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Blue Sky

1 :エンタ2005/02/09(Wed) 17:20:34 ID:itj68Ep2
はじめまして。
ポケモン小説だいすき
エンタ(15)です。
今まで僕は読む派だったのですが、
精鋭ぞろいのこの掲示板みて
書く側にチャレンジしようと思います。
皆さん応援してください。

151 :エンタ2006/02/11(Sat) 13:44:28 ID:QIDK7VeQ
第131話 ミツルVSワビスケ・其の二

ミツル「チリーン!!サイコウェーブ!!」
ワビスケ「ゴースト、ナイトヘッド!!」
超と霊の波動がぶつかり合った。沈み始めた夕日は、勝負の行方をわずかにワビスケに傾けていた。
ワビスケ「このまま日が沈めば、ゴーストの独壇場でござる!時と場所を誤ったな!!」
ミツル「キミが勝手に現れたんじゃないか!!ザングース、でんこうせっか!!」
ワビスケ「ハブネーク、ポイズンテール!!」
今度は鋭いツメと鋭いシッポがぶつかり合い、火花を散らした。
ワビスケ「どくどくのキバ!!」
ミツル「カウンター!!」
肉を斬らせて骨を断つ。
ザングースはどくどくのキバをまともに体に刺されたまま、ハブネークの図体をじめんにたたきつけた。
ミツル「キバの傷は痛いけど…ザングースは先祖代々ハブネークと戦い続けてきたんだ!そのどくは効かない!!」
ワビスケ「めんえき力をつけたか…だが、それはこちらとて同じ!キバと剣の尾は、そのツメよりも鋭い!!」
アイアンテールが炸裂した。
ミツル「ザングース!!」
消えた。…消えた?
ワビスケ「なッ…みきり!?」
ミツル「……破壊の爪…」
ワビスケ「――後ろか…ッ!!」
ミツル「ブレイククロ―――――ッ!!!」
ハブネークの伸びきった尻尾を、鋭い破壊のツメが縦一文字に切り裂いた。
ワビスケ「くッ…ゴースト!おにび…」
ミツル「チリーン!!しんぴのまもり!!」
おにびはしんぴのベールに弾き返された。
ワビスケ「ハブネーク!ゴーストを…のみこむ!!」
ミツル「なッ!?」
なぜかゴーストはハブネークの口に入った。
ワビスケ「丁子流忍法…火徒魂(ひとだま)地獄の術!!」

152 :エンタ2006/02/11(Sat) 13:44:47 ID:QIDK7VeQ
第132話 ミツルVSワビスケ・其の三

口の中で大量生産されたおにびが、かえんほうしゃとなってハブネークの口から放出された。
ミツル「丁子流…!?くっ、避けきれない…!?」
一人と二匹は、あっという間に大量のおにびに呑まれた。
ワビスケ「やけどは必須でござる…さあ、どう戦う?」
ミツル「ザングース…からげんき!!」
気合一声、ザングースは眼をギラつかせてゴーストに殴りかかった。
ワビスケ「なっ…!?何故触れられる!?感情の力が…霊に害なしたか!?」
ミツル「チリーン!いやしのすず!!」
心地よい音色と断末魔の叫びが同時にこだました。ゴーストは倒れ、ザングースとチリーンのやけどは治っていた。
ミツル「言ったはずだよ、正常なチームだと。異常を活かしてこその…ね」
ワビスケ「くッ…ゴースト…チリーンを…みちづれッ!!」
闇から手が浮き上がり、チリーンの体を掴んだ。この世の物とは思えぬ叫び声と共に、チリーンは戦闘不能になった。
ミツル「…チリーン…よく頑張ったね。頼むよ、エーフィ!!」
ワビスケ「ゴースト、よくやった。テッカニンッ!!」
ミツル「ザングース、かまいたち!!」
ワビスケ「迎え撃て!テッカニン!!丁子流忍法・木の葉落しの術!!」
その名の通り、木の葉を落とすかのように全てのかまいたちは撃ち落とされた。
ミツル「かまいたちに触れれば怪我をするはず…なのに、傷ひとつない!?」
ワビスケ「当然でござる。触れてはおらぬゆえ…こうそくいどうの風圧で落とした」
ミツル「……速いとは聞いてたけれど、これほどなんて…」
ワビスケ「忍びのポケモンでござるからな…ハブネーク、じしん!!」
ハブネークは痛みにのたうち回りながらも、巨大なシッポをじめんにたたきつけた。
山が崩れるのではと思うほどの揺れが、ザングースとエーフィを襲った。
ザングースが倒れ、エーフィは辛うじて残った。
ミツル「ザングース…!!ごめん、無理させて。チルチル!!」
ワビスケ「空に逃げても無駄でござるッ!!テッカニンが逃さぬ!!」
テッカニンが、エーフィを乗せて飛んだチルチルの背後にすばやくまわり込んだ。
ワビスケ「きりさく!!」
テッカニンの、刀のような一撃が炸裂した……チルチルの背中に乗っていた、みがわりに。
ミツル「今だ、エーフィ!!サイコキネシスッ!!」
不意をつかれたテッカニンは、ねんりきにより地面にたたきおとされた。
テッカニンは丈夫さがあまりない。ワビスケは倒れたテッカニンを戻し、ヨマワルを繰り出した。
ミツル「チルチル、パワーチャージだ!ゴッドバード…」
ヨマワルがチルチルの目の前に飛んできて、チルチルの眼を見据えた。
ワビスケ「二つの『目』から覗く一つの眼光…丁子流忍法・金縛りの術」
ミツル「かなしばり…!?」
チルチルは本能的に宙に浮いていて、雲の翼がそれを助けているだけだ。何かされればエーフィごと落ちる。
ワビスケ「…ハブネーク、ヘドロばくだんをたくわえておくでござる…あそこまで届くようにな」
指差された先は、案の定チルチルだった。
ミツル「…!二匹が負けたら…ラルトスだけ…!?」
絶体絶命。ハブネークの長い胴体が、ヘドロで膨らんでいく。

そのとき突然、全てが止まった。

???「何を手こずる、虹の翼の継承者よ…お前もお前だ、忍者娘。詰めが甘い」
一人の男が、タイマーボールを掲げて夕日の方角に立っていた。
???「……どちらも優れたトレーナーだ。だが今は、一時休戦ということにしてもらおう」
ミツル「あ…あなたは一体…!?」
シンジ「申し遅れた…俺は銀シンジ。お前たちに伝言を持ってきた者だ」

153 :2006/02/12(Sun) 16:00:23 ID:Y4kNbGks
私も小説に挑戦♪
頑張るぞ♡
長文ですが、面白く書けるように心掛けるのでよかったら気軽に呼んで下さいね(*ゝω・)b

154 :2006/02/12(Sun) 16:01:24 ID:Y4kNbGks
色テストします。
皆さんに出来るだけ読みやすく読んでほしいので♪

155 :2006/02/12(Sun) 16:02:12 ID:Y4kNbGks
よし。薄い赤かオレンジかみずで決めるぞ!

156 :エンタ2006/02/15(Wed) 17:18:56 ID:l5RNAT9Y
>愛さん
頑張ってくださいね。応援しますよ

157 :エンタ2006/02/15(Wed) 17:19:25 ID:l5RNAT9Y
第133話 シンジの伝言

ワビスケ「伝言…?それ以前に、何故拙者たちの果し合いの場所を知っているでござるか?」
シンジ「忍者娘…いや、椿木ワビスケ。無理はしなくていい。俺はお前のことは少しなら知っているからな」
ワビスケ「…そうでござるか。…まやかしの術・解咒!!」
ぼわわわわん。ワビスケが子供の姿に戻った。
ワビスケ「…もう一度問おう。お主、何故この場所を知っているでござる?」
シンジ「…聞きたいか。少し待っていろ。ブラッキー、サウンドバリアを張れ」
すると、シンジの背後からブラッキーが現れ、響絶壁を張った。
シンジ「上出来だ、ブラッキー。この調子ならダークわざも使いこなせるな」
ミツル「あの、サウンドバリアって…?」
シンジ「その名の通り、音を絶つ壁のことだ。誰かに聞かれては困る話だからな」
ワビスケ「…伝言…と言っていたでござるな。…誰から?」
シンジ「ふむ…面倒くさいのは苦手なんだがな…簡単に…説明すると、あー」
何度も確認するかのようにきょろきょろと辺りを見回すと、シンジは続けた。
シンジ「ホウエンサミット上層部からの伝言だ。二人の居場所は諜報部が調べた」
ワビスケ「上層…諜報?何でござるか、それは?」
ミツル「ホウエンサミットって…?」
シンジ「…やはり簡単にはいかなかったか…腰をおろせ。面倒だが、じっくり説明してやろう」

シンジ「まず、ホウエンサミット…というのは、あー…グラードンとカイオーガを知っているか?」
ワビスケ「…ホウエンにねむる太古の伝説…大地と海の創造主のことでござるな」
シンジ「そうだ。そしてその二匹の力を悪用しようとしているふたつの組織がある。マグマ団とアクア団だ」
ミツル「悪用…と、言いますと?」
シンジ「平たく言えば、人為的な創造…つまりホウエンの自然を二匹の力で変えようとしている」
ミツル「つまり、海を増やしたり陸を増やしたり…ってことですね?」
シンジ「ああ。そしてそのふたつの組織の企みを阻止すべく立ち上がった特務機関、それが…」
ミツル「さっき言ってた、ホウエンサミットですね」
シンジ「飲み込みが早いな、虹の翼の…いや、芦田ミツル」
ミツル「あの…虹の翼って?」
シンジ「…とぼけるな…ニューラ」
ニューラがボールから出、ミツルに近づいた。
ミツル「……?」
シンジ「…む?まさか…持っていないのか?」
ワビスケ「そんなことより…そのホウエンサミットがどうしたと言うのでござるか?」
『そんなこと』で片付けられてしまった。
シンジ「ああ、そうだったな…そのサミットから伝言というのは…」
ミツル「…伝言と言うのは?」

シンジ「お前たち二人を、正式にサミット実行部のメンバーとする…だそうだ」

158 :エンタ2006/02/15(Wed) 17:19:58 ID:l5RNAT9Y
第134話 試練の時

ワビスケ「…さっきから実行部だの諜報部だの、話が全然見えてこないでござるが…」
シンジ「サミットは三つの部に別れている。一つは上層部、総指揮および全責任の帰するところだ。
    次に諜報部、情報の収集や秘密裏の活動など…一言でいえば『裏』サミットだな。
    そして『表』…つまり実行部」
ミツル「何をするところですか?」
シンジ「上層部の指示に従って主に両団との戦闘や、計画の阻止などをこなす。もっとも特務機関らしい部だな。
    まあ、一般の民間人にはその存在は秘密だから、表も裏もないんだがな」
ミツル「それで、その実行部さんが僕たちを…メンバーに引き入れると?」
シンジ「嫌なら断ってもかまわないが…一般人には秘密の組織だから、一応覚悟はしてもらう」
ワビスケ「口止め…でござるか。ほぼ脅迫でござるな」
ミツル「…実行部には、どんなメンバーがいるんですか?」
シンジは名簿を取り出して実行部のページをめくった。
シンジ「まず…大空ユウキ」
ミツル「喜んでご協力いたしますッ!!」
即答だった。シンジは名前だけズラズラ言おうと思っていたのだが、その隙も与えなかった。
シンジ「そ、そうか…ありがたい。他には…桐崎イッセン、苧環ハルカ……堀岡ヒサヤ」
ワビスケ「拙者も協力するでござるッ!!」
またしても即答。残りのメンバー三人は、完全に無視された。
シンジ「…で、では両者の承諾を得た…二人を正式なメンバーとする。以上だ」
ニューラとブラッキーがボールに戻され、響絶壁が解除された。麓からグラエナのとおぼえが聞こえた。
シンジ「ああ、言い忘れていた…タイマーボールの効果が切れたら戦闘は強制終了だ。あと1分ほどだろう」
ユウキならここで残り48秒と答えるのだが。
ミツル「タイマーボールの効果…?って、一体なんですか?」
シンジ「定められた範囲の時を止める効果だ…俺のスペック『魔球(ボングリック・リベレイト)』による、な」
ミツル「ぼんぐり…?」
チルチルが落ちてきた。そして、自動的にボールにもどった。
シンジ「時が動き出すと、その負荷に耐えられずあらゆるエネルギーが時を止めた範囲から漏洩する。
    ボールにもどったチルタリスとエーフィの…体力のエネルギーもな」
見ると、チルチルたちが戻ったボールから、腰のベルトを伝わって…
まだ戦闘可能なポケモン、つまりラルトスのボールへと移動していった。
ミツル「あッ…ちょ…っと」
すでにシンジとワビスケは消えていた。とっさにミツルはラルトスをボールから出した。
ミツル「ああ…ッ!!」
あろうことか、進化が始まっていた。エネルギーの転移により『チルチルとエーフィをラルトスが倒した』ことになっている。
ミツル「ど…どうしたら…!?」
ふと、ミツルはユウキの言葉を思い出した。

「不安になったら空を見上げろ」

もう空は暗くなっていたが、そこには確かに勇気があった。
ミツル「ラルトス…きっと大丈夫…僕がキミを死なせたりしない!!」
次第に進化の光が強くなっていった。
ミツル「…心をひとつに…合わせるんだ…ッ!!」

「生命力が強ければいいんだろ!?前を向いて生きれば生き繋げるんだろッ!」

ミツル「…そう、強ければ生き繋げるんだ…一緒に…心を、強く持とう…!強く、強く……!!」
光の中から…いや、自分の中から、そしてラルトスの中から…声が、聞こえた。

……『セルフ・シンクロニズム』……

光は止んだ。
そこには、ミツルに強く抱きしめられた……キルリアが……確かにいた。
ミツル「……よかった……」
疲れきった一人と一匹…いや、『ふたり』は、喜びと共にゆっくり眠りについた。

159 :エンタ2006/02/18(Sat) 15:31:30 ID:z4Za1dYo
第135話 霧の山の出会い

看護士「いんちょ―――ッ!!たたた大変ですッ!!」
院長「何ッ、ミツルくんのラルトスが進化しただとッ!!?」
看護士「え!?何でわかるんですかッ!?」
コトキのポケモンセンター。ミツルへのポケルス宣告をした院長と、それに立ち会った看護士である。
院長「いやいや、こんなときのために彼の荷物に生命反応発信機をつけておいてよかった」
看護士「ですねー。まあ、一歩間違えば犯罪ですけどね」
・・・・・・
院長「ま、まあ何はともあれ、無事に進化できたのならよかったのだ」
看護士「でも、生命反応の弱さからして、かなり不安定な進化をしたようですね…
    このまま放っておいたら、危険ですよ」
院長「とはいえ、我々が赴くわけにもいかないし…どうしたものか」
看護士「あ、院長…レーダーに、三つ目の生物反応が…」
院長「何ッ、三つ目の怪物反応!?」
看護士「ベタなボケはやめてください…みっつめの、生物反応ですよ」
院長「ということは、誰かが近づいている…と?」
看護士「ええ、人かポケモンかはわかりませんけど」
院長「なら安心だな」
看護士「ですねー」
本当に大丈夫だろうか、この病院。

ミナヅキ「ここが…おくりびやま集落…」
ハヅキ「そう。この集落の奥から伸びる道が、おくりびやまの真の頂上につながってるの」
ミナヅキ「真の頂上?」
ハヅキ「年中止まない濃い霧で覆われていて、外からは見えなくなってるんだ。
    そこに、あいいろのたまとべにいろのたまがおいてあるんだ」
ミナヅキ「…それじゃ、わざわざ集落に隠す意味ないじゃない…外からも行こうと思えば行けるんでしょう?」
ハヅキ「う…そりゃまあそうだが、ちゃんとあの場所に置くっていう理由があるんだよ」
ミナヅキ「……?」
ハヅキ「…あれ?そういやサツキはどこに…?」
ミナヅキ「見張りしてくるって…外に出て行ったよ」
ハヅキ「大丈夫かな…そろそろ日も沈んだろ」
この集落は山と霧に覆われて、日の光がほとんど当たらない。当たるとすれば、夏の正午くらいだ。

サツキ「…ひ…ひ……ひ………!!」
一方、ミツルとキルリアが倒れた頂上。
サツキ「人が倒れてる――――――ッ!!!?」
ミツル「う…うぅ…」
サツキ「!!オキタ―――(☆∀☆)―――ッ!!」
ミツル「だ、誰…うッゴホッゴホッ!!」
サツキ「ちょ…大丈夫!?すぐに村…村?えー集落に連れてくから!!」
ミツル「あ…僕よりラル…キルリアを…!」
サツキ「何言ってんの!二人まとめてに決まってるでしょ!アゲハ!!」
ミツル「…あ、そのアゲハントは…さっき見た……」
サツキ「しゃべると舌を噛むからね!!」
美しき蝶が羽ばたいた…そして、登山道に沿って猛スピードで降りていった。

160 :エンタ2006/02/19(Sun) 15:06:17 ID:USqwMADI
第136話 別れの前夜

ゲンキ「…疲れたなー……」
ホタル「…ああ…疲れたなー…」
水曜日の夜。この五日間で二人は信じられないくらい強くなった。
ホタル「そろそろ、年貢の納め時か…ゲンキ、俺はホウエンにもどる。逃げてても解決できないしな」
海辺に寝転がって星空を見上げながら、ホタルは言った。
ゲンキ「そうか…そうだよなァ…偉いな、シラガは…」
ホタル「…お前はどうするんだ?」
一瞬の沈黙。波の音ひとつ。
ゲンキ「オレは…オレは、一度ワカバに戻る。そんで決心を固めることにする」
ホタル「そうだな…ホウエン存亡の危機なんざ、13歳のガキが抱え込むにゃ大きすぎる問題だ」
ゲンキ「故郷の風景を一度見れば…懐かしい人にもう一度会えば、戦う決心がつくかも知れねー…」
ホタル「タマゴか?それとも、メガネ?」
ゲンキ「アホウか、シラガは。母ちゃんに決まってんだろ」
ホタル「はは、そっか…いいよな、そういうのって」
ゲンキ「あー…っと、ごめんごめん。そういうつもりで言ったわけじゃねーけどさ」
ホタル「わかってるって。それに、俺にはジーチャンがいたしな」
ゲンキ「何とか術の使い手の?」
ホタル「桂流炎戦術…俺もガキの頃に少しかじった」
ゲンキ「かじったのか?うまかった?」
ホタル「……ガキが」
再び沈黙が流れたが、気まずいものではなかった。
ホタル「でも…いいかもな。あれは結構使えるし…いや、結構どころじゃねーか。
    ジーチャンはあれでジムリーダーになれるほどのほのお使いになったわけだし」
ゲンキ「いいんじゃねーの?必殺技の一つや二つ、あって損はないぜ」
ホタル「気軽に言うな」
ゲンキ「ふぅ…夜が明けたら、シラガともお別れかァ…寂しくなるな」
ホタル「なんだなんだ、お前らしくもねェ。弱音なんて吐くな」
ゲンキ「でもまあ、強くなれたことには感謝してるぜ。ありがとな」
ホタル「よせよ、ガラでもねェ…」
ゲンキ「…あ、流れ星…」
ホタル「ケッ、夢見るヲトメかお前は。願い事なんてのはなァ、あんなモンに叶えてもらうようなものじゃねーんだよ」
ゲンキ「自分の力で…だろ?」
ホタル「そーともよ」
ゲンキ「でも、あの流れ星ホウエンのほうに落ちたよな…大丈夫かよ…?」
ホタル「とことんガキだなお前は。流れ星が地表まで到達するかっつーの」
ゲンキ「…………」
ホタル「…おい、どうした?」
ゲンキ「…………Z……」
ホタル(寝ただけかよッ!!)

