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Blue Sky
- 1 :エンタ :2005/02/09(Wed) 17:20:34 ID:itj68Ep2
- はじめまして。
ポケモン小説だいすき
エンタ(15)です。
今まで僕は読む派だったのですが、
精鋭ぞろいのこの掲示板みて
書く側にチャレンジしようと思います。
皆さん応援してください。
- 101 :エンタ :2005/12/03(Sat) 18:06:10 ID:xmA9N53I
- 第87話 おくりびやまの戦い
ハヅキ「用件は、何?まあその格好でゾロゾロと、お墓参りってワケでもないでしょうけど」
???「何、たいしたことではない」
おくりびやまの登山口にして、墓場の入り口。
ハヅキ「へ〜ぇ?天下のアクア団様が、こんなところに何の野暮用かしら?」
アクア団員A「キャプテン、こいつやる気だぜ?」
アクア団員B「どうしやス?アオギリさん」
名前を呼ばれたリーダー格のヒゲ男が応えた。
アオギリ「用件を説明してやんな。俺ァ、メンドイのは嫌ぇなんだ」
その一言で、青装束の海軍服(?)を着た4人の下っ端風がハヅキのほうを向き直った。
アクア団員C「ということだ。よろしいか?」
ハヅキ「どうぞ?」
アクア団員D「ここにあるというべにいろのたまをもらうだけですよ。ホラね、たいしたことじゃないでしょ?」
刹那、6匹のポケモンがいっせいにボールから躍り出た。
アクア団員B「な!?アオギリさんも戦るんスか!?」
アオギリ「お前らじゃ心配だしなァ〜。それにこの女、結構な手練れだぜ?
オイ、女…ここがお前さんの墓場になるぜ。文字通りな」
ハヅキ(もともと勝てるなんて思っちゃいないけど…めいっぱい暴れさせてもらうよ!!)
ニヤッと笑うハヅキを見て、アオギリが舌打ちをした。
アオギリ「その自信がどこから来るのか知らねーが…女にナメられんのが一番ムカつくんだよ!!」
アオギリ「手こずらせやがって…」
そこには3人の男と、瀕死状態のレディアン…そして、下半身氷漬けになったハヅキが…倒れていた。
アクア団員D「この人、なかなかやりますけど…私たちの敵じゃなかったですね」
アオギリ「イルカ、よくやった。オメェの昇進を考えといてやろう」
イルカ「あら、私ってそんなに魅力的?やだ、困っちゃう」
アオギリ「…今の話、やっぱ無し」
すると、おくりびやまの周りに広がった湖からみずポケモンと一人の男が飛び出してきた。
アオギリ「カイか…」
カイ「おっす。そいつらの始末は任せといてくれ」
アオギリ「おう。んじゃ俺らはたまをとって来るぜ」
カイ「…お?この女はどーする?」
アオギリ「ほっとけ。記憶もそのまんまでいい。そのうち死ぬだろ」
カイ「ふーん?結構、イイ女じゃん?もったいね」
アオギリ「知るかアホ!その女癖の悪さはいつからだ!?」
カイ「5歳」
手持ちと思われる巨大パールルに3人を飲み込ませながら、カイがひょいっと答えた。
イルカ「もう行きましょ、キャプテン。カイくん、その3人は頼んだよ」
カイ「うぃ〜っす」
アオギリ「ッたく…」
イルカ「あ〜!あったあった!あれを持って帰ればいいんですね?」
アオギリ「フッ…長かったな…」
イルカ「浸ってないで、さっさと帰りましょうよ」
アオギリ「おう…ケッ、ざまーみろだぜ、マグマ団!」
イルカ「さぁさ、ウシオくんもカイくんもミズホさんもみんな待ってますよ」
湖を渡って南へ、さらに西へと向かう二人を見届けてから、一族の長老が言った。
長老「これで、良かったのかな?」
ハヅキ「完璧っす。ご協力どーもです、長老ウコンさん!」
- 102 :エンタ :2005/12/03(Sat) 18:06:27 ID:xmA9N53I
- 第88話 待機命令
ダイゴ「おくりびやまがアクア団に襲われたって〜!?」
ヒワマキシティ近郊の上空で、プテラの背中から電話。
ツワブキ社長「そうなんだ…ハヅキくんも怪我をしてしまったらしい」
ダイゴ「先輩が!?」
あわてるダイゴをよそに、社長はなぜか喜びの声で話している。
ツワブキ社長「しかし、収穫は大きかったぞ!相手の戦力もだいたい掴めたし、次の狙いもほぼ確定した」
ダイゴ「名誉の負傷ってやつかな…先輩、お疲れさま」
ツワブキ社長「相手のリーダーの性格からして、ニセモノを掴まされたことへの怒りは大きいはず。
次も必ずおくりびやまに来るはずだ。それさえ分かっていれば…」
ダイゴ「あ〜はいはい。ところでさ、本物のたまは今集落の方にあるんだっけ?」
ツワブキ社長「うむ。ハヅキくんが強襲にあったのも昼間のことだ。
霊力により夜しか出入りできないという集落に隠してあれば平気だろう。
何よりあの集落の長老の孫娘は四天王と呼ばれた強者だからな」
ダイゴ「彼女のことは、はじめは僕も驚いたけど…自然なことかもしれないね。
ゴーストポケモンと会話ができるなんていうのも…」
確かに自然ではあるが、それでもやはり不気味である。
ツワブキ社長「それに、諜報部がアクア団の仲間と思われる人物につけたレーダーも、
順調に役立っているようだしな」
ダイゴ「いつの間に!?」
諜報部の仕事は、迅速かつ確実。
ツワブキ社長「あとは、おくりびやまのハヅキくんに代わる警備を配置すれば完璧だな」
ダイゴ「…へ?」
ツワブキ社長「ミクリと相談して、決めておいてくれ」
ダイゴ「いや、そうじゃなくて…」
ツワブキ社長「?」
ダイゴ「何でアジトの場所が分かったのに、実行部を動かさないのさ?」
ツワブキ社長「そ…れはだな、油断は禁物だからだよ」
今のほんの少しの『間』を、ダイゴは聞き逃さなかった。
ダイゴ「…どういうことさ?そういえば、二つの組織が動き次第…って言ってたけど、
あれはどう見ても動いたんじゃない?どうなのさ?」
ツワブキ社長「…相手の実力も分からないし、レーダーの向かう先がアジトじゃないかもしれないし…」
ダイゴ「戦力はだいたい掴めたって言ってたじゃないか!それにアジトかどうかは諜報部に…」
口論はダイゴが優勢かに見えたが、次の社長の一言で大逆転が決まった。
ツワブキ社長「とにかく、実行部はまだ動かさん!彼らは我々の切り札なんだ!いいな!」
プツン…ツー ツー ツー…
社長、試合放棄。
ダイゴ「一方的過ぎるだろ…何なんだ?…ま、ミクリに連絡しとくか」
このとき、ダイゴはまだ最大のミスを犯していたことに気づいてはいなかった。
- 103 :エンタ :2005/12/03(Sat) 18:08:10 ID:xmA9N53I
- いつの間にか100レス(全部自分)を超えても、
学生なのにヒマ人・エンタの勢いはとどまるところを知りません。
むしろ加速します。
- 104 :エンタ :2005/12/04(Sun) 21:22:06 ID:XiobwU4g
- 第89話 シンジの行方・其の三
シンジ「こんなところに…こんな建物が…?」
マユミ「ここが諜報部の本部です」
111番道路、砂漠のど真ん中。そこに、その小屋はあった。
シンジ「…まさか、噂に聞くげんえいのとう…?」
マユミ「ぷ!あはははシンジ君おかしーです〜!!この小屋が塔に見えるんですかぁ〜?」
シンジ「………!!」
マユミ「まあでも、この特殊ゴーグル『みえるくん』がないと見えないところとかは、
げんえいのとうの噂を真似てますけどね」
シンジ「ほう、不可視屈折(インビジブル・ランダマイザー)か…すごい技術だ」
『イリュージョン』とも呼ばれるその技術は、3,4年前に完成したホログラフ系の技術である。
マユミ「ほめてもらえると光栄です。さ、中へどうぞ」
中はわりと明るい静かな部屋だった。窓からはなぜか砂嵐が見えない。
マユミ「皆さん、集まってくださ〜い!」
シンジ「…そういえば、諜報部は全部で何人いるんだ?」
部屋の奥から、シンジの予想しえない人数が現れた。
ツツジ「何ですの、マユミさん?私、30分しかいられないのですわよ?」
アオイ「何でしょうか、マユミ様。」
シンジ「…二人?」
マユミ「シンジ君、こちらツツジさんとアオイさんです。皆さん、こちらは
今日から諜報部に入ることになった銀シンジ君で〜す!」
シンジ「…何!?待て待てッ、まだ入るなんて一言も…!」
マユミ「問答無用です〜♪え〜っと、たしかポケモン盗難は〜」
今のシンジには『です〜』が『DEATH〜』に聞こえる。
ツツジ「あら?あなたは確か実行部の…」
シンジ「何故それを…って、当然か。諜報部だものな」
ツツジ「…確かにそれもありますけど…私、第2回会議の場にいましたもの」
シンジ「な…!?ど、どこに?」
驚くシンジに、ツツジは自らの能力をシンジに教えた。
シンジ「………!?」
開いた口が塞がらないでいる。
アオイ「…ときにマユミ様、彼はおいくつなのですか?」
マユミ「先月16になったそうですよ。私のひとつ下ですね」
アオイ「それじゃ、年上ですね。シンジ様」
シンジ「別に…歳など関係ない。それに、アオイとかいったか…ここではお前が先輩のはずだ」
アオイ「でも、年上は年上ですよ」
シンジ「…ならせめて様付けはやめてくれ…」
アオイ「じゃ、シンジくん。」
シンジ「…呼び捨てでいい…というか、呼び捨て希望」
シンジ、撃沈。ご愁傷様。
マユミ「そういう性格なんですよ、彼女。ちなみに彼女自身は14歳」
シンジ「しかし…いいのか?」
マユミ「何がですか?」
シンジ「上層部でも知らないような情報部の諜報を…ん?…諜報部の、情報を…俺に教えてしまって」
マユミ「だってシンジ君は諜報部の仲間ですよぉ〜?仲間のことは知っていて当然です〜」
シンジ(…もう逃げられん…!!)
アオイ「マユミ様、ツツジ先輩…レーダーが一箇所で止まりました。ここ、どこですか?」
マユミ「ここは、キンセツシティですね」
ツツジ「でも、少し南にずれていますわね。サイクリングでも楽しんでいるのかしら?」
シンジ「…?お前…地図が読めないのか?」
マユミ「彼女はつい半年前ジョウトからホウエンにきたばかりですからね。
地図がもともと苦手っていうのもありますけど」
アオイ「いやぁ、お恥ずかしいです…」
シンジがパソコンに表示されたマップを見て言った。
シンジ「ふむ…この位置は、ニューキンセツか…?」
アオイ「ニューキンセツ?」
シンジ「キンセツシティの電力源や、停電時の緊急電力を貯蓄してある施設だ。水力発電もしている」
マユミ「随分と詳しいですね…あなたもジョウト出身ではなかったのですか?」
シンジ「ゲンキに教わっただけだ」
マユミ「そういえば、ゲンキ君はどこへ行ったのでしょうか?」
シンジ「意外だな。諜報部でも知らないことがあるとは」
ツツジ「何も知らないからこそ、何かを知ることができるのですわ。
…っと、いけない。もうこんな時間。ジムに戻らなくてはなりませんわね」
マユミ「そうですか?じゃあ、お二人はこれにて解散ですね」
シンジ「ちょっとまて、二人って…?」
マユミ「モチロン、シンジ君は居残りです〜♪」
アオイ「シンジ、頑張ってくださいね」
ツツジ「それでは…ごきげんよう」
シンジ「帰らせてくれ…」
マユミ「ウフフフ、冷静な人ほどからかうと面白いです〜♪」
- 105 :エンタ :2005/12/04(Sun) 21:24:26 ID:XiobwU4g
- 第90話 ホタルの過去
ホタル「あれは、俺が5歳だった頃。13年前の話だ…」
ゲンキ「13年前ってーと、オレが生まれた年か」
ホタル「…幻海大災禍(カタストロフ・オブ・カイオーガ)…ってーのを知ってるか?」
ゲンキ「肩スト…?海王?知らねーけど…オレが生まれた年にそんな事がね…」
ホタル「その名の通り…カイオーガってポケモンが起こしたとされる不思議な大災害だ」
平和な町々を、突然嵐が襲った。
海は狂ったように荒々しく溢れかえり、ホウエンを飲み込んだ。
ホタル「パパ!ママー!」
二人の男女が、その津波に飲み込まれて消えた。
ホタル「うあぁぁぁっ!!パパ!!ママ!!」
気絶した少年は、暖かくて大きな存在に包まれ、人知れずえんとつやまへと連れられた。
えんとつやまに避難した人々は、絶望に暮れながら夜をすごした。
かすんだ目で少年は、虹色の鳥に連れ去られる少女を見た気がした。
ホタル「ミズホ…ちゃん…?」
彼女は少年の幼馴染だった。振り返って、さびしげな笑顔を見せる。
ホタル「…行か…ないでミズ…ホ…ちゃ…ん…」
少年は気を失った。死んだ両親の夢を見ながら。
翌日。
全てが元通りになっていた。まるで、何事もなかったかのように。
少年の両親を、除いて。
おそらく何事もなかったかのように感じるのは『覚えていない』ものだけ。
夕べの虹色の鳥の力だろう。少年が立てた仮説はこうだった。
記憶があいまいな者と、記憶が鮮明な…自分のような者が、いたとする。
二人が目の前で家族を失ったとする。
片方の記憶は、絶望と共に流した涙と一緒に薄れて消えていく。
もう一方の記憶は、忌々しいトラウマとして寝ても覚めても脳裏にまとわりつく。
これを、虹色の鳥が確認したのではないだろうか?
祖父から教わった火の鳥伝説では、虹色のツバサを持つ鳥は死者を生き返らせる力を持つという。
『生贄』と、ひきかえに。
少年の幼馴染の少女が『生贄』だとするならば、辻褄が合う。
虹色の鳥は、海の怒りが収まった後に生き残った全ての者の記憶を確認し、
記憶があいまいな者の家族だけを生き返らせたとするなら…
ホタル「リフジンだ…僕の大切な物だけ奪っていって…あとは無かったことにするだなんて…
鳥のクセに、ナマイキだ!パパとママを、返せぇ!!」
すると、少年の背後で小さなくしゃみが聞こえた。
少年が振り返ると、そこには自分と同い年くらいの少女が座っていた。
ホタル「…立てるか?」
少年が、手を差し伸べた。…この子も、僕と同じように…
二人は山を降りた。麓で、少年の祖父が待っていた。少年は少女の方を見た。
少女は山を降りるまでの間、一言もしゃべらず無表情のままだった。当然だろう。
ホタル「名前、何ていうの?」
少女が口を開いた。少年には、かすかに笑っているように見えた。
ウスバ「日代…うす、ば…」
ホタル「……うすバカ?」
ホタル「…ンで俺はじいちゃんに連れられてグレンタウンに来て、それからホウエンに帰って…おい」
ゲンキ「………!!」
ホタル「何泣いてやがる…気持ち悪ぃな」
ゲンキ「だっで…悲じずぎるだろぉ〜…」
ホタル「ま、その運命の日…文月朔日から俺の人生は変わったわけで…俺がマグマ団に入ったのもそれが理由だ」
すると、ゲンキがはっとした。
ゲンキ「文月朔日…!?それって、オレの生まれた日じゃん!?」
ホタル「何ィ!?それじゃお前…」
ゲンキ「それにアンタ今、マグマ団って…!?あ〜っ、もう何が何だか!?」
ホタル(!…しまった!こいつホウエンから来たんだっけ!?)
ゲンキ「…何が何だか、わからねーけど…とりあえずアンタは、悪い人じゃなさそうだな」
ホタル「は…?前にも言われたなそれ…そう見えるか?」
ゲンキ「この黄金の観察眼を持つオレが言うんだ、間違いねぇよ」
ホタル「お前ってホント…わからねーヤツ」
ゲンキ「お互い様だろ」
誰もいない島に、二人の笑い声が響いた。
- 106 :エンタ :2005/12/05(Mon) 17:27:50 ID:r4373jqI
- 第91話 クスリ屋本舗
ほのおのぬけみちを越え、下り用の山道を無理やり登ると、ユウキはフエンタウンに到着した。
ユウキ「ここがフエンタウン…えーっと、ジムは…」
さすが温泉街、旅行客で大賑わいだ。だが賑やかなのにはもうひとつ理由があった。
村人A「今夜のお祭り、楽しみねぇ」
村人B「うちの旅館の客は宿泊期間を延長してくれたよ」
ユウキ(祭り…それでこんなに、賑やかなのかー。オレはそんな暇ないけど)
人の流れと反対側に歩いているので、なかなか前に進めない。
ユウキ「うわっ!!」
村人C「きゃっ!!」
突然、正面から人がぶつかってきて、二人とも地面に倒れた。
ユウキ「いっててて…だ、大丈夫っすか?」
村人C「ああ、お薬が…」
ユウキ「あ、拾うの手伝いますよ」
村人C「あ、どうも…」
人ごみの中、その少女はバラバラになった粉末を拾い集めた。
ユウキ「…誰か、病気なんですか?」
村人C「へ?ああ、違います違います。これは売り物ですよ」
ユウキ「売り物…?(ってことは、地面に落ちて…大丈夫かな)」
村人C「はい。うち、漢方屋なんです。良かったらお店によっていきませんか?」
ユウキ「え?でも、オレは…」
村人C「いいからいいから」
ユウキ(なんか前にもこういうシチュエーションがあったような…ま、いいか)
村人C「あ、申し遅れました。わたし、森アキといいます」
ユウキ「はぁ…オレは、大空ユウキっス」
アキ「うちのお薬はすごく良く効くんですよ。さっきわたしが持ってたのは、ポケルス特効薬の試作品です」
ユウキ(ポケルス…ってたしか、ミツルのラルトスの…?)
アキ「他にもどくへの免疫力を高める試作品や、リバース特効薬の試作品など…」
ユウキ「…全部試作品?」
アキ「…実は、まだ一度も使ったことがないんです…失敗作だったら犠牲者が出てしまうし、
こんな怪しげな漢方薬をもらってくれる人なんていませんし…」
ユウキ(確かに怪しげだ…っていうか、すごくよく効くって言ってたよな…嘘?)
