ミュウツーと共に・・・

1 :ヂーブ2005/03/13(Sun) 14:09:20 ID:DVLDiyOE
初めまして、ヂーブという者です。

某サイトで、同じ小説を連載しているのですが、
誤字が沢山あったり、矛盾点があったりと、結構自分的に納得がいかない点が多々あるんです。
そんなとき、このサイトを見つけ、ここにいる皆さんには、完璧な作品を見せようと、
矛盾点をなるべく解消し、誤字もなくし改良してきました。
更新は遅いかもしれませんが、暖かい目で見守ってやってください。
それでは、始めます!


 第一章 ミュウツーとの逆転


プロローグ

「ポケモンリーグチャンピオンのヒサシさんが、遂に逃げ惑っていたミュウツーをゲットしました!・・・ヒサシさん、今のお気持ちは?」
インタビュアーがヒサシにマイクを向けた。ヒサシは、額に光る汗を拭い、カメラ目線でこう言った。
「ふっ・・・まあ、僕がミュウツーを捕獲したことは当然の事です。余裕でしたよ」
周りに群がる野次馬達を、一度一瞥し、再びヒサシが口を開いた。
「明日、僕が就任して初のジムバトル、この・・・」
ヒサシは手にしていたマスターボールをカメラに向け、
「・・・この、ミュウツー一匹で戦います。対戦相手を、叩きのめすという保証付きで!」
野次馬から、おぉっ、という歓声が上がった。ヒサシはそれを、笑いながら聞き入れていた。

 まだ夏に成り切らない太陽の日差しは、今後、この少年、“ヒサシ”に振りかかる様々な事件を物語ってはいなかった。


 第一話 ミュウツーとの逆転

・・・俺はまだ、夢の中にいるようだ・・・

・・・おかげで、俺の身体までミュウツーになっているよ・・・

・・・昨日、ミュウツーを捕まえたせいか?・・・

・・・今日は、俺がジムリーダーになってから初のジム戦だよ・・・

・・・まぁ、ミュウツーがいれば楽勝だな!・・・

「・・・起きろ!ミュウツー!・・・」

・・・外で俺を呼ぶ声が聞える。そろそろ起きる時間だな!・・・

「・・ミュウツー、起きろ!・・」

・・・ミュウツー?・・・

「ミュウツー、起きろ!」

 そう声が聞えた瞬間、ヒサシは眠りから目覚めた。いつもと変わりない光景・・・のはずだった。
「おはよう、ヒサシ君。それとも、“ミュウツー”と言ったほうが賢明かな?」
ヒサシは、声のする方向に振り向いた。

 信じられなかった。目の前には自分、つまり、“ヒサシ”がいたのだから・・・
       続く・・・

2 :ヂーブ2005/03/13(Sun) 14:15:26 ID:DVLDiyOE
 第二話 心移し

 ヒサシは、いつも通りに起きた筈だった。しかし、ヒサシの目の前には、ヒサシがいた。
夢ではないはず。では、今この状況は、何なのだ?
「おや、驚きのようだね・・・ヒサシ君・・・」
目の前にいたヒサシが喋った。軽快な口調。それでいて、自分を威嚇するかのような、鋭い目つき。
衣服はというと、自分が着ていた筈の、黒のパジャマだった。ヒサシは、目の前の光景が信じられなかった。
「言っておくが、これは夢ではない。」
再び、ヒサシが口を開いた。その根拠は何なのか分からない。
だが、ヒサシには、これが夢ではないことがはっきりと分かっていた。何となくではあるが。

「・・・おっ、お前は誰だ!」
動揺したヒサシが、狂ったような声でそう言った。
「おや?まだ分からないのかね?君の手を見てご覧?」
目の前の“ヒサシ”に言われ、ヒサシは自分の手を見た。
しかしその手は、自分の“いつもの手”、つまり、肌色ではなく、かつ五本指ではなかった。
白い手首から、細い手が伸びている。指は三本。その指先は、丸く、爪などはなかった。何時か、見た時のあるこの手・・・
そう、その手は、紛れもなくミュウツーのものだった。
「やっと分かったかな?君と私は入れ替わったのだよ!」
そこに居た、“ヒサシ”が言った。
「だとすると・・・お前は・・・」
「私は・・・ミュウツーだ!」

 ヒサシは、驚きを隠せなかった。というより、今のこの状況がよく飲み込めなかった。
いきなりそんなこと言われても、信じる馬鹿はどこにもいない。だが・・・
そこに居た自分、それは、ミュウツーで、自分が今いるところは、ミュウツーの体・・・
「・・・何故、入れ替わったんだ・・・」
ヒサシが小さな独り言をもらした。
「それは・・・私の技、“心移し”によるものだ!」
それを聞いたヒサシは、更に混乱した。

「いいか?お前は昨日、私を出しっぱなしで床に就いただろ?」
ミュウツー言葉を聞いて、ヒサシは昨日の記憶を思い出した。
・・・昨日、俺はミュウツーを捕獲した。そして寝る前、ミュウツーを眺めていて、そのまま寝てしまった・・・
「そして、私の心移しという技で、お前と私の体を入れ替え、
 そしてミュウツーとなったお前を、私はマスターボールに収めた。
 心移しとは、お互いがお互いを思うことによって、お互いの心を入れかえることの出来る技。
 そしてお前は、寝ているとき、私のことを考えながら寝た。
 だから、私とお前の体を入れかえることが出来たのだ!お分かりかな?」
ヒサシは、ミュウツーの言葉を聞いていくにつれて、混乱が増していった。
意味不明は技の名。心移し。自分と、ミュウツーの心は入れ替わった。意味が分からない・・・