161 :エンタ2006/02/19(Sun) 15:06:51 ID:USqwMADI
第137話 修行、終了!

ハルカ「ウ――――――ッ、」
夜の静寂を打ち破る咆哮。
しっぽうけいこくの谷間にたたずむハルカチームと、トウキ・シバによる落石攻撃。
落ちてきた岩は数え切れない。なかには火がついているものもある。
ユウキならここで、107個中火がついてるのは12個と答えるのだが。
トウキ「ボブ、ねんりきで岩を操作するんだ!」
ボブはチャーレムに進化していた。
シバ「カイリキー、かえんほうしゃだ!!」
四つの手で次々に豪速球を投げながら、毎回そのひとつに火をつける。
ハルカ「ッハ――――――――――ッッ!!!」
気合一声、ハルカと手持ち4匹が岩に飛びかかった。
ハルカとアチャピーは蹴りで岩を粉砕し、ニョロピーはれいとうパンチで火を消し、キノピーとマクピーは拳でいわをくだく。
ボブの放った変化球岩が死角である真上から襲い掛かる。
ハルカが瞬時に目配せをした。キノピーと、バシャーモに進化したアチャピーが、スカイアッパーで打ち砕く。
ニョロピーは火のついているものだけを狙っていた。頭上から普通の岩が高速で降ってきた。
まだニョロピーはその岩に気づいていない。彼の目の形は、上を見るのに適していないのだ。
すると、ハルカの頭の中に声が聞こえた。

……『サード・アイ』……

ニョロピーがとっさに掌を合わせて開き、みずでっぽうを連続噴射した。
点滴穿石、みずでっぽうの小さな力でも岩を穿つことができた。
全ての岩が谷底へと落ち、そのほとんどがハルカ達によって粉々に打ち砕かれていた。

ハルカが谷底から上がってきた。もちろん、獅子のごとく自力で。
ハルカ「……また聞こえた。だんだん強くなってる……」
トウキ「ハルカもどうやら、スペックに目覚めつつあるようだなァ…うらやましいよ」
シバ「うむ…ここにいるメンバーでは、カネコ殿も入れて二人目だな」
カネコ「あはは…そうですね」
トウキ「あれ?そうなの?シバ、いつの間に知ったんだ?」
シバ「なに、ゆうべ聞いただけだ」
カネコ「わたしのスペックは、『金行(ヴェノミック・メルトダウン)』っていうんですよ」
ハルカ「ヴェ…?」
カネコ「『ヴェノミック・メルトダウン』…『どくばり』を持たせたポケモンのどく攻撃が
    はがねポケモンにも通用するんです。あと、どんな金属も溶かせるし」
トウキ「そいつはまた…反則だなァ…」
カネコ「金曜日しか使えませんけどね」
ハルカ「あらら…まさか、ツチオクンは土曜日だけ、とか?」
君付けには無理があった。
カネコ「その通りです。『土行(アースバインド・スピリット)』っていうんですよ。効果は忘れたけど」
トウキ「そいつはまた…てきとーだなァ…」
カネコ「明後日は金曜日だし、お見せしましょうか?」
トウキ「いや…オレたちは明け方ここを発つ。世話になったな、カネコさん。主に食糧面で」
沈黙の間に、トウキがシバに物凄い軽蔑の目つきを喰らわせた。
トウキ「帰ったら…まず、ジムの修理だな」
ハルカ「…アタシは…約束を」
カネコ「約束?」
トウキ「なーに、男と格闘家(オトコ)の約束さ」
カネコ「へぇー…なんかかっこいいですね」
ハルカ「そういえばトウキ…男と男、といえば…シジマさんとの約束はどうすんの?」
トウキ「破る。」
・・・・・・
カネコ「…男らしいですねぇ…」
トウキ「まあ、格闘家同士の約束なんてそんなもんだ。ハルカの約束が大事なのは、相手が格闘家じゃないからだな」
カネコ「強い人ですか?」
ハルカ「…アタシを唯一、負かした男よ…」
シバ「そういえばハルカは、オレにもトウキにも勝ったのだったな…」
カネコ「うわ、すごい…そのハルちゃんを破ったってことは、よっぽど強い人なんですね」
ハルカ「そ、そんなことないって!!あいつに負けたのはただの偶然だし…運が悪かったっていうか!!」
シバ「運も実力のうちだぞ、ハルカ」
ハルカ「勝負は時の運とも言うでしょ!たまたま一回負けただけで、一概に強い弱いとは言えないわよ」
トウキ「でも勝ち負けは変えようのない事実だよな?」
ハルカ「だから、リベンジすんでしょッ!!もう、寝るわよ!!明日早いし!!」
カネコ「ふふ…おやすみなさい」

トウキ「長いようで短かったなァ…何日だっけ?」
シバ「土曜の夜に到着したから…修行したのはたったの四日間か」
カネコ「みんないなくなったら、寂しくなりますね…」
ふと、トウキは思った。
トウキ「そういや何でカネコさんはこのナナシマで商売してんだ?別に、他のところでもいいんじゃね?」
カネコ「え…?あら…そういえば、何ででしょう?」
・・・・・・
トウキ「は?」
カネコ「いえ、ですから…特にこれと言って理由はないかと…」
シバ「…だったら、寂しくなるとか言ってないでついて行けばいいのではないか?」
カネコ「ですよね…?」
トウキ「何だよ、そりゃ…まあいいや、ってわけでこれからもよろしくな、カネコさん!」
カネコ「はぁ…」

162 :エンタ2006/02/19(Sun) 15:07:26 ID:USqwMADI
第138話 夜明けの覚醒

ユウキ「この河か…ここを抜けて、天の森へ…ブイ、頼むぜ!!」
キンセツとコトキを結ぶ河の下流。
ユウキ「…ん?」
真夜中だというのに、暗がりの中に人がいる…
ユウキ「…なんだ、ズバットか」
そのズバットは、闇夜よりも深く暗いどうくつの中へと、吸い込まれるようにして消え去っていった。

ユウキ(ネイティオを渡して…父さんのところに連れて行く、っと)
高速で川を上りながら、ユウキはふと考えた。
ユウキ(でも、ついて来いって言って素直に聞いてくれるかな?16歳っつったら、そーでもないと思うんだけどな…)
ブイがピタリと動きを止めた。だが、河が途切れているわけでもないし、疲れたわけでもなさそうだ。
ユウキ「?…どうした、ブイ?なんかあるのか…」
そういって手を前に出すと、ユウキの体に激しい電撃が流れた。
ユウキ「っがッ!!?」
ユウキを乗せたままのブイが、とっさに後退した。
ユウキ「サンキュー、ブイ…いてて、これが結界か…よし」
さっきの電撃結界に触れないように、ユウキは岸に上がった。
ユウキ「チー!!」
左腕に取り付けた『ココドラの頭ボールホルダー』から、チーの入ったボールを取り出した。
ユウキ「つるぎのまい!!」
右手に剣、左手に盾(?)を装備した姿は、さながら騎士のようだ。
ユウキ「せいっ!!」
結界を、斬った。…が、斬れずに電撃だけが走った。
ユウキ「ヴギャァァァァァァァァ!?!?」

ユウキ「…どうすれば…?うーん…」
ユウキは結界ギリギリの位置に手をかざした。
ユウキ「『めざめるパワー』!!」
・・・・・・
ユウキ「めざめるパワ――――――!!!!」

……「違う。めざめるパワーじゃない」……

ユウキの頭の中に声が聞こえる。自分の、声が。

……「お前の力の名は」……

ユウキは、それを知っているような気がした。そして、頭の中に聞こえる『もう1人の自分』の声に耳を澄ました。

……『アウェイキング・フォース』……

その言葉に重ねるように、ユウキが口を開く。
ユウキ「アウェイキング・フォース…!!」
結界の上を、閃光が走った。あたりが夜から朝に変わるような光が止むと、本当に朝が訪れていた。

ユウキ「…アウェイキング・フォース…か…」
ユウキはブイの背中に乗り、気持ちを新たにして河を上った。

やがて、河が途切れた。澄んだ湧き水を、朝の木漏れ日が照らしている。
ユウキ「この音は…?」
美しい音色が、森に響き渡る。ユウキは音のする方向へと歩いていった。
ユウキ「……!!」
そして…足を、止めた。そこには、少女がいた。

ヒスイ「…お前は…誰だ…?」

163 :エンタ2006/02/21(Tue) 17:01:30 ID:XkWwqcz.
第139話 スグルのおつかい

スグル「はー、やっと着いたか。まったく、ジムリーダーも人遣いが荒いよ」
ここは、ジョウト地方ヒワダタウン。あらゆる達人が住まう、隠れた名所だ。
そしてスグルはその達人の中のひとり、朱鷺神コウメのもとへとやってきたのだ。
スグル「ここかな…?ちょっと、失礼しまーす」
???「バカモンが!!そこは勝手口じゃ、客なら玄関を通らぬか!!」
スグル「なッ…?おばあさん、誰?」
???「言わずともわかるじゃろうが。わしがここの占い館のババァだよ!!」
スグル「ああ、おばあさんがコウメさんだったのか。僕は天童寺スグル。ちょうどよかった、話があるんだけど」
コウメ「随分とまあ、嫌味な性格じゃな…何故上から目線なのじゃ?」

スグル「この写真を見てほしいんだけど…」
そういってスグルが差し出したのは、実行部のメンバーの写真だった。といっても、シンジとゲンキのものもある。
スグル「全部で12人。あ、こっちのFAXの二人も含めてね」
FAXの小さな写真には、ミツルと、どうやって入手したのかワビスケの子供時代の写真である。
スグル「全員のスペック、占えるかな?」
コウメ「出来んこともないが…分かりやすそうなのからじゃな…」
コウメは一心に目を凝らして穴が開くほど写真を見た。そして、目を見開いた。
コウメ「………」
もう一度見る。
コウメ「………」
さらにもう一度。
コウメ「………」
スグル「ちょっと、なんなのさ?何かわかったんなら早いトコ…」
コウメ「…よもや…このようなものが見えるとは…わしの眼も老いたか…」
スグル「どんなことが見えたのさ?」
コウメ「…ありえん。『緑煌』『覚醒』『共鳴』『錬成』など…極めつけは『外法』に『心眼』じゃ…しかも全員目覚めておる」
スグル「は?」
コウメ「『共鳴』と『錬成』に至っては、虹色の翼の継承者しか行使は不可能なはず…それがひとところに集まるなど」
スグル「よくわかんないけど、そんなに凄いのかい?」
コウメ「ありえん!間違いなく!!百ぱーせんと!!!わしの眼力が衰えたせいじゃッ!!!!」
???「おばあさま……いかがなされましたか……?」
スグルが振り返ると、入り口に9か10歳くらいの女の子が立っていた。
コウメ「…話しかけてくれるな、ミドリや…なんたることじゃ、わしの眼力が…」
ミドリ「……何かあったのですか……?」
冷めた感じの子だ。表情一つ変えずに、おいおい泣く老婆を見つめている。
コウメ「…そうじゃ!ミドリや、お主の眼力なら…」
ミドリ「……?」
コウメはスグルのほうを向き直った。
コウメ「天童寺…と言ったか。お前さんがよければで構わぬが…この子を連れて行ってはくれんかのう?」
スグル「…え!?」
コウメ「この子…ミドリの眼力は、写真から能力を読み取れるほど強いものではないが、
    既に能力に目覚めた者を見れば、その者の能力がわかるはずじゃ…」
スグル「な…でも、何で…」
コウメ「かわいい子には旅をさせよ、とも言うじゃろう…これはこの子の試練じゃ」
何の前触れもなく少女が口走った。
ミドリ「……『完壁(パーフェクト・シールド)』……」
スグル「は?」
コウメ「どうやらお主、既に能力に目覚めているようじゃな。
    『完壁(パーフェクト・シールド)』…お主の能力の名じゃ。申し分ないぞ、ミドリ」
スグル「ふーん…僕の…」
コウメ「行ってくるがよい、ミドリ。お前の能力が人の役に立つときが来たようじゃ」
ミドリ「……はい……おばあさま……」
スグル「僕にどうしろっていうんだ?」
コウメ「とりあえずその子を連れて写真の奴らに会いに行ったらよい…きっと全ての能力がわかるはずじゃ」
スグル「な!?とりあえずって、何で僕が…」
こうしてスグルは、面倒を背負うこととなった。

164 :エンタ2006/02/23(Thu) 19:39:59 ID:.vYb4aCk
第140話 ヒスイ

ユウキ「あんたが…ヒスイ?」
ヒスイ「…結界を越えてきたということは、それなりの実力者ということか…だが、お前は」
三角巾のように頭に巻いた純白のバンダナの下から伸びる碧玉色の長髪をたなびかせながら、少女は優雅にボールを構えた。
ヒスイ「招かれざる客のようだ」
ユウキ「ま、待って!!オレは戦いに来たわけじゃない!!」
ヒスイ「わたしとて、戦う為にここにいるのではない…しかし、お前は招かれざる客だと空が言っている」
ユウキ「空…?何のこと?」
ヒスイは無言で手に持っている物を見せた。
ユウキ「これは…」
水晶玉のような透き通った球体が、ヒスイの髪と同じ色に輝いている。
ヒスイ「そらいろのたま…だ」
ユウキ「空色?緑色じゃんか」
ヒスイ「空が青だと、誰かが言ったか?それは偽りの色、この色こそが空の真の色だ」
ユウキはちょっとムカッとした。
ユウキ「…偽り、だと?」
ヒスイ「そうだ。ヒトの目に見える青は、空の神が創るまぼろしだ」
ユウキ「ふざけんなッ!!青空はアイツが…アオイが、命を捨ててまで守った…!!」
ヒスイ「そうか…悲しい命だな。偽りを守るために散るなど」
ユウキ「…テメェ…ッ、アオイは…アオイはなァ……!!」
ヒスイ「よせ。空がお怒りだ」
ユウキ「…さっきから空がどうのって…オレは空の意思なんか聞いちゃいねェよ!!お前の意思を聞いてんだ!!」
ヒスイ「わたしに意思はない。空の意思こそが私の意思」
ボールからトゲチックが飛び出した。だがユウキはポケモンを出さなかった。
ヒスイ「天罰を喰らいたいのだな…」
ユウキ「言っただろ。オレは戦うためにここにいるんじゃない」
ヒスイ「聖域にみだりに足を踏み込みし愚者よ…空の神の裁きを受けるがよい!!」
ユウキ「……!!」
トゲチックのシャドーボールを、まともに腹に喰らった。だが、ユウキは微動だにしなかった。
ユウキ「…聞け。オレは大空センリの命でここに来た…アンタを連れて帰らなきゃならない」
ヒスイ「……!!大空…!?」
そらいろのたまが輝きを失い、曇った。とたんにヒスイは気を失い、じめんに倒れこんだ。
ユウキ「うわっ!?ちょ…大丈夫か!?」
しばらくユウキは戸惑ったが、仕方なくこのまま連れて行くことにした。
ヒスイの体を担ぎ、じめんに落ちたそらいろのたまを拾い上げた…瞬間、目まいがした。
ユウキ「……声…!!?」
そらいろのたまの中から声が聞こえた。
「聖域に招かれざる者よ…我が依代を、あるべき所に帰せ」
そこまで聞こえて、曇ったたまの中に雷鳴のような閃光が迸り、声らしき声は聞こえなくなってしまった。
ヒスイ「う…ん…」
いつのまにか、ヒスイはユウキの背中からずり落ちていた。
ヒスイ「……?」
ユウキ「あ…起きた。何で急に倒れたりしたんだよ…」