アキ「そんなわけで、作ったはいいけど効果が確認できていないんです…全部」
ユウキ「(リバース特効薬か…)それじゃ…無料なら、もらってもいいけど…」
アキ「!ほ、本当ですか?」
ユウキ「効果がはっきりすれば、売り物になるんでしょ?それなら手伝うよ」
アキ「あ、ありがとうございます!!」
ユウキ(なーんて言ったけど……)
一段と重くなったリュックを背負って、ユウキはため息をついた。
ユウキ「実際信用できないんだよね…人体に害がないかはヒサヤに調べてもらうとして…おっ、ジムだ」
見ているだけで熱気が伝わってくるような建物だ。
ユウキ「たのも――――ッ!!」
勢いよくドアを開けると、砂塵と煙で視界が覆われた。
かろうじて目を開けると、立っていたのは一人の少女。
フエンタウンジムリーダー・緋田アスナ。
- 107 :エンタ :2005/12/05(Mon) 17:29:09 ID:r4373jqI
- 第92話 幻陸大災禍
ヒサヤ「おやっさん、お嬢〜。まじめに仕事してっか〜?」
セツナ「誰がお嬢だ!」
イッセン「おお…世界最大級のタンコブじゃ…」
セツナ「頭蓋がカチ割れなかっただけありがたく思いなっ!!」
ヒサヤ「僕に聞きたいことって、何だよ?」
実は、セツナがヒサヤを呼び出したのだった。
セツナ「あのさ…ユウキって、何であんなに空が空きなのかな?」
ヒサヤ「は?好きなモンは好きなんだろ」
セツナ「う〜ん…ただ好きってんじゃなくて、何か特別な思い入れがあるんじゃないかってね…パパみたいにさ」
ヒサヤ「へへ…お嬢の目はごまかせないな…」
げんこつ、一発。
ヒサヤ「………。」(あまりの痛さに声が出ない)
セツナ「あの目はただ青空を見てるんじゃないよ…何かこう、恋人でも見てるような…」
ヒサヤ「いい観察眼だな。それじゃ話してやるか。あいつと空の思い出をよ…」
時は10年前。
3年前の幻海大災禍に続く不可思議な災害、幻陸大災禍(ビッグバン・オブ・グラードン)。
自然界のバランスが人間の手によって崩されてきた頃、こういった不可解な現象は数多く起きた。
南の海に時折現れる陸…海中に沈んだ文明…そして幻海、幻陸大災禍。
専門家の薀蓄より吟遊詩人の旋律のほうが参考になるような摩訶不思議な怪奇現象。
これらは全て、二匹の超古代ポケモンが陸と海の均衡を保つために起こしていると考えられた。
謎は、例を挙げればたくさんある。
東の海深く、ルネ海溝にて発見された沈んだ文明。通称、アトラシティ。
海中にあるにもかかわらず、つい最近まで人が暮らしていた形跡があったという。
南の海の上、不規則に観測される謎の『島』。通称、マボロシじま。
全くと言っていいほどその原理は解明されていない。げんえいのとうのような不可視屈折でもない。
そして最大の謎、死んだはずの人が何事もなかったかのように蘇ったというあの事件。
13年前の幻海大災禍、10年前の幻陸大災禍。
カタストロフ・オブ・カイオーガと呼ばれる前者は、突然の豪雨と大洪水、そして大津波。
ビッグバン・オブ・グラードンと呼ばれる後者は、突然の日照りと大地震、そして大噴火。
記録によれば、20年前にも後者と同様の大災害があったらしく、謎は謎のまま。
記録にはないが、僕のおじいちゃんの話だと40年位前にも大洪水が…
セツナ「ちょっと。いつ本題に入るんだ?」
ヒサヤ「もうすぐだ」
げんこつ、もう一発。
セツナ「おじいちゃんの話を聞きたいんじゃないんだよ!今すぐ入れ、本題に!」
ヒサヤ「うぃ…」
10年前、僕とユウキとコウキとマナカ嬢ちゃんは仲のいい四人組だった。
当時は僕も穴を掘る癖はなかったし、マナカ嬢ちゃんも不思議な力は使えなかった。
ある日、村に一人の女の子が引っ越してきたんだ。
名前は…青山アオイ。
- 108 :エンタ :2005/12/07(Wed) 17:31:02 ID:Ncz2aHIA
- 第93話 大空に眠る思い出
マナカ「アオイちゃんっていうの?よろしくね」
アオイ「………。」
アオイは、無口な子だった。人見知りなのか性格なのかは分からなかったが、ゆっくり慣らしていこうと思った。
コウキ「遊ぶのも結構だけど、畑仕事もちゃんとやってくれよなー。オレ一人じゃ全部は無理だよ」
このときコウキは5歳だったけど、難しい言葉もちゃんと使えた。この辺が天才と呼ばれる所以なのか?
マナカ「アオイちゃんは、どんなポケモンが好き?」
ヒサヤ「もちろん、ディグダだよなー。」
コウキ「いやいや、ピカチュウだろ」
でも、よくサボった。天才だから努力を必要としないのかどうか…。
マナカ「ピッピよねー。かわいいもんね」
アオイ「………。」
ユウキは好きなポケモンとかないから黙って見てたんだけど、
アオイはユウキのところに行って背中にちょんと隠れると、こういったらしい。
アオイ「…しゃわーず」
月日がたっても相変わらずアオイは無口なままだったけど、表情で気持ちは理解できた。
なかでもユウキは特に仲が良くて、帽子を作ってもらったこともあったそうだ。
アオイ「わたしのかみのけとおなじ、みどりいろのぼうし…はい、あげる」
ユウキ「ありがとう。でもこれ、帽子じゃなくてバンダナだよな」
…訂正、バンダナを作ってもらったこともあったそうだ…。
ユウキ「あとでかぶる部分も作らないとね」
アオイ「…うん…」
コウキがかぶってる帽子は、あとでユウキのに似せて自分で作ったらしい。天才っていいよな。
そして、運命の日がやってきた。その歳の霜月朔日のことだ。幻陸大災禍が起きたのは…。
冬なのに妙に暑いその日、ユウキは迷子になったアオイを探していた。
すると突然、大地震が起きた。初期微動を感じなかったのは、震源がすぐそこにあったからだ。
そう、えんとつやま。
瞬く間に火山は大爆発(ビッグバン)を起こし、火砕流がりゅうせいのたきを流れ、
火山弾が町々に降り注ぎ、溶岩が流れ出して海を埋めつくした。
僕はある本に書かれていた内容を思い出した。防空壕というあれだ。
すぐさま手持ちのディグダに穴を掘らせて防空壕をつくり、全員を避難させた。
(この頃からだ…僕が穴掘りに目覚めたのは)
おかげで死者はわずかしか出なかったんだが…他の街はすごかったそうだ。
だが、みんなすぐにあることに気づいた。
マナカ「ユウキとアオイちゃんがいない!!」
コウキ「オレ、探してくる!!」
センリ「ま、待て!!怪我をしたらどうする!!」
コウキ「そんなことはどうでもいいんだ!!これは弟へのできる限りの愛情だ!オレが怪我したって構うものか!」
センリ「………!!」
アオイ「おそらがまっか…こわいよ…」
ユウキ「あ、アオイちゃん!!やっと見つけた、はやく村へ戻ろう!!」
アオイ「こわいよ…ゆーくん、こわいよ…」
突然、ユウキの背後から大小二発の火山弾が襲ってきた!
大きいほうは背中に、小さいほうは頭に。バンダナが衝撃を和らげたおかげで命に別状はなかったが、
ユウキはすぐに気絶してしまったらしい。
薄れる意識の中で、ユウキは信じられない光景を見たという。
コウキが駆けつけたときにはすでに噴火は止み、空も青さを取り戻していた。
しかし、そこにはアオイの姿はなかった。
ユウキの話によると、アオイちゃんは虹色の光と一緒に空に昇っていって、ぱーっと光って、
そしたら空が赤から青に戻って、地震も噴火も全部なくなっちゃった…そうだ。
最後に「ごめんね、ありがとう…さよなら」と言ってたってさ。
火山弾に蹂躙され溶岩に流しだされた町々も、やはりかつての幻海大災禍のように
一晩経つとすっかり元に戻っていて…、
ただ一人、アオイだけが帰ってこなかったという…。
ヒサヤ「そういうわけで、ユウキはまさに『空が恋人』なのさ。アオイが空の青さを取り戻したわけだからな」
セツナ「そうか…そんな話が…ん?」
イッセン「…ZZZ…」
峰うちと蹴りが、一発ずつ。
イッセン「ぎいぃぃぇえああああぁぁぁァアッ!!!?」
ヒサヤ「人がせっかく話してやってるのに…」
セツナ「…そっか。だからユウキは頑張れるのね」
ヒサヤ「まーな。アイツの右目に初恋の人、左目に兄貴の背中ともなれば、
あそこまで頑張れるのもうなずけるわな」
セツナ「パパも見習いなさいよ。今のユウキには空が死んだ人の面影としてではなくて、
自分に活力を与えてくれる広大な青空として、見えてるんだからね」
イッセン「…ZZZ…」
ハジツゲの畑が朱に染まる…
- 109 :エンタ :2005/12/11(Sun) 19:50:30 ID:YN/bdA42
- 第94話 VS.アスナ其の一
アスナ「女だからって甘く見てると火傷するよ!」
ユウキ「お手柔らかに…試合は、入れ替え制ってことで」
アスナ「う…ま、まあいいさ。いざ尋常に、勝負ッ!」
ユウキ「チー!」
アスナ「マグカルゴ!かえんほうしゃ!!」
ユウキ「てっぺき!!」
ほのおの勢いは押し返せているが、熱は避けられない。フィールドがフィールドだけに、更につらい。
ユウキ(やっぱスペシャリストの手にかかるとタイプ相性には逆らえないか…!?
でも、マグマ団に勝つためにはここは越えなきゃならない壁だ!)
アスナ「どうした?他のタイプを使わないのかい?」
ユウキ「へへ…オレは、はがねのスペシャリストだ!!他のタイプはまだ持ってねー!!」
アスナ「な…それじゃ勝つ見込みなしでここに挑戦にきたってワケ?」
ユウキ「だって、勝負ってそういうもんだろ?」
てっぺきの回転速度が増す。
ユウキ「いまだ!前に出ろ、チー!!」
アスナ「な!?マグカルゴ!!」
動きの鈍いマグカルゴは対応が一瞬遅れた。はがねの角はマグカルゴの殻にぶつかり、それを粉砕した。
アスナ「くっ!まだまだ!!いわなだれ!!」
ユウキ「うわっ…!!」
熱砂のごとき足場では、うまく身動きが取れない。ユウキは転倒した。
すると、チーがユウキの上に覆いかぶさって襲い来るいわを跳ね飛ばした。
ユウキ「…!サンキュー、チー!!」
アスナ「……でも、無理な体勢でやったせいで足を痛めてるみたいだね。そんな状態でまともにやれるとでも?」
ユウキ「よく助けてくれたな、チー。ありがとう。休んでていいぞ。…ムドー、ひと暴れすっか!!」
ジムの天井は高めなので問題はなかったが、普通の種類よりもひときわ大きいムドーは威圧感があった。
アスナ「…!」
ユウキ「ムドー、ふきとばしッ!!」
その、本来あるはずの空洞が全くといっていいほど無い重密度の羽根を一振りすると、ジム内の砂が一気に巻き上がった。
アスナ「目くらましッ!?」
ユウキ「今だ、いあいぎり奥義!」
刀にも使われるというエアームドの羽根は、もちろんいあいぎりにも適していた。
ユウキ「一閃流ムドー式奥義・砂弾の剣翼!!」
その名の通り、空気中の砂が弾けるように舞い散り、微細な弾丸となって敵陣を襲った。
アスナ「くぅっ!マグカルゴの体に砂が付着して…!?」
ユウキ「とどめだ!ムドー、エアカッ…!!?」
突然、ユウキの足元が抜け落ちた。
ユウキ「……ッ!!」
ユウキとムドーは奈落の底へと落ちていった。
- 110 :エンタ :2005/12/11(Sun) 19:51:13 ID:YN/bdA42
- 第95話 VS.アスナ其の二
アスナ「地下の空洞…!思い出した、このジムには地下室があったんだっけ!」
ユウキ「くっ…いてて…ムドー、大丈夫か?」
ムドーは重い体を起こせずに苦労している。
ユウキ「よくやった。戻っていいぜ、ムドー」
その巨体がボールに収まると、ユウキはあらためて地下洞の広さを実感した。
ユウキ「おーい。どーやってもどるんだよー。」
アスナ「知らないよ!今のエアームドで、飛んでくれば?」
だだっ広い地下洞に、アスナの高い声が響いた。
ユウキ「しっかしなぁ…ムドーは無理にしても、出口は12m近く上…よく生きてたなオレ…」
アスナ「戦いはまだ続いてるんだよ!早くポケモンをだしな!」
ユウキ「…そうだ!オレのスペック!!チーが剣になるみたいに、ココやムドーも何かに変身できないかな?」
アスナ「あと5つ数えたら攻撃するからね!!ひとーつ…」
ユウキ「な!?おいおいちょっと待てよ!!」
アスナ「ふたーつ…」
ユウキ(考えろ考えろ…スペックを発動するとき、オレはいつも何て言ってる…?)
アスナ「みーっつ…」
ユウキ(…つるぎのまい?いや、共通性はない…)
アスナ「よーっつ…」
ユウキ(…ねむる!そうだ、つるぎのまいを解除するとき…ねむるって言えば元に戻るんだ!!
ねむるの反対…おきる?ちがう…ねむらない?アホか… ッ、まさか…)
アスナ「5つッ!!いくよ!!」
ユウキ(一か八か…やるっきゃねぇ!!)
次の瞬間、飛べないはずのムドーがユウキを乗せて上がってきた。
アスナ「羽根が…光って…!?」
ユウキ「喰らえ!!ゴッドバ―――――ドッ!!!」
ムドーのはがねの全身が光った。瞳と、額の傷は光らずに残った。
アスナ「…!!マグカルゴ、恐れるな!!相性はいいはず!!」
ジム内は光でいっぱいになった。きんぞくおんが響いた。
アスナ「…なかなか、やるじゃないか…相性悪いのに、マグカルゴの体力をここまで減らすなんて…」
ムドー、戦闘不能。
ユウキ「へへ…いいぞ、ムドー。よく頑張った」
アスナ「でもね、いくら頑張っても相性の不利は覆せないんだよ。マグカルゴの体力は減ったけど、
アタイにはまだ手持ちがいるんだ。同じタイプのね」
ユウキ「いいのか、そんなこと教えちゃって?」
アスナ「どうせアンタはアタイには勝てないさ」
ユウキ「同じタイプなら、同じ戦法で倒せるな…ココ、出番だぜ」
アスナ「フフ…はたしてそうかな?」
ユウキ「相性だけじゃ勝負は決しないってこと、教えてやろうぜ、ココ!!」
- 111 :エンタ :2005/12/12(Mon) 17:07:28 ID:kGRiq26.
- 第96話 VS.アスナ其の三
ユウキ「ココ!ころがるッ!!」
アスナ「くっ…避けられない…マグカルゴ!!」
ココの体がマグカルゴに直撃した。
さっきまとわりついた砂でほのおのからだの温度は下がっていたため、やけどせずに倒せた。
ユウキ「ココ、穴に落ちるなよ」
ジム内を激しく転がりまくるココを見て、ユウキが心配そうに言った。
アスナ「…ッ、バクーダ!!ふんか!!」
アスナの二番手・バクーダの背中から溶岩が噴出した。
ユウキ「ココ、よけながら近づいて攻撃だ!!」
アスナ「させないよ!!正面からはかえんほうしゃだ!」
背中にばかり気をとられていたココは面食らって避けることができなかった。
かえんほうしゃが直撃した…かにみえた。
そのときユウキの出したわざ命令に、アスナは驚きを隠せなかった。
ユウキ「マジックコート!」
アスナ(ま、マジックコートって言やぁエスパーわざだろ!?なんでココドラなんかが…)
ユウキ「これがココの能力…『鎧』だ!」
アスナ「ヨロイ!?」
マジックコートの本来の用途は、状態異常を跳ね返す壁…だが、マジックコートそのものには
魔法のヨロイ、という意味があったのだ。
ココは、ほのおを纏っていた。ほのおを纏いながら転がっていた。
ユウキ「そのまますてみタックルだ!」
ほのおを纏いながらの攻撃は、まさにすてみとしか言いようがなかった。
同タイプなれど、かなりのダメージがバクーダを襲った。
ユウキ「まだまだスピードアップ!ヒートアップだ!ココ!!」
アスナ「させるか!!バクーダ、ふんか!!」
バクーダの背中が爆発して、一瞬視界がきかなくなった。その一瞬に、ココの姿は消えていた。
アスナ「…!!ど、どこへ行った!?」
ユウキ「………。」
アスナ「…ま、まさか穴に落ちたんじゃ?」
ユウキ「そうかも…」
一瞬、沈黙。
アスナ「あはははははははは!!大口たたいてた割には情けない!!自力じゃあがって来れないだろ?」
ユウキ「いや…落ちはしたけど、あがって来れないことはない」
アスナ「…なッ!?」
バクーダの足元の床が、盛り上がっている。まさか、とアスナが思ったときにはもう、遅かった。
穴から飛び出してきたのは…
アスナ「コドラ!!?」
ユウキ「おおッ!?進化!?」
バクーダの体がすっ飛んだ。ココドラのときにくらべ与えるダメージが数倍にあがっている。
ユウキ「いいぞ、ココ!!溶岩を纏って天井にへばりついてころがる作戦は、成功だ!!
それじゃとどめの…いあいぎり奥義!」
コドラに進化してツメが生え、今までチャチなわざだったいあいぎりもまた、進化した。
ユウキ「一閃流ココ式奥義・鎧焔の剣爪!!」
溶岩に包まれた鋭い爪がバクーダに襲い掛かる。
勝負は、決した。
アスナの手持ちはユウキよりも少ない2体だった。
アスナ「あ〜あ…また、修行のやり直しね…やっぱり勝負のときだけ強がってもダメなのかしら」
ココドラだったときの頭のヨロイの部分を拾いながらユウキは思った。
ユウキ(アスナって…どことなくハルカに似ているような…)
アスナ「ま!今日はアナタのおかげでアツイ勝負ができたわ!ありがとね!!はいこれ、ヒートバッジ」
ユウキ「おう。オレも、楽しかったぜ。それに…」
アスナ「?」
ユウキ(オレのスペックの正体も分かってきたしな…)
アスナ「今夜のお祭りも楽しくなりそうだわ!よかったらアナタも参加していかない?」
ユウキ「ん?別にいいけど…(まあ、途中で帰ればいいか)」
すると、聞き覚えのある歌が聞こえてきた…。
ヒサヤ「あなをほる〜♪Hey!あなを…おぉーっ!ユウキじゃないか!」
ユウキ「ヒサヤ!!フエンタウンの穴は掘り終わったんじゃ…」
ヒサヤ「整備だよ整備!さっきまでセツナお嬢たちと話してたんだけどさ…」
ユウキ「(お嬢…?)何かあったのか?」
ヒサヤ「利用客からクレームが…穴の中に、ハブネークがでたんだってよ」
ユウキ「そりゃまた…で?わざわざ酔うために穴を利用してくれたお人よしってのは、誰?」
ヒサヤ「ん?ああ、今すぐそこまで来てるぞ。おーい、ミツル君ー!!」
ユウキ「何ィ!?み、ミツル〜ッ!!?」
- 112 :エンタ :2005/12/12(Mon) 17:08:01 ID:kGRiq26.