「・・・ふっ、はっはっは!」
その時、ヒサシが突然笑い出した。全てを、否定するかの如く・・・
       続く・・・

3 :ヂーブ2005/03/14(Mon) 21:34:40 ID:9RnaQ/DA
 第三話 争い

「どうした?ヒサシ君?頭が爆発したか?」
ミュウツーが、嫌味ぽくそう言った。
「・・・・・・」
ヒサシが、急に笑い声を止めた。部屋は静寂に包まれた。
とは言っても、外では小鳥、というよりは、ポッポ達の囀りが絶え間なく聞えている。
完全な静寂が訪れることは、まずない。

「・・・ありえねぇ・・・ありえねぇんだよ!」
不意に、叫ぶようなヒサシの声が、その静寂を打ち破った。
そしてヒサシはそう言った瞬間、右手の拳を作り、ミュウツーに向かっていった。
そう、ヒサシはミュウツーに殴り掛かっていったのだ。その、白い腕で・・・
だがヒサシは、無力、そして、無知だった。

 その時、ヒサシの殴りかかった右手が、急に空中で止まった。いや、正確には、何かの力が作用し、止めさせられている。
「・・・なっ・・・何だ?」
叫ぶヒサシ。ミュウツーは両手を組んで、それでも、殴りかかってきた“自分”の腕を眺めつつ、こう言った。
「・・・残念だが、ヒサシ君。心移しで体を入れ替えても、心以外は全て元のまま・・・つまり、私はサイコキネシスを使えるのだよ!」
ミュウツーがそう言った瞬間、ヒサシが宙に浮かび上がった。空中浮遊するヒサシの身体、いや、“ミュウツー”の身体。そして・・・
・・・ドンッ・・・
ヒサシは床に叩きつけられた。狭い室内。そんなにヒサシとミュウツーとの距離はない。
しかしヒサシは、自分の無力さを感じたのか、もうミュウツーに殴りかかろうとはしなかった。

 ヒサシは不意に、時計に目を移した。時計の針は、七時四十分を指していた。その時、ヒサシの脳裏にあることが過った。
・・・ジム戦・・・
「おや?どうした?」
「・・・今日、俺の初のジム戦があるんだよ!」
「・・・なんだ、そんなことか」
ミュウツーは興味ナシ、と言わんばかりに投遣りに言った。
「俺・・・ミュウツー一匹で戦うって言ったんだぜ!」
そう、ヒサシはミュウツーを捕まえた時、ミュウツー一匹で戦うと宣言してしまっていたのだった。
今更それを撤回するわけには行かない。しかし、今の身体では・・・

「・・・お前が、ミュウツーとして出ればいいじゃないか」
「へぇ?」
ミュウツーの爆弾発言。ヒサシも聞き流す訳にはいかなかった。
「お前が、ミュウツーとして出ればいいだけの話だ!」
ミュウツーのその言葉を聞いて、ヒサシは目の前が真っ暗になった。
ミュウツーとして、俺が戦う。つまり・・・俺がポケモンと戦うということ・・・
朝に日差しは、窓の隙間から止めど無く光を送り続けていた。

 これは、まだほんの序章。だが、これは今のヒサシにとって、全てであった。
       続く・・・

4 :ヂーブ2005/03/15(Tue) 22:37:46 ID:TBvgumFM
 第四話 初試合

 ここは、トキワシティ。カントー地方で最後、つまり、八つ目のバッチがあるトキワジムのある町。
本来この町は、あまり賑わうこともなく、ひっそりとしている。町も、正直あまり大きくない。
しかし、こんな町が今日はいつもとは違った雰囲気を醸し出している。観光客が異常に多い。いや、おそらく彼等の九割ほどは観光客ではないだろう。
大まかに言えば観光客ということになるのだろうが。
そして、彼等の目的地はただ一つに集中している。トキワジムである。
今日は、天才トレーナー、ヒサシの初ジム戦が行われる日だった。
会場となるトキワジムには、観客でごった返していた。初夏の暑さ以上の熱気が、そこには漂っていた。

 午前八時。ヒサシとなったミュウツーが、バトルフィールドに登場した。その瞬間、大きな声援が、観客席から聞えてきた。
いつもとは違い、全体的に落ち着いたイメージの服装。そして、傍らのベルトには、モンスターボール、いや、マスターボールがただ一つ。
ミュウツーは暗がりから日の当る、バトルフィールドギリギリの外、白線のすぐ目の前に立った。
ミュウツーは観客席を見渡した。そしてふと、不適な笑みを浮かべながら対戦相手を睨みつけた。

 観客からの応援のそこそこ静まり返った頃、中央にいた司会らしき人物がマイク片手に話し始めた。
「・・・えぇ、皆さん。本日は、わずか十三歳でポケモンリーグの頂点まで上り詰めた天才トレーナー、ヒサシさんの、就任後初のジムバトルです!
 挑戦者は、ヒワダタウン出身のゴールドさんです。彼は今まで、カントーのジムリーダーをわずか一年足らずで下してきた兵です!
 まさに、天才トレーナー同士の戦いです!」
ミュウツーはその言葉に、聊か不満を抱いたのか、表情を変えた。だがそれも、ほんの一瞬のことだった。
「えぇ、では、初めにバトルルールから。ルールは、挑戦者にゴールドさんは、六匹まで使用可能です。
 ・・・で、ヒサシジムリーダーは、なんとミュウツー一匹で戦います!」
その瞬間、観客席がどよめいた。ミュウツーは少し、気をよくしたようだ。
「挑戦者にのみ、ポケモン交代が許され、ヒサシジムリーダーは、ミュウツーを引っ込めた時点で負け決定です!
 ・・・それでは、試合を始めたいと思います!」
司会のその一言で、ジムは一瞬にして静寂になった。不思議なくらい、雑音が消えた。
そしてミュウツーの表情も、対戦者のゴールドという少年の顔も、引きつった。
手には何時の間にか、マスターボールが握られていた。対戦者のゴールドの手にも。
司会がマイクを口元に近づける。観客達は思わず身を乗り出さんばかりにその光景に釘付けになった。