ヒスイ「あの…あなた、誰ですか…?」

165 :エンタ2006/02/23(Thu) 19:40:39 ID:.vYb4aCk
第141話 交渉成立

ユウキ「は…?な、なんかさっきと随分雰囲気が違…」
ヒスイ「さっき?な…何のことでしょう?」
ユウキ「とぼけんなよ…まだ腹、痛いんだぜ」
ヒスイはおろおろしながらトゲチックを見、ユウキの腹に目をやり、とっさに立ち上がってこういった。
ヒスイ「すッ、すみません…!!ま…またやっちゃった…」
ユウキ「は?」

聖域の真ん中に座り込み、二人は話をはじめた。
ヒスイ「わたし、そらいろのたまに触れると意思がきかなくなるんです…注意は、していたんですけど」
ユウキ「意思がきかないって…なんで?」
ヒスイ「わかりません…ちょっと前まではこんな事なかったのですけど…」
ユウキ「つまり、なんかが取り憑いたみたいになるってことか」
ヒスイ「はい…操られている間のことも、しっかり憶えているのですけど…」
ユウキ(じゃあ、さっき言ってた依り代ってのは、ヒスイのこと…?)
ヒスイ「おそらく『もう一人の私』の言動からして、操っているのは『空の神』だと…あの、聞いてます?」
ユウキ「え?ああ…」
ヒスイ「それで、えーと…どちら様でしたっけ…」
ユウキ「ああ、大空ユウキ」
ヒスイ「ユウキさん…ユウキさんは、どういったご用件でこちらに…?」
ユウキ「父さんに頼まれて、君を連れてかなきゃならないんだけど…」
ヒスイ「…さっきおっしゃっていた…よく聞こえなかったので、もう一度お願いします…」
ヒスイが言っているのは、『もう一人のヒスイ』が気絶したときのことである。
ユウキ「大空センリ…って言ってもわかんないか…その人に」
ヒスイ「センリさんなら…知ってます」
ユウキ「そうなの!?」
ヒスイ「そらいろのたまをわたしに手渡して…これを守りなさいと言ってました」
ユウキ「…父さんが…?」
ヒスイ「もう4年も前の話ですけど…わたしがホウエンに来たばかりで、右も左もわからなかった頃、
    この聖域と呼ばれる場所に住むようにと案内してくれたのも、センリさんです」
ユウキ「そういえば…なんでホウエンに来たんだ?そのままジョウトにいても良かったんじゃ…」
ヒスイ「センリさんが手紙をくれたんです。すぐにホウエンに来るようにって」
ユウキ「…そのセンリさんが君を必要としてるんだ。トウカジムまで、ついてきてくれない?」
ヒスイ「わたしを…?」
ユウキ「頼む。ホウエンが滅ぶのを、救えるかもしれないんだ」
ヒスイ「センリさんがそうおっしゃっているのなら…わたし、行きます」
ユウキ「よし、じゃあさっそく行こう!ムドー!!」
もと来た森の中の河を下るより、上から抜けたほうがいい。
ヒスイ「ひゃぁ……!!」
翼が光り、二人を乗せたムドーは聖域を抜けた。

166 :エンタ2006/02/23(Thu) 19:41:03 ID:.vYb4aCk
第142話 三文字のスペック

スグル「おばあさん…ほんとに本気?」
コウメ「ほんとに本気じゃ」
スグル「勘弁してくれよ…子供のお守りしなきゃならないなんて、聞いてないよ」
コウメ「これ、ミドリは少なくともおぬしよりは賢いぞえ…子ども扱いするでない」
スグル「ふん!僕はIQ118だぞ!!」
ミドリ「……ひゃくにじゅういち……」
コウメ「ほーれ見ぃ、やっぱりミドリが上じゃ」
スグル「…仕方ない…僕も男だ、負けたからには潔く請け負おうじゃないか!!」
コウメ「おお、ありがたいのぅ…ミドリをよろしく頼むぞ、天童寺よ」
スグル「ところでさ…おばあさんやミドリちゃんのスペックを見抜く力って、スペックなの?」
コウメ「そうじゃ…ミドリのは『涙賢(ブルー・ノウレッジ)』で、
    ワシのは数あるスペックの中でも強力な『全能知(スペック・オブ・スペック)』じゃ」
スグル「…あれ?一文字多くない?」
コウメ「たわけが、特別じゃといったじゃろう!!お主ら庶民と一緒にするでない!!」
スグル「で、でも…三文字って、ありなの!?」
コウメ「ワシのほかにも三文字はいるわい。そう、お前のすぐそばにもな…」
スグル「……?」
ミドリ「……『完壁(パーフェクト・シールド)』……」
コウメ「ほれ、呼んでおるぞ」
スグル「あ、僕!?」
ミドリ「……行きましょう……『完壁(パーフェクト・シールド)』のお兄さん……」
スグル「あー…僕には天童寺スグルっていう名前があるんだけど…」
ミドリ「……名前で呼ぶ「必要性」はありません……それに……こちらのほうがわかりやすいし……」
スグル「まあ確かに…そうなんだけど」
スグルの表情がだんだん大人びた感じになってきた。
スグル「あんなクソ両親がくれた名前でも、気に入ってるんだ。優良と書いて、スグル。だから…」
無表情のミドリも、さすがに頭をなでられて表情が変わらないはずもない。

スグル「だから、名前で呼んでくれよ」

ミドリは少し赤くなっていた。てれたように答えた。
ミドリ「……わ、わかりました……スグル……お兄さん」
スグル(でも、まだ落ち着かないなァ…)
年上扱いされるのは慣れていないのだ。普段態度がでかい分、いざ下手に出られると困ってしまう。
コウメ「写真は返しておくぞ…ミドリや、頑張るんだよ」
ミドリ「……はい、おばあさま……」
スグル「それじゃ、行こうか」
ミドリ「……はい……スグルお兄さん」
スグルはピジョットを繰り出し、ミドリと共に背中に乗った。
コウメ「達者でのォ―――……」

スグル「かわいい子には旅をさせよ…か。僕は…かわいがられてなかったのかな…」
海しか見えなくなった頃、スグルが静かに呟いた。

167 :エンタ2006/02/23(Thu) 19:41:30 ID:.vYb4aCk
第143話 二つめの使命

センリ「…来たか…」
呟いた直後、入り口が崩れる音がして、間もなくユウキが部屋に入ってきた。
センリ「ご苦労だった、ユウキ。ヒスイ、久しぶりだな」
ヒスイ「はい…その節は、どうも」
センリ「そらいろのたまはどうした?」
ユウキ「ヒスイが触れると凶暴になるから、オレが預かってるよ。ほら」
ヒスイ「ごめんなさい…」
ユウキがリュックから取り出したそらいろのたまは、依然濁った『曇り空』を映し出している。
センリ「…凶暴…?」
ユウキ「なんか、空の神に操られるらしいよ」
センリ「…!そうか…やはり、超古代ポケモンの活性化が原因か…」
ヒスイ「超古代…?」
センリ「グラードン、カイオーガ…この二匹は神話でもわりと有名だ。だが、空の神の話は、知らない人が多い」
ユウキ「超古代ポケモンって、まだいんの!?今度はなに団!?」
センリ「いや…力を狙われるような存在ではない。なぜなら空の神は…グラードンとカイオーガを封印した張本神だからな」
ユウキ「な…ッ!?」
センリ「空の神…その名を、レックウザ。太古のルネにおいて大地と海の神の怒りをを地の底に鎮め、もとい沈めたことで有名だ」
ヒスイ「その神様が…わたしに…?」
ユウキ「そういえば、そいつのものだかわかんないけど、そらいろのたまから声が聞こえたな…」
センリ「声…?どんな声だ?」
ユウキ「聖域に招かれざる者よ、我が依代を、あるべき所に帰せ、って」
センリ「…!!」
ユウキ「何だよ、何かわかったの?」
センリ「ユウキ…そらいろのたまをもって、おくりびやまに向かえ」
ユウキ「へ?」
センリ「おくりびやま…つまり、あいいろのたまとべにいろのたまが安置されているあの場所こそが、あるべき所だ」
ユウキ「えぇ!?依代って、ヒスイのことじゃないの!?」
センリ「ああ。レックウザの意思が乗り移っているのはヒスイ自身ではなく宝珠のほうだからな。
    おそらく宝珠を介してヒスイの潜在意識にもぐりこみ、巫女ではなく神子…神の子分として操るのだろう」
ユウキ「それで、おくりびやまってのは…他の宝珠が二つあるからか」
センリ「この宝珠はヒスイのそばにおいておくと危ない。というわけだ、今すぐ行ってこい」
ユウキ「えぇ〜?ちょっとは休ませてくれたって…」
センリ「聞こえなかったのか?今すぐ行ってこい!」
ユウキ「は、はいぃッ!!」

ヒスイ「はやい…」
センリ「さて、ヒスイ。空の神に乗り移られていたときの記憶があるのなら、ホウエンの危機のことは知ってるな」
ヒスイ「はい」

センリ「…ならば全てを話そう。そこにかけてくれ」

168 :エンタ2006/02/28(Tue) 16:43:47 ID:3iyAoSrA
第144話 語られる真実

センリ「君は、自分が何故空の神に操られるようなことが起きるか、わかるか?」
ヒスイ「いいえ…」
センリ「宝珠の正体は知っているな?超古代ポケモンのエネルギーを調整し、あるいは意思を疎通させるための媒介だ」
ヒスイ「はい。何となくわかります」
センリ「充分だ。さて、原因だが…単刀直入に言おう…君が空の巫女だからだ」
その場にいるのがヒスイでなかったら、もっと長い沈黙が流れたかもしれない。
ヒスイ「巫女…?」
センリ「そうだ。だが巫女とはいっても血に継承される力ではない。『翼の守護者』と同じ、突然変異のような遺伝だ」
ヒスイ「翼の…?」
センリ「ジョウトにいたことがあるなら、ホウオウとルギアは知っているな。その翼の祝福を、生まれるときに与えられた者のことだ。
    もっとも、ルギアの守護者は150年前の槐村かねのとう大火事以来一人も現れてはいないらしいが」
ヒスイ「随分、お詳しいんですね…」
センリ「全てを話すと言ったからな。生半可な知識では、君に失礼だ…さて、本題だが」
ヒスイ「巫女ですね」
センリ「そう…これら継承者は、生まれたときからトレーナースペックが使える…はずだ」
ヒスイ「はず?」
センリ「そうだ。信じられないかもしれないが…君は幼い頃の記憶を失っている。ある理由で、な」
ヒスイ「…え…記憶?」
センリ「そして、そのせいでスペックが使えなくなっているはずだ。そうだな?」
ヒスイ「……え?…え…」
センリ「驚くのも無理はない。が、我々にはどうしても君の力が必要だ。無理な頼みとは思うが…」
センリがジムの床に頭をついた。
センリ「どうか…記憶を、能力を取り戻してほしい」
ヒスイ「…そ、そんな…でもわたし、何すれば…」
窓から声がした。
???「とりあえずは…俺についてジョウトへ行くんだ」
センリが頭を上げ、言った。
センリ「シンジか…遅かったな」
赤い髪の毛の少年(青年というべきか)が、窓に腰掛けていた。
シンジ「申し訳ない。なにぶん出航の準備に手間取っていたものでな」
センリ「なるほど、それなら早かったと言うべきか…」
シンジ「来い、空の巫女。ミナモシティで横取り女が待ってる」
センリ「…その癖、何とかならないのか?」
シンジ「ならないな。俺が名前を覚えるのは認めた相手だけだ」
ヒスイ「き、急に言われても…」
シンジ「ことは急を要する。他の仕事なら代わりは見つかったかもしれないが、空の巫女はお前ただ一人」
センリ「ヒスイ…頼む!!」
ヒスイ「……!」
決意の、まなざし。
ヒスイ「…シンジ、さん。行きましょう」
シンジ「よし。ヤミカラス、8分だ。行けるな?」
小さな頭で精一杯頷くと、ヤミカラスは足を差し出した。
窓から、闇の翼が飛び立った。

169 :エンタ2006/02/28(Tue) 17:17:11 ID:3iyAoSrA
第145話 ジョウトへ

ヒスイ「はやい…!」
シンジ「ヤミカラス、ジャマな物は引き裂いて構わん。とにかく最短ルートを通るんだ」
ヒスイは少しぞっとした。
シンジ「おい、空の巫女」
ヒスイ「…あ、はい!」
シンジ「…時のひび割れを知っているか?」
ヒスイ「は…はい。でも…どうして?」
シンジ「どうしてか。答えが知りたくば目を凝らして俺を見ろ」
ヒスイは目を皿にしてシンジの背中を見つめたあと、今度は大きく目を見開いた。
ヒスイ「あ…!!」
シンジ「…時のひび割れは普通の人間には見えない。特別な人間…そう、『この時代にいてはならない』人間にしか」
ヒスイ「まさか…」
シンジ「気づいたか?お前も俺も記憶がない者同士、そして『この時代にいてはならない』者同士…」
ヒスイ「じゃあ、まさか…わたしの過去って…」
シンジ「隠しても仕方ないな。そうだ。お前は過去から来た。それがお前の過去だ」
長い沈黙が流れた。聞こえるのは風を切る翼の音だけだ。
ヒスイ「……ッ、あたまが…」
シンジ「痛いか。だがへばっている余裕はない…過去に行けば全てわかるだろう。お前の記憶も。
    …起きているのが辛ければ、そのときが来るまで寝ているがいい」
ヒスイ「…うぅ…」
それからしばらく、うめき声は止まなかった。

シンジ「着いたぞ。ミナモだ。ヤミカラス、ご苦労だった」
ヒスイ「…ッ、痛ッ……!」
シンジ「もうすぐ横取り女がここへ来る。…早く着きすぎたか?」
???「そんなことないですよ♪」
背後から声がするというのは、なかなか慣れないものだ。
シンジ「横取り女ッ!!うしろに立つなッ!!」
アオイ「横取り女って呼ばないでくださいよ。ヒスイさんが誤解してしまうでしょう?」
ヒスイは立ってるのがやっとだったので、横取り女の顔の代わりにコンクリートの地面が見えている。
アオイ「早く船に乗りましょう…シンジ、あなた何か気にさわることでも言ったのですか?」
シンジ「伝えるべきことを伝えたつもりだが…」
アオイ「そう…ですか」
シンジ「それよりも、持ち物の確認はしたか?」
アオイ「わたしよりシンジでしょう?」
シンジ「俺が怠るとでも…」
アオイ「はいはい…早く乗りましょう。ジョウト行き、小型ボートです」
シンジ「もっとマシなのは選べなかったのか…空の巫女が酔ったらどうする気だ」
ヒスイ「わ…わたしなら…大丈夫…で、す」
アオイ「…無理しないでくださいね。時間がないので」
シンジ「…そうだな。時間はあまりない。決戦の日までにレックウザの覚醒は何としても完了させねばならないしな」
アオイ「そゆことです。だからちゃきちゃき進めましょう♪」

170 :エンタ2006/02/28(Tue) 17:17:51 ID:3iyAoSrA
第146話 ボールの仕組み〜銀シンジ先生講座〜

エメラルドを寝かせてから、自動運転に切り替えて会議を始めた。
アオイ「…もう一度この計画の全容を確認しますね…えーっと、まずは時を越えるボールの入手」
シンジ「フン…俺の知識がなければ入手方法どころかその存在すらも知ることはできなかったぞ。お前たちではな」
アオイ「は〜い、感謝してます」
シンジ「作り方は知ってるのか?」
アオイ「…はい?」
・・・・・・
シンジ「…まさか貴様、ボールを作ってくれと頼んだらホイホイ出来上がるとかいうような考えじゃないだろうな?」
当たり前だ、というように頷くアオイ。
シンジ「うつけ者が…博士の娘が、聞いてあきれる」
アオイ「…訴えますよ?」
シンジ「冗談だ…それより、ボールの仕組みくらいはわかっているんだろうな…?」
・・・・・・
シンジ「正気か?ポケモントレーナーとは思えん…」
アオイ「訴えますよ?」
シンジ「ボールは基本的に『シェル』と『ネット』からつくられる。シェルはボールの外殻、ネットは中身の網だ」
アオイ「黙殺(シカト)ですか…」
シンジ「ネットはむしポケモンの作る網などから紡いでいる…糸から網を作るのは、ガンテツ師匠の孫娘がやっているが」
アオイ「ふむふむ…って師匠!?」
シンジ「なんだ、地獄女から聞いてはいないのか」
地獄女と書いてトップと読む。
アオイ「オドロキですよ…シンジに尊敬する人がいただなんて」
シンジ「む…まあ、いろいろと世話になったからな…話を戻すが…シェルは知っての通りぼんぐりの実から作られる」
アオイ「それはさすがに知ってますけど」
シンジ「当然だ。このシェルとネットの組み合わせによってボールの『力』が決まる」
アオイ「力…シンジのスペックで引き出せる力ですね」
シンジ「だが…俺はほとんどの組み合わせとその効果を知っているが、時を越えるボールの組み合わせ方は聞いていない」
アオイ「じゃあ、どうやって作るんですか!?」
シンジ「知るか。師匠に聞いてみればいい。まあ俺も知らないくらいだから、お前では教えてもらえないかもしれないがな」
アオイ「シンジもついて来てくださいよ?えーっと、全容の確認をしてたんだっけ…」
シンジ(待てよ?その間空の巫女はどうするんだ?)
アオイ「何とかして入手したら、ウバメのもりの時のほこらに直行。そこでセレビィを捕獲」
シンジ「セレビィは時のひび割れの周りにやってくると聞いた。二人もいれば嫌でも来るだろう」
アオイ「二人…?」
シンジ「いや…こっちの話だ。続けろ」
アオイ「?……えーっと、156年前の時代…エメラルドの時間移動の世界に着いたら、…」
シンジ「着いたら?」
アオイ「自分で切り開きましょう、って書いてあります」
シンジ「あの地獄女…ッ!!」
アオイ「まあ、いいじゃないですか。切り開きましょうよ」
シンジ「…まったく…」
やがてジョウトについた頃には、空は暗くなっていた。