- 第97話 再会と温泉
ミツル「ユウキさん!?お久しぶりです!!」
ユウキ「ミツルこそ!どうしてここに?」
ヒサヤ「いや〜、ミナモシティまで掘ったら偶然会ってよ〜、意気投合しちゃって」
ミツル「突然地面から人が出てくるんですもん、びっくりしましたよ!!」
ヒサヤ「ミツル少年はホウエンの各地にある美しい風景を、
このカメラにおさめ後世に残すという、偉大な使命を帯びているんだ」
ミツル「使命感はないですけど…そのためにまずはミナモの美術館に足を運んでみたんです。
どのくらい美しいものが通用するんだろうって…」
ユウキ「へぇ〜、じゃあお前もやりたいことが見つかったのか!良かったなぁ!」
ミツル「はい!」
アスナ「あ〜、感動の再会途中に申し訳ないんだけど…穴から出たらまず温泉で汚れを洗い落としなさい」
ヒサヤ「あ、おう。そんじゃ二人も来るか?」
というわけで、3人は温泉に向かう運びとなった。
ヒサヤ「いい湯だな〜Hey!あそれいい湯だな〜Wow!!」
ユウキ「こんなところでくらい、黙ってろよ…」
ミツル「うわっ…ユウキさん、その背中…」
ユウキの背中には幼少時にできた火傷のあとがいまだ残っている。
ヒサヤ「おっ、ミツル少年、いいところに目をつけるねぇ。
こいつのこの火傷は幼い頃体を張って愛する女を守ったためにできた名誉の勲章なんだぜ」
ユウキ「って、大袈裟すぎるだろ!!…それに、結局守れなかっただろ?」
ミツルはポーッとしながら話を聞いていた。
ミツル「かっこいいですね…」
ヒサヤ「だろ?だろ?」
ユウキ「こらこら」
ミツル「いつごろの話なんですか?」
ヒサヤはセツナたちに話したのと同様に語りだした。ミツルは前ふりの長さに文句は言わなかったが。
ミツル「…10年前の霜月朔日といったら、僕が生まれた日ですよ?」
ヒサヤ「へぇっ、そいつは偶然だな!運命かもね」
ヒサヤはホタルより頭が悪いのだろうか…それとも、現実的過ぎて想像力に乏しいのだろうか?
ユウキ「でも、本当に運命かもな。…初めて会ったときは気づかなかったけど、
ミツルの髪の毛と眼の色ってアオイとそっくりなのな…」
ミツル「あ〜!!思い出した!!僕、アオイって人にこの間会いました!!」
ユウキ「…何ッ!?」
ユウキの態度が激変した。
ミツル「キンセツシティの近くで会いましたよ。この…エーフィを捕まえた人で、
近くで見ていただけの僕にくれたんです。髪の青い人でした」
エーフィをボールから出しながら、ミツルが説明した。
ユウキ「…というより、水晶に近かっただろ?」
ミツル「え…はぁ、まあ…でも、何で知ってるんですか?」
ユウキ「ホウエンに…いるのか…?」
ヒサヤ「おい、誰なんだ?そのアオイちゃんは」
ユウキ「…出る」
ヒサヤ「お…おい!!」
ヒサヤ「どうしたってんだよ…」
ユウキ「…本当に、どうしちまったんだろう、オレ…」
ミツル「ユウキさん…」
ユウキ「オレはたまたまアイツを知ってるってだけで、別に名前が同じだからって何も気にすることはないのに…」
ヒサヤ「…さ!そろそろ祭りが始まるぜ!」
ミツル「そ…そうですよ!楽しみましょう!」
ユウキ「…うん、そうだな…」
- 113 :エンタ :2005/12/12(Mon) 17:08:28 ID:kGRiq26.
- 第98話 お祭りとお薬
ユウキ「そうだ、ヒサヤ!お前に頼みたいことがあったんだ!」
ヒサヤ「ん?何だよ?」
ユウキ「これなんだけど…」
先ほどアキにもらった『お薬』だ。人体に有害な物質が入っていないか調べてもらうのだ。
ヒサヤ「えーっと、毒物検知レーダーシステム、レンズに展開…と」
ヒサヤの眼鏡のレンズに緑色の文字が映し出された。
ユウキ「すげぇ…『はいてく』だな…」
ヒサヤ「うーん…強力な毒素は含まれてないが、物質自体が不安定だな」
ユウキ「じゃあ、まだ安心はできないってこと?」
ヒサヤ「ああ。他の物質と化学反応を起こさないとも限らない。改良の余地はあるな」
ユウキ「そうか…アキにそう伝えといてくれる?」
ヒサヤ「おう。ジムの近所の薬屋だっけ?」
ユウキ「よろしくな〜」
闇の人ごみの中に、ヒサヤは消えていった。
それを見届けると、ユウキはリュックの中身を点検し始めた。
ミツル「?荷物の整理ですか?」
ユウキ「ああ。この街にあまり長くも居座れないしな。忘れ物がなければ夜のうちに砂漠を越えるつもりだ」
ミツル「大変なんですね…」
ユウキ「何言ってんの、一人旅はミツルも同じだろ?」
ミツル「え?はぁ、そうですね…でも、本当にお祭りには行かないんですか?」
ユウキ「オレは一刻も早く強くなりたいからな」
ミツル「…すごいなぁ、憧れちゃいますよ…」
そんな話をしていると、聞き覚えのある声がしたような気がした。
ユウキ「…イッセンさん!?な、何で!?」
ミツル「え?あのおじさんが、どうかしたんですか?」
ユウキ「知り合いに見つかったら、街を出るに出れないだろ…仕方ない、あまり使いたくなかったけど」
そう言いながらユウキはボールを取り出す。
ユウキ「ムドー、ゴッドバード!!」
ミツル「!?」
夜の闇に光り輝くはがねのつばさ。なぜかこのわざを使うとムドーは飛べるようになる。
ユウキ「じゃあ、ヒサヤ達にはよろしく言っといて!!」
ミツル「あ、はい!!行ってらっしゃい!!」
とはいっても、これだけ光っているとかなり目立つ。しかも夜。しかも祭りの日。
怪しまれないはずはないのだが…
ユウキ「ゴー!!」
一瞬で光は消えてしまった。落っこちたのではない。それほどまでに速かったのだ。
セツナ「何だ、今の……」
ユウキ(本当は、一刻も早く相談したいことがあるんだよね…)
ほんの2,3秒で山を降り砂漠に差し掛かったとき、ユウキはダイゴに電話した。
ユウキ「留守電…か…師匠…」
ムドーの無理な運動による疲れと、ユウキのスペック使用によるリバース。
どちらの疲れもピークに達していた。
ユウキ「砂嵐の止んでいる夜のうちに砂漠を越えたら…キンセツシティ…
そこのジムリーダーに勝ったら、バッジ4つ…そして、父さん」
うわごとのように唱えると、ユウキは砂漠を歩き出した。
- 114 :エンタ :2005/12/12(Mon) 17:09:05 ID:kGRiq26.
- 第99話 砂漠越え
ユウキ「砂嵐はないけど…くぅっ、夜の砂漠ってのはこんなにも寒いものなのか?」
この111番道路には13年前の幻海大災禍以来一度も雨が降っていない。
晴れた日の夜は曇りの日よりも寒いといわれているのだ。
ユウキ「そのうえ半袖だしな…あー、湯冷めしたかも…最悪だよ」
風邪をひくには絶好の条件である。
ユウキ「ここは、圏外じゃないよな…夜分遅くにすいませんッと」
そういうものはつながってから言うセリフである。
ダイゴ「もしもし?ユウキくん?どうしたの、こんな遅くに」
風が森を駆け抜けるような気持ちのいい音がする。おそらく屋外にいるのだろう。
ユウキ「師匠?ヒートバッジ、ゲットしましたよ!!」
ダイゴ「もう?早いなぁ、昨日サミットがあったばっかりなのに」
ユウキ「その戦いでいろいろあって…なんとオレ、自分のスペックが分かりそうなんですよ!!」
ダイゴ「何だって!?」
ユウキ「詳しいことはさっぱりなんですけど…あるわざの名前を言ったら、
頭の中に声が聞こえてきたんですよ。ゴッドバードを使え、って」
ダイゴ「ゴッドバード?」
ユウキ「ええ。オレ、なんていったと思います?」
ダイゴの返答を聞く前にユウキは先走って言った。
ユウキ「…めざめるパワー」
ダイゴ「ふーん…そんなことが…」
ユウキのサミット後の活躍を聞いてからダイゴが感慨深げに言った。
ダイゴ「その飛べないエアームド、今度あったら見せてくれないかな」
ユウキ「ええ。できれば師匠のエアキチと会わせてやってください。こいつ多分、♂ですよ」
ダイゴ「はは…」
師匠のエアームドは名前にもかかわらず♀である。
ユウキ「それじゃ、夜遅いからもう切りますね」
ダイゴ「あ、待って!ユウキくん、キンセツシティに向かってるといったね。
青装束の軍団に気をつけてくれ。それじゃ」
ユウキ「え?ちょっ、師匠…!!」
プツッ ツー ツー ツー…
ユウキ「青装束…アクア団?どうしてキンセツシティと関係が…」
そういっているうちに、東の空が明るくなってきた。
この砂漠では、上空の空気が太陽風と反応して砂が舞うという仕組みになっているため、夜は砂嵐がないのだ。
ユウキ「おっ…見えてきた見えてきた。あれが目印のトレーナーヒルかぁ」
塔のような建物が岩山沿いに建っている。この岩山の向こう側は大きな川の流れる樹林地帯だ。
ユウキ「よーし、キンセツシティジムも頑張るぞッ!オーッ!!」
- 115 :エンタ :2005/12/13(Tue) 16:46:46 ID:p3M0bSh2
- 第100話 遭遇!運命のプラスル
ユウキ「トレーナーヒル…砂漠、脱出か。しかし…」
ユウキが周りを見渡しながら呟いた。
ユウキ「この辺って草むら少ないな…やっぱり砂漠に近いとサボテンみたいのしか生えないのかな」
すると、キンセツシティの方角から大量のポケモンがかけてくるのが見えた。
ユウキ「何だ、あれ…?大脱走?」
体が勝手に反応して、ユウキはココを出していた。
ポケモンの群れがユウキの目前で止まった。
ユウキ「これは…タッグバトルでよく見る、プラスルとマイナン!?」
いっせいにピーピーキーキーなかれると、さすがのココも参ってしまう。
ユウキ「全部で101匹いるな…101匹プラマイちゃん?」
ココが耐え切れなくなってガオーッとほえた。101匹プラマイちゃんはピタリと黙った。
ユウキ「野生か?聞き分けのいい子達だなァ…ん?」
ユウキがある異変に気づいた。
ユウキ「このプラスル、色違いだ…!」
群れの真ん中辺りにいるそのプラスルは、不安そうな顔で今来た方角を見つめている。
ユウキ「何かあったのかな…行ってみるか、ココ?どうせキンセツ方面だし」
ココは進化してから急に態度がでかくなった。ブスーッとした顔でしぶしぶ歩き出した。
すると、なぜかプラマイの群れがココについていった。
ユウキ「人懐こいのかな…?あ、ココは人じゃないか」
キンセツシティにたどり着くと、ユウキはすぐにその異変に気づいた。
まだ朝も早くそんなに明るくない上、今日は日曜日だが…どこの家も電気が点いていないのはさすがにおかしい。
ユウキ「ゲーセンのネオンも点いてない…停電?」
人に尋ねようにもこうも朝早くては誰もいない…と思ったが、
20代くらいの男性が3、4人、きょろきょろしながら歩き回っている。
ユウキ「あの〜、すいませ〜ん…」
すると、その中の一人から驚くべき言葉が出た。
街人A「!おい、でんきポケモンだ!たくさんいるぞ!とっつかまえろォ!」
ユウキ「な…ッ!?」
プラマイ隊が、いっせいにココの後ろに隠れた。
ユウキ「何だってんだ!?」
街人B「いけ、ゴクリン!!ヘドロばくだん!!」
ユウキ「ココ!みんなを守れ!マジックコート!!」
ココはヘドロばくだんを全て体で受け、その身に纏った。
いつのまにかプラマイ隊の頼れる親分みたいになっている。
ユウキ「そのままとっしん!」
ゴクリンはすっとんで気絶した。
街人B「く、くそ!」
ユウキ「待ってください!どうしてでんきポケモンを襲うんですか!?」
街人C「大停電が起こったからだよ!テッセンさんとポケモンが頑張って発電しても、ぜんぜん電力が足りないんだ!」
街人A「原因もわからないし…」
ユウキ「ふむ…この街の電力源は?水力?地熱?」
ホウエンではその二つがメジャーである。
街人B「…あれ?どっちだっけ?」
街人C「そういえば知らねーよな…」
ユウキ「じゃあ、どこから供給されてるんですか?」
街人A「たしか、ニュー…何とか」
街人B「ニュークリア…?」
ユウキ「…原子力?」
すると、4人目の人が言った。
街人D「ニューキンセツだよ!サイクリングロードの下の川で、水力発電をしてるんだ!」
ユウキ「ふむふむ…」
街人D「でも、もともとは蓄電のためにつくられたらしいね。でんきポケモンも住んでるっていうし」
ユウキ「詳しいですね」
街人D「いや、テッセンさんに教えてもらったんですよ」
ユウキ「すると、そのニューキンセツっていうところに原因があるのかも…案内してもらえますか?」
街人D「あ、ごめん。僕も場所までは…」
???「わしが案内しようか?」
ユウキの背後から声がした。振り返ると、そこにいたのは…
ユウキ「…あなたは、ジムリーダー?」
- 116 :エンタ :2005/12/15(Thu) 18:57:42 ID:BF/FEGLU
- 第101話 VSアクア団!ニューキンセツの戦い・其の一
テッセン「いかにも。わしがキンセツジムリーダー、テッセンじゃ。」
街人B「テッセンさん、あんた発電のほうはどうしたんだ?」
テッセン「疲れたからやめた。」
・・・・・・
ユウキ「それより、案内してくれるんですか?」
テッセン「うむ。ニューキンセツの入り方は代々キンセツジムリーダーのみが知っておる。
その施設がジャックされてるとは考えにくいのじゃが…」
街人A「だから、他の原因があるんだって!」
ユウキ「でも、他に考えられないし…」
テッセン「ここで話しているよりも、行ってみるのが得策じゃろ。ユウキくん」
ユウキ「え?何でオレの名前を…」
すると、テッセンがユウキに耳打ちした。
テッセン「実行部のメンバー、ジムリーダーは全部知ってるんじゃよ」
ユウキ「ああ…」
テッセン「ところで…」
テッセンがプラマイ隊を見て言った。
テッセン「この子達は…?」
ユウキ「111番道路にいましたよ。101匹とも」
テッセン「…?プラスル、マイナンの生息地は110番道路に限られているのじゃが…」
ユウキ「そういえば、キンセツ方面から走ってくる感じでしたよ」
テッセン「ふむ…ポケモンの大脱走…とにかく今は、原因の究明が先決じゃ」
ユウキ「いきましょう、ニューキンセツへ」
テッセンがリモコンのような物を取り出してスイッチを押すと、110番道路の河から橋が浮き上がってきた。
テッセン「ここから先はジムリーダー以外立ち入り禁止じゃ。すまんがここで待っててくれ」
ユウキは川のほとりに一人取り残された。時間が経つ。
ユウキ「テッセンさーん、オレ何のためについて来たんですかー?」
返事がない。
ユウキ「…?」
しばらく経った、その時。
河が渦巻き始めた。雲行きも怪しいと思ったらすぐに雨が降り出した。
ユウキ「一点集中的な雨…ポケモンの手によるもの?」
ユウキが不審に思って橋を渡ろうとしたが、橋はたちまち渦に飲み込まれてしまった。
ユウキ「テッセンさーん!!」
上のほうから、「おーい」という声がした。良かった。とりあえず無事…
じゃなかった。
テッセン「たーすけてくれーぃ」
でんきポケモンが作り出す電流の交錯、その只中にテッセンが閉じ込められていた。
???「はーっはっはっはっは!!こうもうまくいくとは!!」
テッセンの真下あたりから声がした。
ユウキ「誰だ!?」
遠くに見えた、青装束。
ユウキ「アクア団かッ!?」
アクア団員「知っているのなら話は早い。いかにも俺たちがアクア団だ」
ユウキ「テッセンさんをどうする気だ!!」
アクア団員「人質にするのさ。」
ユウキ「何?」
アクア団員「このニセのたまを掴ませたヤツを呼べ。でないとこのオヤジの命はない」
ユウキ「ニセ?」
アクア団員「とぼけても無駄だぜ。本当に知らないのならミナモ湾に沈めてやるがな」
ユウキ「知ってるけど?オレに勝てたら教えてやるよ」
アクア団員「そういうだろうと思ったぜ!何となくな!おい、カイ!イルカ!」
カイ「呼び捨てにすんなよ、ウシオ〜」
イルカ「あらあら、さっそく邪魔が入ったんですか?面倒ですね」
ウシオ「あいにくここには俺たち3人しかいねーが、小僧一人ひねり潰すのには十分だ」
ユウキ「へっ、役不足だぜ。親玉を連れて来いよ」
カイ「ナメた口をきくなよ、ガキ。キャプテンは今コウとミズホと出かけてんだ。ラッキーだったな」
ユウキ「ああ、ラッキーだ。おかげで1対3だな」
イルカ「1対3なら勝てる、とでも言いたげですね」
ユウキ「もちろん。オレが負けるとでも?」
ウシオ「ハッタリだ!かかれ!」
カイ「命令すんなよ〜」
- 117 :エンタ :2005/12/15(Thu) 18:58:01 ID:BF/FEGLU
- 第102話 VSアクア団!ニューキンセツの戦い・其の二
ユウキ「ココ、あのサメハダーを頼む!お前のヨロイならさめはだも怖くない!」
サメハダーはイルカのポケモンである。どっからどう見ても海豚ではないが。
イルカ「サメハダー、ロケットずつき!!」
ユウキ「ココ、ずつき!いしあたま比べだ!!…ムドー、エアカッター!」
こっちはパールル、カイの手持ちである。大きさが半端ではない。というか、ムドーよりデカい。
カイ「くっ…何だこいつ!」
ユウキ「まだまだァ!!」
エアカッター…射ち出された翼が水面を走り、真っ二つに切り裂く。羽根はまたすぐに生えてくる。
ユウキ「ムドー式・水弾の剣翼!」
ちょっと省略。霧状のみずの粒がカイとパールルを襲う。
ウシオ「何だってこいつ、3人がかりで攻めてるのに…!!」
ユウキ「チー!つるぎのまい!!」
ウシオ「顔色一つ変えずに戦ってられるんだよッ!!?」
ウシオのポケモンは、ペリッパー。
ユウキ「チー、てっぺき!…から、たつまき!!」
『わざの発展』。ダイゴが名付け親である。角の高速回転によってたつまきまでも作り出す。
ウシオ「た、たつまき!そらをとんでても意味がねぇってのか!?」
ユウキ「…!!ムドー、今だ!真珠を狙って、エアカッター!!」
カイ「な!!?し、しまった!!」
見事、羽根はパールルの急所に命中した。パールルはそのままダウンした。
ユウキ「チー、そのままスピードアップ!嫌な天気ごと切り裂くぜ!」
ウシオ「な、な…!?」
ユウキ「ムドー、チーを援護だ!かぜをおこしてくれ!」
相手をなくしたムドーが重い翼を一振りすると、たつまきの回転力は更に強まった。
イルカ「私を忘れてないかしら?サメハダー、れいとうビーム!!」
すると、ココがその前に立ちはだかった。
ユウキ「いいぞ、ココ!!マジックコート!」
イルカ(マジックコート…?血迷ったのですか?)