「試合・・・開始!」
ミュウツーがボールを投げる前に、一気に観客がどよめいた。
司会の声と同時に、ミュウツーはヒサシの入ったマスターボールを投げた。
そして相手も、モンスターボールを投げた。二つに光が、ジム内を一瞬だけ照らした。

・・・遂に、始まってしまった・・・
ヒサシは心の中で、悲鳴を上げた。ヒサシは目を開けた。自分が今立っている場所。それは、何時もポケモンという動物達が戦いを繰り広げるフィールド。
本来なら、人間がそんなところ踏み入れることは決してない。だが今は、それが現実となってしまった。
周りの歓声が、思いのほか五月蝿かった。が、それ以上に、フィールドを照らすライトが眩しい。
ヒサシはそんなことを考えつつも、一番心の中はこのことでいっぱいだった。
・・・もう、お終いだ・・・
ポケモンと人間に戦い。勝つ方は誰が考えたって容易に分かる。しかも、敗者はズタズタになるまで戦わされる。
勝負など、する意味はない。が、今更自分の名誉を捨てるわけにはいかない。こうなったら、ミュウツーの指示通り動くしかない・・・

 ライトの向こう、対戦相手のポケモンが判明した。案外小さなその形容。黄色い色が一際目立つ。
世界中の人間を、魅了し続けるそのポケモン・・・それは・・・
ピカチュウだった。ヒサシは拍子抜けするような対戦相手の登場に、ちょっとした余裕さえ感じていた。
・・・これなら、勝てるかも・・・
ヒサシは内心、そんなことを考えていた。

 屋外の特設ジム。太陽の光は、雲に遮られる気配は全くない。
ヒサシが、このピカチュウに遮られる気配も、全くなかった。
だが・・・時として、油断していると・・・
       続く・・・

5 :ヂーブ2005/03/19(Sat) 00:00:12 ID:ja1x8Ypw
 第五話 対戦(前編)

 激しい光と、電流。それにヒサシ、いや、“ミュウツー”は為す術がなかった。
ピカチュウの戦法。高速移動で素早さを高め、そこでヒサシを翻弄し、十万ボルトを放った。
某テレビアニメではない。生身の人間が十万ボルトを食らって無事なわけがない。
ヒサシはその攻撃一発で、両手を地面につけ、息使いも荒くなっていた。
そういう意味もあるのだが、ヒサシは反撃出来ずにいた。
何故か・・・それは、バトル前のミュウツーとの会話の中にあった。

・・・私がサイコキネシスで相手の攻撃を放つ。お前はそれに合わせ攻撃する格好をすればいい・・・
だが、実際ミュウツーは、このバトルが始まってから一度も攻撃を放っていない。
あまり時間が経っていないせいかもしれないが、それでも、そのミュウツーの行動は不自然過ぎた。
もしや・・・ミュウツーはヒサシを嵌めたのだろうか・・・
・・・クソ、ミュウツー・・・どういうつもりだ?・・・
ヒサシは心中、そんなことを思っていた。だが、敵の攻撃の手が止むわけではない。

「ピカチュウ・・・雷!」
ゴールドの一言。それは、あまりにも衝撃的だった。
遂に、ゴールドはピカチュウに雷を放つよう指示を出した。
それを食らえば、ヒサシは確実に一撃必殺・・・いや、確実に・・・生命を絶することとなるであろう。
ヒサシは焦った。だが、今の自分は何もすることが出来ない。
ただ、雷を放とうとするピカチュウを、潤む目で眺めるだけ・・・

「・・・ミュウツー、サイコキネシス」
落ち着いた、しかし威厳のあるミュウツーの低い声が、ヒサシの耳まで届いた。
ヒサシは、やっとか、と思いつつ、重い腰を上げた。そして、攻撃をする体制に入った。
ゴールド、或いはピカチュウもだが、突然の“ミュウツー”の行動に驚いたであろう。
だが驚いていられる暇など、一瞬たりともなかった。

・・・スゥ・・・ドガァァン・・・

 凄い。ヒサシの率直な感想。ピカチュウの身体が小さいことのあるが、ピカチュウは物凄いスピードで向こう側の壁に叩きつけられた。
勿論、ヒサシも、ミュウツーも手を出したわけではない。超能力。これがこの世界には、実在するのだ。

「・・・ピカチュウ、戦闘不能」
審判の、唖然とした声が聞えた瞬間、観客席から声援が聞えた。
凄い熱気だった。これがあの、ミュウツーの実力。観客達はそう思っているであろう。
ゴールドは、予想していたとは思うが、しかしその予想を遥かに越えるミュウツーの強さに、驚くしかないであろう。
ゴールドは、震える手で、ピカチュウをモンスターボールに納めた。
「クソ、ならば・・・いけ、ケンタルス!」
ゴールドは新たなボールを手にし、それを力いっぱい投げつけた。
淡い光が、太陽の光にも勝るほどの光へと変化し、そしてその光が一つの形へと変化していった。
二本の角。三本の尻尾。特徴的な各部とは対照的な、いたって普通の身体をしている、そのポケモン。
だがその強さは、ポケモンの中でもなかなかだ。暴れ牛ポケモン、ケンタロスの登場である。
しかし、両手を組んでいたミュウツーは、ふっと嘲笑い、そしてこう言った。
「・・・ミュウツー、サイコキネシス」
ヒサシは再び攻撃態勢に入った。最早この遺伝子ポケモンを、止めることは出来ない。

・・・スッ・・・ドガァァン・・・

・・・スッ・・・ドガァァン・・・

・・・スッ・・・ドガァァン・・・

・・・スッ・・・ドガァァァン・・・


長いので分けます。↓に・・・

6 :ヂーブ2005/03/19(Sat) 00:00:58 ID:ja1x8Ypw
↑の続き・・・


 早い。五分、いや、三分も掛かったであろうか。
その間に倒したのは、ケンタロスだけではない。ゴールドの、次々と繰り出すポケモン皆を下した。まるで、赤子の手を捻るかの如く・・・
無残なゴールドの姿。それを一番喜んでいたのは・・・観客達。
強さを求める人間。ミュウツーはそんな人間にとって、まさに最高のポケモンだった。
「・・・さあ、ゴールド選手のポケモンは、残り一体です!」
その言葉で、観客席はさらにヒートアップしていった。最後の一匹、最早ミュウツーの猛攻を止められるポケモンは・・・存在しない・・・い?