171 :エンタ2006/02/28(Tue) 17:19:54 ID:3iyAoSrA
よく見たら、121話の年代の設定で計算があってなかったことにいまさら気づいたので、訂正&補足します。

レオンハルト・ヴィンスレッド(以下レオ)は、1844〜1860
アミレイラ・ブルーハーツ(以下ミレイ)は、1845〜1874
そして、エメラルド・アンセラス(以下ヒスイ)は、1849〜????
ヒスイの年齢をユウキが156歳といったのは間違いでした。166歳です。(ユウキが間違えるなんて…)
計算を合わせると、今2015年になってしまうので、全員の生没年を10年昔にします。
レオ:1834〜1850
ミレイ:1835〜1864
ヒスイ:1839〜????
そして、ときわたりが行われた年を1849年とします。
その時レオ15歳、ミレイ14歳、ヒスイ10歳。
そして150年後(1999)に送られるから、計算が合う、と。
ユウキたちのいる年は2005年だから、ヒスイは16歳。
そしてエメラルド計画で156年前(1849)に戻る…と。
これで多分OKです。

いや〜、時間を越えちゃうとすごく複雑な物語になってしまいます。
でも、ヒスイやシンジの過去は重要です。乞うご期待ください。
っていうか、もう2006年なんですよね…書き始めた頃は、一年もかける気なかったのに…
しかも、物語の中は夏です。ゲンキが誕生日を迎えたばっかりの。

172 :エンタ2006/03/02(Thu) 15:33:19 ID:uk67FfYI
第147話 悲劇の再会

ユウキ「うっひゃー、もう夜か。あの結界を破ったときに朝日を見たってのに、せっかちな太陽だよ」
おくりびやまの頂上付近は霧が濃く、ムドーで飛び続けるのは危険すぎたので、登山道沿いに歩いていくことにした。
ユウキ「えーっと…集落の中にあるのか。宝珠って」
センリから授かった情報を頼りに、寒くなり始めた山を歩く。
ユウキ「…標高1788m地点…ここの壁か」
つきのいしの扉が開いて、一回転してまた閉まった。

ユウキ「…すげぇ…集落の中は昼みたいに明るい…」
???「おくりびが光ってるからねェ」
ここにもいた、背後から声をかける女が。
ユウキ「どわッ!?ハッ、ハヅキさん!?」
ハヅキ「あっははは、新鮮な反応だな。この集落では背後からが基本だゾ。なーんて、久しぶりね。ユウキくん」
ユウキ「こちらこそ…足、大丈夫ッすか?」
ハヅキ「あれま!優しいねーユウキくん。こんなにイイコなら、きっといいオトウトになるわ」
ユウキ「は?弟…?」
ハヅキ「ま、頑張りたまえ!イロイロと」
すると、もうひとりうしろから人がやってきた。
???「…あの…ユウキさん?」
ユウキ「はい?」
こんな声のかけ方なら背後からでも驚かないのに、とユウキは思った。
立っていたのは運動しやすそうな格好の、おしとやかな感じの少女だった。
ユウキ「あ、ども」
???「…あ、どうも…あの、ユウキさん…ですよね?」
ユウキ「あ、はい。そっすけど…えっと、どちら様?」
背後でハヅキが真っ赤になって笑いをこらえている。少女も同じくらい真っ赤になって、声がだんだんしぼんでいった。
???「…あ…あの…ユウキさん、もしかして私のこと忘れて…しまったんでしょうか…?」
最後の最後まで音量が下がったとき、ユウキはふとひとつの名前を思い出した。
ユウキ「…ミ…ミナヅキ?」
ハヅキ「ぶはっ!!」
ついに爆発。
ミナヅキ「…姉さん…笑っ…ちゃダメ…」
ゆでだこのように真っ赤になって、ミナヅキはもう泣きそうだ。ユウキはそれを更に勘違いした。
ユウキ「あっ…ごめ…その、忘れてたわけじゃ…!!随分雰囲気が変わってたもんだから…!!」
ハヅキ「ぶははははははははは!!!腹イテー!!あっつ、足もイテー…」
ミナヅキ「だ…大丈夫?姉さん…ガ、ガルリン、姉さんをお願い」
ガルーラがポッケに笑い死にしたハヅキを頭を下にして入れて、大きなわらの建物のほうへ向かっていった。
・・・・・・
気まずい沈黙。
・・・・・・
ユウキ・ミナヅキ「あの…」
ユウキの体内時計でさえもその差を測定できない、完全な同時。
ミナヅキ「ど…どうぞ…」
しかしミナヅキのほうが気が利くので、ユウキが先に精神の処刑を受けることとなった。
ユウキ「…そ…その……ご、ごめん…」
ミナヅキ「いえ…」
ユウキ「その…なんていうか…オレの見たことあるミナヅキはいつもスカートだったし…声も小さかったし…
    それに、素顔がこんなかわいいって知らなかったし……ってあれ?……ッ!!」
ギロチン作動。むやみに考えすぎた言葉が余計に首を絞めた。
被害はもちろんミナヅキにも及んでいた。赤面&絶句である。
ユウキ「わ――――ッ、ごッ、ごめん!!ごめん!!今のは忘れて…」
ミナヅキ「………!!」
ユウキ「ああッ!?ちょっと待って…」
処刑完了。ユウキの精神はとどめの半泣きダッシュ逃亡で完全にノックアウトされた。
サツキ「ユウキおにーちゃん…何の用かと思えば…」
もはや振り返る気力すらなかった。
サツキ「何ミナヅキおねーちゃん泣かしてんのよッ!!サツキ――ック!!」
泣きっ面に蜂の第三次大惨事だ。肉体的にもノックアウトされたユウキは、サツキのヤミーによってどこかへ運ばれていった。

173 :エンタ2006/03/02(Thu) 15:34:30 ID:uk67FfYI
第148話 お守りの勇気

ハヅキ「ふーん?ユウキくんにそんなこと言われたんだ…よく気絶しなかったな」
寝室で語らう三姉妹。
ミナヅキ「うん…もうびっくりしたのと恥ずかしいのとで飛んで逃げてきちゃって…ユウキさんに悪い思いさせちゃったかも…」
サツキ「オクテなコだと思ってたのに、なかなかやりますねェあの子も。あなどれないねェ〜」
ミナヅキ「サツキちゃん…なんてこと言って…」
本当になんてこと言ってんだこの10歳は。
ハヅキ「まあ、とにかく…妹を泣かすような男は義弟(オトウト)失格だ!!」
ミナヅキ「だから姉さん、泣いたのは私が勝手に…」
サツキ「…あれ?そういえばユウキにーちゃん何でここに来てたんだろ?」
ミナヅキ「あ…そういえば…」
ハヅキ「ちっちっちっ。甘いねオフタリサン。ここに来れること自体、用がなくてはできないだろ?」
もっともなことを急に言われたので、二人は面食らって黙った。
ハヅキ「そして、ここには何がある?そう、二つの宝珠。そして…」
サツキ「もしかして、誰かに頼まれてあたしたちを手伝いに来てくれたとか?」
ハヅキ「言うなよ!」
げんこつ、一発。セツナほどの威力ではないが。
ハヅキ「ここにはあの少年が保護されてるだろ?あたしは多分そっちのほうだと思うんだけど…」
サツキ「なら何でぶつの!?」
ハヅキ「まあ、どっちでもありがたいけどね。特に、オクテな我が妹にとっては」
ミナヅキ「ちょっと…!」
ハヅキ「しかーし!!妹を泣かすような奴には義弟は任せられん!!」
その時、ノックの音が部屋に入り込んだ。わらぶきなのでノックと言える音ではないのだが。
ユウキ「あのー…すいません、ちょっといいっすか?」
ハヅキ「…誰を?」
ミナヅキ(!?ちょっ…姉さん…!!)
ユウキ「できれば一番、父さんの話がわかる人を」
部屋の空気が一気に変わった。
ハヅキ「…なら、ミナヅキだな」
ミナヅキが声なき声で猛反論したが、その願いは届くことはなかった。
ユウキ「わかりました。じゃあ、外で待ってます」
ミナヅキ「〜〜〜〜!!!」
ハヅキ「大事な話らしい。今はさっきのことは抜きにして…」
サツキ「そだね。ユウキにーちゃんもそんな感じだったしね」
確かに、ユウキはさっきの動揺など微塵も見せてはいなかった。

ミナヅキ「お待たせしました…」
ユウキ「ミナヅキ…さっそくだけど、ここにいるってことは、宝珠のある場所も知っているんだよな?」
センリと同じ目つきをしていた。ミナヅキは何も言わずただ頷いた。
ユウキ「オレをそこに連れて行ってくれ」
ミナヅキ「!!」
ユウキ「今すぐ…できるか?」
ミナヅキ「ちょっ…その…」
慌てふためくミナヅキの頭に、一言の記憶がほとばしった。
「これをつけて自分に勇気を持ちなされ。お守りじゃ」
髪留めに手を当てて一言、呟いた。
ミナヅキ「勇気…」

ユウキ「ん?呼んだ?」
ミナヅキ「はい…ついて来てください、ユウキさん。こちらです」
そういって、長の家の奥に延びる霧の濃い道を指差した。

サツキ「カケオチかぁ〜?」
ハヅキ「むぅ…やっぱり心配だ…尾けよう!!」

174 :エンタ2006/03/02(Thu) 15:35:56 ID:uk67FfYI
第149話 手遅れ

ミナヅキ「…ユウキさん…」
ユウキ「…何?」
ミナヅキ「…あの……さっきのこと……」
ユウキ「さっき?…………あ!!っと、あれは…!ごめ…ッ」
ミナヅキ「いえ…あやまるのは私のほうです。ごめんなさい……」
ユウキ「…な、何言ってんだよ…こっちこそ、急に変なこと言って…ごめん」
ミナヅキ「…よかった」
ユウキ「え?」

ミナヅキ「もう、仲直りできないかと思いました……ありがとうございます」

ユウキ「…っな、何言ってんだよ!!でも…うん、よかった」
ミナヅキ「おたがいモヤモヤしたままじゃ嫌ですものね。これですっきりしました…ところで」
ユウキ「ん?」
ミナヅキ「なぜ、二つの宝珠の在り処へ…?」
ユウキ「あー、そうだ!!忘れてた!!って…」
ミナヅキ「?」
ユウキ「理由も用も聞いてないのによく連れてってくれる気になったな…オレがマグマ団の刺客だったらどうすんの」
ミナヅキ「それは、ユウキさんを信頼しているからですよ」
霧を吹っ飛ばすような熱が、再びユウキの顔に帰ってきた。とっさに咳をしてごまかした。
ユウキ(ヤバイ…ミ、ミナヅキがかわいく見える…!?あ、頭がくらくらしてきた!!)
ミナヅキ「…?あの…」
ユウキ「(何か話題…話題…!)そ!そうだ、ちょっとこれを…」
ユウキはその場しのぎのために最重要事項であるそらいろのたまを取り出した。
ミナヅキ「…これは…?」
ユウキ「そらいろのたま…第三の超古代ポケモンとコンタクトを取るための、もうひとつの宝珠だ」
ミナヅキ「第三…!?」
ユウキはそらいろのたまについてヒスイの事に触れないように話した。
理由はどうあれエメラルド計画は諜報部の仕事である。実行部であるミナヅキには、言う必要はなかった。
ミナヅキ「それを、二つの宝珠のところへ戻しにきたんですね…」
ユウキ「空の神の依代をあるべき所に返せば、三つの宝珠がそろう。そしたら何かが起こるはず…」
しばらく歩いた後、ミナヅキが言った。
ミナヅキ「着きました」
真の頂上にある宝珠の祭壇に二人はたどり着いた。
ミナヅキ「…?でも、いつもここだけは霧が晴れていたはず…」
そう言いながらも霧の立ち込める頂上を見渡す。
ユウキ「…祭壇は…この辺かな…」
霧の中を手探りで歩くユウキ。その手が石の祭壇に触れた、その時。
ユウキ「……ッ!!」
ミナヅキ「どうなさったんですか?」
ユウキの姿は見えなくとも、異変には気づいた様子だった。
霧の中から、ユウキの自我を喪失したような弱々しい声が聞こえた。

ユウキ「べにいろのたまが、ない…!!」

175 :エンタ2006/03/02(Thu) 16:21:59 ID:uk67FfYI
第150話 消えた宝珠

ミナヅキ「…えっ…!?」
ユウキ「そんなバカな…霧が破られたっていうのか!?」
べにいろのたまを今必要としているのはアクア団だ。
あいいろのたまはカイオーガを制御し、べにいろのたまはカイオーガを復活させる。
ミナヅキ「!!ユウキさん…」
ユウキ「…そらいろのたまが…光ってる!?」
リュックから宝珠を取り出し、手に取った。瞬間、またあの声が聞こえた。
「封印ここに破れたり…再び大いなる災厄が訪れよう!!」
碧色(みどりいろ)の閃光が、頂上から天を突き破るように上へ上へと昇っていった。
ホウエンのどこにでも届くほどに、大きく強い光が。

ハヅキ「霧で二人を見失ったと思ったら…今度は何だよ!?」
サツキ「何この光!?頂上から…?」

ヒサヤ「何だありゃ…!?」

ツチオ「あの光は…一体…?」

イッセン「…何じゃ、あれは…!?おくりびやまの頂上から光が…」
セツナ「何か…とんでもないことが起こってるみたいね…」

ワビスケ「……始まったで、ござるか……」

マユミ「データと同じ…だとしたら、これが戦いの始まりの合図…」

ミクリ「…まさか…こんなにも早く、戦いのときが…」

ダイゴ「無事でいてくれよ…ユウキくん…!!」

センリ「遅かったか…!?…いや、まだ手はある…!!」

アオギリ「…ククッ、宝珠が暴走したか。…あの様子ではレックウザが怒ってやがるな…俺の勝ちだ、マツブサ…」

マツブサ「クハハッ、見るがいい、お前たち!!空の怒りだ!!これはいい、グラードンの復活は目前だ!!」
ヤイト「すっげぇ…!!」
ススケ「あの光を目指して飛んでいけば、隠し通路とやらを見つける手間が省けんじゃねーの?」
リョウ「おお!そっか!!ススケ、アンタ頭いい〜!!」

ホタル(ユウキ…覚悟はできてるか?)

マツブサ「行くぞ、皆」

ホタル(始まったぜ…全てを賭けた、戦いがよ…!)

176 :エンタ2006/03/02(Thu) 16:32:32 ID:uk67FfYI
長〜い第4章を終えて、いよいよ決戦のときが近づいてきました。
それぞれの歩いてきた道も、全てを賭けた戦いの日へと集束されていきます。
第5章、全てが集う未来へ。
次の151話からお届けします。
長〜い長いお話ですが、どうか最後まで飽きずに読んでくださると光栄です。

いまキャラ番外編・手持ちポケモン編その弐
(といっても、わざまでは紹介できません…あしからず)

苧環ハルカの手持ち(第150話の時点・修行終了後)
アチャピー(バシャーモ♀)Lv.43 おや:ハカセ
マクピー(ハリテヤマ♂)Lv.40  おや:ダイゴ
キノピー(キノガッサ♂)Lv.39  おや:センリ
ニョロピー(ニョロボン♂)Lv.38 おや:シバ
ハガピー(ハガネール♂)Lv.65  おや:シバ
レムピー(チャーレム♂)Lv.45  おや:トウキ
いつの間にかパーティ増えちゃってますね。念のため、レムピーはボブではありません。
ハガピーはイワキチの墓を壊したイワークで、そのときにメタルコートを拾った状態でハルカに取り上げられて、
そしたら偶然にもハガネールに進化したのでユウキ攻略のためと譲り受けたものです。
キノピーのおやがセンリですが、これはユウキとカナズミで会った時には既に持っていました。
こうしてみると捕獲が苦手だということがよくわかります(この場合の「おや」は、捕獲した人)。

桂ホタルの手持ち(第150話の時点・おくりびやま潜入時)
バルビート(♂)Lv.49 おや:ホタル
イルミーゼ(♀)Lv.49 おや:ホタル
ガーディ(♂)Lv.47  おや:ホタル
ギャロップ(♀)Lv.47 おや:ホタル
いやー、バランスいい育て方してますねー。さすがマグマ団。
「というか、このLv.だとゲームのマツブサより強いんじゃ…?」
と思った方はご安心ください。マツブサはハッキリ言ってラスボスなのでもっと強いんです。
今は4匹しかいないパーティも、今後増える予定です。
何故こいつが二人目なのかは…秘密っぽいです。

金田一ゲンキの手持ち(第150話の時点・たぶん海の上)
ヒノまる(ヒノアラシ♂)Lv.42 おや:ウツギ
レアまる(レアコイル)Lv.39  おや:テッセン
バクまる(バクオング♀)Lv.40 おや:ゲンキ
バリまる(バリヤード♂)Lv.37 おや:ゲンキ
サニまる(サニーゴ♀)Lv.38  おや:ゲンキ
ホタルの修行のおかげで見違えるほどレベルアップしたゲンキ軍団。
合成わざもかなり増えました。
そして、ヒノまるはホタルに『桂流炎戦術・ほのおタイプ最強奥義』を教わっています。
不思議なことに、このわざだけは他のわざと相性が悪く、合成できないのです。
この奥義と相性がいいわざは、果たしてあるのか?