しかし、イルカの予想は外れ、ココは全ての冷気を体に纏った。
ユウキ「そのまま水面をころがるッ!!」
ユウキの言ったとおりココが水面を転がると、纏った冷気により水が凍って道ができる。
カイ「くそ!パルシェン!とげキャノン!!」
ユウキ「ムドー、エアカッター!!」
とげキャノンは射ち出された羽根によって全て打ち落とされた。そして、河には落ちず氷の上に音を立てて落ちた。
いつのまにか河は大きな穴ひとつ残してすべて氷張りになっていた。
ユウキ「ココ、パルシェンとかいうのとサメハダーを…まとめて叩き落せ!ふみつけ!」
冷気により一瞬動きが鈍ったのか、サメハダーはわりとあっさりと水面下に落ちた。パルシェンも巻き込まれた。
ユウキ「よっしゃァ、お待ちかね!!とどめの奥義・雲断の剣舞ッ!!」
雨雲を、ペリッパーを、氷張りの水面を、その中の水とポケモンを。
…その一振りが、全て斬り裂いた。
ウシオ「こいつ…口だけじゃねぇ…強い!!」
ユウキ「パルシェンが残ったか…よし、プラマイ隊!やっちゃって」
ココが戻ってきて指示を出すと、101匹分の電撃が炸裂した。おそらくパルシェンはひとたまりもないだろう。
ユウキ「さてと…まだ終わりじゃないんだろ?かかってこいや!」
カイ「くっそ…こうなったら!!」
こうなったら何だ?と言おうとしたユウキの口からは、かすれた声しか出なかった。
ユウキは、その場に倒れこんだ。
- 118 :エンタ :2005/12/15(Thu) 18:58:31 ID:BF/FEGLU
- 第103話 VSアクア団!ニューキンセツの戦い・其の三
リバース。たてつづけに使ったスペックのせいだ。アスナ戦の疲れもたまっていたのだろう、これが限界のようだ。
ウシオ「…?な、何なんだ?」
カイ「さあな…とにかく今できるのはあいつを潰すことだけだ」
イルカ「テッセンさんを使って攻撃をやめさせようとしたけど、その必要もなかったですね」
???「…そうはさせませんよ」
ふと、ユウキの後ろから声がした。
カイ「女の声だな…ヴォイスチェンジャーを使ってるようだが」
ウシオ「お前のその能力は、役に立つんだか立たねんだか…」
イルカ「私も、男の声にしか聞こえなかったですけど」
カイ「声を変えるからには何も用がないというわけじゃあるまい。キミは誰だ?」
???「さあ、誰でしょうね?それと、もうテッセンさんは返してもらいましたから」
カイ「んな!!?」
いつの間にかでんきの檻は消えていた。
???「さっきの凄まじい電撃が発電機に作用したのでしょうね。」
ウシオ「な!?でんきが使えなきゃここを占拠した意味がねえじゃねえか!?」
???「残念でしたね、フフッ♪」
イルカ「…何者ですか?」
???「わたし?今は教えられません。ユウキがいないときじゃないと、ね」
カイ「…そのガキは、ユウキってのか…」
???「とにかく、あとはテッセンさん、お任せしますね」
テッセン「…あんたは…何者じゃ?」
アクア団の3人の目に、ようやくその姿が映った。
テッセンの隣にいるマントの長身女は、顔を隠している。視力のいいウシオでもその中身は見えなかった。
ウシオ「…はっ!!そうだ、キャプテンに何て言おう!?」
イルカ「とりあえず発電機能を直しましょうよ…」
カイ「いや、俺たちの顔を見たこいつらの始末が先だ」
カイの意見で全員賛成。まだ手持ちはあるようだ。
???「フフ、テッセンさん、あとは頼みます…」
テッセン「ええ!?ワシ!?」
カイ、シェルダー。イルカ、キバニア。ウシオ、マリルリ。
イルカ「ウシオくん、カイくん、準備はいい?」
ウシオ「よっしゃ、かかれェッ!!」
カイ「だから、命令すんなって」
刹那、その3匹の攻撃は全て弾かれ…いや。3匹の体が全て弾き飛ばされた。
一振り。その一振りで3匹のポケモンを同時に倒したのだ。
その瞳に燃えているのは、リバースに倒れた体をたたき起こすほどの強い感情。
執念であり、怒りであり、そして…勇気である。
一瞬の沈黙の後、ただ一言。
ユウキ「待てよ…アオイ」
- 119 :エンタ :2005/12/18(Sun) 12:46:19 ID:uZmDT446
- 第104話 執念
アオイ「やっぱり、気づいてた?」
その声にはわずかな焦りの色が見える。
ユウキ「……」
一方のユウキは沈黙したままアオイを見据えている。
アオイ「でも、今は時間がないから…待てない」
ユウキ「何…?」
アオイ「私に用があるなら、そいつらを倒してから私を探してね。今はごめん」
ユウキ「待…!」
体が、動かない。
ただ遠ざかるアオイの姿を見つめる。
カイ「何だったんだ…?」
アオイは去っていった。ひとつ言葉を残して。
「そいつらを倒してから私を探してね。」
ウシオ「お、おい…何かヤツの眼の色がヤバイ気がするのは…」
イルカ「気のせいでは…ないみたいですねぇ」
「そいつらを倒してから」
ユウキ「上等だァッ!!ひねり潰してやるぜェッ!!」
ユウキの周囲の雨が彼の頭上で蒸発しているのも、気のせいではなかったのだろう。
カイ「げッ…」
一瞬判断が遅れたのが運の尽きだった。
次の瞬間には、シェルダー、キバニア、マリルリがまとめて氷の上に転がっていた。
ウシオ「ひっ、ひるむな!!ヤツはまだ病み上がり(?)だ!」
カイ「おうよっ!!ヤドラン!!」
ウシオ「ルンパッパ!!」
イルカ「ひ〜ん、手持ち切れですぅ〜」
ユウキ「っく…負けるか!!オレは…」
ユウキの手の中から湯気が出てきた。人は自我を失くすと何をしでかすか分からない。
ユウキ「あいつに聞きてー事が山ほどあんだよ――ッ!!」
カイ「ヤドラン!分離!!」
ヤドランが、ヤドンと変種シェルダーにわかれた。
ユウキの手は止まることなく一気にチーを振り抜いた。
ユウキ「っが!!」
攻撃をかわした変種シェルダーが、ユウキの肩に噛みついた。
ウシオ「でかした!シェルダー!」
カイ「…っつっても、俺のポケモンだけどな」
イルカ「あの状態で体を直接攻撃されたら、どんな猛者でも立ち上がれませんよ?」
???「そいつは、どうかな?」
今度は別の声。足元から聞こえる。
カイ「今度は男の声だ…間違い無ェ」
???「あんまりそいつを甘く見ないほうがいいと思うぞ?その男…大空ユウキは…」
地面に穴、飛び出したポケモン、そして男。紛れもなく…
ヒサヤ「ぶったまげるほど強いからな!!」
- 120 :エンタ :2005/12/18(Sun) 12:46:38 ID:uZmDT446
- 第105話 穴掘り男の実力
ヒサヤ「驚いたぜ、キンセツシティの下を通ってたら電線が全部凍ってんだもん」
カイ「う…地下を通って来るやつがいるとは、計算外だったぜ…」
テッセン「何じゃと…?じ、じゃあ…」
ヒサヤ「その通り。キンセツ大停電は…テッセンさん、あんたをおびき出すための罠だったのさ」
テッセン「……!」
ヒサヤ「ニューキンセツにはジムリーダーしか入れない。こいつらは大停電の原因が
ニューキンセツにあると思い込ませて、あんたをおびき出してラチり、
ニューキンセツを乗っ取るつもりだったんだ」
イルカ「…!ばれちゃ仕方ないですね…」
ウシオ「始末するのみ!!」
カイ「…っつっても残ってるのは俺のヤドランの片割れだけだけどな」
ヒサヤ「なら僕でも倒せるな」
テッセン「…すまんのう…ワシもポケモンがいれば戦うのじゃが」
ヒサヤ「いーってこと!それにこれはダイゴに頼まれてんだ!」
テッセン「へ?」
ヒサヤ「ユウキを援護しろとの命令さ。もっともキンセツ大停電の原因解明と半々の重要性だったけど」
カイ「何をゴチャゴチャ言ってやがる!?いけ、ヤド…シェルダー!!」
ヒサヤ「レイド!!」
ヤドランのシェルダーVSユレイドル。第2ラウンドの開始である。
ヒサヤ「おあつらえ向きに天気はあめだ。レイド、たくわえる!」
たくわえられるのは水だけではないそうだが、他の物をたくわえているところは見たことがない。
ヒサヤ「ミラーコート!」
一見閉じ込めたかのように見えるが、ひかりのかべと同じく物理は防げず、すり抜けられてしまう。
ヒサヤ「弱らせてからのほうがいいのかな?まあいいや、はきだす!!」
必殺・水鏡。同タイプなれど侮れないダメージである。
カイ「この…ッ、シェルダー!からではさめ!!」
レイドの触手がはさまれた。人間にたとえればその痛みは想像がつくだろう。
ヒサヤ「今だ!ユウキ!!」
ユウキ「…?」
ヒサヤ「立て!お前にもできるはずだ!水を…」
言い終わる前に、ユウキは立ち上がってチーを頭上に振りかざした。
ヒサヤ「…そうだ。それでいい」
あめが、開いたチーの口にたくわえられる。
ヒサヤ「悪いなレイド…もちっと我慢してくれな。今は…」
レイドも理解した様子でうなずく。
ヒサヤ「今は親友が強くなれるかどうかの瀬戸際なんだ」
カイ「クソッ、お前ら!もう手持ちはないのかよ!?」
ウシオ「…アジトにおいてきた…」
イルカ「私もです…」
カイ「だーッ、もうッ!いいよ!俺が何とかするよ!チクショウ!」
ユウキ「チー、準備はいいか…?」
無言の了解。
ユウキ「…てっぺき、はきだす!」
『わざの融合』…ダイゴの考えた二つ目の「可能性」。
今、その可能性が確信に変わった。
ユウキ「うずしお!!」
カイ「ぐあぁぁぁッ!?」
渦巻く執念は、氷を弾き飛ばし、雨粒をも飲み込み、3人を吹ッ飛ばした。
イルカ「キャプテンに怒られるぅ〜…」
ウシオ「くそ!あんなの俺の残りの手持ちがいりゃ楽勝だったのに!!」
カイ「まだ言うか」
ウシオ「とにかく!次会ったときは覚えてろよ!」
全ての手持ちをボールに戻し、瀕死状態のペリッパーに乗って、3人は逃げていった。
ヒサヤ「…よくやったな、ユウキ。これで全部元通り…」
真っ二つになったサイクリングロードを見て、ヒサヤがうっ、と声を漏らした。
ヒサヤ「…まあ、結果オーライってことで」
テッセン「……」
ヒサヤ「そんな目で見るなよ…」
テッセン「……」
ユウキ「こっちこられても困るんすけど…」
テッセン「……」
ヒサヤ・ユウキ「………」
- 121 :エンタ :2005/12/28(Wed) 09:20:33 ID:xwkQci.g
- 第106話 聞きてー事が…
ヒサヤ「おいおいッ、少しは休めよ!ていうかどこ行くんだ!?」
ユウキはつかれきった体に鞭を打ち、ただひたすらに走っていった。
ヒサヤ「おい、そっちは117番道路だぞ?そんなところに…」
すると突然、ユウキが足を止めた。
ユウキ「…見つけた」
そだてやさんの前。そこにアオイはいた。
アオイ「…よくここがわかったね。ここに来たって事は、あの連中は倒したのね」
ヒサヤ「おいユウキ、誰だ?この人」
ユウキ「こいつが前話したアオイ…兄貴の…元カノ」
ヒサヤ「ぬぁあああああにぃぃぃぃぃ!!?」
アオイ「あらら、コウキ君てばそんなことまでしゃべってたの?」
ユウキ「アオイ…お前に聞きてー事がたくさんある」
アオイは少し渋った様子で黙った。
ユウキ「まずひとつ…なんでホウエンにいる?」
少し沈黙が続いてから(プラマイ隊がうるさかったが)、アオイが短く答えた。
アオイ「ポケモン進化の研究のためよ」
ユウキ「兄貴はどうした?」
アオイ「ワカバで別れて以来、一度も会ってない」
ユウキ「どこにいったか知ってるか?」
アオイ「ポケモンリーグとしか言ってなかった」
ユウキ「カントーの?」
アオイ「多分。ホウエンは制覇済みだしね」
ユウキ「手紙をよこさなかったことについては?」
アオイ「何も言ってなかった」
ユウキ「家族に伝言とかは?」
アオイ「頼まれてたら真っ先に言ってるわ」
ユウキ「それじゃ…いつごろ帰ってくるとかは?」
アオイ「聞いてない」
ユウキ「そうか…じゃ、次の質問だ」
ヒサヤ(ほんとにたくさんあるみたいだな…)
ユウキ「何故本名を隠した?」
アオイ「……!」
ヒサヤ「え?アオイって本名じゃないの?」
ユウキ「答えろ」
アオイ「…コウキ君から…頼まれたの」
ユウキ「最後の手紙にこう書いてあったぜ。『アオイという名の少女がホウエンに来ると思う。
その名前を聞けばユウキも元気になるだろう』だとよ。ふざけんなっての」
ヒサヤ「マジか?おいおい、いくらなんでもそりゃバカだろ…ユウキの気持ちも考えろっての」
アオイ「でも、コウキ君のお願いだもの。ホウエンにいる間はアオイで通させてもらうわ」
ユウキ「お前がそう思ってるんなら別にいい。けど、何でよりによってアオイなんだ?」
アオイ「コウキ君に聞いてよ。わたしはその名前にどんな因縁があるのか知らないし…」
ユウキ「諜報部なのにか?」
ヒサヤ「何ッ!?」
アオイ「そこまでばれてるとはね…」
ユウキ「…カマかけてみるもんだな」
ヒサヤ「なッ…お前の勘、すごッ!!」
ユウキ「それに…あのときキモリだかジュプトルだかを使ってオレたちを助けたのも、父さんじゃなくてお前だろ」
アオイ「…うん。でもひとつだけハズレ」
ユウキ「は?」
アオイ「あのときわたしはもう少し待ってから出るつもりだったもの。ジュプトルが飛び出して予定が早まっちゃったの。
野生だったみたいだけど、よっぽどハルカさんが心配だったのね、あのコ」
ユウキ「…そうだったのか…」
ユウキはジグザグマ捕獲のときのことを思い出した。
アオイ「でもユウキ、すごいね。何でそんなことまで分かるの?」
ユウキ「兄貴の考えてるようなことはオレにも想像がつくさ。(それにホタルが教えてくれたからな)」
アオイ「何でも?」
ユウキ「ああ。お前の本名だって分かるぜ」
アオイ「!?」
ヒサヤ「おいおい、そりゃさすがに無理だろ」
ユウキ「空木ユウキ…それがお前の名前だろ?」
- 122 :エンタ :2005/12/28(Wed) 09:20:52 ID:xwkQci.g
- 第107話 しんかポケモン
アオイ「…な…なんで…」
冷静なアオイも、驚きを隠せない。
ユウキ「ま、今ここでしか言わないけどさ。お前のためを思って」
ヒサヤ「ど、どうして分かったんだ?」
ユウキ「勘!!」
スパ――ン。トロピウスの羽根がハリセン代わりである。
ユウキ「ごめんごめん…でも本当に勘みたいなものなんだって」
ヒサヤ「何の手がかりもなしに人の本名ホイホイあてられるかよ?どうせ誰かに教えてもらったんだろ」
アオイ「そんなハズない!わたしホウエンでは一度も本名を明かしていないもの!」
ヒサヤもこれには驚き。
ユウキ「兄貴の考えそうなことはオレにも想像がつくって言っただろ?だいたいだけど」
ヒサヤ「でもなんでユウキなんだよ?」
ユウキ「勘だよ勘」
アオイ「でも確かにその通りよ…結晶と書いてユウキと読むもの」
ヒサヤ「何なんだお前…」
ユウキ「ポケモン進化の研究っつってたから、あの人が関係あるかと思ってな。ま、勘だけど」
ヒサヤ「ウツギ博士か…誰でも一度は聞いたことがあったりなかったりする人だな」
ユウキ「そしてその名前…ユウキという名前と、アオイという名前が、
オレとお前の間に切っても切れない縁を作ったってワケだ」
ヒサヤ「自分の名前と愛する人の名前か…」
ユウキの反撃!ヒサヤに10のダメージ!
ヒサヤ「グーはないだろッ!?」
ユウキ「誰が愛する人だッ」
アオイ「もう質問は終わりなの?」
ユウキ「ん…おう、まあな。まだまだ大量にある気がするけど、忘れちまった」
アオイは静かにマントを羽織った。
アオイ「じゃあ、しばらくはお別れね。それと、この子を」
ユウキ「ん?」
アオイからユウキに手渡されたボールには、イーブイが入っていた。
ユウキ「何だ、こいつ…」
ヒサヤ「無限の可能性を秘めたポケモン、イーブイさ。今まで五種類もの進化形態が確認されてる」
ユウキ「5ッ!?」
アオイ「そして、他にも進化する可能性があるといわれているの。父から頼まれてホウエン中の人に配ってるのよ」
ユウキ「そういやミツルのヤツもエーフィをもらったとか言ってたっけ…」
アオイ「そのエーフィはわたしのイーブイではないけど…まあ同じようなものかもね」
ヒサヤ「イーブイを配ってどうするんだ?」
アオイ「進化の研究もあるけど…本当は実力のあるトレーナーに役立ててほしいの」
ユウキ「それってつまり…?」
アオイ「そう、ユウキ…あなたはわたしが実力を認めたトレーナーよ」
ユウキが少し動揺したのを見て、アオイはくすっと笑った。
アオイ「それじゃ、またいつかどこかで会いましょうね」
そう言って、マントを翻して消えた。
ヒサヤ「僕の実力は…?」
・・・・・・
ユウキ「…ま、ドンマイ」
ヒサヤ「ところで、このプラマイ軍団どうすんの?」
ユウキ「ふーむ…とりあえずテッセンさんを倒してから考えよ…ッ」
ドサッ。
ヒサヤ「ぅおいおいおい!!無理すんなって言っただろーが!?」
さすがにこのまま戦い続ければ死んでしまうだろう。
こうして、テッセン戦はユウキの回復後に延期された。
- 123 :エンタ :2005/12/30(Fri) 16:27:05 ID:O1glJQvU
- 第108話 ホタルとゲンキ
ゲンキ「そこだ、バリまる!!雷鳴刃(スパークルリーフ)!!」
ホタル「何の!かわせ、バルビート!!」
何故こんな事になっているのか?
ゲンキは幻海大災禍の話を聞いたあと、ホタルについてポケモン屋敷を探検した。
その道中で出会ったのが彼の新しい仲間、バリヤード、バクオング、サニーゴの3匹。
それを機にゲンキはホタルの持つ戦術を根こそぎ教わり、強くなるための特訓を始めたのだ。
ホタル「イルミーゼ、バクオングのほうががら空きだぜ!」
ゲンキ「んな!?しまった!バクまる、衝撃波(グレートウェイブ)だ!!」
ホタル「うわっ、じしんじゃねーのか?」
ゲンキ「ハイパーボイス+じしんさ!飛んでてもイミネーゼ!」
ホタル「へっ、今度はバリヤードがひまそうだぜ?」
ゲンキ「ぐわ!?バリまる、超壁(ウルトラバリアー)!!」
リフレクター+ひかりのかべの、まさに超防御わざである。しかし…
ホタル「遅いッ!!」
ゲンキ「なっ…でんこうせっか!?」
バリまるが倒れた。どうやら超壁は発動速度が遅いわざのようだ。
ゲンキ「何でただのでんこうせっかでそこまで強いんだよッ!?」
ホタル「じこあんじだよ。お前のそのとおぼえしまくってたバクオングから拝借したのさ」
ゲンキ「あー…!」
ホタル「いいか?ダブルバトルではいかに相手のポケモンをよく見て、戦略を立てるかだ!