「・・・じゃあ、こいつはどうかな?いけ、バンギラス!」
声が響くと同時に、モンスターボールが放たれる。
さっきまでと同じ光景だが、ヒサシは同じだとは思っていない。何故なら・・・
ミュウツーでは敵わない相手が出てきたから・・・

 ゴールドの最後のポケモン、それは・・・悪タイプのバンギラスだった。
サイコキネシスはエスパータイプ。悪には通用しない。かといって、他の技は使えない。
何故なら、今ミュウツーはバトルフィールドにいないから・・・
遠距離攻撃、しかも、念力系の技しか使えない。もし、他の技を使ったら・・・ミュウツーが“ヒサシ”だということがばれてしまう・・・

・・・やばくないか?バンギラスって・・・
ヒサシは、心の中でそう呟いた。考えるまでもないことだが、それでも、今の状況が変わることはない。
と、その時・・・
「・・・私のことを思え」
ミュウツーからそんな言葉が聞えた。低いが、確実にそれはヒサシの耳に届いた。
だがヒサシは、その言葉の意味を全く理解することが出来なかった。
・・・思う?ミュウツーを?・・・

「バンギラス、破壊光線!」
ゴールドの声。それはバンギラスに向けられるもの。だが、ヒサシの耳にも聞える。いや、この場にいる全員に・・・
破壊光線。名前からして恐ろしそうな攻撃だが、その通りである。使ったポケモンでさえ、あまりの強さにしばらく攻撃出来ないというリスクが伴う。
人間が食らったら・・・言うまでもない結果が起こり得る。

「バンギィッ!」
大声を上げるバンギラス。それは、相手に対しての威嚇なのかもしれない。
その大口を開け、その口のなかから黄金色の光が生まれた。それは徐々に大きくなり、そして・・・

・・・もうだめだ・・・クソ・・・ミュウツーの野郎・・・
ヒサシは内心そう思いつつ、目を閉じた。人生の終焉を、受け入れるか如く・・・
そして、バンギラスの口から・・・破壊光線が放たれたのだった。
黄金色のそれは、一直線にヒサシに向かっていった・・・

・・・ドガァァァァァン!・・・
       続く・・・

第六話 対戦(後編)

「・・・バンギラス、戦闘不能・・・
 よってこの試合、ヒサシジムリーダーの勝利です・・・」
審判の声が聞えて、ヒサシは目を開けた。目の前には、バンギラスが倒れていた。
ヒサシは、今なにが起こったのか全く分からなかった。
そして、審判や観客達も、なにが起こったのか分からずにいた。
「ミュウツー、戻れ・・・」
ミュウツーは、ヒサシをボールに戻し、足早にフィールドから立ち去っていった。

 ミュウツーは、誰もいない家へと帰ってきた。
途中、簡単なインタビューに答えたが、どうやってバンギラスを倒したのかは教えなかった。
「出て来い、ミュウツー・・・」
部屋に戻ってきたミュウツーは、ボールからヒサシを出した。
「なぁ、ミュウツー・・・バンギラスはどうやって倒したんだ?」
ヒサシは、不思議そうにミュウツーに問い掛けた。
「ふっ、そうくると思ったよ・・・いいか、私はお前に、私を思えと言ったな?
 そして、私をお前で心移しを使って体を入れ替えた。
 バンギラスはお前、つまりミュウツーを攻撃しようとしていた。
 ということは、バンギラスはミュウツーのことを考えていた。
 そこで今度は、私とバンギラスの心を入れ替えた。心移しは、入れ替えるのは体だけと言ったな。
 つまり、その体で受ける痛みも感じるってことだ。
 だからバンギラスは、ミュウツーの体で受けた破壊光線のダメージを受けた。
その後は、心移しを使って元に戻しただけだ。分かったか?」
ヒサシは、なんとかそのことを理解したが、もう一つ、朝から心に残っていた疑問をミュウツーに問い掛けた。
「・・・ああ、分かった。だけどよお、なんでお前と俺の体を入れかえる必要があったわけ?」
ヒサシは、ミュウツーにその質問を問い掛けた。
       続く・・・

7 :ヂーブ2005/03/19(Sat) 00:10:15 ID:ja1x8Ypw
うわっ・・マズッ・・・
編集前の六話そのまま張りつけちゃった・・・メモの下にあったから間違えた・・・

まぁ、これが>>1に書いた駄作だと思って、編集後の作品をお楽しみ下さい(でも、もうネタバレになっちゃったな・・・
しかし余談なんですが、編集といっても八割近く描写とか書き直すんですよね。
ちなみに編集後のやつは明日書きますので・・・

8 :ヂーブ2005/04/08(Fri) 20:24:43 ID:u8zZsKrw
さて、>>7で明日と言っておきながら何日だったんでしょうね…(ぉぃ
久々の更新です。あと、これからちょっと内容が複雑になって分かりにくい所とか出てくるので、その時は気軽に質問してみて下さい。

 第六話 対戦(後編)