銀シンジの手持ち(第150話の時点・こっちもたぶん海の上)
ニューラ(♀)Lv.57  おや:シンジ?
オーダイル(♀)Lv.44 おや:ウツギ
ヤミカラス(♀)Lv.48 おや:シンジ
ノクタス(♂)Lv.45  おや:シンジ
ブラッキー(♀)Lv.43 おや:アオイ
ヘルガー(♀)Lv.45  おや:シンジ
強すぎ(笑)。一番低いブラッキーがハルカのアチャピーと同じLv.ですからね。
ダークポケモンではないので、普通にレベルは上がります。
むしろ、普通のポケモンがダークわざを使うことが余計に大きな経験値となるようです。
オーダイルは何故かダークわざを使うことができません。だからわりとLv.が低いです。
他の4匹にあって、オーダイルに無いモノ…?

アオイの手持ち(第150話の時点・シンジと同行)
チコ(メガニウム♀)Lv.40  おや:ウツギ
チュチュ(ピチュー♀)Lv.26 おや:アオイ
ブブ(ブビィ♂)Lv.23    おや:アオイ
ソンソン(ソーナノ♂)Lv.24 おや:アオイ
イヴ(イーブイ♀)Lv.25   おや:アオイ
ベイビィポケモン3匹です。このポケモンたちは、まさか…
進化しないのはアオイの愛情が足りないからではなく、かわらずのいしを持たせているから。
第24話のソーナンスは、そだてやさんに預けてあります。
第106話で様子を見に来たときには、Lv.67でした。
チコは、アオイがある場所で出会ったあるポケモンレンジャーの人に『くさタイプの最強わざ』を教わっています。

芦田ミツルの手持ち(第150話の時点・おくりびやま集落にて休眠中)
キルリア(♀)Lv.20      おや:ミツル
チルチル(チルタリス♂)Lv.36 おや:ミチル
ザングース(♂)Lv.44     おや:センリ
チリーン(♀)Lv.28      おや:ミツル
エーフィ(♂)Lv.29      おや:アオイ
偏った育て方をしているため、レベルがまばらです。
でも、圧倒的レベル差のあるワビと互角に戦うほど強い。
ニックネームを敢えてつけないのは、センリに憧れているのが主な理由です。
パーティは基本的に真っ白です。ずかんでしろいポケモンをけんさくすると出てきます(例外アリ)。
ミツルもハルカと同じく捕獲が苦手で、チリーンをつかまえるのに(会ってから)5時間かかりました。

177 :エンタ2006/03/03(Fri) 16:18:11 ID:PH2zV2L2
第151話 全てが集う未来で

「……キ…ん……ユ…キさ……!!」

ミナヅキ「ユウキさん!!」
必死の呼びかけに、ユウキは目を覚ました。
ユウキ「…ッ!!」
ミナヅキ「ユウキさん…!!よかった…!!」
彼女は泣いていた。よほど心配だったのだろう。
ユウキ「ミナヅキ…ありがとう。お前がいなかったら、危うく宝珠に飲み込まれるところだった」
起き上がったユウキは冷静になってポケギアを見た。
ユウキ「やっぱり…この高さだと、電波が入らないのか…山を降りるぞ、ミナヅキ」
ミナヅキ「え…」
ユウキ「すぐに父さんと連絡を取る。急いで山を降りよう!!」
ユウキは疲れているにもかかわらず、ムドーを繰り出し、ミナヅキを乗せてそらをとんだ。

センリ「ユウキ――――!!!」
センリはすでにおくりびやまの麓の湖まで来ていた。
ユウキ「父さん!!大変だ!!べにいろのたまが盗まれた!!」
ミナヅキ「だから集落に置いておこうって…あそこなら、外からの侵入を防げたかもしれません!!なのに…」
ユウキ「そういえば、何であんなところにあったの?」
センリ「…グラードンとカイオーガ、両者の力の発現を最小限にとどめるためだ。だからホウエンで一番高い場所に置いた」
ミナヅキ「え…」
センリ「それに、古来より宝珠を守り続けてきた場所だからな。結界もそこそこ出来上がっている」
ユウキ「あの霧のことか…」
センリ「…そういえば、残ったあいいろのたまはどうした?」
ユウキ「…あ!!」
ミナヅキ「…わすれてました…」
センリ「…急いでいたのなら仕方ないが…取りに戻る必要はない。
    片一方の宝珠が盗まれた今、もう一方を守るよりも優先してやるべき事がある」
ユウキ「…ああ。宝珠を通してハッキリとわかったよ。空の神が…人間に対して怒り狂ってる」
センリ「レックウザと和解するためにも、一刻も早くエメラルド計画を成功させねば…!」
ミナヅキ「…?あの…お話が見えないんですが、空の神様が怒るとどうなるんですか?」
センリ「万一グラードンとカイオーガが復活及び地上進出したとき、二匹を鎮める手立てが一つ減る…
    こっちはさして問題ないが、もしレックウザが二匹と同じく破壊の衝動に覚醒めたら、今度こそホウエンは滅びるだろう」
ユウキ「でも…エメラルド計画が終わるまでの間、オレが何もしてないわけにいかないよ…」
センリ「ならお前は、実行部のメンバー全員を集めてくれ。現時点の状況確認のために」
ユウキ「え!?」
センリ「ダイゴと連絡を取り、ツワブキ社長に会議開催の許可を仰ぐ…簡単な仕事だ」
ユウキ「ちょっと待…」

センリ「…しっかりしろ。トップだの何だのの前に、お前は私の息子だろう?」

ユウキ「……!そうか…そうだよ。よし!大空センリ教訓其の弐!思い立ったが吉日!!」
ミナヅキ「わ…私も協力しますっ!!」
センリ「うむ。こいつが暴走したとき止められそうなのはお前くらいだからな」
ユウキ「ちょ、暴走なんて…」
そこでユウキは、ついさっきの出来事を思い出した。
そらいろのたまに飲み込まれそうになったとき……ミナヅキに助けられた?
「お前がいなかったら、危うく宝珠に飲み込まれるところだった」……
そもそも何故ユウキはそらいろのたまを通じて一方的ながらも空の神の声を聞くことができたのだろうか?
ミナヅキ「が、頑張りましょう、ゆゆユウキさん」
さきほどの勇気はどこへやら、またいつものミナヅキに戻ってしまっている。
ユウキ「…ふう。わからないことだらけだな」
センリ「今は…な。いずれ全てを悟る。近くも遠くも、全てが集う未来で」

178 :エンタ2006/03/03(Fri) 16:19:21 ID:PH2zV2L2
第152話 どういうことだ?

ダイゴ「ちょっと待ってくれ、父さん。今なんて言った?」
ツワブキ社長「会議はまだ開かない。今はエメラルド計画や、その他個々の戦力のレベルアップが重要だ」
ダイゴ「どういうことだ!?あの光を見て、なんで何も感じないんだ!」
ツワブキ社長「あちらもまだ動きは無いはずだ…」
ダイゴ「あったんだよ、動きがッ!!センリさんから電話で、べにいろのたまが奪われたって!!」
ツワブキ社長「それは、ニセモノのほうだろう?」
ダイゴ「違う!!ニセモノはこの間ハヅキ先輩がやられたときに奪われたじゃないか!!」
もはや感情や理性が大きく歪んでしまっている。彼は今まで、こうまで取り乱すことは無かった。
ダイゴ「それにッ、おくりびやまの入り口でヨネ老婆が倒れているのが民間人に発見されたんだ!!
    二つの組織の恐怖が、僕らの存在が、民間人にバレたら…皆の恐怖をあおってしまう!!」
ツワブキ社長「しかし…今はまだ、奴らに確定的な動きが無い以上、実行部を動かすわけには…」
ダイゴ「何をのん気なことを言ってるんだ、父さんは!!
    アクア団が海の巫女を発見してたら、もう手遅れなんだぞッ!!」
ツワブキ社長「しかし、それを言えば逆に発見していないということも…」
ダイゴ「考えられない!!だいいち、考えてる余裕は無いんだ!!」
ツワブキ社長「とッ、とにもかくにも会議は開かん!!まだその時ではないんだ!!」

プツッ ツー ツー ツー ……

ダイゴ「…また、切られた…どうしたっていうんだよ、父さん…ッ!?」
あの光が止んでから間もなく、彼は父親に電話をした。
すぐに会議を開き、実行部に戦闘の指令を出すようにと。
だが、答えはNOだった。
今なら、新たなメンバーをみんなに紹介するにもちょうどいいタイミングだと思っていたし、
何より今が『切り札』の使い時のはずだ。
ダイゴ「どうしたらいい…?」
すると、今度は電話がかかってきた。

ユウキ「もしもし?夜分遅くにすいません。師匠?寝てます?」
ダイゴ「ユウキくんか…」
ユウキ「今父さんとミナヅキと、トウカジムの前にいるんですけど…時間あります?なくても構わないんですが」
ダイゴ「…悪い、今考えごとを…」
ユウキ「あーダメですよ、師匠。逃げようったって。父さんのアイデアで、会議を開くことになりました」
ダイゴは驚いた。
ダイゴ「何?」
ユウキ「それで、師匠から社長に、許可をもらってほしいんですケド…」
ダイゴ「…それなら無理だ。今さっき実行部は動かさないと言われたよ」
ユウキ「えぇ!?どうしよう、困ったな…」
ダイゴ「…待てよ…」
ピンポーン。少し古いが、豆電球。
ダイゴ「許可なんて要らないじゃないか…僕は実行部のリーダーなんだから!!」

179 :エンタ2006/03/03(Fri) 16:19:51 ID:PH2zV2L2
第153話 会議の計画・其の一

ユウキ「な…マ、マジっすか!?」
ダイゴ「最近父さんの調子が変なんだ…ハヅキ先輩が倒れたときから、ずっと実行部を動かすべきだと思っていたのに」
ユウキ「いや〜、ボケるにはまだ早いかと…」
ダイゴ「…僕が突っこむのかな?」
ユウキがボケだった。
ユウキ「でも、せめてミクリさんには連絡を取りましょうよ」
ダイゴ「そうか…彼はいちおう実行部の責任者だしね…じゃ、さっそく」
そういって、しばらく声が途切れた。ダイゴはポケギアを二つ持っている。

ダイゴ「…OKの二つ返事だよ。ミクリもついさっき父さんと連絡を取ってたそうだ」
ユウキ「じゃあ、決まりですね!」
ダイゴ「ああ。問題は、いかに父さんから隠れてやるか…総責任者の意思に反するんだから、隠密にやらないと」
ユウキ「場所と、日時ですね…」
ダイゴ「盗聴はされてないとは思うけど、一応ポケギアは使わないつもりだ…しかも海外にいる仲間には、電話が通じない」
ユウキ「ハルカと…あと確か、スグルでしたっけ?」
スグル「僕がどうかしたかい?」
ユウキの背後に、目立ちすぎるくせにまったく気配を感じなかった男が立っていた。
ユウキ「びっくりしたッ、ツツジジムリーダーかお前は」
ミナヅキ「スグルさん…」
スグル「…ん?キミは…見慣れない顔だね」
ミナヅキ「あ、私…実行部の桃花ミナヅキです…」
スグル「えぇッ!?」
ユウキと同じような驚き。が、この先の反応はまるで違った。
スグル「う、美しい……。」
ミナヅキ「は…はい?」
スグルがミナヅキの手を強引に掴み、声色を変えてしゃべりだした。
スグル「よろしければ次の満月の日…来週の土曜、僕とデートを…あだァッ!?」
これまた存在感の大きい、それでいて気配を隠していた少女が、スグルのスネを思いっきり蹴っていた。
スグル「…おぉぉぉ……ミ、ミドリ…ここは弁慶の泣き所といってね…」
ミドリ「……知ってる……だから蹴ったの……」
スグル「お、鬼だ……ヒィッごめんなさい!!冗談冗談!!だからその足下げて!ね?ね?」
ユウキ「…えーっと…」
ミナヅキ「その子は…?」
痛みと恐怖にのた打ち回る惨めな少年を放って、ミドリはユウキたち三人を指差して言った。
ミドリ「……『覚醒(アウェイキング・フォース)』……」
ユウキ「っな!?」
ミドリ「……『緑煌(グローリー・グロウ)』……」
ミナヅキ「え…っ、どうしてそれを…」
ミドリ「……『千里眼(エターナル・インディゴ・アイズ)』……」
センリ「…どうやら本物だな。スグル、おつかいご苦労」
スグル「本当にご苦労したよー。リーダー人遣い荒すぎ!」
センリ「しかし…こんな小さなおみやげを連れてくるとは…私は、写真を見せるだけといったはずだが」
ミドリ「……おばあさまは……ご自分の眼力が衰えたと……おっしゃっていましたが……おそらく……」
センリ「スペックが衰えることなど、通常はありえない。コウメさんが眼を疑ったのは、
    まさに…通常はありえない連中を目の当たりにしたからだろうな」
スグル「ああ。確かに、僕の能力はありえないほどすごい代物だよねー」
ミドリ「……スグルお兄さんは置いといて……あなたも……あなたも……ありえない能力の使い手……」
ミドリは、ユウキとミナヅキを順に指差して言った。
ユウキ「これが噂の、人のスペックが分かる能力か…」
ダイゴ「…おーい。僕のこと忘れてない?」
ユウキ「あ!忘れ…ってませんよ!あははは」
ダイゴ「……僕が突っこむのかな?」

180 :エンタ2006/03/03(Fri) 16:20:43 ID:PH2zV2L2
第154話 会議の計画・其の二

ダイゴ「ポケギアを使わない以上…直接伝える必要がある。そこで本部を、ヒサヤん家にしようと思う」
センリの協力によってジムの大きなモニターに映し出されたダイゴがしゃべった。
ユウキ「なるほど。あそこはホウエン中のあらゆる場所とつながってるし…」
ユウキは、ムロ島からの帰還のことを思い出した。
ダイゴ「ああ。それに、敵の本部の付近に置いたほうが、いざというとき動きやすいし…」
ユウキ「じゃあ、オレがヒサヤの家にメンバーを集めますよ。電話を使わなければいいんですよね?」
ダイゴ「そういう事になるね。全員集めてまずやることは、こちら側の戦力の確認だ」
ユウキ「向こうは100人越える軍勢…こっちは実行部10人…いや9人か」
ダイゴ「その事だが、新しいメンバーが2人増えた。芦田ミツルくんと椿木ワビスケさんだ」
ユウキ「ミツルが!?何でですか!?」
ダイゴ「父さんが直々に選んだくらいだから、強いんじゃないのか?会ったことないから知らないけど」
センリ「それで…彼は今どこに?」
ダイゴ「おくりびやまにいるって聞きましたけど…昨日の報告だし、今現在どこにいるのかまでは…」
ミナヅキが何か思い出した。
ミナヅキ「…あ…ダイゴさん…そのミツルさんって…キルリア持ってますか…?」
ダイゴ「いや…ラルトスが手持ちとは聞いてたけど、進化したかどうかはわからないよ」
センリ「ミナヅキ…その少年は、どんな格好をしていた?」
ミナヅキ「…え?…えーと…白のワイシャツに…緑のズボン…キルリアみたいな色の服です」
ユウキとセンリが同時にプッと笑ったが、ミナヅキにはそれが何故なのかわからなかった。
ユウキ「師匠、間違いないです。ミツルは試練を乗り越えてラルトスを進化させたんですよ」
センリ「ああ。彼のラルトスは重度のポケルスを患っていたからな。死の危険と隣り合わせの進化だったんだ」
スグル「物騒な話だなァ…」
ユウキ「で、ミツルの居場所がわかったわけだから、オレは探しに…」
ミナヅキ「…あ、あの…私が案内します…しましょうか?」
センリ「そうしろ。ユウキ一人では見つけられないだろう。というか、ミナヅキ…
    お前は常にユウキと行動を共にしろ。レックウザの怒りがおさまるまで」
ミナヅキ「えっ…あ…っ、は、はいっ!!」
スグル「じゃあ僕も一緒にいていいかい?」
ユウキ「オレと目的が一緒ならな…」
その言葉には、敵意…いや殺意が込められていた。
センリ「そうしろ。ユウキ、お前の残った体力では再びエアームドを飛ばせることはできまい」
ユウキ「ああ…悔しいけど」
スグル「それじゃよろしく〜♪」
ミドリ「……なら……私も……」
スグル「引っ張らないでくれよ、ズボンが伸びちゃうよ」
センリ「そうしろ。実行部のスペックを調べるなら、一緒にいたほうが効率がいい」
ダイゴ「(なんかセンリさんさっきから同じセリフばっか…)じゃあ、4人で実行部のメンバーを集めてくれ。
    僕はこれからヒサヤの家に行ってこのことを伝えてくるから。会議は集まり次第って事で。じゃ」
モニターが真っ暗になった。
ユウキ「それじゃ、いってきまーす」
3人が扉から出た。…つまり、1人残った。
センリ「…どうした?」
ミドリ「……さっき……ミツルっていう人の居場所を調べるとき……どうして使わなかったのですか……?」
センリ「…私はまだ未熟だからな。消耗が激しい。一日15秒が限度だ」
ミドリ「……そうですか……」
センリ「ほら、外で皆待ってるぞ。早く行け」
ミドリは小さく礼をし、ジムの扉から外に出た。