敵を知り己を知らば百戦危うからずってな。兵法ってヤツだ」
ゲンキ「シラガは昔の人からいろんな知識をパクってんな〜…」
ホタル「パクっちゃいねーよ、人聞きの悪い!あと白髪言うな」
ゲンキ「ま、いいや。次はサニまるだぜぇ!」
サニーゴは、みず・いわタイプでわざも多彩な使い勝手のいいポケモンだが、タフさに問題が残る。
ホタル「素直に弱点狙ってってワケじゃないな?」
ゲンキ「さあ?バクまるッ、はかいこうせんッ!!」
ホタル「な…かわせ、バルビート!!」
しかし、はかいこうせんはイルミーゼに命中した。
ゲンキ「やっりィ!!」
ホタル「ぬぅ…ギャロップ!!」
ホウエンではお披露目しなかったが、ギャロップはガーディと同じくらい長い付き合いである。
ホタル「高速移動で翻弄だ!」
ゲンキ「何の!地上にいることには変わりねえ!!バクまる、じしん!!」
ホタル「あ、おいアホ…!」
バクまるの頭上からダイヤモンドより固いといわれるヒヅメが炸裂した。
ゲンキ「とびはね〜ッ!?」
ホタル「それに…見ろ!お前のサニーゴ!」
確かにサニまるもホタルの言うとおりダメージを受けている様子である。
ホタル「じしんは敵味方全員に当たるわざだろが…普通に考えてもみろよ」
ゲンキ「そっか…ナルホド」
ホタル「ボヤボヤしてんなよ!かえんほうしゃだッ!!」
ゲンキ「サニまる、バクまるを守れ!」
みずのはどう+ミラーコート。
ゲンキ「水鏡(ハイドロミラージュ)ッ!!」
同じわざ名でもヒサヤのものとは大違いだ。
ホタル「ぬう…やるな、みずでほのおを防ぐとは」
ゲンキ「へへん!まだまだ!!バクまる、サニまる!」
ハイパーボイス+みずのはどう。どうやら違うポケモン同士のわざも合成できるらしい。
ゲンキ「冽波爆潮衝(タイダルウェイブ)!!」
ホタルが思いっきり水をかぶった。
ホタル「しょっぱッ、海水!?それがどーした!」
ギャロップはわざの発動よりも早くバクまるの後ろに回りこみ、その角で止めをさした。
ゲンキ「くっそ、ヒノまる!」
ホタル「ようやく本命か…!」
マグマ団の経験で、ほのおポケモン=本命という考えが染み付いている。
ゲンキ「炎雷拳(ファイアボルト)だ!!」
ホタル「おわっ、ほのおとかみなりパンチか!」
しかし、両手でひとつずつ繰り出したのではない。
触るとしびれるほのお。それを拳に纏っての、炎雷拳。
ゲンキ「まだまだーッ!!サニまるッ!!バブルこうせん+いわなだれで…」
泡に包まれた岩の塊がぷかぷかと宙に浮いている。
ゲンキ「水泡礫(ロックバルーン)、喰らえッ!!」
ホタル「うおおっ、二重で弱点!?よけろギャロ…って多ッ!?」
その泡の数は半端ではなかった。高速自慢のギャロップもこれでは身動きが取れない。
水泡礫が一気に割れ、みずといわが矢のごとく降り注いだ。
ホタル「そうか、いわなだれ…広範囲攻撃わざか!」
ゲンキ「その通り!しかもサニまるより後ろにいるヒノまるには被害0だぜ!」
ホタル「確かにいいわざだ…が!!」
はるか頭上から、かみなりのごとく一直線に落ちてくるのは…バルビート!
ホタル「最初から上にいればイミねーぜ!!かみなりパンチッ!!」
こうかばつぐん!サニまる戦闘不能。
ゲンキ「くそ…頼むぜ、レアまるッ!!」
ホタル「そいつで5匹目か…」
ゲンキ「ヒノまる!オーバーヒート+かげぶんしんで…」
このわざの組み合わせは、サミットで使ったものである。が…
ゲンキ「陽炎(ファントムヒート)!」
- 124 :エンタ :2005/12/30(Fri) 16:37:19 ID:O1glJQvU
- 第109話 ハルカとフユキ
袋いっぱいのいかりまんじゅうとミックスオレを抱えて、シバは幸せの絶頂である。
シバ「わっはっはっは!!いかりまんじゅうがこんなに!!」
トウキ「ほどほどにしとけよ…甘いモンは」
シバ「礼を言うぞ、カネコ殿!」
カネコ「いや、別にそんな…トレーナーの役に立つのが、わたしたちの使命ですし」
トウキ「使命?…ってあれ?そういやハルカは…」
シバ「うん?ああ、彼女ならみずのさんぽみちでニョロボンを鍛えてくるとかいっていたな」
トウキ「俺らも負けてらんねーな!」
シバ「うむ!食糧も確保できたことだし!」
・・・・・・
トウキ「ッと待て!!まさかとは思うがお前…」
シバがこくんとうなずく。
トウキ「いや、いくらなんでも…まんじゅうだぞ?それ…」
またこくんとうなずく。
トウキ「………。」
カネコ「…ま、まあ…いかりまんじゅうおいしいし…ミックスオレもあるし…あの〜…そんな目で見ないでくださぁい…」
ハルカ「よし!まずはこのみずのさんぽみちを20往復!ニョロピー!競争よ!」
散歩道とはいっても南北1.4kmはある。20往復といったら相当な距離だ。
ハルカは厳しい特訓のなかでポケモンと心を通わせる。しかし、ニョロボンと競争なんてのも無謀だが。
開始から30分が経過した頃、既に15往復はしていた。と、突然、
ハルカ「ィ痛ッ!?」
いきなり目の前に石が落ちてきたのだ。勢いあまってハルカは鼻をぶつけた。
???「あ、すいません。手が滑って…」
ハルカ「いったーい!ちょっと、何やってんのよ!?」
フユキ「大丈夫ですか?」
ハルカ「…ですか?じゃないわよ!!…あんた、名前は?」
フユキ「あ…フユキです。周防…フユキ」
ハルカ「元気ないわね…」
だが、ハルカはほどなくその理由に気づいた。
ハルカ「お墓…?」
イワキチ ここにねむる
フユキ「そうです…もうすぐ百歳でした」
ハルカ「そっか…さっきの石は……なんか…ごめん」
フユキ「あなたが謝る必要はありませんよ…」
ハルカはフユキがそうしたように墓の前に座って手を合わせた。
そして、お供え物があることに気づいた。
フユキ「…どうしたんです?」
ハルカ「これ…よかったらもらって」
差し出したのは、ミックスオレ。
フユキ「これは…イワキチの大好物です…」
ハルカはだまって墓の前にそれをおき、もう一度黙祷した。しばらく静寂の時が流れた。
ハルカ「…なんか…人でも…ポケモンでも…誰かが死ぬと、悲しいよね…」
その気丈な少女の口からぽつんとでた、弱音のような一言。
フユキ「ええ…」
フユキはそれしか答えなかった。
ハルカ「…アタシの家ね…パパと、二人暮しなんだ…」
フユキ「僕の家もです。奇遇ですね…」
ハルカ「前は母さんと、弟がひとりいたんだけどね。マサトっていう」
フユキは黙って聞いていた。
ハルカ「母さんは前から病弱で…マサトを産むと同時に息を引き取ったの。そのときアタシは3歳だった。
でね、そのちょうど一年後の大晦日に、すごい大災害があったの」
フユキ「…ホウエンの方でしたか」
ハルカ「あれ?言ってなかったっけ?家はミシロにあるんだけどね」
フユキ「…まさか、弟さんは幻陸大災禍で…」
その先は、口には出さなかった。それほど無神経な男ではない。
ハルカ「……うん……」
ハルカもそれだけしか答えなかった。また長い沈黙が流れた。
フユキ「…さぞ、辛かったでしょうね…」
ハルカ「でもね、マサト自身ももともと病弱だったから…長生きはできないだろうって……
……だから…アタシが…守らなきゃって……でも…守れなくて……マサトは…マサトは………」
いつしかハルカの目には涙が浮かんでいた。フユキはハルカの肩にやさしく手を置いた。
フユキ「大切な家族を守れなかったのは僕も同じです。イワキチは、僕にとって家族でした。
あなたがそんなに気に病むことはありませんよ。誰しも同じ悲しみを持っていますから」
ハルカ「……ありがと……」
静寂が突き破られたのは、あまりにも突然だった。イワキチの墓の中から、一匹のイワークが飛び出したのだ。
ハルカ「――――!?い、イワキ…」
フユキ「違う。イワキチじゃない」
彼は立ち上がってそのイワークをにらみつけた。
フユキ「墓荒らしが…今すぐこの思い出の地から去ね」
ものすごい気迫だった。それこそそびえ立つような巨躯のイワークを迫力だけで黙らせるほどに。
シバ「おーい、イワーク!!何をしているんだー!?」
ハルカ「あの声…シバさん!?ってことはこのイワーク…」
すると、フユキがイワークをにらむのと同じ顔でハルカを見た。
フユキ「…知り合い?」
あのハルカがすくむほどの気迫。どうやら本気で怒っているようだ。
ハルカ「…ご、ごめん!あとでちゃんと謝りに来させるから…」
フユキ「…ですから、あなたが謝る必要はありませんよ。」
ハルカ「…え?」
ハルカが顔を上げると、フユキは笑っていた。
フユキ「…ただし、その人にお伝えください。二度とここには現れないでほしいと」
ハルカがまた申し訳なさそうに俯いた。
ハルカ「…やっぱり…怒ってるよね…」
フユキ「さあ…どうでしょうね?」
ハルカ「………。」
ハルカ「それじゃ…もう行くね。お墓の作り直し、本当は手伝いたいんだけど…」
フユキ「お気になさらないでください」
ハルカ「ごめんね…それじゃ」
ハルカは駆けるように去っていった。
フユキ「ありがとう…あなたのおかげで、また笑うことができましたよ」
- 125 :エンタ :2005/12/30(Fri) 16:41:48 ID:O1glJQvU
- この後の110話は、字数の都合で前後編に分けてあります。
読みづらいとは思いますが、ご了承ください。
- 126 :エンタ :2005/12/30(Fri) 16:42:35 ID:O1glJQvU
- 第110話(前編) マナカとマモル
おじさん「…いいのかな〜…」
マナカ「何が?」
ここは119番道路。つりで有名な川が流れる場所だ。
おじさん「何って、こんなところに二人で釣りに来て…」
マナカ「何かあったら守ってよね?」
おじさん「……。」
前例を考えると、常時ガードマンは必要なのだが…
何より心配なのは、イッセンの許可をもらっていないことだ。
しかし、バンリおじさんは一年に一度、必ずこの季節に119番道路につりに来る。
今年はマナカも一緒に行く約束をしていたのだ。
マナカ「…つりって暇ね〜…」
おじさん「そうそう。だからこの時間に、普段できないことをするんだ」
マナカ「できないこと?」
おじさん「たとえば…マナカは将来、何になりたいんだ?」
マナカ「ああ、そーゆーことね。う〜ん、将来かぁ…」
急に強い風が吹いた。そして、餌の入ったバケツがすっ転がって川に落ちた。
おじさん「あぁ〜ッ、エサが〜ッ!?」
マナカ「………。どうすんの?」
おじさん「…残ってるエサでつりを続けててくれ…父さんエサ買ってくる…」
マナカ「でも、あんな上質なポロックはこの世に二つとないとか言ってなかったっけ?」
おじさん「…いい…買ってくる…何でもいいから……」
そういって、力なくとぼとぼとヒワマキのほうに歩いていった。
マナカ「…ふぅ。将来の夢ねぇ…」
今を楽しむタイプのマナカには、はっきり言ってそんなものなかった。
マナカ「草木が生い茂ってて、川もきれいで、いいところね〜…」
つまり、どうでもよかった。
マナカ「…つりってホント暇ね〜……」
???「ケケッ、あのオヤジバカじゃねぇのか?」
???「だな。ともあれこれで邪魔者はいなくなったわけだ」
???「ヤイト、ススケ、準備はいいかい?」
ヤイト「リョウ…いちいち名前を呼ぶなよ…」
ススケ「何かハズイよ…」
リョウ「うっさい!あんた達、男ならもっとシャキッとしろ!」
『燎』『灼』『煤』と書いた赤装束の服を着た、いかにもマグマ団な三人組が草陰に隠れている。
ススケ「それにしても、リーダーは何でホタルのアホを待つなんていったんだろうな?」
ヤイト「ホントだぜ。あんな雑魚の力なんかなくても、こんなに隙だらけなのに」
リョウ「あたし達が大地の巫女を今度こそかっさらって、お手柄だ」
ヤイト「よし、襲うぞ…」
ガササーッ。怪しい三人のポケモンは草むらから飛び出すや否や、かえんほうしゃを放った。
マナカ「!!フーくん!!」
フーがボールから飛び出した瞬間には、超念力で圧縮されたほのおが消え、三人の赤装束が代わりに立っていた。
マナカ「…あー!!あんたは!!あの時あたしをさらった…」
リョウ「ぜッ、全員集合ッ!!」
マナカも言葉を失うほど予想だにしなかった行動である。両者ポケモンを出しているにもかかわらず戦闘は中断された。
ヤイト「待て待て待て待て、あんなに強いなんて聞いてないぜ」
ススケ「見たか?見たか?火がいきなり消えちまったぜ」
リョウ「さすがは元あたしのユンゲラーね…今はフーディンか」
マナカ「あ…あのー…」
リョウ「うっさい!会議中はお静かにッ!!」
マナカ「あ…すいませーん…」
・・・・・・あれ?
ヤイト「どうすんのどうすんの、このままじゃクビチョンパだぜ」
ススケ「ああ、任務外の行動が裏目に出ちまったからな」
リョウ「ヤバイよね…こうなったら、この辺一体の草むらを焼き尽くして川を干上がらせるしかないね」
ススケ「は?何で?」
リョウ「ここの自然を破壊するのが第一目的だってことにすれば、大地の巫女にあったのは偶然ってことになるだろ?」
ヤイト「な、なるほど!じゃあさっそく…」
リョウ「ロコン、かえんほうしゃ!」
ロコン、マグマッグ、ドンメルの3匹がいっせいにかえんほうしゃをした。
ススケ「ひゃーっはっはっはっはっ!!燃え尽きちまえェ!!」
マナカ「そ、そんな……誰か――――ッ!!草木を守って――――ッ!!」
- 127 :エンタ :2005/12/30(Fri) 16:43:16 ID:O1glJQvU
- 第110話(後編)
地面から三本の極太ツル「ハードプラント」が飛び出し、瞬く間に3匹は宙吊りにされた。
???「…シード、そのへんでいい。吊ッ下げておいて」
声の主は、ポケモンレンジャーらしき格好の青年だった。
リョウ「なッ…お前は!?」
???「悪党に名乗る名はない!よくもここの自然を破壊したなッ!!」
ヤイト「ひッ…お助け…」
もう三本のツルが生えてきた。ツルの主は、シードと呼ばれたフシギソウだった。
リョウ「ひぃっ…!」
???「早々に去るか、キバニアのエサとなるか。選ぶがいい」
ヤイト「も、戻れ!マグマッグ!」
ススケ「ドンメル!!」
???「そうだ。それでいいんだ」
リョウ「ロコン!!……おにびッ!!」
???「ッな!?」
マナカ「うひゃぁッ!?」
ロコンの放ったおにびが、マナカめがけて降ってくる。まともに当たればやけどは必至だ。
すると、川から水の塊が放たれた。おにびは吹き消された。
リョウ「何!?誰だ!」
マナカ「……!!」
ただ、美しい。
そんなポケモンだった。川から顔を出していたのは。マナカを助けたのは。
???「…油断は大敵だったか。こんな卑怯者に遅れをとるとは」
リョウ「ゆ、許して…」
残った一本のツルが、気絶したロコンを締め上げたまま降りてきた。
???「去れ!そしてもう二度と、ここには来るな!!」
『燎』『灼』『煤』の三人は、飛ぶように走り去っていった。
???「…ふう…」
マナカ「…あ、あの…」
???「お怪我はありませんか?」
…惚れた。
マナカは今、完全にこの男に惚れた。
マナカ「…あ、はい…」
???「そうですか、それはよかった。では僕はこれで」
マナカ「ま、待って!」
立ち去ろうとする青年を、マナカはすぐさま呼び止めた。
マナカ「…お名前を…教えてください…」
???「…名乗るほどの者ではありませんが…」
青年はにこやかに振り返り、続けた。
マモル「…マモルです。ポケモンレンジャーのマモル」
マナカ「マモル…様…?」
マモル「あはは、呼び捨てでいいですよ。それとあのミロカロス…」
といって、川から顔を出しているポケモンを指差した。
マモル「あなたになついている様子です。もしご迷惑でなければ、連れて行ってやってください」
マナカ「え…」
マモル「人は今、ポケモンとの協力が乏しい傾向にあります。
ポケモンとの協力があってこそ、自然の中でも快適に暮らせるのです」
マナカ「…ポケモンとの…協力…」
マナカは川辺に歩み寄った。
マナカ「よろしく、ミロロちゃん…」
マモル「…よかった。では僕はこれで」
マナカ「えっ…」
マナカが振り返ったときには、マモルの姿はもうなかった。
バンリおじさんが、青ならぬ赤ポロックをバケツいっぱいに抱えて戻ってきた。
おじさん「おーい、こんなのしかなかったけど…!?」
ガッシャーン。ぐわんぐわんぐわん…
バンリおじさんはミロカロスの姿を見てバケツを取り落とし、口をあんぐり開けた。
マナカ「あ、おかえり父さん!あのね、さっきの話だけどね…」
おじさん「マナカ…そんなの釣ったのか…?」
バンリおじさんの言葉も無視して、マナカは続けた。
マナカ「あたし…ポケモンレンジャーになる!!」
- 128 :エンタ :2005/12/31(Sat) 15:55:42 ID:U1CVusvk
- 第111話 色違いプラスルの秘密
火曜日の、朝。
ヒサヤ「おー。たくわえるも、結構サマになってきたなぁ」
シャワーズのじょうろに汲んだ水で、ヒサヤと共にたくわえる練習。
ここ、キンセツシティは電力も復旧し、以前の活気を取り戻しつつあった。
ユウキ「まだまだ!体調全快でパワーが余ってんだ!」
ヒサヤ「余らせとけよ…お前最近生活リズム悪いぞ」
たしかに、徹夜で砂漠を歩いてはぶっ倒れて丸一日寝通しだったあたり、14歳の生活リズムではない。
ユウキ「ふーむ、確かに。それじゃ特訓はこの位にして…」
ヒサヤ「うんうん」
ユウキ「テッセンさんに挑むか!」
ヒサヤ「早ッ!?待てよ、まだプラマイ隊をどうするのかさえ決まってないんだろ?」
隊といっても、もう7匹にまで減っている。110番道路の橋を自分たちで直しているのだ。
しかし一部のプラマイ、つまりここにいる7匹は、恩人であるユウキと恩ポケであるココが心配だったらしい。
ヒサヤ「しかし、色違いプラスルってのも珍しいよなァ」
ユウキ「確かに。しかも、他の6匹はちゃんとプラスルマイナンでくっついてるのに、
こいつ一匹だけパートナーがいないのも気になるし」
テッセン「そりゃそうじゃ。色違いマイナンはすでにゲットされておるからな」
ヒサヤ「どわぁ、いつの間に!?」
ユウキとヒサヤもいつの間にかジムの前まで歩いてきていたのだが。
ユウキ「ゲットされてるって…?」
テッセン「一年くらい前じゃったなぁ。色違いマイナンを連れたトレーナーが、ジムに挑戦しに来たんじゃ」
ユウキ「……!」
テッセン「他に持っていたポケモンは、ヌマクロー、ソーナンス、サンダース…そしてピカチュウ」
ユウキ「やっぱり!」
ユウキはそのパーティーに聞き覚えがあった。師匠・ダイゴが言っていた…
明らかに兄、コウキの持つポケモンである。
テッセン「プラスルとマイナンはくっつけてやらんとカワイソウじゃ。
そして色違いプラスルには色違いのマイナンが最高のパートナー…」
ユウキはその意味を次第に飲み込んでいった。
兄を追い、このプラスルと兄のマイナンを会わせなければという使命感。
ヒサヤ「はがねポケモン以外は興味がないんじゃなかったか?」
からかうようにヒサヤが言う。
ユウキ「ブイもはがねタイプじゃねーさ……連れて行こう。この一匹だけ」
ココが、嬉しそうにほえた。弟分(?)がいなくなるのは寂しかったのだろう。
テッセン「ほう。ならでんきのエキスパートであるこのワシが、ちゃんと使いこなせるかどうかテストしてやろう!」
ユウキ「よろしくお願いしまっす!!」
ユウキ「入れ替え制で!」
手持ちが一気に5匹に増えたユウキには今やもう、むしろ有利な条件だった。
テッセン「よし、ではダブルバトルはどうじゃ?」
ヒサヤ「え〜、じゃあ僕も参加したーい。見てるだけじゃつまんなーい」
今朝存分に穴を掘ってきたヒサヤには、十分な時間があった。
テッセン「よかろう!ジムリーダー有刺テッセンVS大空ユウキ&堀岡ヒサヤ、開始じゃ!」
- 129 :イチゴ :2006/01/09(Mon) 12:33:46 ID:6jnBhpw6
- じつは・・・・色違いのミユウとキリンリキもってます。(^^)v
- 130 :エンタ :2006/01/09(Mon) 19:11:44 ID:n2UgkCso
- >イチゴさん
クラスで人気者ですね(笑)
- 131 :エンタ :2006/01/09(Mon) 19:12:08 ID:n2UgkCso
- 第112話 VS.テッセン其の一
ハーフタッグ(2対1)のバトルには、トウキ戦と同じルールがある。
ユウキはココ・チー・プラ(プラスル☆)。
ヒサヤはレイド・ブラキオ(トロピウス)・トプス(カブトプス)。
テッセンは6匹、長期戦が予想される。
テッセン「ラクライ!ライチュウ!」
ユウキ「ココ!」
ヒサヤ「トプス!」
テッセン「ライチュウ!先手必勝じゃ、10万ボルト!」
ユウキ「よしきた、ココ!マジックコート!!」
しかし、でんきを纏うつもりだったが、10万ボルトはラクライに命中した。
ヒサヤ「…!ひらいしんか!」
ひらいしん、ラクライの持つ特性である。
テッセン「やーい、ひっかかったひっかかったー!そのままスパークじゃ、ラクライ!」
ユウキ「な…!?体当たりは纏えねー…あなをほるッ!!」
とっさにココは地中に逃げた。しかし、これでは時間稼ぎにしかならない。
ヒサヤ「トプス!マッドショット!」
泥がライチュウに思いっきりかかった。これで放電は防げる。
ユウキ「サンキュー、ヒサヤ!ココッ、ターゲットはライチュウ!」
地面からの攻撃。見事急所に命中した。
ユウキ「ナイス、ココ!」
ライチュウ、ダウン。
ヒサヤ「!マズイ!足元には泥はかからなかったとしたら…!」
ヒサヤの予想は当たってしまった。
ユウキ「せいでんき!?ココが麻痺した!!」
テッセン「がっはっは、一回だけならまひなおしの使用を認めるぞ」
ここで使ってしまうと、今後まひが治せない。どうする…?
