことを繰り返す戦法である。
 そのため、洪楠の騎馬隊は、一〇〇〇という少数でありながら、どんな大軍にも大打撃を与えることが可能だ。

 第一、洪楠の部隊が、広場より陣地に浸透しようとしている歩兵部隊に突っ込む。
いきなりの奇襲に、敵の部隊は大打撃を受け、指揮、連絡系統が混乱し始めた。
 その中、洪楠の第一部隊が加速するために敵集団から離脱。
すぐさま第二部隊が突撃する。
 その繰り返しと、陣地内からの槍の密集方陣に、弓兵の援護射撃で、敵軍を壊滅的な状態にした。

「敵はあらかた片付きました。残りの兵も向こう岸に撤退しました。それでは、今日は休ませ、明日明朝から急襲するというのはどうでしょう」
洪楠の隣に来た程何が、洪楠に訊ねてみる。
しかし洪楠は、
「いや、俺たちは被害が小さい。あと少ししたら援軍が来るはずだ。援軍と共に今夜中に揚武平原に上陸し、敵を破る」
洪楠がそう言うと、程何はうなずき、先ほどの幕舎へ入っていった。
 洪楠も、援軍到着までの一刻ほど寝ようと、従者に伝え、自分の幕舎へと向かった。

6 :司馬の八達2005/06/24(Fri) 21:48:33 ID:5gtqfqXg
「洪楠殿。もうそろそろ時間です」
誰かが自分を起こそうとしているのが分かり、すぐに洪楠は起きた。起きた洪楠に水を注いだ杯が渡される。
「俺の剣は?」
渡された水を受け取り、従者に訊ねる。
「ここにあります。そろそろ出発の準備をいたしましょう」
従者は、一礼して洪楠の剣を渡すと、すぐに幕舎から出て行った。
 洪楠も、すぐに赤い甲冑に着替え、剣を佩き、幕舎から出た。

 外は慌しかった。それもそうであろう。今から敵陣に奇襲を掛けようと言うのだから。
そんな中でも、程何は迅速に指示を出していた。
「第一隊は騎馬隊。川岸到着後、援軍到着を待つこと。歩兵隊も、弓兵を包むように槍兵が陣を組みます。
それには、現存歩兵の半数ほどが。残りは陣地防衛に徹してください」
あわただしく斥候が動き回り、色々な話し声が聞こえてくる中、程何は、そう指示を出す。

 準備するのにそんなに時間はかからなかった。
騎馬隊は、先ほど進発したため、恐らくもう川岸に居るだろう。
そう思うと、歩兵部隊に進発の合図を出した。
「歩兵、全部隊出発。揚武平原に進む」

「ここで止まれ。歩兵部隊と合流し、援軍到着と同時にこの川を渡る」
洪楠が右手を横に伸ばすと、後ろの騎兵隊は、隊列が崩れることも無く、綺麗に止まった。
 恐らく、洪楠の騎馬部隊の強さは、ここから来ているのだろう。
隊列が整っている。完璧な訓練の証拠ではないだろうか。
戦う訓練よりも、まず意思の疎通を図ろうとしている。

 すると、半刻も経たぬうちに、歩兵部隊が川岸に到着した。
「洪楠殿、そろそろですね」
程何が洪楠の隣に来て、洪楠に囁く。
「ああ、奴らは約束の時間に間に合わせるさ」
程何は洪楠に一礼すると、自分が受け持っている歩兵部隊のほうへ戻っていった。

7 :司馬の八達2005/06/24(Fri) 21:57:55 ID:5gtqfqXg
 川にもかなり霧がかかっている中、その霧を掻き分け、船首に龍頭を模した物をつけた戦艦が五隻、川岸に着岸した。

「洪楠殿、この兵団の輸送、われら凌珀(リョウハク)水軍にお任せを!!」
 船の上から澄んだ声で洪楠にに呼びかけてくるものがいる。
年齢は洪楠と同じくらいか、背は小さく童顔であるが、
体つきは頑健で、いかにも屈強の頭領といった感じである。
 凌珀の呼びかけと同時に、船の上の兵士たちが渡し橋のための木の板を下ろす。
「ありがたい、凌珀殿。全隊、船に乗り、渡河準備」

 洪楠は、全軍を船に乗せて、渡河準備を終わらせた。

 ちなみに、水軍部隊の隊長である凌珀と、都の騎都尉洪楠は昔からの友人と言うわけではない。
 一月ほど前、洪楠と程何が討伐軍の先鋒としての依頼を受けて都に上った際、大尉である曹秀によって引き合わされた。
そこで、“お互いをよく知ろう”という名目で、洪楠と程何、
凌珀と、凌珀の部将、梅乾(バイカン)の四人で宴会をやっていたところ、
凌珀と洪楠は、一日で十年来の親友のようになったのである。
 そこで、“揚武まで侵攻するときは俺の水軍を使え。 それなら簡単に渡れる。”
や、“この戦いが終わったら、お前の配下として、お前に着いていこう。そろそろ天下は乱れるからな。”
などと、半ば酔っ払っていたために冗談のように聞こえるような話をしていたのである。
 そう言えば、凌珀はなかなか都でも女に囲まれていた気がする。
一緒に歩いていても視線を感じた。


 船首に立ち、洪楠は一月前のことを思い出していた。
 風は強い。船の進むための動力としてはいい。そんなことを考えていた。
「向こう岸へは後一刻ほど掛かりますが……多少はお休みになられたほうが良いのではと思います」
 後ろから程何が声をかけてくる。それは何処か硬く、緊張しているときの声である。
「へぇ、お前でも緊張するのだな」
洪楠は戯れ、とばかりに振り向きもせずにそう言った。
「私でも緊張しますよ。特に、これから殿が天下へ雄飛するときなどは、
留守を守り、無理難題を押し付けられなければならないですからねぇ」
程何が、そう答える。何処かおかしなその雰囲気に、思わず笑ってしまった。
 だが、気づくと、その程何の緊張も解けていた。
「俺は……この遼の国を……いや、天を」
洪楠は、そこで言葉を止めた。何故自分でもこんなことを言い出したのかも良く分からなかった。
 なんとも言えないような洪楠の言葉を、程何が継いでいた。
「掴めます。いや、必ずや掴みましょう。私のためにも、凌珀殿のためにも、そして、天の人民のために」

 洪楠は右腕で剣を引き抜き、天高く掲げて、程何に見せる。
「俺について来い。乱世を駆け抜け、天を掴む男の生き様、お前に見せてやろう」
 自分の声が、震えながら、それでも高揚しているのを感じ取れた。
 そして、程何は頷いて見せ、ゆっくりと船内に戻っていった。

9 KB

 

Colorful Board System Version1.01 by ミライいろ。