181 :エンタ2006/03/05(Sun) 13:46:50 ID:rqYoZ886
第155話 夢・其の一

シンジ「やはり…材料、ですか…」
ここはヒワダタウン、名匠ガンテツの工房。
ガンテツ「うむ…お前さんが戻ってきたのは嬉しいんやが…」
シンジ「いや…継ぐつもりで戻ってきたんじゃ…」
ガンテツ「わはは、冗談や。ホウエンのほうで、えらい事が起きたんやろ?あそこはなぜか災害が多いなァ」
シンジ「はい。そしてホウエンを守るために…あのボールが必要なんです」
ガンテツ「時を越えるボール…か。だが、材料が足りん」
シンジ「…何でも集めます。教えてください」
沈黙が流れ、ガンテツがおもむろに口を開いた。
ガンテツ「…まずシェルに、水よりも透明で氷よりも強固なる宝のぼんぐり」
シンジ「…?」
ガンテツ「そしてネットに、鋭き風と輝く熱を帯びた…神の糸」
シンジ「えらく抽象的ですね…」
ガンテツ「我が家に代々伝わる秘伝の書にそう書いてあったんや。だいいちワシも作ったことすらない」
シンジ「…わかりました。何とか探してみせます…ところで、あの横取り女は…?」
ガンテツ「アオイさんとかいう子のことか?外でチエと遊んどるわ」
シンジ「…んで遊んでんだよ…」
ガンテツ「そうそう、もう1人の連れの方やが…2階で寝かしとるで」
シンジ「そうですか」
ガンテツ「…しかしこんな夜遅く、よう来たもんやの。疲れたやろうから、うちで寝てってええぞ」
そう、今は日付けが変わってすぐの真夜中。ホウエンからジョウトの距離を考えると妥当な時間である。
シンジ「それじゃ、お言葉に甘えて…」

その夜シンジは昔の夢を見た。
いつものように…泥棒に入る夢だ。
都合よく窓が開けっ放しだった家に忍び込んだ。
さらに運のいいことに、留守だった。
シンジが金目の物を探しているうちに、ふと、
丁寧に並べられたモンスターボールが目に入った。
シンジはそのうち一つを手に取り、風のように華麗に去った…
つもりだった。
少年「…!どッ…泥…!!」

182 :エンタ2006/03/05(Sun) 13:47:12 ID:rqYoZ886
第156話 夢・其の二

シンジ「(しまった…見つかった!?)ッ、黙れ!!」
目撃者は子供だった。シンジはとっさにニューラを繰り出した。
少年「何してんだ、お前!?泥棒か!?」
シンジ「貴様には関係のないことだ!ニューラッ!!」
ニューラがダークオーラを纏い始めた。
ゲンキ「!ヒノまる!!」
少年がヒノアラシを繰り出してきた。
シンジ「ほのお…弱点狙いか?いや…」
その貧弱なひのこをかわしながら、にやりと笑って呟いた。
シンジ「初期形態では…相手にならないな」

が。

その少年は、ダークオーラを恐れなかった。

シンジ「何故だ…!?何故恐れない!?」
少年「夏だってのに、何だこの寒さは。妖怪でも出たか?」
シンジ「バカな…精神を鍛え上げた大人でさえもすくんで動けなくなるはずなのに…?」
少年「へへっ、いけるぜヒノまる!!」
シンジ「ふざけるな!!ニューラ、こいつを殺せェッ!!!」
ニューラのツメの周りの空気が白い粒となり、空中でツメの形を形成し始めた。
少年「な、何だ?浮いてるぞ…?」
シンジ「これがダークオーラの力だ…そのツメはニューラのツメの動きと連動するぞ」
少年「つまり、第二のツメってワケね…でも所詮はただのこおりじゃねーか」
シンジ「クク…ッ、こおりではない。極度の冷気により、ダークオーラを固体化したもの。つまり、冷気の塊だ」
少年「…?イミがイマイチわからん…具体的に何なんだ?冷気の塊って?」
シンジ「いいだろう、説明してやる。俺のニューラが使えるわざに、ダークフリーズというものがある」
少年「ふむふむ」
シンジ「それは、ダークオーラから冷気を発生させるというものだが…実際は少しニュアンスが違う。
    ダークオーラという不定形な概念…分かりやすく言えば“気”を、冷気に変換するというものだ」
少年「ふむふむ…つまり、そのダーク何とかいうの自体が冷気になるわけね」
シンジ「そう。それを更にニューラの異能である『凍てつく視線』でにらみつけ、凍らせたのがこのフリーズクローだ」
少年「凍てつく視線…?」
シンジ「特殊な方法でにらみつけるを強化したニューラは、睨んだものを凍らせることができる」
少年「そうなの!?すげーな!!」
シンジ「そうだ、すごいだろう」
少年「…ヒノまる、あいつ説明好きな泥棒だな…わざ名単純でダサいし」
シンジ「ぐ…ま、まあいい。説明も終わったし、お前が生きてる意味はもう無い。死ね」
ニューラが左腕を一振りして氷のツメを撃ち出した。
少年「って、飛ぶのかよ!!先に言え!!」
少年とヒノアラシは左右に分かれてツメをよけた。ツメが刺さったじめんに、霜柱が出ていた。
少年「何だこりゃ!?じめんが凍ってる!?」
シンジ「言い忘れていた…ダークフリーズは周囲の水分を凍りつかせる効果を持っている。
    これで貴様の首をはねれば…血は流れない。証拠も残らない」
少年「…お前、そうやって今まで何人の命を奪ってきたんだよ…?」
シンジ「さあな。消した命の数など記憶するに値しない」
少年「ッざけんじゃねえぇェッッ!!」
ニューラが今度は外すまいと少年に飛びかかった。少年もニューラに向かって走り出した。

少年とニューラが、同時にシンジの視界から消えた。

183 :エンタ2006/03/05(Sun) 13:47:30 ID:rqYoZ886
第157話 夢・其の三

シンジ「な…何だこれは!?霧…!?」
少年とニューラが激突した場所から突如、霧のようなものが噴出し彼らを覆ったのだ。
シンジ「…く…ッ!!」
シンジはその巨大なドームを形成している霧の中に飛び込んだ。

シンジ「く…暑…ッ、これは霧じゃない…水蒸気…?」
中は、真夏の炎天下よりも暑い、蒸し風呂のような空間だった。
少年「どうだ泥棒!オレの怒りを思い知ったか!!」
霧の中に、少年とニューラが対峙していた。ニューラの冷気のツメは消えていた。
シンジ「何をした…ッ!?」
少年「さあなー。自分で考えろよ」
突如噴出した霧…無くなったニューラのツメ…そしてこの霧の中の豪熱…つまり…
シンジ「ニューラのツメを…一瞬にして昇華させたというのか…」
昇華とは、個体が液体を経ずに気体化すること(またはその逆)を指す。しかし…
シンジ「原理はわかった。だが、ヒノアラシのどこにそんな力があったというんだ!?」
少年「そいつは言えねーなァー。ま、それも自分で考えろ…」
すると突然、少年の姿が不気味に歪み、そして消えた。同時に、周囲の温度が更に上昇した。
シンジ「ぐぁ…ッ!?貴様ッ、どこに行った!?」
どこかから少年の声が降ってきた。
少年「へっへーん!!どうだ!!よくもヒノまるを弱いとか言ったな。そこで一生迷ってろ!!」
シンジ「…そうか…これはバクフーンの異能…『陽炎隠れ』…」
ニューラはすっかり弱りながらも、必死に相手を探している。
シンジ「無駄だニューラ…何故敵の姿が見えないのか…何故いつまでたっても水蒸気が消えないのか…
    考えてみろニューラ…そして、答えを出せ」
ニューラはその意味不明な言葉に一瞬戸惑ったが、やがて何かに気づいたのか目を閉じた。
シンジ「上出来だ…敵の姿が見えないのは陽炎で視界を惑わせているから…
    水蒸気が消えないのは熱で頭を眩まし、幻影を見せているから…つまり原因は目だ」
少年「お前こそ上出来だぜ、泥棒さんよ。ただオレなら、陽炎隠れなんてダサい名前じゃなくて
   もっとイカしたカッコいい名前をつけるけどな…例えば…」
ニューラが声の位置を正確に感じ取り、素早くツメを作り直した。
シンジ「そこだ!!ニューラ!!」

少年「陽炎(ファントムヒート)…とかな!!」

ツメは命中した。
ただし、幻影に。
シンジ「な…ッ!?」
少年「そいつは“ハズレ”だぜ、泥棒さん」
ツメが刺さった場所から発生した冷気によりある程度冷まされた空気が、シンジの視界を取り戻した。
彼らは、ヒノアラシのぶんしんに取り囲まれていた。

184 :エンタ2006/03/05(Sun) 13:47:57 ID:rqYoZ886
第158話 夢・其の四

シンジ「…最初の豪熱は…オーバーヒート、だな…?」
少年「そ。でもってこれがかげぶんしんだ」
相手の目を惑わす二重工作…加えて、豪熱によるダメージ。かなり完成度の高いわざだ。
シンジ「…しかし、ただ二つを順番に繰り出しただけではここまで完成度の高いわざは…」
少年「ああ。そりゃアレだよ、アルケミック・スキルだよ」
シンジ「アルケミック・スキル…?まさか、『錬成』のスペックか!?」
少年「何それ。オレはアルケミック・スキルしか知らねーよ」
シンジ「なんだそれは…」
少年「そうそう。お前に聞きたいんだけどよー…お前さ、人殺したこと無いだろ」
シンジ「なッ!?何を言っている、さっきも言ったとおり…」
少年「お前みたいな弱い奴に人が殺せるかっつーの」
シンジ「ぐ…」
少年「…だってそうだろ?さっきも本気でオレを殺すつもりだったのなら、
   ニューラの凍てつく視線とか何とかでオレの足を凍らせれば確実だったわけだし…
   だからオレ一人殺すのに躊躇するような奴に、他の人を殺せるわけ無いだろって」
シンジ「…とにかく、貴様は俺が勝てる相手ではないということか…」
ちらっとニューラを見て、シンジはそう呟いた。ニューラは熱で疲労している。
少年「思い知ったか、金田一ゲンキさまの強さを!と言うわけで、さっさと盗んだ物を返すがいい!」
シンジ「それは断る」
ゲンキ「なッ」
シンジはヘビーボールを取り出し…
ゲンキ「ななな何だ!?浮いた!?」
シンジ「重力を操作しただけだ…これが俺のスペック『魔球(ボングリック・リベレイト)』だ」
ゲンキ「やっぱダサいな、ヒノまる」
シンジ「だッ…黙れ!!行くぞ、ニューラ!!」
ゲンキ「あぁ!!待ちやがれー!!」

突然、時間が飛んだ。

今度の夢の舞台は、静かなる町エンジュシティ。
シンジ「あの金田一ゲンキとかいう男に勝つために…1年間特訓してきたんだ」
何故か懐かしい香りのするこの町の片隅のボロボロにやけたとうで、シンジは特訓をしていた。
ジョウト各地を巡って手に入れたポケモンたちも、ニューラの指導でダークわざを覚え始めた。
ただ、盗んだポケモン…ワニノコだけがダークわざを覚えなかった。
シンジ「やはりタイプが違うからか…?ニューラと同じあくタイプのヤミカラスとヘルガーは覚えたのに」
仕方なくワニノコにはわざマシンではなく書物からわざを覚えさせていた。実はシンジは機械が苦手なのだ。
そうしてめっきり盗みも減り、しばらく特訓の日々が続いたある日…
ゲンキ「あ―――――――――――――お前―――――――――――――――――――ッッッ!!!!!」
シンジ「うるさいわッ!!」
ゲンキ「何してんだ、お前!!泥棒か!?」
シンジ「この間と同じセリフだな…というか、火事場泥棒なんてするか」
ゲンキ「じゃあ何だよ!」
シンジ「ククク…お前を待っていたん」

ズズ―――――――――――ン……

突然じめんが揺れ、巨大なサイドンが現れた。

185 :エンタ2006/03/07(Tue) 17:35:46 ID:RnOQhbc2
第159話 悪夢・其の一

サイドンの背中には黒服の男が数人乗っている。つまり数人乗れるほどそのサイドンはデカイのだ。
黒服の男A「おい、ここか?エンジュシティってのは」
黒服の男B「そうだろ。でっかい塔がある」
黒服の男C「おい、あれ!!あそこにいるのって…」
シンジ「……ッ!!」
黒服の男D「いた!間違いねェ、シンジさんだ!!」
ゲンキ「…お前、名前シンジって言うのか?…じゃなくて何なんだあいつら?知り合い?」
シンジ「…ゲンキ…とかいったな。ここから逃げろ」
ゲンキ「は?」
シンジ「ヤミカラス!!ダークウェザー!!」
突如、町中を不気味な雰囲気が包み込んだ。しかし、ゲンキは何ともない。
ゲンキ「何だよ、またハッタリわざか?」
シンジ「逃げろと言っている!!」
ゲンキ「ふざけん…あれ?何だこれ?」
まるでゲンキとシンジの間に壁があるかのように、伸ばした手が阻まれた。
シンジ「ダークウェザー…あらゆる物理を遮断する障壁だ。俺のヤミカラスの場合はな」
黒服の男C「おい、シンジさんウェザー張ったみたいだぜ」
黒服の男E「させるかって!!ドードリオ、ダークリムーブ!!」
どこから出したのか、サイドンの頭の上に立ったドードリオが自らのダークオーラを発生させた。
シンジ「くッ…対ダークわざ専用の…裏切り者専用のわざか」
ゲンキ「お?かべが消えてる?」
シンジ「ヤツのダークオーラで相殺された。対ダークわざ専用ダークオーラ滅却わざ…ダークリムーブ」
ゲンキ「大層な名前だなァ…」
黒服の男E「ドードリオ!!お前の足でシンジさんに近づけ!!」
ゲンキ「…ん?何でお前狙われてんのにさん付けなんだ?」
シンジ「この状況を見て…こうも冷静とは…お前にダークわざが効かない理由がよくわかった」
ゲンキ「は?」
シンジ「…バカだからだ。恐怖という感情を知らない」
ゲンキ「な…んだとォ!?」
シンジ「だが、それは幸せなことかもしれない。…もう一度言う。ここから逃げろ」
ゲンキ「何?」
そうこうしているうちに、ドードリオはすでに2,30mくらいの距離にきていた。
シンジ「これから最凶のダークオーラを味わうことになる。恐怖を知らぬままでいたければ、ここを離れろ」
ドードリオが目と鼻の先にやってきている。勢いを、残したまま。
シンジ「ニューラ…全力で止めろ」
ゲンキはまだそこにいた。そして、知ることになってしまった。…最凶の恐怖を。

シンジ「ダークエンド」

186 :エンタ2006/03/07(Tue) 17:37:14 ID:RnOQhbc2
第160話 悪夢・其の二

ゲンキは動けなかった。
精神を喰い尽くされるような感覚。
肉眼で見えるほどに濃いダークオーラ。
サイドンと男たちを失神させるほどに強力かつ凶悪な気迫。
その全てが、ゲンキを動けなくしていた。

ニューラがヤミカラスの足に掴まって高速で移動しながら、身に纏った最大級のダークオーラを敵にぶつける…
その反動でかなり弱っていたニューラは、シンジのボールに戻された。
シンジ「ご苦労だった…」
ゲンキ「…い…今のは」
シンジが振り返り、あきれた顔で言う。
シンジ「だから逃げろといっただろう…足がすくんで動けないのか?」
ゲンキ「…あ、足どころじゃねェよ…全身ガッチガチだ…」
シンジ「そうか…だが安心するのはまだ早いぞ」
シンジが再び敵のほうを向き直ると、そこにはサイドンのかわりに1人の男が立っていた。
ゲンキ「…誰だ…アイツ……」
男「随分派手にやったな、シンジ」
シンジ「貴様が俺にこんなわざを教えなければ、使うことも無かっただろう」
男「しかし…奇襲のつもりだったのに、よく対処したものだ」
ゲンキ「奇襲!?あれがか!?」
シンジ「貴様らの来そうな日はわかっていた。槐祭のある今日だということはな…だが、早く来すぎたな。
    貴様の目当てである民間人は、この町には1人もいない。皆スズのとうで礼拝をしている」
ゲンキ「な…民間人が目当てって、何だよ…まさか…」
シンジ「察しの通り、あいつが殺戮と蹂躙の元凶だ」
男「クク…言ってくれるな…我が息子よ」
ゲンキ「!!!!」
シンジ「…ふざけるな。貴様は俺の親ではない」
男「ああ、そうとも。実の親ではない。だが、ウバメの森に捨てられていたお前を拾ったのは…」
突然、シンジがゲンキのもとから消えた。そしてヘルガーを従え、男の後ろに回りこんでいた。
シンジ「それ以上口にするな…焼き尽くすぞ」
男「あの少年に聞かれたくないのか…?」
シンジ「黙れ」
ゲンキ「シンジ!!オレも加勢する!!」
男「待て。別にやりあうつもりでここに来たわけじゃない。それに、目標は民間人でもない」
シンジ「なら何の為だ!?部下を5人もよこして、戦うつもりは無いだと!?」
男「奴らを放ったのは、一応実力を確かめるためだ」
ゲンキ「もったいぶってねーで早く言えよ!!」