ヒサヤ「使え!僕に名案がある!」
ユウキ「……?」
ユウキはヒサヤの言うとおりココのまひを治した。
ヒサヤ「トプス、ココにマッドショット!」
ユウキ「…なるほど!ココ、マジックコート!!」
味方にわざを使う…この無謀な行為は、時として思わぬ結果をもたらす。
ユウキ「泥を纏えばでんきは効かないぜ!」
ヒサヤ「さっきのヌマクローの話で思い出したのさ」
テッセン「なるほど、やりおるわ…ライボルト!」
ユウキ「ココ、すてみタックル!」
瞬く間にラクライはダウンした。
テッセン「くっ…ランターン!!」
ヒサヤ「…?みずタイプ?…ッ、しまった!」
テッセン「ランターン!あまごいじゃ!!」
フィールドに雨が降り注いだ。ココの纏った泥はあっという間に洗い落とされてしまった。
ユウキ「しまっ…」
テッセン「雨中必中!ダブルかみなり!」
いきなりの大技に成す術なく、ココとトプスは同時にダウンした。
テッセン「雨が降っている間は、この極大かみなりは避けられん…勝負も時間の問題じゃな」
二匹のじゅうでんが終われば、ダブルかみなりが再び落とされる。それだけは何としても避けなくては…
- 132 :エンタ :2006/01/09(Mon) 19:13:04 ID:n2UgkCso
- 第113話 VS.テッセン其の二
ユウキ「チー!」
ヒサヤ「…ブラキオ!」
テッセン「何を出しても、じゅうでん後の極大かみなりには耐えられんよ。
このかみなりを食らって倒れなかったのはダイゴのネンドールただ一匹じゃったからな」
そう。じめんタイプにさえも「普通に効く」のである。
ユウキ「…師匠の…!」
ヒサヤ「喰らわなきゃいいんだろ!ブラキオ、にほんばれ!」
しかし、ブラキオの植物パワー(?)をもってしても、分厚い雨雲をどかすことはできない。
ユウキ「なら、これだ!」
チーはいつの間にか剣に変身していた。
ユウキ「一閃流オレ式奥義!雲断の剣舞!!」
雨雲は見事両断された。しかし切り札的奥義をとどめに使えなかったのは体力的にも痛い。
ヒサヤ「でかしたユウキ!とチー!」
ユウキ「ダブルで行くぜ!」
ヒサヤ・ユウキ「ソーラービ――――――ムッ!!!」
雲間から差し込むにほんばれの光が、より強力なソーラービームを生み出す。
テッセン「なんと、極大ソーラービーム…!!」
ユウキ「テッセンさん、もうあとがないぜ…」
ヒサヤ「形勢逆転だな。思わぬ刺客がなければ」
テッセンのポケモンは残り二体。ユウキチームは残り四体だ。
テッセン「あるんじゃよ…そ・れ・が。レアコイル!デンリュウ!!」
ユウキ「な…レアコイル!?」
ユウキはツツジ戦一回戦の悪夢を思い出した。レアコイルのわざは限りなくノズパスに近い。
テッセン「まずはクチートじゃ。レアコイル、じりょく全開!!」
ユウキ「やっぱり〜ッ!!?」
ヒサヤ「無駄だね。ブラキオ、さらににほんばれ!」
ようりょくそにより身体能力が活性化していたブラキオは、ソーラービームの直後にも行動できた。
ユウキ「さらに…?意味あんの?」
ヒサヤ「大アリさ」
突然、レアコイルの動きがおかしくなった。チーもじりょくから解放された。
ユウキ「どういうことだ?」
テッセン「こんな挑戦者ははじめてじゃ…まさか磁気嵐でレアコイルのじりょくを乱すとは」
ヒサヤ(僕が挑戦したわけじゃないけど)
ユウキ「磁気嵐?」
ヒサヤ「そ。通称太陽フレア。コロナにたくわえられた磁気エネルギーが突然爆発する現象で、電波障害なんかを起こすんだ」
ユウキ「にほんばれで、その現象を促したのか…」
テッセン「じゃが…その磁気嵐のせいで、このわざの軌道も滅茶苦茶になるのじゃよ!ダブルでんじほう!!」
レアコイルとデンリュウが同時にでんじほうを発射した。しかし、その軌道は全くと言っていいほど読めない。
ユウキ「な?な!?避けろ、チー!!」
しかし、避けたはずのでんじほうは曲がり曲がってチーに命中した。スピードがあるのだ。簡単には見切れない。
ヒサヤは微動だにしなかった。
テッセン「なるほど…ヒサヤ君のほうはわかっとるみたいじゃなぁ」
ヒサヤ「避けようとするからあたるんだ。軌道が滅茶苦茶なら最初っからあたるわけないだろ」
ユウキは戦闘不能になったチーをボールに戻しながら、ヒサヤの冷静さに感服した。
ヒサヤ「ブラキオ、やどりぎのタネ!」
特殊な方法でしか覚えないわざ・やどりぎのタネは、狙いを誤ることなくレアコイルに命中した。
ヒサヤ「そして、せいちょう!!」
やどりぎのタネが一気にせいちょうし、レアコイルを押さえつけた。
ヒサヤ「ブラキオはやどりぎのタネをせいちょうさせてる間は動けないが…充分だ。
レアコイルは身動きが取れない上、体力をガンガン吸い取られてる。もはや戦闘不能だな」
ユウキ「プラ、1対1だ、頼むぜ!」
- 133 :エンタ :2006/01/09(Mon) 19:13:24 ID:n2UgkCso
- 第114話 VS.テッセン其の三
テッセン「ぬう…デンリュウ、トウキから教わったきあいパンチ!」
デンリュウが精神を集中する。このわざは精神力が途切れると使えない。
ユウキ「プラ…うそなき」
ぴええぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!
デンリュウはお人よしな性格らしい。精神集中は途切れた。
テッセン「くぅ…じゃあメガトンパンチじゃ!」
しかし、デンリュウは再びきあいパンチの構えに入った。
ユウキ「アンコールさっ♪」
プラは正攻法ではなく、こういった小技を絡めたほうが強い。
ユウキ「プラ!こうそくいどう、そしてかげぶんしん!!パンチがあたらないほどにスピードアップだ!」
デンリュウの精神は、今回は途切れなかったが、パンチの相手が見つからず失敗。
ユウキ「アンコールが解けるまでは距離を保って…ひたすら能力アップだ!」
たしかに、距離を保てばパンチはあたらない。ちょっと卑怯だけど。
アンコールが解けた!
テッセン「デンリュウ!かみなり!」
しかし、もう命中するはずもない。プラはすでに最速だった。
ユウキ「でんこうせっか!」
文字通り電光のごとき猛攻が炸裂する。
ユウキ「もう攻撃は当たらないぜ!」
テッセン「どうかな?デンリュウ!!」
デンリュウを中心に、四方八方に電撃が炸裂した。
テッセン「でんげきは!」
こんなわざを使われては、どこにも隠れようがない。そう、でんげきはは『必中わざ』なのだ。
ユウキ「くッ、かみなりパンチ!!」
おうえんポケモン特有の火花のボンボンを使ったかみなりパンチ。
テッセン「効かん!でんげきは!」
同タイプのわざでも必中すれば一発ごとに必ず体力は削られる。
ユウキ「くッ…プラ!」
テッセン「もう一度じゃ!でんげきは!」
バチッ!
でんげきはは確かに命中した。が。
ユウキ「みがわり!」
プラのみがわりは、必中わざをも防ぐ盾となった。
ユウキ「プラ!とっておき、いくぜ!」
プラが回転しながら高く飛び上がった。
ユウキ「アイアンテ―――ルッ!!」
プラはしっぽを取り外した。…取り外した?
ヒサヤ「うわっ…プラスルのしっぽって…取れるんだ…」
ブーメランのように投げられたしっぽは、回転しながら鉄化した。
テッセン「なにぃ…!」
ブーメランがデンリュウに刺さった。
ユウキ「はがねのしっぽは、そのままひらいしんになるぜ!プラ、かみなり!」
デンリュウめがけてかみなりが落ちた。
テッセン「ワシと同じ…極大かみなりじゃとォ…!?」
ユウキ「でんげきはをじゅうでんエネルギーにしてたのさ!勝負あったな!」
テッセン「仕方ない…受け取れ、二人とも!ダイナモバッジじゃ!」
ユウキ「へへっ、やりィ!」
ヒサヤ「僕は要らないけど…まあいいや、バッジの成分って興味あったし!研究してみよ!」
これでバッジが4つそろった!
ユウキ「父さんに…挑戦できる!」
- 134 :エンタ :2006/01/15(Sun) 19:09:47 ID:.8BrKp0c
- 第115話 シンジとアオイ
シンジ「クソッ、あの女…!」
シンジはやっとのことでマユミから解放された。もう外は黄昏始めていたが、ヘルガーがいるから夜の砂漠も寒くはない。
シンジ「…ここは…ノクタスを捕獲した場所か…」
砂漠の一角、大岩の麓。シンジはホウエンに来たばかりの頃、ここでノクタスを捕まえた。
シンジ「ホウエンに…来る前…」
ホウエンに来る前、俺はジョウトにいた。
『あの男』によるダークわざの特訓をこなし、もはやジョウトに敵なしとなった頃だった…
俺が、負けたのは。
アオイ「…誰に負けたんですか?」
シンジ「…いたのか…」
アオイ「…?」
つまらない反応ですね、と言おうとしたが、シンジの言葉に遮られた。
シンジ「聞きたければ…そこに座れ」
アオイ「はぁ…」
当時俺は、14歳だった。
俺の手持ちはその当時ニューラ1体だけだった。
にもかかわらず、その頃の俺は、恐いもの知らずだった。つまり、精神がガキだったと言うことだな。
毎日のように盗みを働き、破壊と略奪を繰り返す日々に、俺は満足感すら覚えていた。
全ては『あの男』の命令。
何故従わなければならなかったのか、今思えば逆らうことも容易だったはず。
だが俺は従った。そうする事で現実から目をそむけることができたからだ。
そんな薄汚れた俺を現実に引き戻したのが…
つまり、俺を初めて負かしたのが…金田一ゲンキ、だった。
アオイ「ゲンキが!?」
シンジ「…どうでもいいがお前、何故そんなに年齢を重視するんだ?
奴が年下だからといって、そこまで馴れ馴れしくする必要は…」
アオイ「いや〜、クセですので」
すると、大岩の上で『暗い』鳴き声がした。
アオイ「…この鳴き声は、ブラッキー?」
シンジ「あくタイプのか?…なら俺がいただく。以前からほしいと思っていた」
大岩の上からブラッキーがぴょんっと降りてきた。
シンジ「いくら諜報部とはいえ、俺のスペックまでは知っていまい…見せてやろう」
シンジがポケットからモンスターボール…いや、ムーンボールを取り出した。
シンジ「…これが俺のスペックだ」
ムーンボールから『夜空色』の波動が流れ、ブラッキーに命中した…。
とたんに、ブラッキーはねむった。
シンジ「ムーンボールの真の力…月。つまり、夜。俺のスペックはボールの持つ真の力を…」
アオイ「えいっ!」
ねむったブラッキーにアオイがモンスターボールを投げた。
カチッ。ブラッキー、捕獲。アオイが。
シンジ「キッ…貴様…!!」
アオイ「あれ?そんなにほしいのならあげますけど?」
シンジ「当然だ!よこせ!」
アオイ「はい。」
意外とあっさりくれた。
シンジ「…釈然とせん…」
アオイ「じゃ、わたしはこれで!話の続きはまた今度聞きます!」
そういうと、夜の砂漠に消えていった。響絶壁を越えて。
シンジ「ふん…あの続きを、お前になど語れるか」
アオイ「シンジの能力…あれがあれば、『エメラルド計画』を実行できるかもしれない」
- 135 :エンタ :2006/01/15(Sun) 19:50:36 ID:.8BrKp0c
- 第116話 サン・トウカ、出動
ハヅキ「そういうわけなんだ…悪いね、手間かけて」
おくりびやま−サン・トウカフラワーショップ間の電話。
ハヅキはアオギリたちに負わされた怪我でおくりびやまを動けなくなってしまったのだ。
ミナヅキ「ううん、わたしなら大丈夫…すぐ、そっちに向かうから」
電話なら声は聞こえる。
ハヅキ「ただ…お店のほうは大丈夫かな?サツキひとりじゃ…」
ミナヅキ「何とかしてみる…」
ハヅキ「何とかって…しばらく閉めたほうがいいんじゃない?そんでもって、二人でこっちに来るとかさ。
でもまあ、そっちのことは二人に任せるわ」
ミナヅキ「うん、それじゃ…」
プツッ ツー ツー ツー …
サツキ「ハヅキおねーちゃんから?」
ミナヅキ「うん。それで、わたしはすぐおくりびやまに行かなきゃならないの…店番、頼めるかな…?」
サツキ「え〜?ひとりじゃ無理だよぉ〜」
3人の中では一番『ひとりでも大丈夫そう』だが。
ミナヅキ「でも…じゃあ、どうしよう…?」
サツキ「そうだなぁ…お店を閉めて、あたしもついてくよ!」
やはり、ハヅキとサツキは姉妹である。意見がまるで一致した。
ミナヅキ「そう…?じゃあ、そうする…、ぅぁ」
ミナヅキが小さな呻き声(?)をあげた。
サツキ「どしたの?」
ミナヅキ「…一緒に…行くの…?」
サツキ「…あー、そういえばミナヅキおねーちゃん…」
サツキの口調がイヂワルな感じに変わった。
サツキ「ムシ、ダメなんだっけェ〜?」
こころなしか『ムシ』が強調されていたような気がした。
ミナヅキ「ひぃぃ…サツキちゃん、わたしは先に行ってるから…」
サツキ「そうはいかないよん!アゲハ!」
うつくしさに磨きをかけられたアゲハントがボールから躍り出た。
だが、そのうつくしさもミナヅキにとっては『ムシ』でしかない。
ミナヅキ「きゃあああぁぁぁぁッ!!?」
普段の数十倍の声である。
サツキ「あはははははっ、クーッ、いつ見ても笑えるねぇ」
やっぱり一番危険なのはサツキだった。齢10歳にしてこの残酷さ。
まあ、ミナヅキをいぢめるうちにむしタイプのエキスパートになったハヅキも筋金入りだが。
サツキ「じゃあ、あたしは先におくりびやまへ行ってるからね!お店閉めるの忘れないでよー!」
気絶したミナヅキにそう言い残すと、立場が逆になったサツキはアゲハントで飛び立っていった。
ミナヅキ「む…しぃ……」
- 136 :エンタ :2006/01/15(Sun) 19:51:14 ID:.8BrKp0c
- 略して いまキャラ サン・トウカ編
桃花ハヅキ
サン・トウカ長女。21歳。独身。8月生まれ。
セツナ同様に、性格が未だにハッキリしないキャラです。
ダイゴとの過去が唯一、人格を形成しているというか…
何かしら人との関係を持ってないとそのキャラの性格ってヌケニンのごとく空っぽなんですよね。
今後の活躍に期待です。
彼女はむし嫌いのミナヅキをいぢめるうちに、いつの間にかむしタイプを極めていたという、筋金入りのいぢめっ子です。
フライゴンもナックラーのうちから育てた『むしっぽいドラゴン』な存在です。
ダイゴとの関係は、トレーナーズスクール(高等部)の先輩後輩。ハヅキ18歳、ダイゴ15歳。青春?
ハヅキはしばらく見なかったと言っていましたが、卒業後ダイゴはチャンピオンロードで修行に明け暮れていました。
トレーナーズスクールの高等部は15歳からなので、妹二人はまだ通えません。
あと、アクア団には負けたけど、ハヅキは滅茶苦茶に強いです。
というか、レディアン一匹で5人を一度に相手してしかも3人倒してる時点でかなり強い…。
でも、一人のときよりサン・トウカ三人のときの方が強いことは、紛れもありません。
桃花ミナヅキ
サン・トウカ次女。14歳。6月生まれ。
ユウキ君にLOVEです。メロメロです。
もともとセンリに憧れているというようなこともあってか、妙に親近感を覚えるようです。
116話にもありましたが、大のむし嫌い。
子供の頃、トウカの森で迷子になった時にドクケイルの群れに襲われたのがトラウマなのです。
まあ、その奇襲が姉の差し金だったことは言うまでも無く…
手持ちはラフレシアのほかにもさまざま。くさタイプ限定というわけではないようです。
ダイゴにも勝るとも劣らない実力を持つ姉がいるにもかかわらず、サミット実行部に抜擢されたのには
ちゃんとした理由があります。
センリがその『眼』で見抜いた彼女だけの実力とは…?