 息が出来る。心臓の鼓動が、聞える。生きている…

 ヒサシは目を開けた。何故生きているのか。何故バンギラスが放った破壊光線が、自分に当らなかったのか。
その答えを見つける為、ヒサシは目を開けたのだった。そこには…
力なく横たわるバンギラスが。そして、自分の身体からは…煙が上がっている。
間違いない。バンギラスの放った破壊光線は自らの、自分の身体に当った。が、しかし…
全ての理屈を覆すかのように、バンギラスは倒れていた。
勿論、ヒサシだけではない。観客も、ゴールドも、そして審判までもが、驚きを隠せない状態。
だが、ポケモンが戦闘不能になっている以上、仕事を果たすのが審判の役目。審判は納得のいかないような表情で、手に持っていた旗を振りかざした。
「…バンギラス、戦闘不能。よってこのバトル…ヒサシトキワジムジムリーダーの勝利、です」
「ちょっ、ちょっと待ってください!バンギラスの破壊光線は間違いなく、ミュウツーに当りました。なのに何故…」
ゴールドが、慌てて審判の言葉に異論を申し出た。だが審判は…
「…バンギラスが倒れている以上、貴方の負けです。おそらく、カウンターか何かの技でしょう」
「いや、カウンターではない…この、ミュウツーの強さが、このバンギラスを倒したのだ」
そう言ったのは…ミュウツー。唯一、この場で冷静でいる彼は、静かに審判の言葉を否定した。
自分の審判を否定され、更にゴールドにまで恨まれ、審判は肩身の狭い思いだろう。
だがミュウツーは、構わず次の行動に出た。
「ミュウツー、戻れ」
右手に握り締めていたマスターボールをヒサシに向けた。赤を帯びた光が一直線にヒサシを包み込み、その原型を崩していった。
そして、ヒサシは光がボールに戻ると同時にボールの収められていった。
ミュウツーはふっ、と笑いを残し、バトルフィールドを去っていった。

 暗く、人気のない廊下。フィールドと外を結ぶその空間で、ミュウツーは淡々と歩みを進めた。
外がやたら騒がしい。おそらく報道陣であろう。ミュウツーを胸を張り、ボールを傍らでベルトにしまい込むと、再び不気味な笑いを作り、外へ出ていった。

「…あっ!ヒサシさん!ヒサシさんです!」
報道陣がこぞって姿を現したヒサシに詰め寄った。眩いほどのカメラのライト。夥しい数のマイク。
だがミュウツーは、それを少しも拒みはしなかった。
「あのぉ…最後の戦い、つまり対バンギラスの時、バンギラスの放った破壊光線はミュウツーに当りましたよね?
 でも…一瞬のうちにバンギラスは倒れました…これは、一体どういうことなんですか?」
あるリポーターの質問。おそらくこの場にいる全員が今最も訊きたいことであろう。
「…バンギラスは、自ら放った破壊光線を自らで受けとめ、そのまま倒れた」
ミュウツーの答え。全く、意味が分からない。報道陣も一声に質問を浴びせ掛けた。
「どういう意味ですか?」
「何か、裏技ですか?」
「…カウンターですか?」
「…カウンターではない。それは先程もフールトで話した。そのままの、破壊光線をバンギラスは受けた。それだけだ」
ミュウツーもこれだけの質問の数、そして人間の数に苛立ちが募ったのだろうか…半ばいい加減に返答し、そのまま早足で自宅へ戻っていった。

 ヒサシ宅。誰もいない、暗く、寂しい家。何故、家族がいないか?…何れ分かることとなるであろう…
ヒサシの部屋。至って質素な造り。目立つものも、特にない。
そんな部屋。ようやく落ち着きを見せたミュウツーは、ボールを取りだし、そして床に投げつけた。
「…出て来い、ヒサシ」
小さな部屋に光が充満した。だがそれも一瞬で、すぐにその光は一つの形に出来あがった。
全身傷だらけの姿、いや…最早立ちあがれるはずがな…何故なら…破壊光線を受けたのだから…
「なぁ、ミュウツー…俺どうしても気になることが…」
「どのような術で、バンギラスを倒したってことか?」
…もう、この説明には飽き飽きした…が、仕方がない、教えてやろう…
「私は、お前に私を思えと言ったな?」
破壊光線が放たれる直前、確かにミュウツーはそう言った。
「お互いがお互いを思うことで成立する技…心移し。それを使って私とお前の心を入れ替えた。
 バンギラスは誰を攻撃しようとしていた?…ミュウツーだろう。
 つまり必然的にバンギラスは私のことを考えていた。
 そこで今度は、バンギラスと私の心を入れ替えた…お分かりかな?」
「…まあ…」
「心のみが入れ替わる。つまり、入れ替わった後の身体で受ける痛みも感じるということだ。
 だからバンギラスは、ミュウツー、つまり私の身体で受けた破壊光線のダメージを受けたんだ。
 その後は、バンギラスの意識がなくならないうちに心移しを使って元に戻した。お分かりかな?」
難しい説明。だがヒサシは、何と理解しようと努めた。この問題は、追々考えるとしよう…
…と、もう一つ。ヒサシは朝から抱いていた疑問がある。それを、再びミュウツーに問い掛けた。
「…微妙に、意味不明だが、分かった、あぁ、分かったよ…お前の能力は充分凄い…
 だがよぉ…なんでお前は俺と心を入れ替えたんだ?何か恨みでもあるのか?」
小さな疑問…だがミュウツーにとって、この疑問は大きなものだった…
       続く…