男「シンジ…かわいい子には旅をさせろ、という言葉を知っているか?」

187 :エンタ2006/03/07(Tue) 17:38:26 ID:RnOQhbc2
第161話 悪夢・其の三

男の話した内容はこうだった。
自分のもとを離れ、エンジュに篭もったシンジを、真の意味で自由にしてやろう。
そのために、まずは…
かつて自分を打ち負かした赤い服の少年のような、目標となる相手が必要だ。
目標を持ってこそ、人は強くなる。本当の意味で。
そして、1年前ワカバタウンから家出をして旅に出たという少年のことを知った。
シンジにとっての、赤い服の少年と同じ存在…
つまり自分を負かした、目標となる相手。
そして2人が再び出会ったこの場所で、2人の実力を確かめようとしたのだという。
一緒にジョウトのみならず、全国をめぐるにふさわしい相手かどうかを確かめようと…

男「申し分ない実力のようだ。そっちの金田一少年も、ダークエンドでショック死どころか気絶すらしていない」
ゲンキ「事○簿かよ…パクリっぽい呼び方すんなよ」
シンジ「それで?全国をめぐらせる目的は何だ?」
男「目的?そんなものはない。お前が決めればいい」
シンジ「何…?」
男「言っただろう、かわいい子には旅をさせろと」
シンジ「俺をかわいがっているというのか?バカバカしい…」
男「そう思えないのならそれでもいい。だが、お前を自由にしてやりたいんだ。かつて俺が子供の頃自由だったように」
シンジ「…………」
男「仲良くやれよ。家が恋しくなったらいつでも戻って来い」
そして、ゲンキのトラウマを呼び起こしそうになるダークオーラを発生させ、空を飛んだ。
ゲンキ「何だアレ…!?今度こそ浮いてるよな!?」
シンジ「ダークオーラは目に見えないからそう見えるだけだ。物理を遮断する壁だとさっき言ったはずだが」
男は足元のニドリーノが発生させるダークウェザーでそらをとび、森の方角へ飛んでいった。
シンジ「…つくづく…わからない男だ…」
ゲンキ「なぁ、シンジ。結局アイツ誰なわけ?」

シンジ「……サカキ」

そこでシンジは目が覚めた。夢から2年後の現在へと戻ってきた。
シンジ「思い出した…『あの男』はサカキ…そして、滅ぼすと誓ったのは…」
シンジは跳ね起きて、明るみ始めている空の下に出た。

188 :エンタ2006/03/08(Wed) 17:18:39 ID:oFtoDvVI
第162話 現在も続く悪夢

シンジはヤドンの井戸と呼ばれる村の井戸の前にやってきた。
シンジ「ここヒワダが達人の村なら…ヤツは悪事の達人か」
吐き捨てるように呟くと、ヘビーボールを取り出し、ゆっくり井戸を降りていった。
1人の追跡者の存在に気づかずに…

井戸の底の地下水路の奥には、岩壁にカムフラージュした扉があった。
シンジ「…ヤドンのシッポ」
扉は開かない。
シンジ「…じゃあ…ラッタのシッポか?」
開いた。
中には薄暗いコンピュータルームのような部屋が広がっていた。
シンジ「…ただいま」
皮肉たっぷりにそう呟くと、シンジは鉄の床を歩き部屋の奥まで行った。
シンジ「1人か?…そんなはずも無いな。卑怯者の貴様が…」
???「いや、1人だ」
電気が点いた。そこには、確かに『あの男』が1人で座っていた。
サカキ「…おかえりシンジ。よくここがわかったな」
彼は笑っていた。本当に嬉しいのだろうか?
シンジ「…思い出せたんだ。説明してもらう」
サカキ「説明?何をだ?」
シンジ「とぼけるな。チョウジでのあの出来事だ」
サカキ「チョウジ?」
シンジ「いい加減にしろ!!あの裏切りが無ければ、俺はお前を憎むことは無かった!!」
サカキ「何のことだ…」
シンジははっとした。この顔…この口調。まさか…
シンジ「本当に知らないのか…?」
いつのまにか胸ぐらに掴みかかっていた手を放す。
サカキ「チョウジで、何かあったのか…?まさか、あのラジオとうを占拠したアホの部下どもが関係して…?」
シンジ「…ビンゴだ。だが…あれは貴様の差し金ではないのか?ラジオでサカキさんがどうのとか言ってたが…」
サカキ「あれは約束を破ったアホどもだ。俺の部下だったのは、ロケット団が一度崩れる前の話だ」
シンジ「ゲンキと旅を始めて1年たった頃だから…貴様とは直接関係はなかったのか?」
サカキ「そうだ。あいつらは時を見誤った。暴走したんだ。俺との約束『時が来るまで解散』を破ってな。
    チョウジの地下にアジトを作ったのは確かに俺だが、ラジオ占拠など命令してはいない」
シンジ「そうか…チョウジで、黒服の集団が紅いギャラドスを使って俺を襲ったとき、貴様の仕業かと…」
サカキ「俺がお前を苦しめる必要があると思うか?」
シンジ「そうだったか…あの集団はどうりで弱いと思ったが…」
サカキ「しかし…よく思い出せたものだな…時のひび割れがお前の記憶を削っているというのに」
シンジ「夢を見た。ゲンキの奴に、負かされたときの夢をな…」
サカキ「ククッ、そうか…やはりカギは金田一少年か…」
シンジがサカキを殴ろうとしたが、サカキは華麗な動きでそれをよけた。
シンジ「とにかく、俺は真偽を確かめるためにここに戻ってきた。もう用は無い。帰るぞ」
サカキ「待て待て、せっかく帰ってきたんだ、もう少し…」
シンジ「ダメだ。俺にはやることがある」
サカキ「…そうか?ならせめて餞別を受け取れ。さっき言ったアホどもがラジオとうで奪ってきたものだが…俺には必要ない」
シンジ「餞別だと?縁起の悪いことを…俺は盗品などいら…ッ!?」
『それ』を見て、シンジは驚愕した。

189 :エンタ2006/03/08(Wed) 17:19:18 ID:oFtoDvVI
第163話 小さな優しさ

『それ』は水よりも透明で、氷よりも強固な宝。
そして、それがぼんぐりでできているという事は、見習い(?)のシンジにも容易にしてわかった。
サカキ「とうめいなスズ…と俺は呼んでいる。北から吹く風にのみ呼応して澄んだ音を鳴らすんだ」
シンジ「…そのまんま、センスのかけらも無い呼び方だな…俺が誰に似たのかよくわかる」
サカキ「…ん?今なんて…」

シンジ「ありがたく受け取っておこう…じゃあな、『父さん』」

サカキ「!!!…」
彼が驚きと喜びで声を出せないでいるうちに、シンジは早々に部屋を去った。

シンジは扉を閉め、出口へ続く道を歩き始めた。
すると…
背後から、声がした。
???「どうしたんですか?こんなに朝早く」

振り返ると、そこには…
アオイ「こんなに朝早く、しかもこんな場所で…朝のお散歩というわけでもないでしょう?」
シンジ「よ…こ取り女…!!」
アオイ「へぇ〜、こんな所にかの有名な極悪秘密結社の隠れ家があったなんてねぇ〜」
まったく気づかなかった。これが諜報部の力…
シンジ「………」
シンジは黙っていた。何しろあのロケット団の隠れ家から出てきたところを目撃されたのだ。言い訳のしようも無い。
アオイ「さて…と」
シンジ「どうする気だ…?」
アオイは笑っていた。

アオイ「…どうも、しませんよ」

シンジ「…っな!?」
シンジはしばらく意味がわからなかった。どうもしない?なぜ?
すると、今度は悲しそうな顔で言った。
アオイ「…そんなに私が、信用できませんか?…」
シンジ「………」
彼女は、今にも泣きそうだった。
アオイ「私はただ…泥棒一人許すのと組織一つ許すのではたいした違いは無いと思って…言ったのに…」
シンジ「…な…何を言ってるんだ…全然違うぞ」
アオイ「…じゃあ、訴えて欲しいんですか?」
シンジ「馬鹿を言うな、馬鹿が」
そういうとシンジは顔を見られないように振り返ってから…
シンジ「…ありが、とう」
と、後ろを向いたままぎこちなく言った。
だからシンジはその時、アオイの表情がついさっき昇った朝日のように明るくなった事に気づかなかったのだが…
シンジ「……〜ッ、何言わすんだ!!さっさと帰るぞ、バカバカしい…!」
アオイ「は〜い♪」

サカキの餞別、アオイの許し、シンジの感謝。
それぞれの、小さな優しさ。

190 :エンタ2006/03/08(Wed) 17:20:11 ID:oFtoDvVI
第164話 材料探し

ガンテツ「ま、まさしく…水よりも透明で、氷よりも固い!!こ、これや!!」
サカキがとうめいなスズと名づけたそのぼんぐりを見て、ガンテツが騒いでいる。
チエ「もー、おじいちゃんうるさいよ!!ご近所に迷惑!!」
ガンテツ「おお、スマンスマン。だが、しかし…よう見つけたのォ、こんなモン…」
シンジ「シェルはそれでOKですか?」
ガンテツ「おう!じゃあお前さんらがネットの材料を探しとる間、ワシはこいつを鍛えとくぞ!」
アオイ「はい!頑張ります!それじゃ、シンジ。今日中に見つける勢いで探しましょう!!」
シンジ「ああ。一応俺は東のほうから探りを入れてみる。お前は森のほうへ行け」
アオイ「はい!」

シンジが工房を出ると…
???「あ―――――――――!?シ、シンジさん!?」
シンジは一発で誰だかわかった。自分のことをさん付けで呼ぶヤツと言えば…
シンジ「ツクシ……」
『名前で呼んだ』。それだけで、この二人が親しいことがわかる。
ツクシ「元気だった?シンジさん、ホウエンに行ったって聞いてたから…ビックリしちゃったよ〜」
シンジ「…あー…ツクシ…俺は今…」
ツクシ「やっぱりガンテツさんの所に戻ってきたんだね!!ボール作りの職人になるんでしょ?」
シンジ「ツクシ、俺の話を…」
ツクシ「ねぇねぇ今度教えてよ!!ホウエンにはどんなむしポケモンがいた?」
シンジ「聞けと言って…」
ツクシ「特殊な進化をする珍しいのがいっぱいいるらしいね!!今度連れてってよ!!」
シンジ「聞……」
ツクシ「あ、そういえばゲンキくんはゲンキにしてる?なんちゃって」
なんて、どこかのダジャレオヤジと同じネタですべった時、とうとうシンジがキレた。
シンジ「いぃぃぃぃぃい加減にしろおおおぉぉぉぉぉぉォォォォォォ!!!!!」
…親しい、のか?
ツクシ「うひゃっ、びっくりした!!」
シンジ「まったく、貴様というヤツは…どうやったら声が枯れないですんでいるんだ…」
ツクシ「えぇ〜?別に、今のシンジさんほど大きな声は…」
シンジは今の一喝でいきなりゼェゼェいっている。
シンジ「再会を喜ぶ気持ちはわからんでもあるが…っていうかわからんが…俺は大事な用がある。後にしてくれ」
言うとシンジはヤミカラスを繰り出し…飛び去った。
ツクシ「あ!待ってよ、シン……行っちゃった……」

シンジはワカバタウンにたどり着いた。ツクシから逃れるには、キキョウやヨシノまでの距離ではたりないのだ。
シンジ「撒いたか?…まったく、アイツは…タイミングいいのか悪いのか…いや、確実に悪いな」
シンジはブツブツ言いながら…
いつの間にか、あの道を通っていた。研究所の窓へと続く、あの道を。
シンジ「…こんな所に来て、どうしようと言うんだ…俺は」
シンジは言いつつも、窓の前に立った。窓は相変わらず開けっ放しだ。
シンジ「…ここになら、ネットの材料の情報があるかもしれないな…全く、少しは泥棒対策でもしたらどうだ」
その言葉とは裏腹にシンジは窓に足をかける。すると…

???「おい!そこで何してんだよ?泥棒か?」

そこには、ヤツがいた。ニヤニヤ笑って、こっちを見ながら。
あの日と同じ、風景の中に。

191 :エンタ2006/03/10(Fri) 19:55:59 ID:Nhj9FsOE
第165話 運命の再会

ゲンキ「まったく、懲りねーヤツだな。ちょっと目を離した隙に、ま〜た泥棒なんかしようとしやがって」
シンジ「…ちょっと?ちょっとだと?確かにまる一週間だが…」
ゲンキ「おおっと、その先は言うなよ!100話近くあるとか言うなよ!!」
シンジ「アホか貴様は。何だその時間の表現は」
ゲンキ「別に…」
わけのわからない会話をして、二人は…
笑いあった。
シンジ「クク…あははは」
ゲンキ「ぎゃははは!!」
笑いがいつしかおさまると、二人は同時にあの時のポケモンを出した。
シンジ「ほう…もうバクフーンか…早いもんだな」
ゲンキ「お前はまだニューラか!遅いもんだな」
シンジ「知るか!というか、ニューラって進化するのか?」
この二人は、こんな風に冗談を言いあって旅をしてきた。
そして、二人は不適に笑って互いを見据えた。

…その時。

ニューラの頭に挿してある羽根が、光った。

銀色に。

シンジ「――――!!」
ゲンキ「おお、またオレに反応しやがったな。ホレ」
慣れた感じで言いながら、ポケットから羽根を取り出す。こちらも光っていた。ただし…

虹色に。

シンジ「…そうか…そうか…!!」
ゲンキ「?何言ってんだ?お前」
シンジ「…鋭き風…輝く熱……翼の伝説、そのものだ…!!」
ゲンキ「おーい。帰ってこーい。」
シンジ「どうして気づかなかったんだ…全てがつながった…これで!!」
急にシンジはゲンキの服を掴んでヤミカラスを出した。
ゲンキ「あ!何すんだよ!!オレの一張羅が!!」
シンジ「ならいっそ捨てろ…成長期に3年間同じ服を着てられるのは異常だぞ」
ゲンキ「あ!言ったなテメ…」
シンジ「ヤミカラス、2分だ。行けるな?」
ヤミカラスは大きくカァと鳴き、翼を広げた。そしてそれは了解の合図である。
ゲンキ「2分でどこに行くんだよ?ヨシノか?いや、それとも無茶したがりのおめーのことだ、キキョウだな?」
シンジ「…ヒワダだ」
ゲンキ「はァ!?バカカオマエワ!!歩きゃ半日はかかるぞ!?」
シンジ「…お前が落っこちる前に言っておこう。お前が見つかった運命に感謝する…いや、お前の羽根が、か」
ゲンキ「アホォ!!殺す気かぁぁぁぁぁぁぁぁ死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!?」
何を言おうとしたのかわからないが、とにかく言い終わらないうちに、二人は飛び立った。

192 :エンタ2006/03/10(Fri) 19:57:16 ID:Nhj9FsOE
第166話 伝説のボール、作成!