桃花サツキ
サン・トウカ三女。10歳。5月生まれ。
どこで身につけたのか、曲がった知識と曲がった性格で客をいたぶる小悪魔。
ユウキも初めて会った時は、幼稚園児を彷彿とさせる幼さが見られたが、
店=彼女の縄張りに入ってからは態度が一変、下手をすると悪徳セールスである。
だが、まだまだ子供な一面を見せることも。
手持ちは主にコンテスト仕様で、わかりやす過ぎる名前をつけている。
- 137 :エンタ :2006/01/18(Wed) 14:05:40 ID:wsoC/oK2
- 第117話 マユミとセンリ
マユミ「そうですか…『エメラルド計画』も、順調ですね。」
アオイ「はい。おかげでセレビィを捕獲する手間が省けました」
マユミ「まだ彼の力を借りられると決まったわけではありませんよ」
アオイ「マユミ様の手腕があれば決まったも同然ですよ」
『エメラルド計画』…セレビィ…二人は何の話をしているのだろうか?
マユミ「報告ご苦労さま。アオイさんも、休憩時間中に悪いわね」
アオイ「いえ。お役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。では、失礼します」
砂漠にたつ小屋から、アオイは夕暮れの下へと出て行った。
マユミ「…センリさんに電話、っと…」
プルルルル… プルルルル… ピッ
センリ「マユミか。どうした」
最新式のポケギア(デボン製)は着信相手がわかるシステムもついている。
マユミ「銀シンジくんのトレーナースペックが判明しました。まだはっきりとは判りませんが」
センリ「なんだ、そんなことか。今は筋トレ中だ、後に…」
マユミ「諜報部の情報によれば、彼のスペックは『エメラルド計画』においてかなり重要との事です」
重いものを落とす音がした。
センリ「…本当か?」
マユミ「ええ。彼を諜報部に連れてきてよかったですよ」
センリはマユミが諜報部だということを知っている。
センリ「ああ。『エメラルド計画』は秘密裏の計画だからな。マグマ団たちにはおろか、サミットにすらも知られてはならん」
マユミ「でも…彼のスペックが本当に私達の予想したものかどうかが心配ですね…」
センリ「そのことなら心配ない。スグルをヒワダに向かわせた。実行部全員の顔写真を持たせてな」
マユミ「ヒワダ…コウメさんですか」
センリ「うむ。コウメさんが与えてくれるのはあくまで『ヒント』にすぎないが…
それでも、自らの能力を知る手がかりにはなるだろう」
マユミ「しかし…『エメラルド計画』の肝要であるあの少女は一体どこに…」
センリ「諜報部でもわからなかったとなると、スグルを誉めなくてはならないな。
ついこの間、奴が見つけたのさ。第3の超古代ポケモンに関する文献を」
マユミ「…!それってまさか、空の巫女の情報まで…!」
センリ「バッチリだ。あの少女はキンセツとコトキを結ぶ川の上流、「天の森(あまのもり)」にいる」
マユミ「…どうして教えてくれなかったんです?」
センリ「ははっ、そのほうが面白いと思ってな」
マユミ「もう、センリさんの意地悪ぅ!」
オマエが言えた事か。
センリ「そして、その捜索に誰を起用するかは、もうこっちで決めてある」
マユミ「…?スグルくんは、ジョウトに行ってるんでしたよね?じゃあ一体…」
センリ「昨日、テッセンさんから連絡があった。おそらく今日中にここに…」
勢いのいい音がした。
マユミ「どうしたんですか?」
センリ「フフ…ッ、マユミ…話の続きは、また後でだ」
マユミ「えっ?ちょっ…」
プツッ ツー ツー ツー …
センリ「…挑戦者だ」
- 138 :エンタ :2006/01/19(Thu) 16:12:01 ID:uVcqHlF2
- 第118話 VS.センリ其の一 すばやさ対決
ユウキはものも言わずリュックの中身をまさぐっていた。中に入れたままのヒートバッジを探しているらしい。
センリ「スグルから聞いたぞ…手持ちが増えたそうだな」
ユウキ「ああ。5匹にね」
ぶっきらぼうな答えだった。それだけ勝負を急いでいるというのがよくわかる。
センリ「言っておくが、親子だからといって手加減はしないぞ」
その言葉が終わるや否や、ユウキが4つのバッジを見せて言った。
ユウキ「親子だからこそ…だろ?」
トレーナー「挑戦者・大空ユウキVS.ジムリーダー・大空センリ!入れ替え制!」
センリ「このジムのルールを簡単に説明していこう。今わたしたちがいるのはジムの最奥…
お前がこの部屋に来るまでに通った部屋のパターンで、お前とわたしが3匹のポケモンを選出する」
ユウキ「3対3だろ。ルールなら大体知ってるよ、オレが通ったのは…」
センリ「お前が通った部屋はすばやさの部屋、まもりの部屋…そしてちからの部屋だな」
ユウキ「すげぇ!何でわかったの?」
センリ「そして、ルールが入れ替え制の場合、一度出したポケモンはボールに戻してはならない。
相手が戦闘不能になれば勝ち星1。そして両者ポケモンを入れ替え、最後に勝ち星が多かったほうの勝ちだ」
ユウキ「そいつは知らなかったなぁ」
センリ「では…審判。頼むぞ」
トレーナー「では両者ポケモンを準備!一戦目、すばやさ対決!試合…開始!!」
センリ「一番手はこいつだ!オオスバメ!」
ユウキ「ブイ!…ってあれ?ザングースじゃないの?」
センリ「ザングースはミツル君に譲った。それより、ボヤボヤしてていいのか?」
ユウキ「うわっ…ブイ!でんこうせっか!」
ダイゴにもらったみずのいしの力でシャワーズに進化したブイは、オオスバメにも劣らないスピードで動いた。
センリ「さすがだな!目には目を…というわけか!ちなみに教訓其の十五だ」
ユウキ「憶えてるよッ!ブイ!みずでっぽう!」
センリ「オオスバメ、かげぶんしん!回避だ!」
みずでっぽうは普通に回避されてしまい、あとには水溜りしか残らなかった。
ユウキ「くっ…ブイ、とにかく飛べなくしてやるんだ!あまごいッ!」
ブイが雨雲を吐き出した。
センリ「なきごえ!」
オオスバメが自慢の声を披露する。雨雲は音波により分解された。
センリ「そんな小手先の技は通用しないぞ!」
ユウキ「…なら、真っ向勝負だ!でんこうせっか!」
ブイが一瞬でオオスバメの(真っ向勝負とか言っておきながら)背後にまわりこみ、高く飛んだ。
ユウキ「アイアンテ――――ルッ!!」
センリ「く、オオスバメ、カウンター!」
しかし、背後にまわった分ブイのほうが一瞬早かった。
鉄のしっぽがオオスバメに直撃した。
ユウキ「まだ戦闘可能か…よし、ブイ!かみつく!」
センリ「オオスバメ…がむしゃら!」
オオスバメががむしゃらに暴れまわった。当然のごとくブイも巻き込まれた。
センリ「そこで、とどめのつばさでうつ!」
ユウキ「させるか!ブイ!」
オオスバメの翼は外れた。
センリ「何ッ!?どこに消えた!?」
焦る姿は珍しい。オオスバメが先ほどの水溜りの上に立っている、ということにセンリは気づかなかった。
ユウキ「そこだッ!!飛び出せ!!」
水溜りを伝って、オオスバメの背後からブイが飛び出した。
センリ「とける…?」
ユウキ「二度目のアイアンテールだ!!」
オオスバメの脳天に再びたたきつけられた鉄のしっぽは、今度こそ相手を戦闘不能にした。
ユウキ「ったく…ザングースじゃないって知ってたならプラを出してたのにさ」
トレーナー「すばやさ対決!挑戦者、大空ユウキの勝利!」
- 139 :エンタ :2006/01/19(Thu) 16:12:49 ID:uVcqHlF2
- 第119話 VS.センリ其の二 まもり対決
トレーナー「両者ポケモンを用意!二戦目、まもり対決!試合開始!」
ユウキ「ココ!」
センリ「ほう、コドラに進化したか…ハピナス!」
ユウキ「教訓其の七、攻撃は最大の防御!ココ、すてみタックル!」
センリ「ハピナス、リフレクター!」
ガキィ……ン。ココのすてみの攻撃は空しく弾かれてしまった。
ユウキ「ココ、下からだ!あなをほる!」
もはやココの定番技である。そして、それだけ使い込んでいれば反応も早い。
センリ「…ハピナス。」
ボコ――――――ン。今度は見事ハピナスに命中した…?
ユウキ「げッ…みがわりッ!?」
センリ「そっちはハズレだ。隙だらけだぞッ、ハピナス、だいもんじ!!」
そのかわいらしい外見からは想像できないほどの物凄いほのおが、ハピナスの口から発射された。
ユウキ「…へへっ、ラッキーだぜ!」
センリ「…?ラッキーではない、ハピナ…ッ!?」
そこには物凄いほのおをそのまま纏ったココの姿があった。
センリはココの能力を見るのははじめてである。
ユウキ「ココッ、そのまますてみタックルだァ!!」
だがセンリもジムリーダー、そのくらいのことで動揺する男ではない。
センリ「ハピナス!ひかりのかべ!」
先ほどのリフレクターは消えていたので、ココの纏ったほのおだけがひかりのかべに阻まれ、ココ本体はハピナスに命中した。
ユウキ「チェッ、消えちゃったか…ま、いいや!ココ!メタルクロー!」
センリ「よくわからんが…とにかく、ハピナス!再度リフレクター!」
進化するにつれて体が重くなるココは、体の反応速度が鈍っていた。一瞬早くリフレクターが展開した。
ユウキ「一瞬遅れたか…ココ、かたくなる!今度はリフレクターをぶち破ってやるぜ!」
センリ「無駄だ。リフレクターは物理攻撃を跳ね返すが、リフレクター自体は『物理』ではない。
『今の』お前とコドラでは、いかなる策でも破壊することはできないぞ」
ユウキ「な…やってみないと分かんないッ!!ココ!!」
ココが大きく足を振り上げ地面を踏み鳴らすと、ハピナスに向かってとっしんした。
センリ「無駄だと言っただろう。まもりの代表者だ、甘く見るな」
言われたように、ココは思いっきり跳ね返されてすっ飛んだ。
ユウキ「いいぞ!そのまま天井にぶつかれ!」
センリ「何ッ!?」
ココは体を急回転させ、弾かれた勢いを利用して力の限り天井にぶち当たった。
これでダメージ0なのだから、ココのいしあたま…もとい、てつあたまは称賛に価する。
センリ「上からだと!?」
揺れた天井が崩れ、小石やチリがジムに舞った。
ユウキ「上ばかり見ていると…足元がおろそかになるぜッ!」
ココが天井からピンボールのように落ちて、今度は床に思いっきり当たった。
センリ「なッ…じしん!?さっきの突進前の行動は、初期微動がわりの下準備…!」
ユウキ「がんせきふうじ!!」
上と下に同時に気を取られたハピナスに、見事に石塊が命中した。
センリ「身動きが…ッ!!」
ユウキ「手が使えなければ、もうリフレクターは張れない!ココ!すてみタックルだッ!!」
あれだけぶつかっても痛くも痒くもないココは、さっきよりもすごいスピードでハピナスに向かっていった。
センリ「…まもりの代表だと言っただろうがッ!!みずのはどう!!」
ユウキ「!これは…」
スグルと同じ戦法。いや、むしろ逆だ。センリがスグルに教えたものだろう。
センリ「ハピナス!サイコキネシスでがんせきをどかすんだ!」
ハピナスの動きを封じていたいわが、持ち上がってココに襲い掛かってきた。
ユウキ「ココ!かたくなって待機だ!」
センリ「フッ、お前の言うとおりだったな。上ばかり見ていると…足元がおろそかになる」
ユウキ「…?」
センリ「コドラのヨロイの固さは認めよう。しかしそれは背中の部分だけだ。すなわち腹は弱点…そうだな?」
ユウキ「それがどうしたって言うんだ!ひっくり返そってのか!?」
センリ「そんな面倒なことはせん…。ハピナス…フラッシュ!」
ハピナスがポケット(?)からタマゴを取り出し、ココの頭上に投げつけた。
タマゴは空中で破裂し、激しい光がジムを包み込んだ…。
光が止んだ瞬間、ココは仰向けになって倒れていた。
ユウキ「な…ココ!」
センリ「シャドーボール…対象の影から飛び出す闇の球体だ。確実に命中させるためには、真上に照明を作る必要があった…」
彼にとっては、目くらましのわざも下準備にしか過ぎないのだった。
トレーナー「まもり対決!ジムリーダー、大空センリの勝利!」
- 140 :エンタ :2006/01/19(Thu) 16:14:08 ID:uVcqHlF2
- 第120話 VS.センリ其の三 ちから対決
センリ「第三試合まで勝負が長引いたのは久々だな…次の一戦で決着がつく」
ユウキ「おしゃべりは無用…次は、ちから対決だね」
トレーナー「両者ポケモンを準備!最終戦、ちから対決!試合……」
沈黙が流れる。この審判は、じらすのが得意だ。
トレーナー「開始ッ!!」
センリ「ヤルキモノ!!」
ユウキ「チー!!」
やはり両者のアンカーは、長年の相棒である。センリの方は、ハジツゲ噴火事件の時のヤルキモノだ。
ユウキ「チー、メガトンキック!!」
センリ「…ヤルキモノ、迎え撃て!きあいパンチ!!」
当然、センリはチーの新わざにも驚かない。だが、ユウキにとっては予期せぬ肉弾戦となった。
ユウキ「…まあ、ちから対決だし当然っちゃ当然か。チー、ちきゅうなげ!」
チーはきあいパンチをギリギリまでひきつけてから避け、その腕を挟みこんだ。
センリ「こらえろ!持ち上げさせるな!」
ヤルキモノがじめんを深く踏みしめたので、今度はチーが持ち上げられる形となった。
ユウキ「なんつーパワーだよ…!」
センリ「先刻のポケモンたちと同様に、ヤルキモノはちから代表だ。ちからで応戦するなら訓練が必要だな」
ユウキ「くそ、チー!ソーラービーム!!」
口の中から噴出した光線が、ヤルキモノの腕を焼き尽くす。
センリ「じめんにたたきつけろ!!」
ユウキ「チー!何があっても放すな!このチャンスを逃すな!!一気に出し尽くせー!!」
ヤルキモノのパワーで振り回されても、かいりきバサミは緩まない。
なおも強力なソーラービームがヤルキモノの腕を焦がすだけだ。
センリ「ヤルキモノ…左手で手足を攻撃だ!」
ユウキ「な…!」
ヤルキモノが破壊の爪ブレイククローでチーの体を引っ掻き回す。
センリ「ソーラービームが出尽くしてなおヤルキモノが立っていれば、お前に勝ち目はない」
確かに、切り札に近い威力を持つソーラービームが出尽くしてヤルキモノと対峙するとなれば、肉弾戦しかない。
しかし、ブレイククローにより使い物にならなくなった手足では、センリの言うように勝ち目はない。
なら…
ユウキ「チー!そのままつるぎのまい!」
ヤルキモノの腕を物凄いちからではさんだまま剣に変身したチーを、ユウキが両手で掴んで一振りした。
その勢いで右腕中の毛が抜け、センリのほうにすっ飛んだ。
センリ「落ち着いて受け身を取れ!じめんにぶつかってダメージは、かっこ悪いだろう!」
「かっこ悪い」に反応してか、ヤルキモノが宙を3回転して着地した。…かっこいい。
センリ「かえんほうしゃ!」
ユウキ「たくわえる!」
ヤルキモノがふいに吐き出したほのおを、開いた剣の口が吸い込んだ。
ユウキ「てっぺき、はきだす!ほのおのうず!!」
ヤルキモノがほのおのうずにとらわれた。
センリ「逆のうずで消すんだ!こごえるかぜ!!」
ほのおとこおりが打ち消しあい、ジムリーダーの部屋に霧が満ちた。
ユウキ「くッ、視界が…チー!てっぺき、あまいかおり…!!」
センリ「させるか、ヤルキモノ!れいとうビームだッ!!」
しかし、ヤルキモノは動きが鈍った。
センリ「な!?何故だ、あまいかおりはまだ発動していないはず…ッ!?」
ユウキ「一閃流オレ式奥義・酔嵐の剣舞ッ!!」
ポケモンを魅了する香りが、竜巻に乗ってヤルキモノを包み込んだ。
センリ「…ほのおのうずにも、あまいかおりを仕込んでいたか…」
ユウキ「そのとおり!目の前に水があったら凍らせるようなタイプだからな、父さんは!先手必勝さ!」
センリ「またしても、か…!」
風が止む頃、ヤルキモノはすっかり戦意を喪失し、フラフラしていた。
ユウキはチーをヤルキモノに向かって投げ、「ねむる」と言った。
チーが回転しながらヤルキモノの脳天に頭のつのを直撃させた。地味だが、今できる肉弾戦では一番のわざだ。
トレーナー「ヤルキモノ、ノックアウト!!」
ユウキが父の顔を見ると、彼は微笑んでいた。ユウキも笑った。
トレーナー「ちから対決!挑戦者、大空ユウキの勝ち!よってこの勝負…2対1で、挑戦者・大空ユウキの勝利ーッ!!」
- 141 :エンタ :2006/01/21(Sat) 15:31:10 ID:7.1obhxI
- 第121話 たくされた使命
ついて来い、と言われて入ったトウカの図書館で、ユウキは一冊の本を渡された。
ユウキ(前にもこういうシチュエーションがあったような…)
しかし、あの時と違いセンリがページを指定したので、頭がブレイクすることはなかった。
ユウキ「歴史の本…?えーっと、ダークポケモン戦争に終止符を打つべく戦った勇者とそのパートナー…」
センリ「違う違う、その下の写真だ」
ユウキが見てたのは
『レオンハルト・ヴィンスレッド 1844〜1860』
『アミレイラ・ブルーハーツ 1845〜1874』の写真だった。
センリ「この少女だ。『エメラルド・アンセラス 1849〜????』…つまり、1849年生まれ、没年不詳だ」
その写真を見て、ユウキは驚愕した。
翠玉色の頭髪、眉、瞳…ミツルや青山アオイにそっくりだった。
ユウキ「この写真がどうかしたの?」
センリ「お前に頼みたいことがある。この少女を探してほしい」
・・・・・・
ユウキ「は?…えーと…今156歳?」
センリ「…16歳だ」
ますます訳がわからない。
センリ「次のページに、写真の人物の説明が載っている…めくれ」
ユウキは次のページを音読した。
ユウキ「…えー、1800年代初期からオーレ地方で密かに始まっていたダークポケモン計画の背景から説明しよう…」
センリは無言でユウキの耳を引っ張った。
ユウキ「いだだだだ!冗談冗談!!えーっと…こっちか」
センリ「まったく…誰に似たんだか…」
ユウキ「…エメラルド・アンセラスは、10歳のときに上記のヴィンスレッドの作戦により、
時渡りをした唯一の人物である…ときわたり!?」
センリ「そうだ。150年後に向けてな」