9 :ヂーブ2005/04/30(Sat) 11:03:57 ID:HB760IVQ
最近サボり気味だな…僕…

 第七話 理由

 ヒサシにとってはさり気無く、ただの疑問にしか過ぎなかった。
だがミュウツーにとって…その質問は大きなもの…

「…そっ、それはだな…」
戸惑いを隠しきれないミュウツー。目線を逸らしているところから、かなり焦っている。
何故、互いの心を入れ替えたのだという質問に…
ヒサシは正直驚いた。だが、それと同時に…なにか嫌味な発想を思いついた。
…何か、裏があるのか?…
「何でそこまで戸惑う?…理由なく、入れ替えたとかじゃないだろうな?」
「…そっ、そんなことは…ない」
噛みまくるミュウツー。更に戸惑いに拍車が掛かる。
「さぁ、理由を言ってみろ!」
「…お前に…」
一言そこで言葉を切るミュウツー。ヒサシは間髪入れず、
「俺に?…何だ?」
「…互いの心を入れ替えた理由、それは…お前にポケモンの痛みを味合わせてやる為だ!」
勢いよく言い返したミュウツー。ヒサシは不適な笑みを浮かべた。
「はぁ?…何それ?」
「お前は残酷卑劣だ。いや…人間ども全てがそうだ。
 ポケモンの痛みを全く分かっていない…分かろうとしないのだ。ポケモンを道具としてしか扱わない。
 だから…お前にポケモンの痛みや、道具として扱われる苦しみを味合わせる為に心を入れ替えたのだ!」
勢いはよかった。だが、そのミュウツーの言葉は口篭もり、嘘を付いている様であった。
「…俺はそんなこと、微塵も思ってないつもりだけど?」
「…どうだか」
今度はしっかりとした声質。それ故、ヒサシは妙に苛立ちが募った。
「はぁ?…お前の早とちりだろ?だいたいこの理由、嘘だろ?」
「では、何だと言うのだ?」
反論。ヒサシとミュウツーの立場逆転。ヒサシはミュウツーに問い詰められる…
いい加減怒りが込み上げて来るヒサシ。
…チッ…だったら…
「…だったら、いいさ。分かったよ…俺がポケモンとして戦ってやろうじゃないか。
 ポケモンの痛み、分かってやるよ!明日の挑戦者の最後の一匹は、俺一人で倒す。お前は手出しするな。
 どんなポケモンであっても、もうお前に指図されるのは御免だ。その代わり…
 俺が勝ったらこのふざけたお遊びは終わりにしろ。いいな!」
「分かった」
即答。ミュウツーは微笑を浮かべながら、ヒサシを、ボールの中にしまい込んだ。
…愚かな…
…あの野郎を見返してやる…絶対に…
対照的な二人の考え。その頃はまだ…この二人が協力するとは本人達でさえ思わなかった。

 午後七時。星が夜空を彩る中、ミュウツーは一人、部屋の中で外を眺めていた。
安定した精神の中、ふとミュウツーは今日の出来事を思い出していた。
熱気に包まれた観客席の中…雑然とした人込みの中で、一人、ミュウツーの目を奪うものが…
…観客席に、あいつがいた…あの研究員…
独り言を零すでもなく、ただその事実だけを繰り返し心の中で呟いた。
…何故あいつは、観客席に?…だが…あいつと私はもう関係はない…そう…もう、関係ない…
最後に辿りつくのは…その言葉だけ…関係ない…

 ミュウツーの瞳に写った一人の人物。
関係ない…はずがない。

       続く…

10 :ヂーブ2005/07/02(Sat) 20:14:44 ID:wYo0CHc6
2ヶ月の沈黙ですか……グヘッ…(殺

 第八話 優しい瞳

 午前8時。もう間もなくバトルが始まる。ジムリーダーとして二回目のバトル。
今日も観客席は大勢の人でごった返していた。いや、昨日より増えた気もする。
昨日の圧勝。そして、ミュウツーによる不可解な技でのバンギラス攻撃。
それを自らの目で鑑賞しようというのだろう…
…全く…人間とは愚かなものだ…

 一方ヒサシ。朝から一言もミュウツーと言葉を交していない。
いや、ミュウツーもヒサシに話し掛けようとはしていない。
沈黙の続く二人。そんな中、ミュウツーは感極まる観客席を眺めた。無駄な妄想かもしれない…しかし…
…あいつは、いない、な…
あいつ…一体何者?…だが今は、それを知る余地はない。

「さて!やってきました注目のジムリーダーの戦い!
昨日、圧倒的な力強さを全世界に見せつけたヒサシジムリーダー!
今日のお相手は、無念にも昨日敗北してしまったゴールド選手の弟、シルバー選手とのバトルです!
ルールは昨日と同様、挑戦者は六匹、リーダーはミュウツー一体のみの使用です!」
 そこでワッー、という歓声が上がった。それにミュウツーは、微笑を浮かべた。
「それでは、両者、準備は宜しいでしょうか?」
「…あぁ…」
「ハイッ!」
 初々しいシルバーの声とは裏腹に、ミュウツーは静かに答えた。
右手には、既にマスターボールが握られている。
「それでは…バトル開始!!」
 開戦の合図。それは同時に、挑戦者の敗北の合図…のはずだった…


 無論、ミュウツーは負けはしなかった。圧倒的力で、相手のポケモンを下していく。
これこそ…“赤子の手を捻る”というのだろうか?…
「…さぁ!シルバー選手の手持ちは、あと一体だ!!」
 一気にヒートアップしていくジム内。熱気に包まれながら、ヒサシは冷静になった。
…最後の一匹…俺がこの手で…ミュウツーの手を借りずに…叩き潰す!…
ポケモンと闘うなど、初めてのことだ。更にヒサシは、肉体的にも、自信のある方ではない。
しかし、勝てると信じていた…いや、信じたかったのだ。
自らの手で勝利を掴み……このふざけた遊びを、終らす為に…
…さぁ!こい!!…

「…クソッ…最後の一匹が、こいつとは…」
 愚痴を漏らすと同時に、シルバーはボールを投げつけた。
天井のライトが、回転するボールに反射する。最後の一匹…ヒサシの運命を変えるポケモンは…

…カッ……カイリキー!?……
驚き、思わずヒサシは表情を歪ませた。
その、神々しいまでの肉体…相手が普通のポケモンでも、肉体で敵う相手はまずいない。
それが…相手は人間だ。勝てるはずが……ない。