結局、ゲンキが暴れて一回落ちたせいで、10分かかったのだが。
とりあえずゲンキは生きていた。
シンジ「まったく!!貴様のせいで一日の144分の1の時間が無駄になった!!」
ゲンキ「知るかアホ!!っていうか、何でオレを連れてくる必要があったわけ?」
シンジ「お前がいないと輝かないからな、羽根は。そのためだけだ」
ゲンキ「で、何のためにオレの虹色の羽根が必要なわけ?」
シンジ「伝説のボールの作成のためだ」
テンポよく答えるシンジ。
ゲンキ「オレ材料かよ…で?なんでそんなモンが必要だったわけ?」
シンジ「ホウエンサミットの仕事だ」
その名を聞いたとたん、ゲンキの顔があからさまに嫌な感じになった。
ゲンキ「あーそうかよ。お前もすっかり実行部サマの犬かよ」
シンジ「…犬だと?まあ、安心しろ。俺も実行部を抜けたからな」
ゲンキの顔が明るくなった。子供のようにわかりやすい表情だ。いや、子供だけど。
シンジ「まあ、自主的にじゃないが…もうすぐここに来るだろう女の上司の命令でな」
ゲンキ「…?話が見えてこねーんだけど…とにかくソイツがまだ来てねーんなら急ぐ必要はあったわけ?」
・・・・・・
今度はシカトである。
ゲンキ「で?ボールを作るから、オレらはガンテッちゃんの工房にいるわけね?」
ガンテツ「ガンテッちゃん言うな!」
シンジ「まあ、そういうことだ」
ガンテツ「しかし…本当に今日中に集めよるとはの。ビックリを通り越してあきれるわ」
シンジ「はは…まあ、不可能を可能にするのが俺たち諜報部…ッゴホン、でもこれで、作れるんですね」
危うく完全な諜報部になりかかっているシンジ。恐るべし地獄女マユミ。
ガンテツ「おう。見てみぃ、シェルができたぞ!」
見ると、それはズシリとした威圧感。実際の重量はかなり軽いが、その存在はゲンキをも驚かせた。
ゲンキ「何だこのシェル…なにで作ったんだよ、こんなん…」
シンジがガンテツの弟子になったときにゲンキもいたので、彼は意外とボールのことに詳しい。
シンジ「フフフ…この世に二つとない幻のぼんぐりだ」
ゲンキ「へー…これにオレたちの持ってる羽根をネットにして編み込めば完成!!ってか?」
シンジ「そういうわけだ。…というわけで、頼みます、チエ師匠」
チエ「シン兄ちゃん、あたしにまで敬語使わなくても…」
シンジ「いや!ボール職人たる者、師と並ぶ技術者にも敬意を払うべきと俺は考えますッ!!」
ゲンキ「だよなー、チエちゃんオレより5つも下なのに、糸の編み方はプロいよなぁ」
シンジ「馬鹿が、『プロい』んじゃなくて『プロ』なんだよ!」
チエ「そんなにムキにならなくても…え、えーと…それじゃ始めまーす…」
シンジ「ハイ!!よろしくお願いします!!」
チエ「………。」
そこで、ひとりの女が入ってきた。
アオイ「すいません遅れて!!シンジ、ネットの材料が見つかったって本当ですか…って……」

ゲンキ・アオイ「あ―――――――――――!!!!!!」

193 :エンタ2006/03/10(Fri) 19:57:42 ID:Nhj9FsOE
第167話 完成する伝説

ゲンキ「タ、タマゴ!!?」
アオイ「ゲンキじゃない!!どうしてここに!?」
ガンテツ「む…二人は知り合いかいな」
シンジ「そういえば同じ町に住んでたんだっけか…で、『タマゴ』とはどういう意味だ、ゲンキ?」
さすがに長年の付き合いらしく、『何のことだ?』とは聞かずに『どういう意味のあだ名だ?』と聞く。
ゲンキ「ああ、こいつポケモンのタマゴ孵せるんだよ。だからタマゴ」
シンジ「人間の体温で孵せるのか?」
ゲンキ「そうじゃなくて、スペックらしいぞ。『誕生(ワンダー・エッグ)』だっけ?」
アオイ「うん、まあ…」
シンジ「ほう。ならここには3人のスペック持ち実力者が集まったというわけか」
アオイ「4人ですよ。『時空(ヴァニシング・タイムライン)』さんも含めて」
アオイが上の階を指差しながらいった。
シンジ「こうしてみると、すごいメンツだな…『エメラルド計画』がいかに壮大な計画かが推し量れる」
ゲンキ「エメラル…?」
アオイ「エメラルド計画、私たちが今現在取り掛かっている計画よ」
ゲンキ「あぁ、それが仕事ってやつか」
シンジ「そうだ。ところでゲンキ…これから暇か?」
ゲンキ「んぁ?まぁ、することないっちゃないけど」
シンジ「なら、ついてこい」
ゲンキ「はァ!?何でオレがサミットサマの仕事なんか手伝わにゃ…」
シンジ「お前の力が必要だ」
ゲンキ「ん〜それならそうと最初から言ってくれればいいのにしょうがないなァ〜」
シンジ(扱いやすいヤツ…)
アオイ「………」
そうこうしているうちに、ついにネットが完成した。
ガンテツ「チエ、ごくろうやった。どうや?伝説のボールのネットを作った感想は?」
チエ「うーん。なんていうかね、すごいプレッシャーを感じたの。羽根から」
ゲンキ「羽根から?緊張からじゃなくてか?」
チエ「うん…精神をすり減らされるってゆーか…まあ、よくわかんないんだけど」
シンジ「それは恐らく、この二枚の羽根の主がもたらす圧倒的な存在感によるものかと…」
ガンテツ「ん?どういう意味や?」
シンジ「はい。チエ師匠が言ったとおり、彼らの与える圧力はポケモン学的に『プレッシャー』と呼ばれている物です」
ゲンキ「あ、オレそれ知ってるぞ!!なんつーか存在そのものが精神面に圧力をかけるらしいぜ」
シンジ「ポケモン同士の戦闘では「とくせい」と呼ばれるものに分類されます」
アオイ「博識ですねぇ…」
ゲンキ「ていうか、仮にもお前ポケモン博士の娘なんだから、もうちょっと詳しくてもいいんじゃねーの?」
アオイ「私は進化専門だからネ」
ガンテツ「がっはっは、物知りやのォ。どれ、最後のプレッシャーとやらをお前さんらに味わってもらうとしよか」
ゲンキ「え!?オレらが編みこみやっていいの!?」
ガンテツ「ああ。材料を見つけたのはお前さんらや。仕上げは任せる」
シンジ「光栄です…!よし、やるぞゲンキ」
ゲンキ「おう!」
アオイ(…こんなに楽しそうなシンジ、初めて見た…)

そして、20分後。伝説は、完成した。
ガンテツ「記念すべき最初の一球や。お前さんらが名前をつけるがええ」
ゲンキ「じゃあ、ネーミングセンスバッチリのオレに任せてくれよ!!」
シンジ「不安だ…」
まあ、一応彼に任せれば平気だろう。あまりにひどい名前だったら即却下だが。
ゲンキ「うーん…そうだなァ…『ゲンキ』と『シンジ』の頭文字をとって…『GSボール』ってのはどうよ!?」
シンジ「…お?珍しくまともな名前だな」
ゲンキ「珍しくは余計だっつの!!」
ガンテツ「ほう…ジーエスボールか…なかなかええやないか」
ゲンキ「だろ!?だろ!?オレって天才〜♪」
シンジ「調子に乗るな!」
シンジのゲンコツが炸裂した頃、アオイはヒスイを呼びに階段を上った。

194 :エンタ2006/03/14(Tue) 21:12:39 ID:0HZDr13c
第168話 エメラルド計画、始動!!

ガンテツに別れを告げ、運悪く見つかってしまったツクシを振り払い、4人は森に到着した。
シンジ「まったくアイツは…」
ゲンキ「付き合いづらいのは変わってねーな…まあ、お前が認めるくらいだから根はいいヤツなんだけどさ」
シンジ「どうも、タイミングが悪いというか…」
アオイ「ヒスイさん、具合は大丈夫ですか?」
ヒスイ「なんとか…でも、この森からものすごい圧力を感じるんです…」
シンジ「…地獄女の伝言どおり、ほこらの前まで行くぞ。そこでセレビィを待つ」
ゲンキ「なんか、ワクワクしてきたな…」
シンジ「ワクワクするのは貴様だけだ。空の巫女の容態が悪化しつつある…
    しかし、立ち止まるわけには行かない。俺たちには、もう時間が無いんだ」
アオイ「そう…ですね。行きましょう」
ヒスイ「はい…」

長く暗い森を抜けて、一行はほこらの近くまでやってきた。
ゲンキ「バリまる、もう超壁(ウルトラバリアー)解いていいぜ。この辺のはずだからな、野生はもういないだろ」
アオイ「しばらく見ないうちに、にぎやかなパーティになったね…わざも磨かれてるみたいだし」
ゲンキ「まーな♪」
シンジ「…おかしい…この辺の、はずなんだが…」
ゲンキ「うわっ!?バリまる、雷鳴刃(スパークルリーフ)!!」
いきなり降ってきたクヌギダマに、10まんボルト+マジカルリーフが炸裂した。
ゲンキ「脅かしやがる…ここにも野生のポケモンが住んでるってことは、ほこらの近くじゃねーな…っかしーなァ」
シンジ「ああ。ほこらの放つ霊気…いや神気が、周辺のポケモンや人間を拒む……」
ここまで言って、シンジは自分で気づいた。
シンジ「そうか…俺たちもまた、拒まれているのか…」
ゲンキ「あーそういやそんな本もあったっけ…なんて書いてあったかな…」
彼は小学校を中退し、ひたすら家で勉強していたので、意外と頭がいい。
ゲンキ「思い出した!
   『我、時の罪を贖わんとする者のもとに姿現さん。
    我、清らかなる心を持つ者のもとに導かれん。
    我、鍵をもって扉を開かんとする者を導かん。』だ!!…たぶん」
シンジ「つまり、ときわたりに必要な三つの条件…か。そのうち二つはそろっているな」
シンジはヒスイを見、手に持ったジーエスボールを見てから言った。
ゲンキ「清らかなる心の持ち主ならここにいるじゃねーか!!」
アオイ「どこに?」
ゲンキ「ここに!!」
ゲンキが自分を指差して自信満々に言った。
・・・・・・
アオイ「ヒスイさん、お願いできますか?」
ゲンキ「オイ!無視かよ!!」
ヒスイ「私…?…ど、どうすれば…」
ゲンキ「確かさっきの節に続きがあったぜ。『求めよ。さらば与えられん』ってな」
アオイ「それ聖書なんじゃ…ごちゃまぜ?」
ヒスイ「はぁ…えーっと……求めよ……」
ヒスイは時を越えることを求めた。自分が何者なのか確かめたい。だから手がかりが残る過去へと行きたい。
シンジ「時の神よ!!暦二〇〇五より、向は昔、軸、一五六公転!!道をさだめよ!!」
ゲンキは知っていた。シンジが自分の周りに時のひび割れがあるのを知り、時を越えるための勉強をしたのを。
ジーエスボールから、明るい緑の波動が放射され、ほこらがあるはずの場所へと流れた。
その流れに沿って一行は走り、波動が集まる場所に到着した。

そして…ほこらが、現れた。
まるでそれを守るように座っている、人間の骨と共に。

195 :エンタ2006/03/14(Tue) 21:13:26 ID:0HZDr13c
第169話 真実を知るために

ゲンキ「どわぁぁぁ!?何じゃこりゃぁ!!」
シンジ「…、人間の骨か…しかも、これは大人のものでもないな」
アオイ「多く見積もって、17,8歳でしょうか?」
ゲンキ「お前ら何で平気なんだよ!?」
ヒスイ「う〜ん……」
ゲンキ「わ〜ッ、倒れんなバンダナ!!」
ヒスイのあだ名(ゲンキ版)決定。
シンジ「む…静かにしろ。…そして、耳を澄ませ」
サァァァァァ…………
木立を流れる風の音だけが聞こえる。
サァァァァァ…………
沈黙が、続く。
サァァァァァ…………ィ…ン
ゲンキ「……!」
シンジは、何か言いたそうにしているゲンキに、目で合図をした。
シンジ『聞こえたか?そう遠くない。もう少し我慢しろ』
サァァァァァ…………ィィィィィ…ン
音が、近づいてくる。
サァァァァァ…………キィィィィ…ン
スピーカーの残響のような、それでいて機械的な響きをまったく感じさせない高音。
キィィィィィィィィィィィィィィィィン…!
ついに、その音しか聞こえなくなった。そして。
シンジ『……来たぞ』
ゲンキが音を立てずにつばを飲んだ。
キィィィィィィィィィィィィィィィィン!!
ほこらが光った。
シンジ「そこだッ!!」
シンジが長い沈黙を破り、虚空に向かってジーエスボールを投げた。
ジーエスボールが、開いた。つまりそこには、『ポケモンがいる』ということだ。
ゲンキ「よっしゃ、レアまる、目標捕捉だ!!」
シンジ「!!…よせ!!スペックを使うな!!」
だが、その言葉の意味がゲンキに理解される前に、スペックを使ったゲンキとレアまるの周辺の空間が、
…歪んだ。
シンジ「!!…っく!」
シンジの繰り出したヤミカラスが、ワカバ−ヒワダ間を2分で飛べるような超高速ポケモンでなかったら、
ゲンキとレアまるは、ちょうどそこにあった木のように、
空間ごと、押し潰されていただろう。
ゲンキ「な…な……」
シンジ「忘れたか!俺はさっきジーエスボールの能力を発動させた!ここは既に時のはざまの入り口だぞ!!」
立ち上がったゲンキは、思い出した。昔読んだ本の内容を。
ゲンキ「…時のはざまは…トレーナースペックを拒絶する…」
シンジ「そうだ。ここではどんなスペックも使えないと思え。下手をすれば命が無いぞ」
ゲンキは自分のいた空間にできた『無』を見て、ぞっとした。
アオイ「シンジ…セレビィの捕獲が、完了したようですよ」
シンジ「…よし。皆、準備はいいな?」
ゲンキ「バッチリだぜ!いよいよときわたりか!!」
アオイ「ヒスイさんの記憶を取り戻すために!!」
ヒスイ「はい!行きましょう!!」
セレビィの力が行使され…
4人は、時を越えた。

196 :エンタ2006/03/14(Tue) 21:14:46 ID:0HZDr13c
第170話 不信感

ヒサヤ「どういうことだ、ダイゴッ!!」
場所は変わって、ホウエン地方フエンタウン。
ヒサヤ「何でワビが実行部にされてんだよッ!!アイツを、危険な目に合わせる気か!?」
ダイゴ「落ち着けよ、ヒサヤ…」
ヒサヤ「…アイツは…家族のいない僕にとって妹のような存在なんだ…」
ダイゴ「ヒサヤ…いや、家族はいるだろ?会わないだけだろ?」
ヒサヤ「た…確かにそうだけど、もう10年近く会ってないんだ。いないも同然だろ」
ダイゴ「ま…まあそうだけど」
ヒサヤ「だいたい穴掘ってて行方不明って、日ごろの訓練が足りないんだっての!おっと、話題が…」
ダイゴ「しかし、ワビちゃんを実行部に起用したのは父さんだ。どういう意思かは、知らないけど」
ヒサヤ「ん?何で知らないんだよ」
ダイゴ「ちょっと、最近様子がおかしくてね…昨夜の光を見て電話して以来、連絡取れないんだよね」
ヒサヤ「そうか…何なんだろうな、この違和感は」
すると、二人が今いる部屋に、ノックの音が聞こえた。
アキ「あのー…お取り込み中ごめんなさい…」
そう、ここはフエンタウン、森アキの家。ヒサヤがだいぶお世話になっている。
アキ「怒鳴り声が聞こえたから…ストレスにもよく効く漢方のお茶を」
ヒサヤ「いらない」
アキ「えぇ〜っ!?ひどい!!」
ヒサヤ「だって、アキの作った試作品は今まで全部アウトだったじゃん」
アキ「ふぇぇ…そんな…」
ダイゴ「ヒサヤ、女の子を泣かすもんじゃないぞ」
ヒサヤ「だぁぁ!?な、泣くなって!!わ、悪かったよ!!飲みます飲みます!!」
まるで子供のような(子供だけど)無垢な笑顔を見せるアキ。
アキ「ありがとう!!ささ、飲んで飲んで」
ごくごくごく…プハァ!!…バタッ。
アキ「キャ―――!?何でぇ!?」
ダイゴ(ま、予想はしてたけどね…ヒサヤ、これは男が乗り越えなければならない壁だ!)
アキ「待っててね、今きつけグスリを…」
ダイゴ「あー、このままでいいよ。君の言ってたとおり、おとなしくなった事だし」
確かにおとなしいが…喋らないのと喋れないのではだいぶ違う。
アキ「そ、そうですか…?」
何故かアキは、ヒサヤにだけ敬語を使わずに喋れる。変な趣味同士、気が合うのだろうか。
ダイゴ「それと…森アキさん、だっけ?忠告があるんだけど」
アキ「え…?はい、何でしょうか」

ダイゴ「これ以上ヒサヤと関わると、とんでもない事件に巻き込まれるかもしれないよ」

アキ「な、そ、その言い方、ないと思います!!まるでヒサヤくんが疫病神みたいに…」
ダイゴ「僕らは普通の人には明かせない使命を背負ってる。そして、必要なときは敵と戦わなくちゃならない」
アキ「敵…?」
ダイゴ「そんな時、まわりに被害の出ない保証なんてのは無いからさ」
ヒサヤ「…その通りだ、アキ。ダイゴも、アキを心配してくれてるんだよ」
ダイゴが振り返ると、ヒサヤがむっくり起き上がり、アキをまっすぐ見つめた。
ヒサヤ「そしてそれは、僕も同じ。アキを巻き込みたくないんだよ。ごめんな」
アキ「ちょ…っ」
ダイゴ「ヒサヤ、行くぞ。みんなが来るのを待たなきゃならない」
ヒサヤ「ああ、そうだな。それじゃな、アキ」
アキ「待ってよ、ヒサ…」
一瞬判断が遅れたアキが二人を追って表に出た頃には、二人はもういなくなっていた。
アキ「どうして…隠し事するんだろう…」

197 :未瑠2007/07/08(Sun) 09:20:18 ID:xIAM30gE
こんにちわ
長いのをよくかきました!!えらいっ!
大変ーーー読むのがたーーーいへんっ
だけど楽しかったです!

198 :未瑠2007/07/08(Sun) 09:20:27 ID:xIAM30gE
こんにちわ
長いのをよくかきました!!えらいっ!
大変ーーー読むのがたーーーいへんっ
だけど楽しかったです!

199 :シュマ2007/07/11(Wed) 19:07:50 ID:9H17vfuI
いやあ・・・・あのう・・・・・
面白い、ですね。
良くこんなに書けましたね!ホントすごいです。尊敬します。これだけ書くのは、きっと大変だとおもうから・・・・
複線の張り方やポケットモンスターシリーズのゲームの名ゼリフが工夫を凝らして入れてあって、読んでいてとてもたのしいです。
続きがトンでもなく気になります。更新待っていますw
できたら私の小説も訪ねてやってください。まだ全然進んでませんが。
シンオウ地方シリーズはここには食い込むのですか?そのあたりも気になります。
応援してます頑張って下さい!

200 :lxNIlVcfjR2008/06/06(Fri) 04:27:11 ID:qyx1QEEk
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