ユウキ「時渡りをした理由は、ビーディ・J・サイクル(占術師)の未来を見通す力により、
エメラルドの力は未来で役に立つ、と占われたために、戦争を避けるため遠い未来に送ったものとされる。…力?」
センリ「そう、その少女の力はまさに、未来…我々のいるこの世界で役に立つ…いや、欠かせないものだ」
ユウキ「その力とは…これは現代においてトレーナースペックと呼ばれる…、『時空(ヴァニシング・タイムライン)』…?」
センリ「『打ち消しあう時空の道』…そして『時空』…このような様式がトレーナースペックの正式名称だ」
ユウキ「効果は…? ※『時空(ヴァニシング・タイムライン)』の効果は、『光と闇の対立衝動により時の扉を開く能力』…」
センリ「『エスパーとあく』のことだ。当時はひかりタイプ、やみタイプと呼ばれていたそうだ」
ユウキ「そして、その力には欠点があった。時の扉を開くことはできるが、時渡りのための『時間軸』の設定ができないことだ」
センリ「時間軸…その本が書かれた時代の言葉では、『時の扉(入口)と時の扉(出口)の間の時空間の長さ』のことだな」
ユウキ「この弱点を克服するべく起用されたのが、アゲトビレッジのほこらに眠るときわたりポケモン…セレビィの能力だった」
センリ「セレビィは、ジョウトはウバメの森に住むというポケモンだが、正式な住み処はない。時渡りするからな」
ユウキ「セレビィのときわたり能力は、時間軸の制定のほかに、時の扉の開閉の補助などがある。
時の扉の小さいものを『時のひび割れ』と呼び、セレビィはどんなに小さい時のひび割れでも巨大化させることが可能だ」
センリ「…ただし、『無』から時の扉を作るのは不可能だ。セレビィにはな」
ユウキ「時のひび割れはどういったところにできるのか?それは、『その時間に存在すべきでないもの』の周りや、
時の扉が閉じた跡である。この時代では自然のひび割れは存在しなかった」
センリ「だからこそエメラルドの能力が重要視されたんだ。彼女の命を狙う者も出てきた」
続きを読む。
ユウキ「…そして、セレビィに150年間という時間軸を創らせ、それをつなぐ扉を
レオンハルト・ヴィンスレッドのポケモンとエメラルドの能力により創らせた」
センリ「そして、この時代のオーレ地方…つまり現代のジョウト地方南部へ送られたというわけだ」
ユウキは本を閉じた。
ユウキ「…それで、その人を探してどうするの?」
センリ「問題はそこだが…今スグルが持っている本に記されている内容によると…」
センリは咳払いをひとつし、暗めの雰囲気で続けた。
センリ「彼女には…150年前の記憶が無いそうなんだ…」
- 142 :エンタ :2006/01/21(Sat) 15:31:27 ID:7.1obhxI
- 第122話 お前の夢は…
ユウキ「…記憶喪失!?」
センリ「ああ…その文献には、無理な時渡りのショックと若すぎる記憶細胞が災いして、一時的な記憶障害を起こしているらしい」
ユウキ「一時的…?」
センリ「そう…彼女の記憶を取り戻し、彼女にスペックの使い方を思い出させる…そして戦力にする。
それこそが、諜報部の計画…その名も『エメラルド計画』なんだ」
ユウキ「…エメラルド計画…」
センリ「彼女は名前も忘れているため、『ヒスイ』と名乗っているらしい。現代で初めて聞いた言葉が『綺麗なヒスイ色』だそうだ」
ユウキ「ヒスイ…か」
センリ「そして、その少女は今ジョウトからここホウエンに渡って来ていて、
キンセツとコトキを結ぶ川の上流「天の森」にいる。お前にはそれを探す役目をやってほしい」
ユウキ「コトキとキンセツ間…さっき通ってきた場所か!」
センリ「ジムリーダーを倒す旅の途中なら、立ち寄るだろう。あくまで「ついで」で構わない」
その言葉に、突然ユウキの態度が変わった。
ユウキ「冗談じゃない!ホウエンの一大事に、ジムリーダー制覇なんかやってられないだろ!!」
センリ「何?」
ユウキ「それに、諜報部の人が頑張ってるんだったら、オレも役に立ちたい。オレは、未来より今を選ぶ」
センリ「……!頼もしいな…」
ユウキ「というわけで、その森に行けばいいんだね?」
センリ「天の森…だが、気をつけろ。結界が張ってあるせいで近づけない。スペックを使わねば…な」
ユウキ「平気平気。どんなかべもみんなで切り開くさ!」
センリ「それと…ヒスイに会ったらこのポケモンを渡してほしい。ある人から借りたものだ」
と言って手渡されたボールには、ネイティオが入っていた。
ユウキ「エスパータイプ、『ひかり』のポケモン…どういうこと?レオって人のポケモンで時渡りしたんだろ?」
センリ「この時代に着いたときに記憶を乱れさせないよう自ら彼女の許を離れるように命令したとその本に書いてあったはずだが…」
ユウキ「そうだっけ?まあいいや、このネイティオを渡せばいいんだね?もう一匹は?」
センリ「もう手配してある…そのネイティオを渡すだけでいい」
ユウキ「そっか。じゃあ、行って来ます」
センリ「ああ。頼んだぞ」
部屋を出ようとするユウキを、センリは再び呼び止めた。
センリ「ユウキ…お前の夢は何だ?」
ユウキ「は?将来の夢って事?何でそんなこと急に…笑わないでよ…」
ユウキはセンリのほうを振り返った。少し顔が赤い。
ユウキ「…このトウカジムの、3代目ジムリーダーになることさ」
センリ「…いい夢だ」
ユウキ「父さんの夢は?」
センリ「わたしか?わたしの夢は…はは…実はもう、叶ったんだよ」
- 143 :エンタ :2006/01/23(Mon) 14:34:22 ID:xG1Y0DrY
- 第123話 ポケモンは友達
ホタル「…っはァッ!!驚いたぜ、まだ隠し技があったとはよ…」
ゲンキ「…でも、結局負けちまったよ〜」
勝負がついた頃には、もうふたりはヘトヘトだった。日曜から水曜まで、ぶっ続けで特訓バトルをしていたのだ。
ホタル「何だっけ?最後に使った…」
ゲンキ「次元爆弾(マグネトロンボム)?」
ホタル「あ、いや違う…あれだ、あれ!ファントム何とか!あれはびっくりしたぜ」
ゲンキ「ああ、あれ?影狼(シャドウヴォルフ)に対してオーバーヒートの割合を強めてみた。
懐かしいなァ、このわざ…こいつでシンジのヤローをボッコボコにしてやったんだ」
ホタル「シンジ…?ああ、お前が言ってた赤い髪のキザヤローのことか…聞かせてくれよ」
ゲンキ「へへッ、いいぜ。あれはもう3年も前になるのか…いや、前置きからだな」
親父が再婚して3年経ったくらいか。
ワカバ立小学校に入ったばかりのオレは、ワカバじゃ有名なガキ大将によくいじめられてたんだ…
今からじゃ、想像つかないだろ?
ガキ大将「へん、この金持ちのボンボンが!悔しかったらかかっておいで〜」
その頃のオレは、本当にボンボンって感じで、しかも弱虫だった。
ケンカが強くなりたくても、母ちゃんはやめろって言うし、親父は帰ってこねぇしで…
オレはほどなく不登校になった。
その頃のオレの人生は、まさに絶望的だった。
小学校に入って3ヶ月で学校を辞め(勉強なら家でできたしな)、その次の月に親父が死んだ。…ロケット団に殺された。
財産目当ての犯行だったらしいが…うちの金に手を出す前にしばられやがった。
それが嫌だった。どうせなら中途半端なことはせず、
オレと母ちゃんを貧乏人にしてくれれば…オレたち二人は非難を受けずにすんだかもしれない。
やがて家を他人に譲り、財産を親戚に預けて、ワカバ郊外(Add.ワカバ1−2)で質素な暮らしを始めた。
近くには、同じく町中の非難を受けただろう変わり者の博士が家と研究所を持っているだけだった。
その家にはオレとさほど歳の離れてねぇ女の子が住んでた。
暇だから声をかけてるうちに自然と仲良くなってったな。
オレはあの子の名前を知らなかったけど、いつもポケモンの卵を抱いてたから『タマゴ』って、呼んでた。
近所だから、母ちゃんと博士も嫌でも仲良くなった。
ゲンキの母・サナエ「あ、ウツギさん。今日うちでご飯食べていきませんか?肉じゃがですよ」
ウツギ「ええっ、いいんですか!?いつもいつもすいません…」
サナエ「いいんですよ。それに、ユウキちゃんといると、ゲンキも自然と明るいし…」
ウツギ「じゃあ、あの子も連れて行きますね」
この会話を聞くと、嫌でもってワケでもなさそーだが。
そんなこんなで3年も経ったある日、あのガキ大将がうちに来やがった。
ガキ大将「よぉ!ボンボンのゲンちゃん!ママは一緒じゃないの?」
ゲンキ「もうボンボンじゃねぇよ…しかも、こんなところまできて何の用だよ!?」
ガキ大将「へへっ、この度ボクのおじいちゃんがワカバタウン町長に就任する運びとあいなりまして…」
ゲンキ「普通にしゃべれよ。気持ち悪い」
ガキ大将「何ィ、ボンボンのクセにナマイキだぞ!」
ゲンキ「うっせぇよ、デクノボーが!町長かい、へーそりゃ良かったね!!とっとと帰れ!」
ガキ大将「やるかっ!?いけ、オタチ!」
ゲンキ「ポ、ポケモン!?」
当時のオレは、ポケモンなんてアニメで見るくらいで、本物を見るのは初めてだった。
ガキ大将「オタチ、ボンボンの顔をズタズタにひっかいてやれ!」
オタチが襲ってきた。マジで恐かった…今思うと、よく泣かなかったな、オレ…
そしたら急に横からラッタが飛び出してきて、オタチを止めた。横にメガネ博士が立ってた。
ウツギ「ポケモンで人を攻撃するのは、12年前の条例改正まで禁じられていました…
かといって、今ならやっていいというわけではありませんよ」
ガキ大将「く…も、もどれオタチ!!帰るぞ!!」
ヤツの姿が見えなくなるまで、メガネ博士はヤツをにらんでた。
ウツギ「大丈夫かい?ゲンキくん…」
ゲンキ「ああ…メガネ博士、あれって…」
ウツギ「ポケットモンスター、略してポケモンさ」
ゲンキ「あれって、何なの?ガキ大将は子分みたいに使ってたけど…」
ウツギ「そんなものじゃないよ。ポケモンは友達さ」
そう、あの言葉は今もオレの胸に残ってるぜ…そして、猛烈に欲しくなったんだ、友達が。
ゲンキ「友達…!オレも…ほしい…!」
ウツギ「え、何だ…ほしいのなら言ってくくれればいいのに。ちょっとついてきて…」
着いた先は研究所の中だった。わりとイメージと違って、明るくて風通しのいい場所だった。
ウツギ「どれか一匹を選んで。君に譲ろう」
オレは何の迷いもなく背が黒いポケモンをとった。
ウツギ「ひねずみポケモン・ヒノアラシ…それでいいんだね?」
ゲンキ「こうしてオレのポケモン道の第一歩が始まったというわけだ…」
ホタル「どうでもいいがお前…何で人を呼ぶのに全部あだ名なんだ?メガネ博士って…」
ちなみにホタルは、『シラガ』と呼ばれている。
ゲンキ「全部じゃねぇさ。シンジだけは名前を呼んでる。っていうかアイツも、オレ以外はほぼ全員あだ名だしな」
ホタル「ふーん…そいつとの関係は、話してくれんのか?」
ゲンキ「まあそう急かすなって、今から話すよ」
- 144 :エンタ :2006/01/23(Mon) 14:34:43 ID:xG1Y0DrY
- 第124話 ポケモン泥棒
オレはヒノアラシにヒノまると名前をつけ、バトルの特訓に明け暮れた。
近所にポケモン博士がいるってのはお得なモンで、珍しいわざなんかも教えてもらえた。
タマゴのチコリータともよくバトルしたなぁ。名前は確か、チコ。
あいつもかなり強かったけど、オレとは違ってスペックは使えなかった…
ホタル「…ちょっと待て」
ゲンキ「何だよ?話の腰を折るのが好きだな、シラガは」
ホタル「別に好きでやってんじゃねーよ…それより、お前そんな前からスペック使えてたのか?」
ゲンキ「うーん…っていうか、ヒノまるで初めてバトルしたときから使えたな…」
ホタル「…何…!?」
ゲンキ「頭ン中に声が聞こえて来るんだよ。ひたすら『アルケミック・スキル』『アルケミック・スキル』ってよ…」
ホタル「そりゃお前…スペックの正式名称じゃねーの?」
ゲンキ「あー、確かあのメガネ博士も同じような事言ってた気が…何だよ、その顔は?
そんでもってオレがつられて『アルケミック・スキル』っていうと、わざの組み合わせ方が返ってきたんだ」
ホタル「…俺は自分のスペックが何だかなんて知らねーし…そんな経験したことねーけどな」
ゲンキ「まあ、オレの場合天才だから、生まれたときから使えたらしいけどな…だから何だよその顔は?」
さっきからホタルはずっと不服そうな顔をしていた。
ゲンキ「ったく…続きを話すぜ?そろそろシンジが出てくるから…」
やがて1年が過ぎ、タマゴのチコはベイリーフに進化した。
どうも相性的に経験度の差が出るらしく、ヒノまるはまだヒノアラシのままだった。なんか悔しかったなぁ。
でも、毎日が楽しかった。
あの非難を受け続けた過去からもう四年が経った。
ささやかでも間違いなく幸せな日々。『Add.ワカバ1−2』はオレが一番好きな場所だった。
そして、平穏な日々は…あの事件によっていとも簡単に破られた。
オレの10回目の誕生日の朝。
いつものように野生のポケモンを使って特訓をしに、ワカバの外へへ出かけた。いや、出かけようとした。
ふと、横に目をやると…
研究所の窓から、人が出てきたんだ。
ゲンキ「…!どッ…泥」
泥棒「ッ!黙れ!」
そいつがポケモンを出してきた。
ゲンキ「お前、そんなとこで何やってたんだよ!?泥棒か!?」
泥棒「貴様が知る必要はない事だ。…ガキだし、口止めもできなさそうだな…ニューラ」
突然、そのニューラがオレに飛びかかって来た。
ゲンキ「!ヒノまる!」
泥棒「…ほのおタイプ…弱点狙いか…?いや、初期形態では相手にもならないな」
ゲンキ「ヒノまる!ひのこ!!」
泥棒「ククッ、やはりな…脆弱だ」
ゲンキ「ゼイジャクって何だよ!?ヒノまる、にらみつける!!」
泥棒「脆く弱い…ということだ。ニューラ…」
ヒノまるが一瞬ひるんだニューラにむかって飛びかかったときだった。
泥棒「…ダークラッシュ」
・・・・・・
ゲンキ「…なんだそりゃ?」
泥棒「…?何故だ…何故恐れない?」
今でもワケわかんねぇ。何で恐れなきゃなんないんだ?ってな。
ゲンキ「ヒノまる、こいつハッタリだぜ!いける…」
泥棒「何故ダークオーラの圧倒力が作用しない…!?生物のもつ根源的な恐怖を駆り立てるはずだ…!」
ゲンキ「なーにゴチャゴチャ言ってやがる!ヒノまる、ひのこだ!!」
泥棒「くそッ、こんなガキに後れを取るとは…仕方ない、ニューラ…『葬る』ぞ」
そのニューラが頷いて、手をかざしたかと思うと…
ゲンキ「…ッ!?」
ぞわっ、とするような寒さが、あたりに立ち込めた。
泥棒「やっとダークオーラの恐ろしさがわかったか…」
ゲンキ「…は?何言ってんだお前?ヒノまる、ひのこ!」
オレは季節柄寒くなったんだなと思って、ヒノまるにあっためてもらった…
ホタル「…アホか?夏の話だろ、誕生日ってことは」
ゲンキ「そん時は、何でか全然ダークわざが恐くなかったんだよな…後になって、すっげー恐くなったけど」
ホタル「その調子で、その後の話まで語るつもりか?やめろやめろ。お前が話してるの聞いても全然盛り上がんねーよ」
ゲンキ「なッ…!?」
ホタル「うーし、もちっと特訓続けっか!!」
ゲンキ「お、おい…こっからがいいトコ…」
ホタル「あーもう、うるせーよ!!特訓の続きだ!イルミーゼ、バルビート!!」
ゲンキ「ちぇっ、いいトコだったのに…レアまる、バクまる!」
- 145 :エンタ :2006/02/01(Wed) 17:33:41 ID:kfoWUX6E
- 第125話 ミナヅキの勇気
ミナヅキ「やっと着いた…ワタポン、お疲れ様」
そう言うと(もちろん小声)、ミナヅキはワタッコをボールに戻した。
???「お前さん、墓参りかの…?」
突然後ろから声がしたので、ミナヅキは小さな叫びを上げて少し飛び上がった。
老婆「おや…脅かしてしまったかの?」
ミナヅキ「おばあさん…誰、ですか…?」
老婆「んー?聞こえんのう…」
ミナヅキ「あ…やっぱりいいです…」
老婆「ほっほっほ…若いのう…いや、ついさっきも、お前さんと同じような服を着た子供が来ての…」
ミナヅキはにっこり顔の花の絵が描かれた服を着ていた。同じものを、姉妹も持っている。
ミナヅキ「そっ、その子はどこに…」
老婆「んん〜?聞っこえーんのーう…」
ミナヅキ「……」
ミナヅキが困っていると、その老婆は手を出しなさい、というしぐさをした。
ミナヅキ「それは…?」
老婆「これをつけて自分に勇気を持ちなされ。お守りじゃ」
小さなモンスターボールの飾りがついた髪留めとゴムだった。
老婆「そんな髪型では、さ○子と間違われるぞぇ…お墓には場違いじゃ」
ミナヅキ「さ○子…?ああ、井戸から出てくる…」
確かに前髪で顔をしっかり隠した姿は、普通の人が見れば恐い。
老婆「うだうだ言ってないでさっさとつけなさい!!」
ミナヅキ「あ…は、はい!!」
ミナヅキはもらったゴムで、長い髪を左で縛り、髪留めで前髪を左側にまとめた。
老婆「ほほう…ほれ見ぃ、素顔はかわええモンじゃ」
ミナヅキ「!?かっ、かわいいだなんて…そんな…」
ミナヅキは真っ赤になった。
老婆「それに…そうすれば、この老いぼれの耳にもお前さんの声はしっかり届く」
ミナヅキ「え…?あ…」
そういえば、こころなしか声が大きくなっている気がする。
老婆「お前さんと同じ服を着た子なら、登山口のほうへ行っとった…待ち合わせと言うておったぞぇ」
ミナヅキ「…!あ、ありがとうございます!おばあさん!!」
老婆「その髪留めは大事に使うがよいぞ…」
ミナヅキは看板の示すほうへと駆けていった。
そんな彼女を見届けてから、おばあさんはゆっくり口を開いた。
老婆「今日は客が多いの…」
そこに立っていたのは…
アクア団。
老婆「何度来たって無いもんは無い。さっさと帰るんじゃな。この地に眠る魂がお怒りじゃ」
アオギリ「こっちだってお怒りなんだよ…」
コウ「…リーダー、さっきの女が知ってそうだ…俺は跡をつける」
アオギリ「ミズホも一緒に行け。このババァから何としても吐かせてやる」
老婆「穏やかではないのう…本気でくるのなら、