「…フッ」
 ミュウツーは鼻で笑った。そしてゆっくりと、後方にあるベンチに腰を下ろした。
…愚か者めが…さぁ、自らの拳で、奴に向かっていくがいい…そして、このジムのフィールドに平伏すがいい…
ミュウツーは、最初から分かっていた。どんなポケモンが相手だろうとも、人間が敵うはずがない、と。
…自らが望んだことに、後悔するがいい……っ!!…

 その時、ミュウツーは心の中でも、息を呑んだ。

…馬鹿な……奴が……

 観客席の隅。固唾を呑んで、フィールドにいるミュウツー――今はヒサシだが――を見つめている者。
白衣を羽織っている。全く、場違いである。それでも彼は、構いやしない。
そして彼は……ふとミュウツーに目線を向けた。ミュウツーは立待ちに、凍り付いた。
……あの……あの時と同じ…優しい、瞳……
二度と関わらないはずだった…もう、関わるのもうんざりだった…しかし…
…ミュウツーの心の中に、あの日が蘇って来たのだった……

       続く…

11 :ヂーブ2005/07/22(Fri) 23:27:18 ID:ciE075Oc
小説コーナーに自分のがあってびっくり!…まあ、お陰でやる気が湧いてきました(ぇ

 第九話 敗戦

「…グッ……」
 ヒサシはその場に跪いた。僅かニ発のパンチ。しかし、そこまで耐えただけでも優秀かもしれない。
だが…どこまで耐えられるか…生身の人間が…

 影でヒサシを見つめるミュウツー…いや、ヒサシの姿は見つめていない。見つめる振りをしているだけだ。
痛々しいまでのヒサシの姿。本来はもっと、たっぷり傷ついて欲しいと願ったはずだ…しかし…
今は違う。どうしてか、そんなヒサシを真ともに見ることができない。ただミュウツーは、空虚を見つめている。
何時からだったであろうか…こんな感情を忘れたのは…
そう…これが初めてではない、人間に情けを感じるようになったのは。
ただ、最近その感情を押し殺していただけ…ポケモンとして、“人間”の感情を持てなかっただけ。
それが……“あいつ”の…あの、瞳によって…再び目覚めてしまったのだ…

 何がヒサシをそうさせたのだろう…ヒサシは膝に手を付き、何とか立ちあがった。
会場の歓声が再び熱を帯びる。口元の血を拭き取りながら、ヒサシは数メートル先のカイリキーを見つめた…
…今、あいつも見てるかもな…このバトル…
思いを巡らすヒサシ。そして不意に、手に力がこもる。
…俺の人生を…いや、俺の両親まで奪ったあの野郎……だったら、あいつに俺の力、見せてやる…

 突如走り出したヒサシ。ボロボロの身体を、ここまで動かせるだけ凄い。
一直線にヒサシは、カイリキーに向かって突進していった。唯一の攻撃手段。相手を倒せる可能性は、0に等しい…

…ドスッ…

 鈍い音が響いた。ヒサシの突進攻撃。無論、カイリキーは痛くも痒くもない。
「…カイリキー…爆裂パンチ!!」
 あまりにも唐突なシルバーの指示。カイリキーは勢い良く、四本の腕を振り上げた。
ヒサシはそれを、避けることも、防ぐこともできなかった…

…ゴゾッ…ズサァァァッ…


「…ヒサシッ!」
 思わず大声で叫んでしまったミュウツー。だが幸いなことに、観客の声にそれは呑み込まれた。
ヒサシの身体は中を浮き、地面に擦れ合いながら飛ばされていく。
フィールドの真ん中で、大の字になって倒れ込むヒサシ。口から、腕から、足から…
多量の血液が流れ出ていた。最早、立ち上がることは不可能であろう…つまり…

 審判が、ヒサシの元へ駆け寄る。敗北の合図は、間もなく下される。
目を塞ぎ切ったヒサシ。それを確認した審判は、旗を振り上げようとした。
「…ミュウツー、戦闘…」
「戻れ」

 早口に叫ぶミュウツー。右手に持ったボールのスイッチを入れ、敗北の合図を聞く前に、ヒサシをボールに収めた。
「…グリーンバッチは受け付けから受取れ」
 ミュウツーは早口でそう言った。
そのままミュウツーは、右手にボールを握り締めそそくさとその場から駆け出した。
暗い廊下に入る。冷たい空気が流れていた…
背後から、さまざまな雑音が聞える…観客のブーイング…司会者のアナウンス…シルバーの歓喜の雄叫び…
全て、ミュウツーにとって雑音…全て、初めて味わう敗北の苦痛…

 続く…

12 :ヂーブ2005/07/25(Mon) 22:30:01 ID:irSowEkI
 第十話 人間の心

 ぼやけた視界の先、ミュウツーは心配そうに顔を覗かせていた。
一体何が…ヒサシの記憶が取り戻る前に、ミュウツーは口を開いた。
「…ふっ…傷薬でもやっぱ効くな…」
「…はぁ?」
 ヒサシは大まかな記憶を取り戻した。無論、カイリキーに殴られる前までの。
しかしここは…自分の、ヒサシの家。ベットの上で、ヒサシは横たわっていたのだ。
「…俺は、一体…」
「負けたんだよ」
 ヒサシのぼやきに、ミュウツーが叫んだ。怒りを隠すことなく、語気を強めて。
「…えっ?」
「お前は負けた。カイリキーの爆裂パンチで終ったんだ」
「…そう、か…」
 部屋に重苦しい空気が流れた。俯くヒサシ。窓から、夕日を眺めるミュウツー…

 ヒサシはミュウツーを見た。遠くを見つめている。だが、どうしても疑問に残ることを、問いかけてみた。
「…なぁ…お前、何で俺を救った?」
「んっ?…」
「…傷薬…お前、俺を苦しめてぇんだろ?」
「助けてもらって不服なのか?」
「んにゃ…だけどお前は言ったはずだ。俺を、散々苦しめるってな…」
「あのまま放っておいたら、お前は重体だったぞ!」
 いきなり怒鳴ったミュウツー。窓枠から、ヒサシへと顔を向けた。
その目からは…怒りと、そして悲しみが伝わってきた。

「お前…俺に同情しているのか?」
「…そう、か…そう見えるか…やっぱりな…」
 再び外に視線を戻すミュウツー。ため息混じりの返答。哀愁漂う表情…
これが世界一、強暴なポケモンなのか?…ヒサシの脳裏には、思わぬ疑念が過った。
「やっぱりとは、どういう意味だ?」
「…そうだ、私には…」
 躊躇うミュウツー。夕日が、ミュウツーの横顔を照らす。
「…私は、人間の心をもっている。だからお前に同情した」

 ヒサシには、ミュウツーの言葉が理解できなかった。
人間の心を、もっている?…ポケモンが、人間の心を?…
「…それは、どういう…」
「…心移しには、相手を思う気持ちが必要となる。
思い…無論、ポケモンにも相手を思い遣る気持ちはある。しかし…人間の心は思い遣る気持ちが大きい。
…だから私は、人間の心をももっている。心移しのときだけ、それを出せるようコントロールしていた…しかし…」
「違う。俺が訊きたいのは…」

 不意に部屋に静寂が訪れた。ミュウツーは、ヒサシの言い掛けた台詞を聞くことなくボールに戻した。
…何だよ、あいつ…
ボールの中でヒサシは愚痴をこぼした。

…人間の心、か…

 続く…

13 :ヂーブ2005/07/29(Fri) 21:33:14 ID:Ij9PWni.
 第十一話 過去(前編)

「サトシ先輩やシゲル先輩みたいに、絶対になってみせる!!」
 この口癖も、今日で聞けるのは最後かもな…
オーキドはそう思ったであろう。朝日がまだ昇りかけのときだった…
これは、今から三年前の話である。マワラタウン出身のヒサシは、十歳になったその日、ポケモントレーナーとなった。

 十歳になったばかりのヒサシ。無論、マサラタウン以外の何処へも行ったことがなかった。
世間の暗闇を知らない子供…この頃はまだ、性格は人懐こく、優しかった。
初めにオーキドから“ゼニガメ”を貰った時は、物凄く喜んだ。そして、ゼニガメをいつまでも可愛がった。
飼い主に似る、というのだろうか…ゼニガメもまた、人懐こい性格であった。
世間の厳しさを知らない、一人と一匹…彼等の前に付きつけられたのは、現実だった…

 易々と潜りぬけられる道ではない…彼等は苦心した。人の何倍も、何十倍も…
だが…彼等は見事ジムを全て制覇した。今から二年前、旅立ちの日から、一年後経った頃だった…

 ヒサシは胸を張って、ポケモンリーグに挑戦した。
彼の仲間、ゼニ…いや、カメックスと、旅の途中で出会った奴等と共に…
しかし、運命は残酷だった…それとも、これが現実なのだろうか?…

 ヒサシ、予選リーグ敗退。

 旅立ち僅か一年で,
ポケモンリーグに挑戦できただけでも凄いことではある。しかし、ヒサシの志は高かった。
彼は酷く落ち込んだ。精も根も尽きて、無気力になっていた。

 一人の男が、ヒサシに声を掛けてきた。試合を観戦していたときである。
何処か、見覚えのある男…誰だ?…ヒサシは必死に記憶を辿った。
「…君、確か予選で戦ったトレーナーさんだよね?…確か、“ヒサシ”君って名前だったよね?」
 そう…この男、ヒサシを予選で負かしたトレーナー。年齢は30代くらいだろうか?名前は…確か…
「…改めて…俺は“タクマ”って言う。宜しくな」
 そうタクマだった…しかし、今更彼が何の為に?…
「落ち込んだって仕方がない。あんた、まだ若いんだから…」
「僕に、何の用ですか?」
 タクマの言葉を無視し、ヒサシはそう言った。バトルで負かされた相手。否応にも、怒りが込み上げて来る。
「…ふっ」
「何が可笑しいんですか?」
 怒りを隠すことなく、ヒサシはタクマにあたった。
「いや…なぁ、ヒサシ君。ちょっとお話したいことがあるんだが…」
「……」
 ヒサシはタクマの言葉を無視した。沈黙し、試合を見ているふりをした。
「…どうかね?俺と特訓しないかい?」

 予想外の、タクマの言葉。ヒサシは思わず、タクマの方を振りかえった。
「…えっ?」
「いいだろ?少なくとも俺は、お前さんより長く生きてるわけだ、バトル経験はそれなりにある。一年後の次の大会まで、特訓しないか?」
「…でも…」
「んっ?何か問題あるか?」
「…だって、僕みたいに、才能のない奴何か特訓したって…」
「バカ!」
 突然タクマがそう言った。ヒサシはいきなりのことで驚いてしまった。
「お前には、素質があるんだ、ポケモントレーナーとしての…俺は少なくともそう思うぞ。才能ないなんて、言うんじゃない!」
 その言葉が、ヒサシの心に染み渡った。才能がある…初めて人に誉められた気がした。
思わずヒサシの瞳からは、美しい雫が流れていた。
「絶対世界最強になれる。俺が保証する。だから…特訓、やらないか?」
 間はなかった。ヒサシは大きく、縦に首を振った。

 あの日から、ヒサシの特訓は始まった。毎日毎日、とても厳しい練習…
暑い日も…寒い日も…雨の日も…風の日も…
だが…厳しさと比例するかの如く、ヒサシは確実に強くなっていった。

「…強くなったな、ヒサシ」
 これがタクマの、いつもの口癖になる程であった。
そして、あの日から早一年が経とうとしていた…

 と同時に…悪夢の始まりもが、近づいていたのだった……

 続く…

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Colorful Board System Version1.01 by ミライいろ。